米国における高レベル放射性廃棄物処分の実施主体である連邦エネルギー省(DOE)民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)は、ウェブサイトにおいて連邦議会への年次報告書を公表した。この報告書は、放射性廃棄物政策法(NWPA)によって毎年の提出が義務付けられているものである。従来の年次報告書は基本的に対象年度の結果報告に留まっていたのに対し、今回公表された報告書は、2003会計年度1 の達成事項、2004年度で実施中の作業および2005年度の計画も並列する形で示している。
報告書では、2004年12月末との当初予定より遅れているユッカマウンテン処分場建設の認可申請についても言及されており、認可申請の時期は以下の3点の完結にかかっているとしている。
- 認可申請書を高品質なものにするために必要な作業
- 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細は こちら)に関連する追加作業(LSNの問題についてはこちらを参照)
- 環境保護庁(EPA)の環境放射線防護基準(40CFR Part 197)に対する連邦控訴裁判所判決の影響の評価(控訴裁判決についてはこちらを参照)
高品質な認可申請書の提出に向けては、処分場建設の許認可前段階における主要な技術課題(KTI、詳しくはこちら)を中心とした技術的問題、分析作業等の品質保証改善を中心とした「原子力文化」の確立、適切な資金確保の3項目についてOCRWMの取り組みが示されている。
また、計画の詳細を示したセクションでは、3つのプロジェクト(ユッカマウンテン、全米およびネバダ州内輸送、廃棄物受入れ)ごとに、2003年度の達成事項、2004年度実施中の作業および2005年度計画作業が示されている。この内ユッカマウンテン・プロジェクトでは、2004年度実施中の作業として、LSNおよびKTIへの対応、処分施設と廃棄物パッケージの設計最終化、国防分等の廃棄物の安全解析最終化およびトータルシステム性能評価(TSPA)の最終化が示されている。2005年度の計画としては、認可申請書の完成、認可申請書提出後の原子力規制委員会(NRC)要求への対応、建設に向けての処分場設計および受け入れ準備が示されている。
その他、輸送関係では、ネバダ州内での鉄道敷設に向けて地元との協議を継続することに加えて、2005年度には鉄道敷設の環境影響評価書案を発行すること、キャスクの調達に向けての作業を開始することなどが示されている。
なお、NRCのウェブサイトでは、2004年12月現在の状況として、KTIとして採り上げられた問題は全て、DOEが所定の資料を提出すれば終了となる状態に至ったことが示されている。
【出典】
- DOE/OCRWM, Annual Report to Congress / December 2004 (OCRWM年次報告書)〔pdfファイル:11MB〕※ファイルサイズが大きいのでご注意下さい
- NRCウェブサイト (www.nrc.gov/waste/hlw-disposal/reg-initiatives/list-status-kti.html)
- 米国における会計年度は前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっている。例えば、2003会計年度は、2002年10月から2003年9月までの1年間となる。 [↩]
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )