フランスの放射性廃棄物の長期管理の責任を有している放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2004年12月のニュースリリースにおいて、オート=マルヌ県とムーズ県にまたがるビュール地下研究所で進められている、高レベル放射性廃棄物および長寿命の中レベル放射性廃棄物を地層処分するための研究開発の状況を発表した。今回のニュースリリースで発表されたのは、ビュール地下研究所の地下445メートルにある粘土層に設けられた実験用ニッチにおいて実施されている研究に関するものである。この実験用ニッチは、以下の写真および図にあるように、アクセス立坑からT字型に掘削された坑道で、幅は約4メートル、総延長は40メートル以上と示されている。
ニュースリリースによると、実験用ニッチにおいて求められている科学的な成果および計画されている実験の目的は、以下の通りである。
実験用ニッチにおいて求められている科学的な成果
- 原位置での岩盤挙動の確認と掘削によって生じる岩盤への影響(掘削影響領域、EDZ)についての評価。掘削によって岩盤への影響および岩盤の水力学特性に変化が予想されている。実験用ニッチの外側およびニッチから行われる試験は、岩盤が受ける影響の特定および短期間において人工バリアでの物質の遅延挙動と地質についての知見を蓄積すること。
- 原位置における地球化学組成と閉じ込め特性についてのパラメータ値の確認。地上からのボーリング孔の掘削によって得られた岩盤サンプルについてのデータを補完するデータの取得をすること。
実験用ニッチにおいて計画されている実験の目的
- アクセス立坑の掘削に対する、粘土層の力学応答の調査
- 粘土層の透水性と間隙の測定
- 化学分析のための粘土層の間隙水の採取
なお、フランスでは、1991年の放射性廃棄物管理研究法(詳細は こちら)に基づいて、地下研究所の建設を中心とした可逆性のあるまたは可逆性の無い地層処分、長寿命放射性核種の分離・変換、放射性廃棄物のコンディショニングと長期の地上貯蔵という3つの分野についての研究を同時並行して進めている。また、これらの研究について、政府は2006年までには総括評価を行い、地層処分が最善とされた場合には、地層処分場の建設許可等に関する法案を議会に提出することになっている。
また、ビュール地下研究所は、1999年に建設が決定され、2000年より建設作業と並行して地下研究が実施されている。 2005年1月7日時点において、アクセス立坑は地下505.16メートルまで掘削されている(以前の掘削状況についてはこちらを参照)。
【出典】
- 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイト、http://www.andra.fr/popup.php3?id_article=566、2004年12月
- 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)のウェブサイト、http://www.andra.fr、2005年1月
- Loi No. 91-1381 du 30 decembre 1991 relative aux recherches sur la gestion des dechets radioactifs(放射性廃棄物管理研究に関する法律 (91-1381/1991.12.30))
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )