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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の処分システムへの代替処分パネルの追加をEPAが評価を実施

米国の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、環境保護庁(EPA)は2024年3月14日に、代替処分パネル(第11パネル及び第12パネル)の使用に係る計画的変更要求(PCR)をエネルギー省(DOE)から受領し、評価を開始することを公表した。WIPPについては、TRU廃棄物の処分がEPAが発行した連邦規則(CFR)の要件への適合性認定を5年毎にDOEが受けることが要求されているが、今回のPCRを受けて、代替処分パネルの増設後も継続して適合性が確保されるかが評価される。WIPPの第11及び第12パネルは、2023年11月3日に発効したニューメキシコ州環境省(NMED)による資源保全・回収法(RCRA)に基づく更新許可において建設が承認されており、DOEは2023年末から第11パネルの掘削を開始している

図1:WIPPの地下処分施設(青色部分が今回増設の代替処分パネル)

図1:WIPPの地下処分施設(青色部分が今回増設の代替処分パネル)

DOEは、EPAに提出したPCR書簡において、代替処分パネルは2014年2月に発生した放射線事象などの影響によってWIPPの処分エリアの一部が未使用のまま封鎖されたことに対応するものであり、1992年WIPP土地収用法で規定された処分容量1 の増加に繋がるものではないことを述べている。現在建設が進められている代替処分パネル(第11パネル及び第12パネル)は、従来の第1~第8パネルと同様の設計である。しかしながら、今後、代替処分パネルを処分のために使用することは、直近で決定された適合性再認定における処分システムの変更となるため、DOEはEPAの連邦規則(10 CFR Part 194.4(b)(3))の規定に従ってPCRを提出した。

EPAは2023年12月7日に、今回のPCRの提出に先立って、DOEと非公式のオンライン会議を開催している。本オンライン会議でEPAは、1992年WIPP土地収用法で規定する処分容量を超えない前提で、代替処分パネルの増設、処分エリア拡張の提案が、EPAの処分規則に適合するか、また、直近の適合性再認定から「重大な」変更と判断されるかが焦点になるとしている。仮に、EPAが重大な変更と判定した場合には元の適合性再認定の審査と同じ厳格な手続が必要とされるが、重大な変更ではないと判定された場合には非公式のコメント募集を含む行政審査手続により評価が行われることとなる。

1992年WIPP土地収用法での処分容量を満足するための代替処分パネル

図2:19パネルに拡張時のWIPP地下処分施設

図2:19パネルに拡張時のWIPP地下処分施設

EPAは、DOEが提出したPCRについて、その完全性と技術的妥当性の両面から評価する。この評価対象にはDOEが提出した代替処分パネル計画的変更要求(RPPCR)性能評価(PA)文書も含まれている。本RPPCR-PAでは、現在増設が決定している第11及び第12パネルの他、第13~19パネルまで拡張して2083年まで操業した場合の解析が含まれている。EPAは2021年に、DOEに対して、今後WIPPについて変更に係る許認可を求める際には、1992年WIPP土地収用法で規定された処分容量を満足するように、予見し得る閉鎖時の最終的な処分エリアの情報を提出するよう求めていた。この要求に対応するため、DOEはRPPCR-PAにおいて、計19のパネルでの処分時にもEPA規則への適合性に大きな影響はないとの結論を示している。ただし、DOEは第11及び第12パネルを超える代替処分パネル(第13~19パネル)の建設は未決定であり、今回のPCRの範囲は第11パネル及び第12パネルの使用に限定していることを明示している。DOEは、更なる代替処分パネルの追加を決定した時点で、改めて別個のPCRを提出する意向である。

【出典】

【2025年8月25日追記】

米国の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、環境保護庁(EPA)は2025年7月31日に、第11パネル及び第12パネルの代替処分パネル(RP)の使用に係るエネルギー省(DOE)からの計画的変更要求(PCR)を承認し、2025年8月19日付けの連邦官報で告示した。WIPPでは、ニューメキシコ州環境省(NMED)による代替処分パネルの建設承認を受けて、DOEが2023年末から第11パネルの掘削を開始しているが、代替処分パネルでのTRU廃棄物の処分がEPAの連邦規則(CFR)40 CFR Part 1942の要件に適合しているかについての確認が必要とされており、DOEは2024年3月14日に、計画的変更要求(PCR)をEPAに提出していた。WIPPについては、40 CFR Part 194により、TRU廃棄物の処分が規則の要件に適合していることの認定(適合性認定)を5年毎に受けることが必要とされている他、直近の適合性再認定申請(CRA)から重要な変更が生じる場合には、計画的変更を事前に報告することが必要とされている。

EPAは、PCR文書の一部である「代替処分パネル計画的変更要求-性能評価」(RPPCR-PA)文書などを評価して、WIPPが40 CFR Part 194の基準値に今後も適合することをDOEが立証したとして、DOEのPCRを承認した。当初DOEが提出したRPPCR-PAでは、現在増設が決定している第11及び第12パネルの他、第13~19パネルまで拡張して2083年まで操業した場合の解析が含まれていたが、EPAは、この全19パネルRPPCR-PAでは第11パネル及び第12パネル固有の情報が不十分であるとして、全12パネルでの性能評価を感度解析として提出するように2024年11月にDOEに要求した。DOEは、2019年の適合性再認定(CRA-2019)における性能評価文書(CRA-2019 PA)をベースとして12パネルでの感度解析を行った解析報告書を2025年2月に提出し、CRA-2019 PAから大きな変化はないと結論付けている。EPAは、いくつかの係数の変更など、さらに独自の感度解析を行った上で、12パネルへの増設時も40 CFR Part 194の基準値を大きく下回ることが確認されたとして、DOEのPCRを承認している。

なお、DOEが当初提出した全19パネルRPPCR-PAについてEPAは、40 CFR Part 194に適合するとのDOEの評価は妥当性があるとしつつも、今回の審査では19パネル処分場の妥当性についての決定を行わず、DOEの19パネル処分場のRPPCR-PAを承認するものではないとして、当該RPPCR-PAに対する評価は別途取りまとめる意向を示している。

代替処分パネルでの処分に係る今回のEPAの審査においては、2024年8月に、非公式(informal3)なパブリックミーティングが開催された他、コメントの募集も行われた。代替処分パネルの増設は直近の適合性再認定からの重大な変更であるとして規則策定と同じ厳格な審査手続を求めるコメントも多く提出されているが、EPAは、第11パネル及び第12パネルはあくまで代替であり、処分容量の増加ではないこと、ニューメキシコ州環境省(NMED)が厳格な手続で建設を承認していること、実質的に十分なコメント機会があったことなどを挙げて、非公式のコメント募集を含む行政審査手続が適切であったと判断したことを示している。なお、性能評価文書が全12パネルでの感度解析評価に変更されたことから、第13パネル以降の増設に関するコメントは、評価対象から外されている。

【出典】

  1. WIPPにおけるTRU廃棄物の処分容量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量(TMW総量)で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量(LWA総量)で計算されることとなった。 []
  2. 40 CFR Part 194「廃棄物隔離パイロットプラントの40 CFR 191廃棄物処分規則への適合性に関する認定及び再認定の基準(Criteria for the Certification and Re-Certification of the Waste Isolation Pilot Plant’s Compliance with the 40 CFR Part 191 Disposal Regulations)」 []
  3. 連邦官報での告示など規則策定時と同等の正式で厳格な手続きが取られていない。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2025-08-25 )