Learn from foreign experiences in HLW management

《スイス》NAGRAが放射性廃棄物管理プログラムを提出—2022年には処分場サイトを提案予定—

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2021年12月15日に、スイスの原子力施設から発生する放射性廃棄物の発生量予測、並びにそれらの処分に必要となる今後の取組を取りまとめた「放射性廃棄物管理プログラム2021」(以下「WMP21」という)を連邦エネルギー庁(BFE)に提出した。放射性廃棄物管理プログラムは、2005年施行の原子力法及び原子力令により、5年毎の更新が義務付けられている。

NAGRAは特別計画「地層処分場」に基づき、2008年から3段階のサイト選定プロセスを開始しており、2018年11月以降、3つの地質学的候補エリアがサイト選定プロセスの第3段階にある。今回公表されたWMP21においてNAGRAは、処分場サイトの提案を2022年に行い、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請を2024年に行うとするスケジュールを設定しており、前回の「放射性廃棄物管理プログラム2016」 で設定していたスケジュールを堅持している。

■スイスにおける放射性廃棄物の地層処分概念

スイスでは、原子力法に基づき、放射性廃棄物を「監視付き長期地層処分」と呼ばれる概念に基づく処分場で処分する方針であり、高レベル放射性廃棄物だけでなく、低中レベル放射性廃棄物も地層処分することになっている。処分場の地下には、それら2種類の放射性廃棄物の処分区画に加えて、少量の廃棄物を処分することにより、処分後に生じる変化や挙動をモニタリングし、予測モデルの正しさを確認したり、想定外の影響を早期に検出できるようにする目的で「パイロット施設」が設けられる(図1を参照)。

NAGRAは、これら2種類の地層処分場を別々に建設するセパレートパターンと、両方を1カ所に建設する複合処分場(コンバインドパターン)を検討している。複合処分場の場合、地上施設と地下施設を部分的に共用することになるため、建設段階のリスク、費用、人員、温室効果ガスの排出を低く抑えられる利点がある。

図1_WMP21における処分場概念(複合処分場)

図1_WMP21における処分場概念(複合処分場)(WMP21を基に原環センターにて作図)

放射性廃棄物の処分区画は、深さ400~900mに分布するオパリナス粘土と呼ばれる堆積岩に設置される。高レベル放射性廃棄物用処分区画に処分する廃棄物は廃棄体の体積で約9,300m3、低中レベル放射性廃棄物用処分区画に処分する廃棄物は約73,300m3と推定されている。NAGRAは、サイト選定プロセス第3段階で検討している3つの地質学的候補エリアのいずれも複合処分場の建設に十分なスペースがあり、セパレートパターンと同等の安全性を確保できるとの見解を示している。

■地層処分事業のスケジュール

上述したように、NAGRAは2024年に地層処分プロジェクトに関する概要承認の申請を行う予定であり、連邦評議会(わが国の内閣に相当)による概要承認の発給は2031年になると想定している(図2の赤色バー)。概要承認の発給を受けた後、NAGRAは、処分場サイトと母岩に関する詳細な調査(わが国の精密調査に相当)を行うための地下特性調査施設を2035年に建設する計画である。

図2_スイスにおける地層処分スケジュール

図2_スイスにおける地層処分スケジュール(複合処分場を導入する場合)

放射性廃棄物を処分する処分区画の建設と操業には、別途、原子力法に基づく許可が必要である。WMP21で設定されている処分スケジュールでは、低中レベル放射性廃棄物の処分区画の建設許可申請は2040年に、高レベル放射性廃棄物の処分区画については2050年に行う予定である。実際に高レベル放射性廃棄物の定置が行われる期間は2060年から2075年までの15年間となる見込みである。

NAGRAは、低中レベル放射性廃棄物の処分区画での操業が終了する2065年から60年間をモニタリング段階として設定している。2種類の処分区画を含む主処分施設の閉鎖作業は2085年から開始するが、その後も地下のパイロット施設を利用したモニタリングは継続できるように計画している。地層処分場全体の閉鎖は2125年頃になる想定である。

■処分費用見積り

NAGRAはWMP21において、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアが2021年10月に取りまとめた原子力発電所の放射性廃棄物の処分費用見積りを示している。この処分費用見積りは、今後5年間、原子力発電事業者が放射性廃棄物管理基金へ拠出する金額の算定の根拠となる。処分場を建設・操業する場合における廃棄物処分費用は、以下の表のとおりである。

表:WMP21において示された放射性廃棄物の処分費用見積り
項目 費用(1スイスフラン=122円で換算)
セパレートパターン

低中レベル放射性廃棄物処分場

4,692百万スイスフラン
(約5,724億円)

高レベル放射性廃棄物処分場

7,659百万スイスフラン
(約9,344億円)

①と②の合計

12,350百万スイスフラン
(約1兆5,067億円)

コンバインドパターン

複合処分場

1,0715百万スイスフラン
(約1兆3,072億円)

【出典】

 

【2023年5月29日追記】

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は2023年5月23日に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が2021年12月にBFEへ提出した「放射性廃棄物管理プログラム2021」(以下「WMP21」という)に対する、BFE、連邦原子力安全検査局(ENSI)、原子力安全委員会(KNS) 1 の連邦評議会 2 宛ての見解書を公表した。BFEとENSIは、WMP21が原子力法令で規定された要件を満たしているとの見解を示しており、KNSはENSIの審査が適切であるとの見解を示している。

■NAGRAの処分場サイト提案を踏まえた、BFE、ENSI、KNSの勧告内容

連邦エネルギー庁(BFE)は、WMP21において、NAGRAが処分場サイトの選定プロセスを正確かつ透明性をもって提示したとの見解を示しており、実際にNAGRAはWMP21の提出から10か月後の2022年9月には北部レゲレンを地層処分場サイトとして提案し、キャニスタ封入施設をヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に増設して運用する計画を示した

一方、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、NAGRAの地層処分場サイト提案も考慮して、2026年にNAGRAが取りまとめる次回の放射性廃棄物管理プログラム及び研究開発計画について、以下の事項を要求するよう連邦評議会に勧告している。

  • 地層処分場プロジェクトの遅延を可能な限り回避するため、どのような方策を検討しているのかをより詳細に示すこと
  • 処分場サイトの提案時に提示した処分概念に合わせて、処分キャニスタの概念を提示し、処分キャニスタの数量を明確にすること
  • キャニスタ封入施設から地層処分場までの輸送概念を示すこと
  • 地下に設けるパイロット施設で得た知見を主処分施設でどのように適用するのかについて、詳細を検討すること
  • 地下特性調査施設での作業と建設許可申請・操業許可申請を並行して進める作業について、具体的な情報を示すこと
  • ガラス固化体や使用済燃料の中間貯蔵施設に関して、貯蔵量の増加にどう対応するかについて、さらに情報を示すこと
  • 2016年のRD&D計画で挙げた各分野の研究プロジェクトについて、失敗・中断したものを含め、進捗状況を示すこと

また、原子力安全委員会(KNS)は、低中レベル放射性廃棄物には様々な種類が存在することから、低中レベル放射性廃棄物処分区画のパイロット施設での処分後モニタリングに用いる代表性のある廃棄物の選定方法を明らかにする課題に対して、NAGRAが早急に取り組む必要性を指摘している。

これらの審査結果を踏まえ、今後、連邦評議会は2023年末までにWMP21を承認し、必要に応じて、次回の放射性廃棄物管理プログラム2026に向けた要求事項を設定することになる。なお、WMP21に対する連邦評議会の措置については、連邦議会に報告されることとなる。

 

【出典】


  1. KNSは、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。[]
  2. 日本の内閣に相当[]

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )