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《フランス》国家討論委員会(CNDP)が地層処分場プロジェクトに関する情報提供・公衆参加を監督する保証人を任命

フランスの国家討論委員会(CNDP)は2017年11月8日のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の要請を受けて、地層処分場プロジェクトに関する情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を任命したことを公表した。本保証人は、毎年、ANDRAの取組状況を評価し、地層処分場の設置許可発給に先立って実施される公開ヒアリングに向けて、最終報告書を提出する役割を担う。

■地層処分場の設置許可発給前に開催される公開ヒアリング

フランスでは地層処分事業への市民の意見の反映のため、設置許可申請前の公開討論会と、設置許可発給前の公開ヒアリングの実施が義務付けられている。このうち、公開討論会(débat public)については、ANDRAが国家討論委員会(CNDP)1 に付託して、2013年5月から12月にかけて既に開催されている。ANDRAは公開討論会の結果を踏まえ、2014年5月にプロジェクトの継続に関する方針を示している

ANDRAは今後、2019年に地層処分場の設置許可申請を行う予定であり、環境法典に基づく公開ヒアリング(enquête publique)への対応準備を進めている。公開ヒアリングは、環境に影響を与える可能性のある決定を行う際に公衆への情報提供及び参加を確保し、第三者の利益を考慮することを目的としている。公開ヒアリングは、県地方長官(県における国の出先機関)が主導して行われることになっており、地層処分場の境界から5kmの範囲に含まれるコミューン(我が国の市町村に相当)が対象となる。このプロセスによって、県議会及びコミューン議会の意見が県地方長官に提出されるため、公開ヒアリングは地方自治体の意見が地層処分事業に反映される機会と位置付けられる。

なお、ANDRAは、地層処分場プロジェクトに関する情報提供や地元との協議活動を継続しており、2014年から2016年までに行ったウェブサイトやセミナーを通じた情報提供、一般公衆向けの情報提供を行う場所・内容等に関する地元関係者からの意見聴取などを紹介した中間報告書を2017年11月6日に取りまとめている。

■国家討論委員会(CNDP)による保証人(garants)の任命

環境法典では、公開討論会から公開ヒアリングまでの間に、事業実施主体が行う情報提供や協議の取組を監督する保証人(garants)を国家討論委員会(CNDP)が任命できることが定められている。ANDRAは、地層処分場の設置は、国の原子力政策や放射性廃棄物管理政策に関わる重要なテーマであるとして、公開討論会の制度的枠組みを考慮して進めるべきであるとの考えから、2017年10月25日に、公開ヒアリングまでにANDRAが行う情報提供や公衆参加の取組を監督する保証人(garants)を任命するようCNDPに要請していた。

今回CNDPにより任命された保証人(garants)は、パリ市の事務局長を務めたピエール・ギノ=ドゥレリ氏、及びフランス北部のノール県のヴィルヌーヴ・ダスク市の首長を務めたジャン=ミシェル・スティヴナール氏である。CNDPは、地層処分場プロジェクトに関する適切な情報提供と公衆参加の複雑さを考慮して保証人(garants)を2名とするとともに、公開ヒアリングに提出される最終報告書の取りまとめに先立って、毎年の状況を中間報告書として作成することを決定した。

 

【出典】

 

【2020年8月4日追記】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2020年7月31日に、2017年11月から2020年5月までに実施した地層処分場プロジェクトに関する情報提供及び公衆参加の取組に関して、国家討論委員会(CNDP)に任命された2名の保証人(garants)が取りまとめた中間報告書を公表した。CNDPが任命した保証人は、毎年、ANDRAの取組状況を評価し、地層処分場の設置許可発給に先立って実施される公開ヒアリングに向けて、最終報告書を提出する役割を担っている。

今回の中間報告書は、①2020年に予定されている地層処分場に関する公益宣言(DUP)2 の申請に向け、ANDRAが行っている情報提供や公衆との協議の取組を評価した部分と、②2021年に予定されている地層処分場の設置許可申請に向けて、今後ANDRAが行うべき取組に関する勧告を示した部分で構成されている。

■公益宣言(DUP)申請に向けた取組の評価

CNDPが任命した保証人は、ANDRAが、これまで行ってきた情報提供や協議を通じて公衆から寄せられた指摘や提案を公益宣言(DUP)の申請書案に盛り込んでいることを評価している。DUP申請書案に反映された地域のニーズの例には以下のものがある。

  • 地層処分場から生じる排水(雨水、地下水、地上及び地下施設からの排水等)対策について、サイトから離れた河川に移送するのではなく、必要な溢水対策の検討を行ったうえで、地域の水路に放流するように改めたこと。
  • 地層処分場を構成する施設や周辺の鉄道等のインフラをつなぐため、既存の道路のルートを変えずに再整備していること。
  • 地層処分場で消費するエネルギーを賄うため、バイオマスボイラーやメタンガスボイラ―の設置、外部の熱供給ネットワークとの接続等、複数の供給源を確保することを基本方針としていること。

■設置許可申請に向けた取組への勧告

CNDPが任命した保証人は、中間報告書において、ANDRAが2021年初めに地層処分場の設置許可申請を提出し、審査フェーズが開始される予定であることから、この期間における情報提供活動や公衆参加の取組に関して、ANDRAに対し以下の事項を勧告している。

  • 2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関して、2019年4月17日~9月25日に開催された公開討論会において、長期的な原子力政策と整合した地層処分事業推進、安全性、可逆性の担保等のテーマに関する疑問が提起された。ANDRAは、これら公衆の関心事に答えられるように、今後の情報提供活動を練り直すべきである。
  • PNGMDRに関する公開討論会を通じて、公衆がいまだに地層処分の基本方針に完全に納得しているわけではないことが明らかになったことから、ANDRAは、地層処分場プロジェクトについて公衆が理解を深めることを助ける基本的な情報を改めて整備するべきである。
  • 設置許可申請の提出後、許認可が発給されるまでには数年かかり、関係するステークホルダーも多岐にわたる複雑なプロセスが続くことになる。公衆が途中で疲弊せず、審査の進捗状況をフォローできるような情報提供アプローチを検討すべきである。

 

【出典】

  1. 国家討論委員会(CNDP)は、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行うにあたり、事業実施主体の付託を受けて公開討論会を開催する独立した行政委員会である。 []
  2. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-10 )