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フランス政府が地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針を公表

フランスのエネルギー政策を所管する環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2018年3月7日に、地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針を公表した。今回の透明性強化の方針は、同日開催された、ルコルニュ環境連帯移行大臣付副大臣が座長を務める地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)1 において、「一般公衆との協議の実施」及び「地域経済開発計画と財源確保」についての措置を決定したものである。

一般公衆との協議の実施

  • 透明性を確保した全国規模での対話を行うため、政府は近日中に、2019~2021年を対象とする「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会2 の実施を国家討論委員会(CNDP)に付託する。公開討論会は2018年末に実施される予定であり、地層処分プロジェクトに限らず、放射性廃棄物に関する広範な問題を討論テーマとする。
  • 意思決定の根拠となる情報を一般公衆に開かれたものとするため、政府は以下の措置を講じる。
    • 政府、原子力安全機関(ASN)、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)の主導で、地層処分計画に関するオンラインの情報センターを設置する。情報センターには、プロジェクトを推進する研究だけでなく、計画に対する反対意見も集められる。また、一般公衆は質問等を投稿できる。
    • 地層処分プロジェクトの実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、許認可申請に先立ち、政府による公益宣言(DUP)3 を申請する必要がある。ANDRAが政府に対してDUPの申請書を提出するまでの間、ユロ環境連帯移行大臣及びルコルニュ環境連帯移行大臣付副大臣は、3カ月に1度のペースで「専門家と市民社会」の対話フォーラムを開催する。同フォーラムには、議会科学技術選択評価局(OPECST)の議員、労働組合、NGO、有識者が参加する。なお、地層処分プロジェクトに関するDUPの申請は2018年中に予定されている。
    • 政府及び原子力安全機関(ASN)の指示の下、ビチューメン(アスファルト)固化体4に関する国際専門委員会を2018年中に設置する。なお、地層処分プロジェクトに関連するその他の科学的議論を行うため、別に同様な委員会を設置する可能性がある。
    • 国家討論委員会(CNDP)は、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の要請を受け、地層処分場プロジェクトに関する情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を既に任命している
  • 地層処分プロジェクトを地域に根付かせるために、政府は、地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)の開催頻度を年2回に増やす。1回はパリの環境連帯移行省で、1回はムーズ県またはオート=マルヌ県の県庁で交互に開催する。また、2018年夏までに、フィンランド、ドイツ等の国外における放射性廃棄物の処分に関する調査ミッションを実施し、その結果を公開する。同ミッションには、ルコルニュ環境連帯移行大臣付副大臣、国会議員、地方議員及び専門家が参加する。

地域経済開発計画と財源確保

地層処分場の立地に必要なインフラ整備プロジェクトや経済支援に関する地方自治体と政府との間の協定について、2018年末までに内容を最終化する。この協定では、地域の経済発展を特に優先しながら、プロジェクトの優先順位付け行い、現実的な資金調達計画を策定することを目指す。

なお、政府は2019年度予算法の審議に向けて、地層処分場プロジェクトに関して徴収される税金の立地地域での分配について検討する作業部会を設置する。また、道路インフラの刷新に関する作業グループも設置する方針である。

 

【出典】

【2019年3月12日追記】

フランスのエネルギー政策を所管する環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2019年3月6日に、地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)を開催した。今回の会合では、2019~2021年のムーズ県及びオート=マルヌ県の地域経済開発に係る資金援助に関する地域開発協定(CDT)の内容が承認された。この地域開発協定は、ANDRAが行う地層処分場の立地に必要なインフラ整備プロジェクト、公共事業共同体(GIP)を通じた経済開発等の複数の枠組みで行われる支援活動が協調的なものなるように、地方自治体と政府との間の協定として検討が進められていたものである。この協定は、地域開発の方向性として、以下の4分野を取り扱っている。

  • 地層処分場の建設と操業に必要なインフラ整備の実施
  • 地層処分場近傍地域における社会・経済的ポテンシャルの強化
  • 整備措置を適切に組み合わせることによるムーズ県及びオート=マルヌ県の地域の魅力の向上
  • これら2県が備える経済・環境の魅力を維持する取り組み

なお、地域開発協定(CDT)は、従来から活動を続けている公益事業共同体(GIP)の枠組みとは別に締結されるものであり、今回のCHN会合で環境連帯移行省は、公益事業共同体(GIP)に対する資金援助を、2020年から2022年まで継続することも決定した。

 

【出典】

【2019年3月29日追記】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2019年3月22日付のプレスで、2019年3月6日に開催された地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)において、地層処分場の設置許可申請までの手続きに係る情報提供を行ったことを明らかにした。ANDRAが示した地層処分場の設置許可申請までの手続きは以下の通りである。

  • 国の常設機関である国家討論委員会(CNDP)が、フランスのエネルギー政策を所管する環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)の付託を受け、2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会を、2019年4月15日から2019年9月25日にかけて開催する。
  • 公開討論会の開催後に、ANDRAは、地層処分場に関する予備工事の許可を取得するのに先がけて、公益宣言(DUP)の申請を行い、事業計画に実効性を持たせるために必要となる「事業の公益性」に関する国の認定を受ける。
  • 公益宣言(DUP)の申請後、ANDRAは、地層処分場の設置許可申請を行う。

 

【出典】

 

【2019年10月7日追記】

フランスのエネルギー政策を所管する環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2019年10月4日に、地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)を開催した。今回の会合では、環境連帯移行省のヴァルゴン副大臣が、ムーズ県及びオート=マルヌ県の地域開発計画(PDT:Projet de Développement du Territoire)に署名した。この地域開発計画は、2019年3月のCHN会合で承認された地域開発協定(CDT:Contrat de Développement Territorial)に基づくものであり、副大臣が署名を行う段階で名称が変更された。なお、地域開発計画(PDT)は、従来から活動を続けている公益事業共同体(GIP)の枠組みとは別に締結されるものである。

地域開発計画(PDT)では、地層処分場が立地する2県における地域開発の方向性として、以下の分野1から分野4の4つの分野を取り扱うこととしている。

  1. 地層処分場の建設と操業に必要なインフラ整備の実施
  2. 地層処分場近傍地域における社会・経済的ポテンシャルの強化
  3. 整備措置を適切に組み合わせることによるムーズ県及びオート=マルヌ県の地域の魅力の向上
  4. これら2県が備える経済・環境の魅力を維持する取り組み

環境連帯移行省のプレスによれば、分野1及び分野2に関しては、38のアクションが開始される予定であり、その一部は地層処分プロジェクトの公益宣言(DUP)前に開始される。一方、分野3及び分野4に関しては、26のアクションが予定されているが、これらについては、地層処分場設置のスケジュールも勘案して、内容の詳細化を行いつつ、中長期的に実施していくとしている。なお、今回の環境連帯移行省のプレスでは、地域開発計画(PDT)の経済的な規模や各アクションの内容については触れられていない。

今回の高レベル委員会(CHN)会合では、地層処分プロジェクトへの将来的な課税方法について、ムーズ県地方長官(県における国の代表)の主導により、公衆協議を2019年末まで実施する方針も示された。政府はこの協議の結果を踏まえて、2021年度の予算法案の提出に際して、地層処分プロジェクトに関する課税措置を議会に提案する方針である。

【出典】

  1. 政府の代表、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)、廃棄物発生者であるフランス電力株式会社(EDF)、Orano社(旧AREVA社)、原子力・代替エネルギー庁(CEA)、地元議員が参加し、地層処分場の立地が予定されているムーズ県及びオート・マルヌ県の地域経済開発プロジェクトについて協議する委員会である。 []
  2. フランスでは、環境法典に基づき、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行う際には、公開討論会の開催が義務付けられている。2013年には、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の地層処分場の設置許可申請に先立って、国民からの意見収集を行うための公開討論会が開催されている []
  3. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []
  4. 原子力安全機関(ASN)は2018年1月に公表した地層処分場の安全オプション意見請求書に関する見解書において、ビチューメン固化体の特性を廃棄物発生者が速やかに明確化したうえで、処分坑道における火災を想定した対策に関する研究を実施するよう放射性廃棄物管理機関(ANDRA)に要請している []

(post by eto.jiro , last modified: 2020-07-28 )