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《英国》地層処分施設(GDF)に関する国家政策声明書(NPS)案についての公衆協議が開始

英国政府は2018年1月25日に、イングランド1 における地層処分施設(GDF)等に関する国家政策声明書(National Policy Statement, NPS)案及びその公衆協議文書を公開し、同日より2018年4月19日まで意見募集を行うことを公表した。英国政府は、現在、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に沿って、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めており、国家政策声明書(NPS)の策定をその主要目標の一つと位置づけている。

英国政府は、2014年白書において、2008年計画法を改正し、地層処分施設及びその候補サイトを評価するために必要な地上からのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)として定義する意向を表明していた。この法改正は2015年3月に完了しており、地上からのボーリング調査の実施前、及び地層処分施設(GDF)の建設前において、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要となっている。国家政策声明書(NPS)は、それらの開発同意令(DCO)の発給審査の基礎文書となるものであり、今後実施されるサイト選定プロセスにおいて、地域における地層処分事業基盤(インフラ)に関する開発合意の認可に関する法的な枠組みを提供するものとなる。

英国政府は、国家政策声明書(NPS)の策定に向けた準備として、2015年8月に、地層処分事業に関する持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の実施内容案を公表して、意見募集を行っていた。今回公表された国家政策声明書(NPS)案には、2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて実施された持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の評価結果が含まれている。

今後の予定

2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて、国家政策声明書(NPS)案は英国議会による審議・承認を受けることになっている。今回の地層処分施設等に関するNPS案は、2018年1月25日から約30週間にわたって、英国議会で審議(2018年8月下旬まで)される予定とされている。また、今回の2018年4月19日を期限とする意見募集で寄せられた意見に対する英国政府の回答文書も英国議会に提出されることになっている。

 

【出典】

 

【2018年5月11日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2018年4月27日に、地層処分施設(GDF)に関する国家政策声明書(NPS)案への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、英国政府がNPS案及びその公衆協議文書で意見を求めた点に対して、概ね肯定的な意見を示す一方で、次のような意見を述べている。

  • CoRWMは、これまでに科学的な観点から、高レベル放射性廃棄物等の管理方針として、地層処分以外の合理的な代替案は存在しないという判断をしている。しかし、高レベル放射性廃棄物等の管理方針については、現状では少なくとも、①スコットランドが採用している地表近くに設置した施設での長期管理と、②最終処分するのではなく廃棄物の回収可能性を考慮した地層処分との「2つの管理方針」についての検討が他所で行われているため、国家政策声明書(NPS)においても、これら2つの管理方針の代替案についても評価対象とする必要がある。
  • CoRWMは、持続可能性評価(AoS)において、これら2つの管理方針の代替案について、実施した場合に生じる可能性のある重大な影響の評価結果を示すこと、また、NPSが正式に承認された後のプロセスにおいて、2つの管理方針の代替案と比較した結果として、地層処分施設(GDF)への最終処分を選択する理由が文書の形で示されることが正当なやり方であると考える。CoRWMは、GDFへの最終処分を選択する理由を明確に示す文書の存在は、今後の地域開発計画方針や開発同意の形成プロセスを進めていく上でも役立つと考える。

【出典】

 

【2018年8月7日追記】

英国議会下院のエネルギー・産業戦略委員会は、2018年7月31日に、地層処分施設(GDF)及び評価のためのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)にするための基礎となる国家政策声明書(NPS)案について、審議を行った結果をまとめた報告書を公表した。本委員会は、2008年計画法に基づいて、NPS案に関する審議を付託され、NPS案の内容と範囲とを中心に2018年5月から審議を行っていた。

同報告書において本委員会は、英国政府が今後策定する国家政策声明書(NPS)の最終化に向けて、以下のような意見・勧告を示している。

  • 国立公園及び特別自然美観地域(AMOB)が備える社会経済的な利益を保持しつつ、保護区域にある地上の施設への侵入を防止するように地層処分施設(GDF)を設計することは可能である、という英国政府の見解を支持する。国家政策声明書(NPS)において、そうした保護区域を除外区域として予め設定しなくても、既存の法律やNPSの枠内において、十分な環境保護措置が取られることになると認識している。
  • 新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等を含め、地層処分する放射性廃棄物のインベントリ予測について、どの程度不確かなものであるかを明示すべきである。
  • 将来のGDFの建設に先だって実施主体が提出する開発同意令(DCO)のための申請は、潜在的な立地コミュニティ内で実施される立地プロセスの継続に関する支持の調査・確認(test)までは行わないことについて、一般の人が理解しやすいように明示すべきである。
  • 地層処分施設(GDF)設置によって見込まれる地元の経済効果・人材雇用・スキル向上等の社会経済的な便益について具体的な内容を明示すべきである。

なお、本委員会は、2008年の英国政府白書に基づいて実施された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスの教訓が国家政策声明書(NPS)案に十分反映されており、NPS案で示されたコミュニティが自発的にサイト選定プロセスに参加する方法を支持するとしている。

 

【出典】

  1. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-10 )