諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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米国 米国における高レベル放射性廃棄物処分

米国における高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


4. 処分地選定の進め方と地域振興

4.1 処分地の選定手続き・経緯

  • 1982年放射性廃棄物政策法では、処分候補地として3地点を選定してサイト特性調査を実施することが規定されていましたが、1987年放射性廃棄物政策修正法が成立し、ユッカマウンテンが唯一のサイト特性調査を実施する処分候補地となりました。その後、1999年に環境影響評価書案(DEIS)が公表され、2002年2月にはエネルギー長官が大統領に最終処分場サイトとしてユッカマウンテンを推薦し、翌日には大統領が連邦議会に推薦を通知しました。2002年4 月にはネバダ州知事が不承認を連邦議会に通知しましたが、これを覆す立地承認決議案が7月に可決され、大統領の署名を得て法律となり、ユッカマウンテンが最終処分場サイトとして決定されました。

処分場サイト選定の状況と枠組み

米国における処分事業の流れ
米国における処分事業の流れ

1957年に全米科学アカデミー(NAS)より地層処分が妥当であるとの検討結果が示されており、1980年に公表された「商業活動から発生した放射性廃棄物管理に係る最終環境影響評価書(FEIS)」と、これに伴い開催された公聴会を経て、エネルギー省(DOE)は処分の基本方針を決定しました。

1982年放射性廃棄物政策法により、実施主体としてDOEの民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)が設置され、米国の処分政策の枠組みが定められました。

DOEは、1983年に9カ所の候補サイトを選定し(ユタ州ラベンダーキャニオン、ユタ州デービスキャニオン、ミシシッピー州サイプレスクリークドーム、ネバダ州ユッカマウンテン、ミシシッピー州リッチトンドーム、テキサス州デフスミス、テキサス州スウィッシャー、ルイジアナ州バチェリードーム、ワシントン州ハンフォード)、翌1984年にはこれらの候補サイトについての「環境アセスメント案(DEA)」が公表され、公聴会が開催されています。1986年に、DOEはサイト特性調査の実施に適したサイトとして5カ所(デービスキャニオン、ユッカマウンテン、リッチトンドーム、デフスミス、ハンフォード)を指定し、このうち3カ所(ユッカマウンテン、デフスミス、ハンフォード)をエネルギー長官が大統領に推薦し、大統領の了承を得ました。

しかし、1987年には、放射性廃棄物政策修正法が成立し、サイト特性調査を行う処分候補地としてユッカマウンテン1カ所が指定されました。その後、スケジュールが大幅に遅れて予算も削減される中で、DOEはプログラムの見直しを行い、ユッカマウンテンがサイトとして実現可能であることを示す「実現可能性評価(VA)報告書」を1998年に公表しています。その翌年の1999年には、ユッカマウンテン処分場開発の「環境影響評価書案(DEIS)」が公表され、そのための公聴会も開催されました。

2001年に、大統領へのサイト推薦に必要な情報を含んだ「ユッカマウンテン科学・工学報告書」、「予備的サイト適合性評価報告書」が公表され、DOEはパブリックコメント期間中にサイト周辺地域を中心とした約20カ所でサイト推薦に関する公聴会を開催しています。一方で、サイト推薦のためのDOEによる規則「サイト適合性指針(10 CFR Parts 960及び963)」は、2001年11月に策定されました。

(2002年)
サイト推薦から決定までの動き
サイト推薦から決定までの動き

最終的なサイト推薦・決定は、下の図のような流れで行われ、大統領の推薦に対するネバダ州の不承認通知が行われましたが、立地承認決議案が連邦議会で可決され、大統領の署名を得て、ユッカマウンテン・サイトの法的決定手続は終了しました。エネルギー長官によるネバダ州知事へのサイト推薦決定の通知に始まるこれら一連の手続は、全て1982年放射性廃棄物政策法に定められているものです。

なお、ネバダ州等からはこのユッカマウンテンのサイト指定が憲法違反であるなどの訴えが起こされていましたが、連邦控訴裁判所は2004年7月にこれを退けています。ただし、DOEが当初2004年末までに行うとしていたNRCへの許認可申請書提出のスケジュールは、許認可関連書類の登録の遅れ、2004年7月の連邦控訴裁判所による環境放射線防護基準の一部無効判決、予算制約などの要因から遅れが生じました。2005年10月には、輸送・貯蔵・処分(TAD)キャニスタの採用により処分場の地上施設を簡素化する設計変更の方針が示され、2006年7月にはNRCへの申請書提出を2008年6月、処分場操業開始を2017年とするスケジュールが示されました。その後、申請書の提出は予定通り行われたものの、予算削減の影響による遅れを反映して処分場操業開始を2020年3月とするスケジュールが2009年1月に示されています。

また、2004年4月に告示された鉄道敷設等の環境影響評価に加え、処分場施設の設計変更等に伴う補足環境影響評価が実施されており、2008年6月には最終補足環境影響評価書が公表されています。


ブルーリボン委員会が勧告した処分地選定の進め方

ブルーリボン委員会が2012年1月26日に公開した最終報告書においては、米国及び海外における数十年におよぶ放射性廃棄物施設の立地を考察し、今後、放射性廃棄物管理・処分施設の立地及び開発への新たなアプローチを採用する必要があるとの結論が示されています。

今後の放射性廃棄物管理・処分施設の立地プロセスは、それらが以下の条件を満たす場合に成功の可能性が最も高くなるとの考えが示されています。

  1. 同意に基づいている。:影響を受ける自治体が、施設の立地決定を受入れるかどうかについて決定する機会を得て、地元の大きな主導権を維持できる。
  2. 透明性がある。:すべてのステークホルダーが重要な決定を理解し、そのプロセスに意義深い方法で関わる機会を得る。
  3. 段階的である。:重要な決定が前もって確定されるのではなく、その過程で再考され、必要に応じて修正される。
  4. 適応性がある。:プロセスそのものに柔軟性があり、新たな情報や新たな技術的、社会的、政治的展開に反応する決定を生み出す。
  5. 基準及び科学に基づいている。:すべての施設が、安全及び環境の保護に関する厳格かつ客観的で、一貫性をもって適用される基準を満たしているという確信を公衆が持てる。
  6. 実施主体と受入れ先の州、地方自治体等との間のパートナーシップ契約または法的に強制力のある協定によって規律される。


4.2 地域振興方策

  • 立地地域への財政支援として、1982年放射性廃棄物政策法においては、立地を受け入れたネバダ州と関係10郡に対し、使用目的の制限がない補助金交付や、国が行う処分場開発投資に対する課税相当額を補填する制度が創設されていました。

制度的な支援

1982年放射性廃棄物政策法では、第116条(c)と第170条において地元に対する財政措置が規定されています。

<1982年放射性廃棄物政策法第116条(c)に基づく特別の財政措置>

1982年放射性廃棄物政策法の第116条(c)に基づく特別の財政措置には、補助金の交付課税相当額(PETT)の補填という2種類があります。課税相当額とは、処分場開発活動は連邦政府が行うものであり、売上税・使用税の課税対象とはならないため、仮に課税が認められるとした場合の税収相当額を放射性廃棄物基金から補填するという制度です。

これらの特別財政措置の資金額は、連邦議会が毎会計年度に成立させるエネルギー・水資源開発歳出法の中で定められ、その財源は一般財源ではなく、1982年放射性廃棄物政策法に基づく放射性廃棄物基金(NWF)から支出されます。

補助金については、DOEは、地元のネバダ州と郡に対し、同州と郡が以下の事項を実施できるように補助金を交付することができるようになっています。

  • 施設立地の潜在的な社会的影響の評価
  • 公衆の健康・安全・環境への影響の評価
  • サイト特性調査活動の監視、試験及び評価(クロス・チェック)
  • 地元住民への情報提供活動(広報プログラムの実施、公聴会・説明会の開催費用を含む)


<1982年放射性廃棄物政策法の第170条の恩典契約に基づく特別の財政措置>

ユッカマウンテン・サイトへの処分場立地をネバダ州が受け入れた場合、同州には、その見返りとして特別の資金的な恩典を受けるための恩典契約をDOEとの間で締結する権限が与えられています。この恩典契約の目的は、処分場立地によって同州が、経済的、社会的(健康や教育を含む)、及び財政的にさまざまな影響を受けることに対し、見返りとしての補償を行うことにあります。

1982年放射性廃棄物政策法に規定された支払い金額は、以下の通りです。なお、これらの金額は、放射性廃棄物基金(NWF)より支払われます。

  • 恩典契約の締結から使用済燃料の最初の受け取りまで
    …………… 年額1,000万ドル(7.9億円)
  • 使用済燃料の最初の受け取り時点
    ………… 一時金2,000万ドル(15.8億万円)
  • 使用済燃料の最初の受け取りから処分場の閉鎖まで
    …………… 年額2,000万ドル(15.8億円)

また、恩典として地元州に交付される資金の3分の1以上は関係する郡に分配されることになっており、郡の間での資金の分配方法は、恩典契約で定めることになっています。なお、1982年放射性廃棄物政策法の規定により、州及び関係郡に交付されるこれらの資金の使途については、制限を設けないことになっています。





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