諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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フランス

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6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション

6.1 地層処分の安全確保の取り組み

  • 1991年の放射性廃棄物管理研究法のもと、ビュール地下研究所では、地下研究所のサイト選定時の予備的な調査結果なども用いて地層処分場の安全性の検証と処分場の工学的設計が反復的に行われており、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)によって研究成果全体を考慮した安全評価が行われています。

安全性の確認と知見の蓄積

処分場の安全性の研究については、地下研究所の建設開始前の1999年に初期設計オプションを確認するための演習が実施された後、ANDRA内で2005年末までに3度の安全評価がなされました。2005年には、総合的な安全性についての3回目の評価が行われ、ANDRAから報告書が提出されました。

同報告書などを踏まえ、国家評価委員会(CNE)は粘土層における地層処分を廃棄物管理の基本方針とすることができるとの評価を示しました。さらに当時の原子力安全当局も、ANDRAの2005年の報告書に対する放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)等による評価に基づき、処分の実現可能性及び安全性は確立されているとの意見を示しました。また、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のレビューチームも、ANDRAの報告書に対して、地下研究所のある粘土層における処分場の設置が実現可能であり、操業中及び閉鎖後の安全性を損なうこと無く可逆性を保持できるものと評価しています。


ANDRA による安全評価の反復プロセス
(研究省 研究戦略及び計画2001 年より作成)


6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション

  • フランスでは、放射性廃棄物処分場などの原子力基本施設(INB)の設置に当たっては、公開討論会や公衆意見聴取を行うことが制度化されています。
  • また、地下研究所の所在サイトに地域情報フォローアップ委員会(CLIS)を設置することが、1991年の放射性廃棄物管理研究法で規定されています。CLISは実施主体と地元住民との間の情報の仲介と、地下研究所の建設、操業の監視を行う目的で設置される組織です。同委員会の設置は2006年の放射性廃棄物等管理計画法でも引き継がれ、構成メンバーの拡大などが盛り込まれ、2007年5月に新たなCLISが設置されています。

地域情報フォローアップ委員会(CLIS)

[3] 地域情報フォローアップ委員会の構成
ビュール地下研究所は、ムーズ、オートマルヌ両県にまたがって設置されており、地域情報フォローアップ委員会(CLIS du Laboratoire Bure)には現在、以下の構成員が参加しています。

  • 上院と下院の地元代表議員
  • 両県に関係する地域圏地方長官、県地方長官
    (国の出先機関の長)
  • 両県の県議会議員、地域圏議会議員
  • 農業その他の職能団体の代表
  • 医療専門団体の代表
  • 特定個人(立地と直接の関係がある住民3名)
  • 関連自治体の長
  • 環境保護団体のメンバー

アドバイザとして、

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)の代表
  • 原子力安全機関(ASN)の代表

も参加しています。

1991年の放射性廃棄物管理研究法では、放射性廃棄物処分に関する研究進捗等のフォローアップ、情報提供、協議に関する全般的な使命を担うCLISが各地下研究所のサイトに設置することとされています。原子力発電所など原子力基本施設(INB)の場合には、地元に「地域情報委員会」(CLI)と呼ばれる組織が設置されることになっていますが、地下研究所は原子力基本施設ではないため、同様な役割を担う組織の設置が1991年の上記法律で定められました。CLISの設置条項は、2006年の放射性廃棄物等管理計画法において一部改正されました。これを受けて、2007年5月に改めて「ビュール地下研究所CLIS」[3]が発足し、活動しています。現在91名が構成メンバーとなっています。CLISの会合は少なくとも年2回開催され、処分に関する研究の目的、内容と成果に関する情報が提供されます。

また、CLISは地下研究所に関して、環境及び周辺に影響が及ぶようなすべての問題を討議し、ヒアリングを行うこともできます。国家評価委員会(CNE)や原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)などの外部専門機関を活用できることになっています。

CLISの設立及び運営資金は、国の補助金や放射性廃棄物の地層処分活動に関係する事業者の補助金によって賄われています。


原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)

原子力安全・情報開示法のもと、原子力活動に関するリスク及び原子力活動による健康・環境・安全保障についての情報提供や議論を行うことを目的として、原子力安全情報と透明性に関する高等委員会(HCTISN)が設置されています。この委員会は、地層処分場の立地に特化した組織ではなく、原子力安全及びその情報提供に関するあらゆる問題への意見提示や検討を行います。HCTISNには、議会(国会)の上院と下院からそれぞれ2名が委員として参加しているほか、地域情報委員会(CLI)、環境団体、労働者組合、原子力事業者、学識経験者、原子力安全機関(ASN)、IRSNの代表から構成されています。

公開討論会と公衆意見聴取の実施

フランスでは、放射性廃棄物の処分場を含む原子力基本施設(INB)など、環境に多大な影響を及ぼす大規模な公共事業や政策決定について、その計画段階において行政、事業者、国民、専門家などが自由に議論を交わすために、公開討論会が開催されます。公開討論会の開催に当たっては、専用のウェブサイトなどを活用した公衆への情報提供が行われ、全国規模で多様な事業に関する討論会が開催されています。

また、INBなどの設置許可プロセスにおいては、公衆(特に地域住民)への情報提供、公衆からの意見聴取を目的とした、公衆意見聴取を実施しなければならないことになっています。


6.3 意識把握と情報提供

  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、処分事業の理解を得るための活動として、インターネットのウェブサイトやレター、CD-ROM、雑誌等の様々な媒体を用いて情報提供活動を行っています。

広報活動(情報提供)


ビュール地下研究所の一般公開
source: ANDRA


ビュール地下研究所のビジターセンター
source: ANDRA


ビジターセンター内のドリフト(坑道)模型
source: ANDRA

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、公衆にフランスの放射性廃棄物管理プログラムの情報を提供することも、その使命の一つとして求められています。このため、インターネットのウェブサイト(www.andra.fr)と情報誌(“La lettre de l’ANDRA”)が作成されています。双方とも、放射性廃棄物管理研究法によって規定されている3つの研究分野についての説明とともに、地下研究施設の設置を決めた1998年12月9日の政府決定に至る政策決定プロセスの経緯について説明を行っています。

また、地下研究所があるビュールでは、現地で見学会などが催されるほか、地下研究所の建設作業や調査研究等の進捗状況等について、その映像をインターネットで見ることもできます。研究所の構造、可逆性の概念、計画されているさまざまな種類の調査(地質学、地盤力学、水文地質学など)の結果等もインターネット上で公開されているほか、地下研究所での研究内容を分かりやすく解説したCD-ROMの配布も行っています。

ビュール地下研究所については、情報誌(“La Vie du Labo”)が出版され、インターネットで入手することもできます。この情報誌は、環境の追跡調査、科学的な解説、研究所での作業の進捗、国際協力といったさまざまな特集によって構成されており、質問やそれに対する回答なども得られるようになっています。さらに、担当省の副大臣の要求により、ANDRAの放射性廃棄物の地層処分に反対する市民団体に対して意見を述べる場として、この情報誌の1ページを提供することになっています。


ANDRA作成の情報資料





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hlw/fr/chap6.1330166095.txt.gz · 最終更新: 2012/03/08 10:53 (外部編集)