諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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ドイツ ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


6. 安全確保の取り組み・コミュニケーション

6.1 地層処分の安全確保の取り組み

ポイント

  • ドイツでは、ゴアレーベンでの高レベル放射性廃棄物処分を想定して、処分概念の検討と共に、同サイトの処分場としての適性を確認する適合性調査や安全評価などが行われてきました。
  • 2013 年に制定されたサイト選定法では、3段階からなるサイト選定手続きの各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。

安全性の確認と知見の蓄積

ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書(PTB,1983年)
ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書
1983年に、当時の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価しました。

1983年5月、当時の最終処分事業の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)は『ゴアレーベンのサイト調査の総括的中間報告書』をまとめています。この報告書では、ゴアレーベンに地層処分場を建設した場合の安全解析が行われ、ゴアレーベンが処分場の建設地として適切であると評価されました。この評価結果を受けて、ニーダーザクセン州が地下探査に関する許可を発給し、探査坑道の建設は1986年から始まりました。

ゴアレーベンでの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力への政策転換の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり凍結されていました。2010年11月に探査活動は再開されましたが、サイト選定の見直しを受けて2012年11月に中断、その後2013年7月のサイト選定法制定に伴って終了することになりました。

連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU:現BMUB の旧称)は、2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定しました。この要件は2010年のゴアレーベン探査再開に先立ち、同年9月に一部改訂されました。

2010年8月には、BMU の委託を受けた施設・原子炉安全協会(GRS)が中心となって、2010年11月の探査活動再開までに得られたデータを基に、この安全要件に基づくゴアレーベンでの予備的安全評価を開始しました。しかし、2013年7月制定の「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)により候補地であるゴアレーベンが白紙化されたことから、予備的安全評価の作業は中止されました。

ドイツでは2013 年7月にサイト選定法が制定され、今後同法に基づき、サイト選定が行われることになっています。サイト選定法に規定された選定手続きでは、3段階からなる手続きの各段階において予備的安全評価を行い、安全性の確認が行われることになっています。また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放射性廃棄物処分委員会が2016年7月に提出した最終報告書では、安全評価のための安全基準を含む安全要件についてはサイト選定法に組み込むべきことなどが勧告されています。今後、この勧告に基づき、安全要件の改定など必要な法整備が行われます。


6.2 処分事業の透明性確保とコミュニケーション

ポイント

  • 2013年7月に制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、新たに公衆や地元自治体等の参加を得ながら複数サイトから処分場建設地の候補を絞り込んでいくプロセスが導入されました。
  • また、サイト選定法に基づき設置された高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に提出した最終報告書において、連邦レベル、地域横断レベル、地域レベルのそれぞれにおいて公衆参加のための委員会や合議体を設置して、公衆参加を促進することを勧告しています。

「サイト選定法」に基づく選定プロセスにおける公衆参加

「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、まず国民各層の代表者33名で構成される「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が、安全要件やサイト選定基準、サイト選定手続きの検討を行ってきました(「IV. 処分地選定の進め方と地域振興」参照)。この委員会の会合はすべてインターネットで中継され、議事録や会議資料、報告書も公開されています。

選定手続きの開始後は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が提案する複数の候補地域から、公衆参加プロセスを経て対象を絞り込むことになっています。サイト選定法において、これら手続きの期間を通じて、市民対話やインターネットなどのメディアを介して関連の情報発信・意見聴取を行うことを規定しています。

また、サイト選定に関わる以下のような重要な事項については市民集会を開催するほか、関係する州や地元自治体の参加の上で決定しなければならないとしています。

  • 候補地域、地上からの探査対象サイトの選定
  • 地上からの探査計画の策定
  • 地下での探査対象サイトの選定
  • 地下での探査計画の策定
  • 候補サイトの最終比較

公衆参加の枠組み

サイト選定では、連邦レベルにおける国民意見反映のための組織として、国民のさまざまな層で構成される「社会諮問委員会」を設置することになっています。サイト選定法に基づき、社会諮問委員会の詳細を含め、公衆参加についても検討することとなっていた高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016 年7月に公表した最終報告書において、公衆参加の枠組みについて、連邦、地域横断、地域の3 つのレベルで、市民代表や各地域の住民などで構成される委員会や合議体を設置することを勧告しています(下表参照)。これらの委員会・合議体は、サイト選定プロセスの各段階において、公衆参加の結果を報告書としてとりまとめ、提出することとされています。

公衆参加の枠組み

これらの委員会・合議体のうち、連邦レベルでの公衆参加組織である社会諮問委員会については、2016年11月に議会選出委員の6名、及び市民代表委員3名の合計9名が任命されました。市民代表委員については、全国5か所で市民フォーラムを開催し、サイト選定に関する課題、今後の選定手続きや社会諮問委員会の役割について学ぶ取り組みなどを行ったうえで選出されました。3名の市民代表委員には、16歳~ 27歳の若年層を代表する委員が1名含まれています。なお、サイト選定選定手続きの開始後、社会諮問委員会の委員は18名に拡大され、本格的に活動を行うことになっています。

候補地域・候補サイトにおける対話活動

サイト選定法では、連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)が、サイト選定手続きを監督し、検討対象地域やサイト所在地において、多くの人々が参加可能な形態の市民対話を設定することになっています。また、検討対象地域や地元住民とサポートする組織として、BfE が市民事務局を設置することになっています。市民事務局は独立の立場で、地域や地域住民に対し、手続きに関する専門的な助言を提供することになっています。

さらにサイト選定法では、計画対象とされた地域内において市民集会を開催することが規定されています。BfEは開催の2ヵ月前までに連邦官報や同庁のウェブサイト、地元日刊紙に開催告示を出し、最低1ヵ月間、関連する基礎資料を提示します。市民集会の議事録にはその地域における公衆受容の度合いについても記載することになっています。

BfE は、探査サイトや処分場サイトの検討を行う際に市民集会の結果を考慮しなければなりません。


6.3 意識把握と情報提供

ポイント

  • ドイツでは2013年4月にサイト選定法案が閣議決定された後、同年5月31日から3日間にわたり、法案について説明し議論する「市民フォーラム」がベルリンで開催されました。会場での議論に加え、インターネットを通じた意見聴取も実施されました。
  • サイト選定の見直し前は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)やBfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)がゴアレーベンに関する広報活動を実施していました。

サイト選定法に関する市民フォーラム

市民フォーラムの模様
サイト選定法に関する市民フォーラムの様子
source: BMU

ドイツでは2013年4月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)の法案が閣議決定された後、同年5月31日から6月2日の3日間にわたり、「サイト選定法に関する市民フォーラム」がベルリンで開催されました。このフォーラムでは連邦議会に所属する各政党の議員や処分事業関連の専門家らが出席し、公衆参加などの社会的側面から資金・技術面などサイト選定法案で扱われている多くの側面について説明し、市民と議論を交わしました。

フォーラムの模様は全てインターネットで同時中継され、録画画像は動画投稿サイトを通じて公開されています。会場での議論に加え、インターネットを通じた市民からの意見聴取も実施されました。

ゴアレーベンにおける広報活動(情報提供)

移動展示車両を用いた展示
移動展示車両を用いた展示
source: BfS

ゴアレーベンでの探査が中止される以前は、処分の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)が主に一般市民向け、BfSの委託を受けて実際の調査作業を行っていたドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が主にサイト周辺住民向けの広報活動を実施していました。

プレスリリースや情報冊子、講演会の開催や見本市への出展に加え、ゴアレーベンには情報センターが設けられ、地下探査坑道の見学を組み込んだサイトツアーが実施されていました。2009年からは、移動展示車両で各地を巡回する情報提供活動も実施されました。





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