諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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ドイツ ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


3. 処分事業の実施体制と資金確保

3.1 実施体制

  • ドイツでは原子力法において高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にあるとされています。この規定に基づき、これまでは連邦放射線防護庁(BfS)が実施主体としての役割を担っていました。しかし、2016年に原子力法が改正され、新たな実施主体として連邦放射性廃棄物機関(BGE)が設置されることになっています。
  • 放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されました。

実施体制の枠組み

下の図は、ドイツにおける放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が管轄官庁であり、その下に設けられた連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制を担います。処分場建設・操業の実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)は、100%連邦政府が所有する私法上の組織として設置され、BMUBの監督を受けます。

ドイツの処分実施体制
ドイツの処分実施体制

2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。BfEは、処分場サイト選定手続全体の監督・調整を担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体に対する監督を行います。BfE は、2016年の法改正により「連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)」に名称変更されました。BfE はサイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで、高レベル放射性廃棄物の処分事業に対する規制監督の任を一貫して担います。

なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、BfEの設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。原子力法では、BfEが許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。


実施主体

ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています。処分場の建設・操業の実施主体としてはこれまで、連邦放射線防護庁(BfS)がその役割を担ってきました。BfSは、民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE 社)と業務契約を結び、ゴアレーベンでの探査作業を委託していました。しかし、2016 年に原子力法が改正され、連邦政府は、処分場の設置等の役割を連邦政府が100%所有する私法上の第三者に委託しなければならないと規定されました。この規定に基づき、処分場の建設・操業の実施主体として連邦放射性廃棄物機関(BGE)が設置されることになっています。BGE は、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下で、BfS、DBE 社及びアッセII 研究鉱山を管理するアッセ有限会社の役割すべてを継承し、実施主体としての役割を果たしていくこととされています。

BGEは、2013年7月に新たに制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づく選定手続きにおいても、探査地域・サイトの提案、探査や予備的安全評価の実施などの役割を果たすことになっています。


安全規則

ドイツにおける放射性廃棄物処分に関する安全規則としては、1983年4月に当時の所轄官庁であった内務省が制定した「鉱山における放射性廃棄物の最終処分に関する安全基準」があります。ここでは、放射線防護令で規定された安全基準である年間0.3mSv(ミリシーベルト)が保証されなければならないとされています。この最終処分の安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。

発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)での線量基準

線量基準:評価期間は100万年を目安とする。
○発生確率の高い事象 評価目安期間内での発生確率が10%以上ある事象については、10μSv/年以下であることを示さなければならない。
○発生確率の低い事象 評価目安期間内での発生確率が1~10%の事象については、0.1μSv/年以下であることを示さなければならない。

注)この安全要件は見直しが予定されています。

発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件
発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件

ゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMU(現BMUBの旧称)は2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、ゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議しました。その結果を受けて2010年9月に安全要件の一部を改訂したものの、幾つかの課題が残っていることから協議を継続していました。

その後、2013年に制定されたサイト選定法では、「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が、安全要件についても検討し勧告を行うことになっています。高レベル放射性廃棄物処分委員会は、2016年7月に安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出しました。勧告には、安全要件をサイト選定法に組み入れるべきことや各種規定の妥当性等を再確認すべきことなどが含まれています。今後、議会がこれを元に安全要件の改定について検討し法令として策定することになっています。

現状の安全要件では、100万年を評価目安期間として線量基準を規定しています。その他放射線防護一般に関しては放射線防護令で定められています。その他の放射線防護一般に関しては放射線防護令で定められています。


3.2 処分費用の確保

ポイント

  • 高レベル放射性廃棄物の処分費用は、全額廃棄物発生者が負担することが原子力法で定められています。
  • 処分費用を積み立てるための公的な基金制度は存在せず、廃棄物発生者である電力会社等が引当金を確保し、現段階で発生する費用については、処分場の設置・運営の責任を有する連邦政府に対して、原子力発電事業者が毎年支払いを行っていました。しかし、2016 年に新たな法律が制定され、公的な基金を設置し処分費用などを管理することが決定されました。

処分費用の負担者

ドイツでは、廃棄物の発生者は、これまで引当金として放射性廃棄物管理費用を確保してきました。しかし、2016 年に新たな法律が制定され、公的基金を設置し放射性廃棄物管理費用を管理することとなりました。廃棄物発生者が、基金に対して放射性廃棄物管理の将来費用と、リスクに備えるための保険料を払い込む代わりに、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵から処分までは連邦政府の責任で行うこととなりました。

今後、資金確保を含め、放射性廃棄物管理に関する責任は連邦政府に移行し、基金への払い込み完了後は、費用が増大した場合でも、廃棄物発生者が追加の負担を求められることはありません。


処分費用の確保制度

ドイツでは、これまで放射性廃棄物管理費用の確保に関する公的な基金制度はありませんでした。このため、原子力発電事業者などは、原子炉の廃止措置のための費用や、放射性廃棄物の管理のために発生する将来費用を引当金として確保していました。しかし、資金確保制度のあり方については、「脱原子力に係る資金確保に関する検討委員会」が2015年10月に設置され検討が行われた結果、2016年4月に公的基金の設置などの勧告が行われました。この勧告に基づき、2016年12月に公的基金の設置等を規定した法律が制定されました。この法律により、廃棄物発生者である電力会社は、基金に対して放射性廃棄物管理の将来費用として約174億ユーロ(約1兆9,800億円)及びリスクに備えるための保険料として約62 億ユーロ(約7,070億円)を払い込むことになります。

払い込み後は、放射性廃棄物管理費用は、この基金から支払われ、不足した場合には連邦政府が負担することになります。なお、基金で賄われる放射性廃棄物管理費用には、放射性廃棄物の輸送、中間貯蔵、処分場の建設・操業・閉鎖の費用が含まれます。


処分費用の見積もり

連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が2015年に公表した見積りによると、発熱性放射性廃棄物処分場の建設・操業・閉鎖に係る費用は、約77億ユーロ(約8,800億円)です。このうち、処分場の建設の費用が約39億ユーロ(約4,400億円)、操業の費用が約34億ユーロ(約3,900億円)、閉鎖の費用が約4億ユーロ(約460億円)となっています。

また、サイト選定法に基づくサイト選定のための費用は、20億ユーロ(約2,280億円)と見積もられています。



備考:通貨換算には、日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート(平成28年12月中において適用)を使用しています。

  • 1ユーロ=114円として換算





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