諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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ドイツ ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


3. 処分事業に係わる制度/実施体制

3.1 実施体制

  • ドイツでは高レベル放射性廃棄物処分場の設置責任は連邦政府にあるとされています。連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が所管省であり、その下の連邦放射線防護庁(BfS)が実施主体となっています。BfSはサイト選定の任務を外部委託することなく、主体的に実施することになっています。
  • 2014年1月1日に連邦放射性廃棄物処分庁設置法が施行され、今後、放射性廃棄物処分に関する安全規制機関として連邦放射性廃棄物処分庁が設置される予定です。これにより、従来は州当局に委任されていた高レベル放射性廃棄物処分に関する許認可権限が連邦に集約されます。

実施体制の枠組み

下の図は、ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分に係る実施体制を図式化したものです。連邦政府では、原子力問題全般を担当する連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)が管轄官庁であり、その下に設けられた連邦放射性廃棄物処分庁が、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制を担います。処分場建設・操業の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)も、BMUBに所属する連邦官庁です。

ドイツの処分実施体制
ドイツの処分実施体制 :NEW-RED:(2014年~)
※2014年1月1日時点では「連邦放射性廃棄物処分庁」は未設置です。

2014年1月1日付けで発効した連邦放射性廃棄物処分庁設置法により、2014年9月に連邦放射性廃棄物処分庁(BfE)が設置されました。BfE は、サイト選定の段階から処分場の建設・操業・閉鎖に至るまで、高レベル放射性廃棄物の処分事業に対する規制監督の任を一貫して担います。処分場サイトが決定した後は、高レベル放射性廃棄物処分に関する規制当局として、実施主体であるBfSに対する監督を行います。

なお、従来は高レベル放射性廃棄物の処分場については、州の管轄官庁が許認可当局としての役割を担っていましたが、BfEの設置などに伴い規制・実施体制が見直されました。

原子力法では、同庁が許認可を発給する際は、州や関係自治体も決定に参加することとされています。

各研究所等が行う基礎的な調査・研究は、連邦経済・エネルギー省(BMWi)及び連邦教育・研究省(BMBF)が中心となって進めています。


実施主体

ドイツの原子力法では、放射性廃棄物の処分場を連邦政府が設置することになっています。処分場の建設・操業の実施主体として、連邦放射線防護庁(BfS)が1989年に設置されています。BfSは、連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)の監督下にあり、主として放射線防護、通信機器の電磁波対策に関する連邦の業務を実施していますが、所掌の一つとして放射性廃棄物の処分・輸送などに関する業務も担当しています。

2013年7月に新たに制定された「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)では、BfSは“サイト選定の任務を第三者に委任できない”と規定されました。なお、サイト選定以外の業務の委任については制限はありません。ドイツでは、高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定プロセスは連邦政府が主導する形になります。

サイト選定法の制定以前は、BfSは民間会社であるドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)と業務契約を結び、放射性廃棄物処分に関する実務作業(ゴアレーベンでの地下探査など)を委託していました。DBE社は、連邦物理・技術研究所(PTB)が実施主体であった1979年に連邦政府系の出資も含めて設立された会社です。現在は政府系機関からの出資はなく、原子力発電所を所有する電力会社が株主となっている原子力サービス社(GNS)が、DBE社に75%を出資しています。


安全規則

ドイツにおける放射性廃棄物処分に関する安全規則としては、1983年4月に当時の所轄官庁であった内務省が制定した「鉱山における放射性廃棄物の最終処分に関する安全基準」があります。ここでは、放射線防護令で規定された安全基準である年間0.3mSv(ミリシーベルト)が保証されなければならないとされています。この最終処分の安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。

発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件(2010年9月30日改訂版)での線量基準

線量基準:評価期間は100万年を目安とする。
○発生確率の高い事象 評価目安期間内での発生確率が10%以上ある事象については、10μSv/年以下であることを示さなければならない。
○発生確率の低い事象 評価目安期間内での発生確率が1~10%の事象については、0.1μSv/年以下であることを示さなければならない。

注)この安全要件は見直しが予定されています。

発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件
発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件

ゴアレーベンでの探査活動の再開に先立ち、BMU(現BMUBの旧称)は2009年7月に「発熱性放射性廃棄物の最終処分のための安全要件」を策定し、ゴアレーベン・サイトへの安全要件の適用についてニーダーザクセン州を含む各州の政府と協議しました。その結果を受けて2010年9月に安全要件の一部を改訂したものの、幾つかの課題が残っていることから協議を継続していました。

今後は、2013年に制定されたサイト選定法に基づき、2015年末までに「高レベル放射性廃棄物処分委員会」が安全要件に関する検討結果を勧告としてまとめて政府・議会に提出し、議会がこれを元に安全要件等のサイト選定に関わる各種の基準を、連邦法として採決する予定となっています。

現状の安全要件では、100万年を評価目安期間として線量基準を規定しています。その他放射線防護一般に関しては放射線防護令で定められています。


3.2 処分に関わる法制度

事業規制

  • 高レベル放射性廃棄物処分に関する基本的な枠組みは、原子力法で定められています。ただし、ドイツの特徴としてサイト調査段階においては原子力法の適用はなく、地下における活動等は鉱山法によって規制されています。
  • 「原子力の平和利用及びその危険の防護に関する法律」(原子力法)は原子力関係の基本法ですが、2002年4月に「商業発電のための原子力利用の秩序正しい終結に関する法律」という名称の改正法が成立しています。それまでの原子力法は原子力の平和利用の促進を目的としていましたが、改正後は商業用原子力発電からの段階的撤退が規定されています。原子力法は、原子力の利用、放射性廃棄物管理(貯蔵・処分等)の許認可手続や、関係機関の役割や責任等を定めている法律です。放射性廃棄物の処分場設置の責任が連邦にあることも、この原子力法で定められています。
  • 一方、処分サイトの選定は「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(サイト選定法)に基づいて行われます。この法律では、選定に関わる安全要件や調査対象サイトの決定、処分サイトの最終決定など、サイト選定に関わる重要な決定は、市民集会などの公衆参加プロセスにかけた上で、最終的に議会が連邦法として採択するという形をとると定めています。
  • ドイツでは放射性廃棄物を定置する前のサイト調査活動は原子力法の適用を受けず、鉱山法の許認可取得が必要となります。ゴアレーベンの地下探査活動も、この鉱山法の許可に基づいて行われていました。

安全規制

  • 放射性廃棄物に関する安全規制については、原子力法では概括的な考え方が規定されているのみです。放射線防護に関する全般的な安全規制としては放射線防護令がその基本的な法令ですが、処分場に特定化した形での規制は定められていません。
  • 放射性廃棄物処分に関する安全基準としては、もとは原子炉安全委員会(RSK)の勧告として出された1983年の「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」があり、放射性廃棄物処分に関する基本的な要件を定めています。この安全基準は、コンラッドでの非発熱性放射性廃棄物の処分に係る計画確定手続において適用されました。
  • 2009年7月、連邦環境・自然保護・原子炉安全省(現BMUB の旧称)は「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」を策定しました(2010年9月に一部改訂)。この安全要件は、発熱性放射性廃棄物の地層処分のみに適用されるものであり、「鉱山における放射性廃棄物の最終処分のための安全基準」に代わるものとされています。

資金確保

  • 放射性廃棄物管理のための費用負担、資金確保についても、原子力法によりその基本的な枠組みが規定されています。処分事業に関する費用は、いわゆる発生者負担の原則に基づき、処分場利用によって利益を受ける放射性廃棄物の発生者と定められています。
  • また、処分場の設置は連邦によって行われますが、その操業までは長い年月を要すことから、発生した費用については処分場操業前に「前払い」をすることが、原子力法及び同法に基づいた最終処分場設置の前払金令によって定められています。

環境

  • サイト選定法は、地下での詳細な地質学的探査段階において、環境適合性評価(環境影響評価)を実施する必要があると規定しています。サイト決定後の原子力法に基づく許認可手続では、サイト選定時の環境適合性評価を元に、必要に応じて追加的な評価を実施します。ドイツにおける環境適合性評価については、環境適合性の審査に関する法律及び環境適合性審査法施行のための一般行政規則によってその手続等を含めた詳細が定められています。
  • また、放射性廃棄物処分場の建設を含む一定の鉱山事業に関しては、鉱山事象の環境適合性審査に関する法令も定められています。

原子力責任

  • 原子力責任に関しては、第三者責任に関する1960年7月29日のパリ条約の国内法化、及び1963年1月31日のブリュッセル補足条約の承認が行われるとともに、原子力法においてもこれを補足する形で具体的な規定が定められています。また、さらに詳細な内容は、同法に基づいた原子力補償対策令に規定されています。





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