諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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ドイツ ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


2. 地層処分計画と技術開発

2.1 処分計画

  • ドイツでは、ニーダーザクセン州ゴアレーベンの岩塩ドームについて、ガラス固化体及び使用済燃料の処分場としての適性を調査するために1979年から探査活動が行われています。探査の結果から処分場としての適性が確認された場合には、2017年から処分場の建設に向けた許認可手続きが開始される予定です。またゴアレーベンの探査活動と並行して、代替処分サイトの選定手続の検討作業が行われています。

地層処分対象の放射性廃棄物

ドイツでは、全ての種類の放射性廃棄物を地層処分する方針です。廃棄物から発生する熱によって、地下の処分空洞壁面の温度上昇が3℃以上となる廃棄物を「発熱性放射性廃棄物」と区分しており、使用済燃料のほか、外国での再処理で製造・返還されるガラス固化体や中レベル放射性廃棄物(ハル・エンドピースなどの圧縮体など)がこれに該当します。ここでは、発熱性放射性廃棄物の地層処分について紹介します。

処分形態

:hlw:de:pollux-cask.png使用済燃料用に予定されているキャスク
source: DBE

使用済燃料は右図に示したような複合構造の「Polluxキャスク」に収納して処分する方法が検討されています。この方法では、原子炉から取り出した使用済燃料集合体を解体し、燃料棒だけをPolluxキャスクに収納します。1999年にゴアレーベンにパイロット・コンディショニング施設が建設され、Polluxキャスクへの収納が試験的に実施されています。ただし、処分前の工程が複雑で時間もかかるため、代替の処分形態の検討も進められています。

またガラス固化体は、処分用のキャスクに収納して処分する方法が検討されています。


Piliot-Konditionierungsanlage (PKA)
使用済燃料のパイロット・コンディショニング施設
(1999年にゴアレーベンに建設)


処分場の概要(処分概念)

ゴアレーベンでの処分概念イメージ
DBE社等,Final disposal and released waste management より引用

放射性廃棄物を隔離する上で天然バリアが最も重要な役割を果たすとの考えから、1970年代から岩塩層での処分可能性が注目されました。ドイツでは既に100年以上の採掘経験があり、岩塩の特性が良く知られていました。ドイツの岩塩層では特別な支保なしで数十年間自立する地下空間を掘削できること、長期的には自然の働きで開削空間が閉じられていくこと(クリープ現象)が知られています。また、岩塩は熱伝導度が高いため、発熱性放射性廃棄物から発生した熱を周囲に逃がすことができるため、そのような廃棄物に適していると考えられています。こうしたことから、右図に示すように、放射性廃棄物をキャスク等の金属製容器の人工バリアで包んだ上で、岩塩層という地質構造を天然バリアとして利用する多重バリアシステムを検討しています。

ゴアレーベンでの処分深度は地下約840mから1,200mの範囲で考えられています。右の図はゴアレーベンでの処分概念を示したものです。図では地下840mの深さの岩塩ドームの中に処分坑道がレイアウトされており、その面積は約3km2となっています。

処分坑道横置き方式(左)、処分孔縦置き方式(右)
source: DBE社資料

廃棄物の定置方式は、その種類などによって2通りが考えられています。右図の左側は処分坑道横置き方式、右側は処分孔縦置き方式のイメージをそれぞれ示したものです。廃棄物の定置後に残る空間は、砕いた岩塩で埋め戻されます。

処分場の建設予定地の地質構造


ドイツ北部における岩塩ドーム・鉱床の分布状況
DBE社資料より引用


岩塩構造のタイプ
北部ドイツには地中で大きく盛り上がった形に発達した岩塩ドームと、枕のような構造の岩塩鉱床が数多く分布しています。
source:BfS, The Gorleben Salt Dome

ドイツ北部におけるのゴアレーベンでは、現在、最終処分地としての適性確認を目的とした地下探査活動が1979年から続けられています。

ゴアレーベンの地表から約260mより深い部分には「岩塩ドーム」が形成されています。岩塩自体は約2億6千年前に出来たものです。この岩塩層の上部に堆積した地層との比重差によって、長い年月をかけてドーム状に盛り上がることで形成された構造です。ゴアレーベンの岩塩ドームの大きさは長さ約14km、幅が最大約4kmあり、岩塩層は一番深いところでは地下約3,500mまで続いています。


探査活動の現状

:hlw:de:gorleben-site-view.png

ゴアレーベン・サイトの概観
BMU・BfS資料より引用

ゴアレーベンの地下探査活動は、連邦政府の1998年からの脱原子力政策の影響を受けて、2000年10月から10年間にわたり、新規に始める活動が凍結されていました。凍結解除後の2011年11月から、処分場としての適性の確認を目的として探査活動が再開しました。この結果次第では適性を否定する結論に至る可能性もあるとされていましたが、BMU大臣は、2012年11月にゴアレーベンでの探査活動を一時停止することを決定しました。一方で、ゴアレーベンに代わるサイトの選定手続きの検討も行われています。

右の図は、ゴアレーベンの地下探査坑道の概観を示したものです。ゴアレーベンの岩塩ドームには、933m 及び 840m の立坑2本が掘削されており、処分予定深度の840mに探査用の水平坑道(総延長約7km)が展開されています。

探査活動は処分事業の実施主体であるBfSの委託を受けて、ドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が中心となって実施しています。こうした探査活動自体は、連邦鉱山法に基づく規制下で行われており、原子力法に基づく許可は必要とされていません。


処分事業の実施計画

処分事業を管轄する連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)及び処分実施主体の連邦放射線防護庁(BfS)は、ゴアレーベンでの探査活動の再開に向けて、2010年3月に今後のスケジュール案を公表しました。今後の実施予定について、以下のような考えを紹介しています。

  • BMUが策定中の「発熱性放射性廃棄物の最終処分に関する安全要件」のゴアレーベン・サイトへの適用について、ニーダーザクセン州を含む各州の合意を得て、探査活動を再開
  • 探査活動再開までに得られたデータ及び知見を基に、2012年末までに予備的安全評価を行い、2013年前半に評価結果及び処分概念について国際ピアレビューを実施
  • 探査の結果等から最終処分サイトとしての適性が確認された場合、2017年頃から原子力法に基づく計画確定手続(許認可手続)を開始

BMUは、上記のスケジュールに沿って許認可手続き及び処分場建設を進めた場合、処分場の操業開始は2035年頃になる見込みとしています。

2010年9月に、BMUと州政府はゴアレーベンへの安全要件の適用について協議しましたが、安全要件に幾つかの課題があることから協議を継続することとし、並行して安全要件の一部を見直すことになりました。なお、ゴアレーベンでの探査活動については、許認可当局であるニーダーザクセン州により連邦鉱山法上の許認可が発給したことを受け、2010年11月に再開していました。その後、2012年11月に探査活動は一時停止されることが決定しました。


計画確定手続き

ドイツでは、処分場建設のためには「計画確定」と呼ばれる手続が必要となっています。計画確定とは、さまざまな分野、段階に及ぶプロジェクトについての許認可を個々の規制法毎に個別に許認可を発給するのではなく、一つの計画確定の声明によって、各法の要求を踏まえた上での事業承認を与える許認可の仕組みです。計画確定を行うための手続きは、行政手続法で定められています。

原子力法では、放射性廃棄物の処分場の建設に当たって、計画確定の手続きを行うことが必要となっており、この手続きの中で、環境適合性審査を行うことを義務づけています。

計画確定を所管する当局は、放射性廃棄物処分場の場合には、州の環境省であり、ゴアレーベンの場合にはニーダーザクセン州環境省です。


2.2 研究開発・技術開発

  • 地層処分事業の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)及び契約により実質的な作業をしているドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が、放射性廃棄物の最終処分のための研究開発を行うこととされています。
  • また地層処分の研究は、地質関係の研究所である連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)のほか、国立の3研究所、施設・原子炉安全協会(GRS)等の機関によっても進められています。

研究機関

地層処分に関する研究開発は、サイト候補地として地下探査も行われてきたゴアレーベンを中心とする調査と、より一般的な調査・研究とに分けられます。ゴアレーベンに関わる調査・研究は、実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)及び同庁との契約により実質的な実施主体としての作業を担当しているドイツ廃棄物処分施設建設・運転会社(DBE社)が行っています。

一方、一般的な調査・研究は各種機関がそれぞれの専門領域の研究活動を行っています。中心的な機関としては、地質関係の研究所である連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)、その他ユーリッヒ、カールスルーエ、ロッセンドルフの各国立研究所(FZJ、FZK、FZR)、施設・原子炉安全協会(GRS)、大学研究室等が挙げられます。

研究計画

ゴアレーベン・プロジェクトについては、1977年7月に当時の実施主体であった連邦物理・技術研究所(PTB)により、ゴアレーベン最終処分場開発・調査計画が開始されましたが、その概要は、PTBとの契約により作業を行っていたドイツ核燃料再処理会社(DWK)の報告書にまとめられています。

また、基礎研究は連邦経済・技術省(BMWi)、連邦教育・研究省(BMBF)を中心として行われています。高レベル放射性廃棄物の処分に関しては、処分対象として考えられていた岩塩の他に結晶質岩及び堆積岩、そして岩種に依存しない研究も行われています。

地下研究所


アッセⅡ研究鉱山での実規模キャスクを用いた実験の模様
source: DBE


ゴアレーベン施設の全景
source: DBE

1965年に、放射性廃棄物の最終処分に関する調査・研究を実施するために、かつては岩塩鉱山であったアッセⅡ研究鉱山を当時の放射線・環境協会(GSF)(現在のミュンヘン・ヘルムホルツセンター)が取得しました。ここで1967年から77年まで中低レベル放射性廃棄物の試験的な処分が行われましたが、その後は高レベル放射性廃棄物の岩塩層への処分等に関する地下研究所となりました。

現在はアッセⅡ研究鉱山の研究所としての機能は実質的に終了しています。2009年1月からは、連邦放射線防護庁(BfS)が同鉱山の閉鎖に向けた手続きを実施主体として進めています。2010年1月、BfSはアッセⅡ研究鉱山の閉鎖に関して、試験的に処分した低中レベル放射性廃棄物の回収が最良であるとする評価結果を公表しました。BfSは、現在廃棄物の回収措置の計画の策定に向けた準備作業(廃棄物を定置した処分室の試験的な掘削及び調査など)を行っています。

また、ゴアレーベンの岩塩ドームにおける地下探査坑道も、実質的に地下研究所としての機能を果たしていると言えます。





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