諸外国での高レベル放射性廃棄物処分

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HLW:CA:chap5

カナダ カナダにおける高レベル放射性廃棄物処分

カナダにおける高レベル放射性廃棄物処分

全体構成(章別)


5. 処分事業の資金確保

5.1 処分費用の確保(制度)

  • 核燃料廃棄物の地層処分場の建設以降で発生する将来費用を確保するために、核燃料廃棄物法に基づき、使用済燃料の管理責任を有する原子力企業4社は独自に設立した信託基金に毎年預け入れをしています。2013年12月末の基金残高合計は約29億カナダドル(約2,800億円)です。


処分費用の確保制度

各事業者の信託基金残高
2014年12月末
信託基金残高
(百万カナダドル)
オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社 3,114
ハイドロ=ケベック(HQ)社 119
ニューブランズウィック・パワー・ニュークリア(NBPN)社 125
カナダ原子力公社(AECL) 45
合計 3,403
(約3,130億円)

(出典:NWMO2014年次報告書)

2002年の核燃料廃棄物法において、核燃料廃棄物の長期管理に必要な資金を確保する仕組みが導入されました。使用済燃料の発生者である原子力発電事業者3社(オンタリオ・パワージェネレーション社、ニューブランズウィック・パワー社、ハイドロ=ケベック社)とカナダ原子力公社(AECL)は、それぞれ独自に信託基金を設立し、この基金に毎年預け入れることになっています。信託基金には、核燃料廃棄物の地層処分場の建設及びそれ以降で発生する費用を確保します。これらの信託基金からの資金の引き出しは、処分実施主体であるカナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)だけができると定められています。

各社は信託基金に対して、年末の残高が前年6月時点で発生している核燃料廃棄物を将来に処分するために現時点で保有すべき金額(割引後の金額)を超えるように毎年預け入れます。2014年12月末時点において、信託基金の残高合計は約34億カナダドル(約3,130億円)となっています。(1カナダドル=92円で換算)

なお、サイト選定活動などNWMOが将来に立地する地層処分場の建設許認可を受けるまでに発生する費用は、NWMOを設立した原子力電力事業者3社とAECLが核燃料廃棄物の処分量比率に応じて分担しており、年度毎に会計処理されています。


5.2 処分費用の見積もり

NWMOによる処分費用の見積もり

原子力発電事業者3社とカナダ原子力公社(AECL)の信託基金への拠出額を算定するために、NWMOは処分費用を算定しています。最新の費用見積もりは2011年に行われており、地層処分場のサイト選定を含む「適応性のある段階的管理」(APM)プログラムの実施に必要な費用を約179億カナダドル(約1兆6,500億円)と見積もっています。この金額は以下のような仮定で算定した額です。

  • CANDU炉使用済燃料360万体(約68,000トンウラン相当)を地層処分する。
  • 地層処分場は2035年から操業を開始し、2160年に閉鎖する。
  • 地層処分場への核燃料廃棄物の輸送は、オンタリオ・パワージェネレーション社は2035年から、他の3社は2050年から開始する。

こうした仮定は信託基金の形で確保される資金額を合理的な範囲で早期に多くする意図で設定しているものであり、「適応性のある段階的管理」(APM)に含まれている浅部地下空洞での集中貯蔵のオプションを排除したわけではありません。

長期管理アプローチ別の処分費用の比較

使用済燃料の長期管理アプローチの選択肢別コスト比較
使用済燃料の長期管理アプローチの選択肢別コスト比較
(出典:NWMO『進むべき道の選択』2005年11月)



使用済燃料の長期管理アプローチの費用見積り
選択肢 費用累計(億カナダドル)
350年後まで 1,000年後まで
①地層処分 162 163
②原子力発電所での貯蔵継続 176 684
③集中貯蔵及びその継続 200 470
④適応性のある段階的管理(APM)※ 244
226
244
226

※上段は地下浅部での集中中間貯蔵を実施する場合、下段はしない場合の額

(出典:NWMO『進むべき道の選択』2005年11月)

NWMO が使用済燃料の長期管理アプローチを研究した際(2002~2005年)には、4つの選択肢について実施開始から1,000年間を対象とした費用比較をおこなっています。4つの選択肢は次のものです。

①地層処分

②原子力発電所のサイト内貯蔵の継続

③集中貯蔵の継続

④適応性のある段階的管理(APM)…集中中間貯蔵を折込みつつ、最終的に地層処分

選択肢の②と③では、貯蔵施設を300 年ごとに建て替えると仮定しています。選択肢①は30年後から地層処分を開始し、100年後から処分場を閉鎖するスケジュールを仮定したものです。

選択肢④はカナダの長期管理アプローチとして決定したものであり、30年後から30年間の集中中間貯蔵を組み込み、60年後から地層処分を開始、最大300年後まで処分場の閉鎖を延期するスケジュールを仮定しています。その後、処分場の閉鎖には25年を要するとしています。

「適応性のある段階的管理」(APM、選択肢④)の実施に必要となる費用は、処分の前段階として地下浅部での集中中間貯蔵施設を建設する場合には244億カナダドル(2.2兆円)、建設しない場合には226億カナダドル(2兆円)と推定されていました。



備考:通貨換算には、日本銀行の基準外国為替相場及び裁定外国為替相場のレート(平成27年12月中において適用)を使用しています。

  • 1カナダ・ドル=92円として換算


全体構成
カナダ
hlw/ca/chap5.1458635436.txt.gz · 最終更新: 2016/03/22 17:30 by sahara.satoshi