Top » 海外情報ニュースフラッシュ(全記事表示モード)

中国

北山に建設される地下研究所のイメージ図(出典:BRIUG)

北山に建設される地下研究所のイメージ図(出典:BRIUG)

中国核工業集団公司(CNNC)の下部組織である北京地質研究院(BRIUG)は、2021年6月17日に、高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域の一つである西北地域にある甘粛省北山(ペイシャン)において、花崗岩を対象とした地下研究所の建設プロジェクトを開始したことを公表した。この地下研究所は「中国北山地下研究所」1 と呼ばれており、スパイラル状のアクセス坑道、3本の立坑、地下560m地点に設置される主研究施設、地下280mに設置される補助研究施設等で構成されている。地上部分の敷地面積は2.47km2、坑道の総延長は約13.4kmである。ゴビ砂漠の西部で実施される建設プロジェクトの工期は7年を予定しており、当初は建設現場へのアクセス道路や水、電気、通信等の敷地整備を進め、3年目からトンネルボーリングマシン(TBM)を利用した地下掘削を開始する計画である。

北京地質研究院(BRIUG)は、地下研究所を建設する意義について、中国における高レベル放射性廃棄物処分の研究開発を推進し、国民の信頼を高めるという社会的価値を備えていると説明している。中国北山地下研究所の建設は、中国の2016~2020年を対象とした国家目標を定めた第13次五カ年計画における重点プロジェクトの一つとして位置づけられている。

■中国の高レベル放射性廃棄物の処分方針

中国では、2017年9月1日に成立した原子力安全法において、高レベル放射性廃棄物は地層処分する方針を定めており、地層処分の実施主体は、原子力発電事業等を実施する国営企業体である中国核工業集団公司(CNNC)である。CNNCの下部組織の一つである北京地質研究院(BRIUG)は、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究開発を実施している。

処分場候補サイト調査対象地域

中国における高レベル放射性廃棄物の処分事業は、2006年2月に策定された「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」で設定された3段階の活動計画に沿って進められている。第1段階の2006年~2020年の期間では、実験室レベルでの研究開発と処分場のサイト選定、地下研究所の設計及び処分場の概念設計、安全評価を進めることとなっている。中国核工業集団公司(CNNC)は、6カ所の高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域(西北地域、内モンゴル地域、華東地域、西南地域、広東北部地域、新疆ウイグル地域)について、予備的な比較検討を実施して西北地域の北山を重点対象とし、サイト選定における地質・水文地質学的条件、地震学的条件及び社会・経済的な条件に関する調査を実施した。

北京地質研究院(BRIUG)は2016年に、地下研究所建設プロジェクトの提案を起草するとともに、甘粛省北山(ペイシャン)において、地下研究所のサイト評価のためのデータ取得を目的としたボーリング孔の掘削を進めていた。中国北山地下研究所の建設プロジェクトは、2019年に中国の最高の国家行政機関である国務院の同意を受け、国防科学技術工業局によって承認された。

■第2段階以降の活動計画

活動計画の第2段階となる2021年~2040年の期間では、地下研究所の建設、地下研究所での各種試験、プロトタイプ処分場のフィージビリティ評価と建設許可申請、安全評価を実施する計画である。北京地質研究院(BRIUG)は今後、中国北山地下研究所の建設プロジェクトを進めるほか、放射性廃棄物管理のための政策等を担当する国家原子能機構(CAEA)の委託を受けて、国内外の研究者や専門家の交流を推し進める国の研究開発プラットフォームとなる「高レベル放射性廃棄物地層処分イノベーションセンター」を設置する計画である。

活動計画の第3段階となる2040年~今世紀半ばにかけては、プロトタイプ処分場において、実廃棄体を用いた試験を行い、処分場の総合的な機能を検証し、実際の地層処分場の建設許可申請と安全評価、環境影響評価を行うこととなっている。

【出典】


  1. 中国語では「中国北山地下实验室」と表記される。 []

中国の立法機関である全国人民代表大会(全人代)で、2017年9月1日、初めての原子力安全に関する法案が可決され、同日の習近平国家主席の署名を経て「原子力安全法」として公布された。中国ではこれまで、放射性廃棄物の処理・処分を含めた原子力安全については、放射能汚染防止法等の法律や、国務院が定める条例、安全規制機関である国家核安全局(NNSA)が定める規則など複数の法令に規定されてきた。原子力安全法は、これらの法令等の規定を一部取り入れている他、これまで定められていなかった規定を新たに加えている。原子力安全法は2018年1月1日に施行される。

原子力安全法で改めて規定された内容と新たに追加された内容

使用済燃料の処理・処分に係る資金確保については、国家原子能機構(CAEA)及びその他の関連組織が策定した規則「原子力発電所の使用済燃料の処理処分基金の徴収、使用及び管理に関する暫定手続き」において、原子力発電事業者が使用済燃料の処分費用を負担するとの規定があったが、今回初めて法律のレベルで原子力発電事業者による処分費用の負担が定められた。原子力施設の廃止措置費用と放射性廃棄物の処分費用については、原子力発電事業者が事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含めるとされた。

高レベル放射性廃棄物の処分方法については、放射能汚染防止法において地層処分すると規定していたが、今回の原子力安全法でも地層処分することが条文に盛り込まれている。低・中レベル放射性廃棄物の処分方法については、放射能汚染防止法で規定されていた地表処分に加え、原子力安全法では新たに中深度処分1 の概念が加えられた。

処分施設のサイト選定計画の策定については、国家核安全局(NNSA)の指針である「高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定」及び国家環境保護総局(2008年に中国環境保護部2 に改組)の基準「低・中レベル放射性廃棄物の浅地中処分施設のサイト選定」において、サイト選定計画の作成を要求する規定があったが、今回の原子力安全法では各機関の役割がより明確化されており、国務院の原子力担当部署がサイト選定計画を定めた上で、国務院の承認を受ける必要があると規定している。

原子力安全法の制定前の放射性廃棄物の処理・処分等に関する規定と原子力安全法における規定を下表で比較した。

放射性廃棄物の処理・処分等に関するこれまでの各法令と今回の原子力安全法のとの比較
原子力安全法制定前の
各法令の規定
原子力安全法の規定
資金確保

原子力発電所は、使用済燃料の処理処分費用を負担し、それを発電コストとして計上する。
営業運転の開始5年以降の加圧水型原子炉の売電量に応じて、1kWh当たり0.026人民元(約0.4円、1人民元=16円で換算)を徴収。
(規則「原子力発電所の使用済燃料の処理処分基金の徴収、使用及び管理に関する暫定手続き」第4条、第5条、第10条)

原子力施設の事業者は、国の規定に基づき使用済燃料の処理処分費用を負担し、それを発電コストとして計上する。(第48条)

原子力施設の事業者は、原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物処理の処分費用を事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含める。(「放射能汚染防止法」第27条)

原子力施設の事業者は、原子力施設の廃止措置費用と放射性廃棄物の処分費用を事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含める。(第48条)

放射性廃棄物の
処分方法

高レベル固体放射性廃棄物は、集中的な深地層処分を行う。(「放射能汚染防止法」第43条)

高レベル放射性廃棄物は地層処分するものとし、処分は国務院が指定する組織が実施する。

低・中レベル固体放射性廃棄物は、地表処分を行う。(「放射能汚染防止法」第43条)

低・中レベル放射性廃棄物は、地表処分または中深度処分する。(第40条)

サイト選定計画
の策定

高レベル放射性廃棄物についてはサイト選定計画を作成する。(指針「高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定」セクション2.3)

国務院の原子力担当部署は、関係部署と協力して、高レベル放射性廃棄物のサイト選定計画を策定し、国務院の承認を経て実施する。(第42条)

低・中レベル放射性廃棄物については、サイト選定計画を作成する。(基準「低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分施設のサイト選定」セクション4.2)

国務院の原子力担当部署は、関係部署や地方政府と協力して、低・中レベル放射性廃棄物のサイト選定計画を策定し、国務院の承認を経て実施する。(第42条)

【出典】

 


  1. 「中深度処分」の原語は「中等深度処置」である。2017年2月10日付で、国家核安全局が属する環境保護部が公表した「固体放射性廃棄物の区分方法(案)」では、中レベル放射性廃棄物が、アルファ核種を主として長寿命核種を多く含有し、地表処分ができない廃棄物と定義されており、これを中深度処分するとされている。中深度処分場は、洞窟を含め、地表から数十~数百m離れた地層処分場、及びボーリング孔による処分場とされている。 []
  2. 日本の省に相当する中国環境保護部(MEP)は、国家核安全局(NNSA)を所管しており、MEPに5人いる副部長のうちの1人がNNSAの局長を兼任している。 []

中国の北京地質研究院(BRIUG)は2016年3月22日付のプレスリリースで、2016年3月18日に、高レベル放射性廃棄物の処分サイト候補地域の一つである西北地域にある甘粛省北山(ペイシャン)において、地下研究所のサイト評価のためのデータ取得を目的としたボーリング孔の掘削を開始したことを公表した。既に実施しているフィールド試験で取得しているデータも利用しつつ、今後実施する地下研究所のサイト選定と設計にとって重要な技術的パラメータや根拠の取得を目的としている。

北京地質研究院(BRIUG)は、中国の原子力発電事業を行う中国核工業集団公司(CNNC)の下部組織の一つであり、ウラン採掘に係る地質学・鉱物資源調査や、リモートセンシング技術の研究部門を有している。BRIUGは、これらの地質調査技術を元に、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究を実施している。中国における高レベル放射性廃棄物処分の実施主体は、国営企業体であるCNNCである。

処分場候補サイト調査対象地域現在、中国における高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた取り組みは、2006年2月に策定された「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」に則して実施されている。CNNCは、6カ所の処分サイトの候補地域――西北地域、内モンゴル地域、華東地域、西南地域、広東北部地域、新疆ウイグル地域――について実施した予備的な比較に基づいて、西北地域の北山を重点対象として、サイト選定における地質・水文地質学的条件、地震学的条件及び社会・経済的な条件に関する調査を実施してきた。また、部分的にボーリング孔の掘削も実施して岩盤や地下水のサンプルを採取し、花崗岩サイトの予備的評価方法を開発してきた。

北京地質研究院(BRIUG)のプレスリリースによれば、甘粛省北山(ペイシャン)において深度1,000メートルに達する2本のボーリング孔を含めて、合計6本のボーリング孔を掘削する計画である。BRIUGは今回のボーリング調査を、高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた地下研究所のサイト評価作業が正式に開始されたことを示すものと位置づけている。「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」によれば、今後、中国では2020年前後を目途に、実験室レベルでの研究開発と処分場のサイト選定、地下研究所の設計及び処分場の概念設計、安全評価が実施される予定となっている。

【出典】

中国環境保護部核安全管理司1 は、2011年1月4日、西北低中レベル放射性固体廃棄物処分場(以下「西北処分場」)及び広東低中レベル放射性固体廃棄物北龍処分場(以下「北龍処分場」)の2つの低中レベル放射性廃棄物処分場に対して、中国国家核安全局2 からそれぞれ操業許可が発給されたことを発表し、許可証の内容を公表した。

中国の低中レベル放射性廃棄物処分場の位置

西北処分場は、中国北西部甘粛省の鉱山区にあり、北龍処分場は広東省深圳(シンセン)市の大亜湾原子力発電所サイト内にある。2つの処分場では、既に低中レベル放射性廃棄物処分の試験操業が実施されていた。

今回公表された許可証には、北龍処分場について、大亜湾、嶺澳等の原子力発電所の運転と廃止措置で発生する低中レベル放射性廃棄物を処分することが示されている。

今回の操業許可は、「中華人民共和国放射性汚染防止法」及び「中華人民共和国民用核施設安全監督管理条例」と、これらの実施細則の関連要件に基づいて発給されており、処分場の操業者に対しては、以下に示す共通要件と、下表に示す処分場個別の要件の遵守が求められている。

  • 許可される活動内容は、基準を満たす低中レベル放射性廃棄物の受け入れ、貯蔵及び処分である。受け入れ可能な廃棄物の基準として、アルファ核種の平均比放射能濃度は1,000グラム当たり3.7×105ベクレルを超えないものとし、また使用済密封線源の処分は許可されない。
  • 許可証の有効期限は、低中レベル放射性廃棄物の受け入れ開始から、閉鎖許可文書が発行されるまでとする。
  • 許可期間中、処分場の操業者は10年ごとに定期安全評価を行い、評価結果を中国国家核安全局に報告して審査を受けること。
  • 処分場操業者は処分ユニットを閉鎖する1年前に、中国国家核安全局に閉鎖段階の申請文書及びその根拠となる資料を提出すること。
  • 処分場操業者は、国家核安全局に毎年3月31日までに、前年度の操業総括報告を提出すること。
  • 処分場における事故や認可事項の変更などの場合には、中国国家核安全局に報告・届出ること。
  • 中国環境保護部の所管する現地安全監督センター及び地元自治体の実施する監督検査を受けること。
西北・北龍処分場の概要と個別要件
西北処分場 北龍処分場
許可取得者
(処分場操業者)
中核清原環境技術工程有限責任公司 広東大亜湾核電環保有限公司
処分場所在地 甘粛省の鉱山区 広東省深圳市大鵬鎮
(大亜湾原子力発電所敷地内)
処分方式 浅地中処分 浅地中処分
処分場敷地面積 20.5万平方メートル
建設開始時期 1995年 1998年6月
試験操業開始時期 1999年 2000年10月
試験操業時の廃棄物処分量 3,310立方メートル

8.69×1012 ベクレル

787.78立方メートル

2.7696×1013 ベクレル

処分容量 6万立方メートル

3.2×1016 ベクレル

8万立方メートル

5.4×1015 ベクレル

処分ユニット 64×23×5.3(5.7)メートルのユニット18個 17×17×7メートルのユニット70個
処分を許可される放射性核種総量
ストロンチウム90 1.5×1016 ベクレル 3.7×1011 ベクレル
セシウム137 1.7×1016 ベクレル 1.1×1015 ベクレル
ニッケル63 3.4×1012 ベクレル 9.6×1014 ベクレル
炭素14 6.3×1011 ベクレル 3.3×1013 ベクレル
テクネチウム99 1.3×1011 ベクレル 4.2×1012 ベクレル
ヨウ素129 5.2×108 ベクレル 3.3×1015 ベクレル
プルトニウム239 8.4×1010 ベクレル 3.4×1011 ベクレル

【出典】


  1. 「核安全管理司」:中国環境保護部(部は日本の省に相当)に設置されている、原子力安全及び放射線安全の監督・管理を担当する政府機関。 []
  2. 「中国国家核安全局」:中国環境保護部副部長が局長を兼任する原子力関連機関。原子力全般に関する政策・計画・法整備や、申請を受けた許認可の審査・発給などを担当している。 []

国家原子能機構(CAEA)1 の2006年2月23日付のニュースリリースにおいて、国防科学技術工業委員会、科学技術部及び国家環境保護総局による「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」が正式に公表された。

中国では原子力発電所の増加に伴い、発電所から発生する放射性廃棄物の量も増大しており、放射性廃棄物の処分、特に高レベル放射性廃棄物を安全に処分するという問題が、原子力の持続的発展を阻害する一つの要因となっている。2003年に公布された「中華人民共和国放射能汚染防止法」にて、中国の高レベル放射性廃棄物及びアルファ廃棄物2 は集中的に深地層処分するという基本政策が明確にされたことを受け、中国における原子力の持続的発展のための条件として、高レベル放射性廃棄物の地層処分研究をさらに進展させるための計画整備が求められていた。

この「ガイド」は、今世紀半ばに高レベル放射性廃棄物を安全に処分するという目標の達成に向けて、中国での高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発活動を進める上での指針となるものであり、ここには研究開発の全体構想や発展目標、研究開発計画綱要及び「第11次5カ年計画」期間中の主な研究開発課題が示されている。ここで地層処分の研究開発計画は、以下の3つの段階に分けられている。

  1. 2006年~2020年:実験室レベルでの研究開発と処分場のサイト選定、地下研究所の設計及び処分場の概念設計、安全評価
  2. 2021年~2040年:地下研究所の建設、地下研究所での各種試験、プロトタイプ処分場のフィージビリティ評価、建設申請及び安全評価
  3. 2041年~今世紀半ば:プロトタイプ処分場の建設と検証、処分場のフィージビリティ評価、建設申請及び安全評価、処分場の操業申請及び安全評価

今後、中国ではこのガイドを基に、国レベルでの地層処分に関する研究発展計画が立案され、研究開発を全面的かつ科学的に系統立てながら実施し、高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた各種の課題を適切に解決することが求められている。

【出典】

  • 国家原子能機構(CAEA)、ニュースリリース
    http://www.caea.gov.cn/n602669/n602674/n602695/n602700/49147.html
  • 国防科学技術工業委員会ほか、「高放废物地质处置研究开发规划指南」高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド、2006年2月
    http://www.costind.gov.cn/n435777/n435781/n435912/appendix/2006224173659.doc

  1. 国家原子能機構(CAEA)は、高レベル放射性廃棄物処分にあたり、政策立案、研究開発資金の提供などの実務管理を行う国の機関である。 []
  2. 中国の「放射性廃棄物分類(GB9133-95)」では、アルファ廃棄物は、固体廃棄物のうち、半減期が30年超のアルファ核種を含み、比放射能が 4×106Bq/kg(4GBq/t)以上の放射性廃棄物として区分されている。 []