中国の北京地質研究院(BRIUG)は2016年3月22日付のプレスリリースで、2016年3月18日に、高レベル放射性廃棄物の処分サイト候補地域の一つである西北地域にある甘粛省北山(ペイシャン)において、地下研究所のサイト評価のためのデータ取得を目的としたボーリング孔の掘削を開始したことを公表した。既に実施しているフィールド試験で取得しているデータも利用しつつ、今後実施する地下研究所のサイト選定と設計にとって重要な技術的パラメータや根拠の取得を目的としている。
北京地質研究院(BRIUG)は、中国の原子力発電事業を行う中国核工業集団公司(CNNC)の下部組織の一つであり、ウラン採掘に係る地質学・鉱物資源調査や、リモートセンシング技術の研究部門を有している。BRIUGは、これらの地質調査技術を元に、高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する研究を実施している。中国における高レベル放射性廃棄物処分の実施主体は、国営企業体であるCNNCである。
現在、中国における高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた取り組みは、2006年2月に策定された「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」に則して実施されている 。CNNCは、6カ所の処分サイトの候補地域――西北地域、内モンゴル地域、華東地域、西南地域、広東北部地域、新疆ウイグル地域――について実施した予備的な比較に基づいて、西北地域の北山を重点対象として、サイト選定における地質・水文地質学的条件、地震学的条件及び社会・経済的な条件に関する調査を実施してきた。また、部分的にボーリング孔の掘削も実施して岩盤や地下水のサンプルを採取し、花崗岩サイトの予備的評価方法を開発してきた。
北京地質研究院(BRIUG)のプレスリリースによれば、甘粛省北山(ペイシャン)において深度1,000メートルに達する2本のボーリング孔を含めて、合計6本のボーリング孔を掘削する計画である。BRIUGは今回のボーリング調査を、高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けた地下研究所のサイト評価作業が正式に開始されたことを示すものと位置づけている。「高レベル放射性廃棄物地層処分に関する研究開発計画ガイド」によれば、今後、中国では2020年前後を目途に、実験室レベルでの研究開発と処分場のサイト選定、地下研究所の設計及び処分場の概念設計、安全評価が実施される予定となっている。
【出典】
- 北京地質研究院(BRIUG)、2016年3月22日付プレスリリース
http://www.briug.cn/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=22&id=978 - 北京地質研究院(BRIUG)ウェブサイト、
http://www.briug.cn/index.php?m=content&c=index&a=lists&catid=13 - 中国核工業集団公司(CNNC)ウェブサイト、
http://en.cnnc.com.cn/2016-02/01/c_49164.htm - 放射性廃棄物等安全条約に基づく中国国別報告書(第3回)、2014年9月、
http://nnsa.mep.gov.cn/gjhz_9050/gjgybg/201512/P020151223562288196956.pdf
(post by yamamoto.keita , last modified: 2023-10-11 )