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《中国》原子力安全法が成立

中国の立法機関である全国人民代表大会(全人代)で、2017年9月1日、初めての原子力安全に関する法案が可決され、同日の習近平国家主席の署名を経て「原子力安全法」として公布された。中国ではこれまで、放射性廃棄物の処理・処分を含めた原子力安全については、放射能汚染防止法等の法律や、国務院が定める条例、安全規制機関である国家核安全局(NNSA)が定める規則など複数の法令に規定されてきた。原子力安全法は、これらの法令等の規定を一部取り入れている他、これまで定められていなかった規定を新たに加えている。原子力安全法は2018年1月1日に施行される。

原子力安全法で改めて規定された内容と新たに追加された内容

使用済燃料の処理・処分に係る資金確保については、国家原子能機構(CAEA)及びその他の関連組織が策定した規則「原子力発電所の使用済燃料の処理処分基金の徴収、使用及び管理に関する暫定手続き」において、原子力発電事業者が使用済燃料の処分費用を負担するとの規定があったが、今回初めて法律のレベルで原子力発電事業者による処分費用の負担が定められた。原子力施設の廃止措置費用と放射性廃棄物の処分費用については、原子力発電事業者が事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含めるとされた。

高レベル放射性廃棄物の処分方法については、放射能汚染防止法において地層処分すると規定していたが、今回の原子力安全法でも地層処分することが条文に盛り込まれている。低・中レベル放射性廃棄物の処分方法については、放射能汚染防止法で規定されていた地表処分に加え、原子力安全法では新たに中深度処分 1 の概念が加えられた。

処分施設のサイト選定計画の策定については、国家核安全局(NNSA)の指針である「高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定」及び国家環境保護総局(2008年に中国環境保護部 2 に改組)の基準「低・中レベル放射性廃棄物の浅地中処分施設のサイト選定」において、サイト選定計画の作成を要求する規定があったが、今回の原子力安全法では各機関の役割がより明確化されており、国務院の原子力担当部署がサイト選定計画を定めた上で、国務院の承認を受ける必要があると規定している。

原子力安全法の制定前の放射性廃棄物の処理・処分等に関する規定と原子力安全法における規定を下表で比較した。

放射性廃棄物の処理・処分等に関するこれまでの各法令と今回の原子力安全法のとの比較
原子力安全法制定前の
各法令の規定
原子力安全法の規定
資金確保

原子力発電所は、使用済燃料の処理処分費用を負担し、それを発電コストとして計上する。
営業運転の開始5年以降の加圧水型原子炉の売電量に応じて、1kWh当たり0.026人民元(約0.4円、1人民元=16円で換算)を徴収。
(規則「原子力発電所の使用済燃料の処理処分基金の徴収、使用及び管理に関する暫定手続き」第4条、第5条、第10条)

原子力施設の事業者は、国の規定に基づき使用済燃料の処理処分費用を負担し、それを発電コストとして計上する。(第48条)

原子力施設の事業者は、原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物処理の処分費用を事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含める。(「放射能汚染防止法」第27条)

原子力施設の事業者は、原子力施設の廃止措置費用と放射性廃棄物の処分費用を事前に予算に組み込み、投資予算または発電コストに含める。(第48条)

放射性廃棄物の
処分方法

高レベル固体放射性廃棄物は、集中的な深地層処分を行う。(「放射能汚染防止法」第43条)

高レベル放射性廃棄物は地層処分するものとし、処分は国務院が指定する組織が実施する。

低・中レベル固体放射性廃棄物は、地表処分を行う。(「放射能汚染防止法」第43条)

低・中レベル放射性廃棄物は、地表処分または中深度処分する。(第40条)

サイト選定計画
の策定

高レベル放射性廃棄物についてはサイト選定計画を作成する。(指針「高レベル放射性廃棄物地層処分施設のサイト選定」セクション2.3)

国務院の原子力担当部署は、関係部署と協力して、高レベル放射性廃棄物のサイト選定計画を策定し、国務院の承認を経て実施する。(第42条)

低・中レベル放射性廃棄物については、サイト選定計画を作成する。(基準「低中レベル放射性廃棄物の浅地中処分施設のサイト選定」セクション4.2)

国務院の原子力担当部署は、関係部署や地方政府と協力して、低・中レベル放射性廃棄物のサイト選定計画を策定し、国務院の承認を経て実施する。(第42条)

【出典】

 


  1. 「中深度処分」の原語は「中等深度処置」である。2017年2月10日付で、国家核安全局が属する環境保護部が公表した「固体放射性廃棄物の区分方法(案)」では、中レベル放射性廃棄物が、アルファ核種を主として長寿命核種を多く含有し、地表処分ができない廃棄物と定義されており、これを中深度処分するとされている。中深度処分場は、洞窟を含め、地表から数十~数百m離れた地層処分場、及びボーリング孔による処分場とされている。[]
  2. 日本の省に相当する中国環境保護部(MEP)は、国家核安全局(NNSA)を所管しており、MEPに5人いる副部長のうちの1人がNNSAの局長を兼任している。[]

(post by yamamoto.keita , last modified: 2023-10-10 )