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スイス

スイス連邦エネルギー庁(BFE)は2006年3月15日付のプレスリリースにおいて、地層処分場のサイト選定に向けた手続きなどを定めた、特別計画(詳細はこちら)「地層処分場」(既報、 以下「特別計画」という)の一部をなす方針(以下「特別計画の方針」という)の草案を公表した。プレスリリースによると、特別計画の方針は継続的な情報公開、候補対象を3段階で絞る透明性の高いサイト選定手続き、関係する州、自治体及び隣国との協力を保証するものになるとされている。

今回公表された草案によると、特別計画の方針によって、放射性廃棄物を国内で処分するための諸前提が定められるとされている。特別計画は、処分場のサイト選定における安全技術等に関する基準を確定し、サイト選定手続きを定め、最終的に処分場サイトを決定するものであり、このうち特別計画の方針は、具体的なサイト等の特定をせずに手続きや基準のみを定めたものである。今回の草案によると、特別計画の方針は、連邦エネルギー庁(BFE)によって作成され、連邦評議会による承認を受けることにより、サイト選定手続きの実施作業の開始が可能となるとされている。

今回の特別計画の方針の草案では、サイト選定は以下のように3段階の手続きで進められることが示されている。

  1. 特別計画の方針で示された安全技術上の基準に従い、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料(HLW)、低中レベル放射性廃棄物(LILW)1 のそれぞれについて、立地候補となる地域を選定
  2. HLW、LILWそれぞれについて、少なくとも2カ所以上の処分場候補サイトを選定
  3. HLW、LILWそれぞれについて、処分場サイトを1カ所選定(または全ての廃棄物を処分する処分場サイトを1カ所選定)

サイト選定後には、概要承認手続き(詳細は こちら)が行われることになる。

また、今回の特別計画の方針の草案では、スイスにおける今後の地層処分場のサイト選定に向けたスケジュールが以下のように示されている。

手続き 時期 内容

特別計画

地層処分場

特別計画の方針の策定 2007年 連邦評議会が特別計画の方針を承認
特別計画の実施 ~2013年/2016年2 ・特別計画の方針(安全技術基準)に基づき、HLW及びLILWそれぞれについて立地候補となる地域を選定【2~3年】
・社会経済的影響調査、空間開発計画などの評価、2ヶ所以上の処分場候補サイトにおいてプロジェクトの具体化【2~3年】
・HLW及びLILWそれぞれについての概要承認申請書の準備及び提出(必要に応じて地球科学的調査を実施)【2~3年】
概要承認手続き ~2017年/2020年 HLW及びLILWそれぞれについての連邦評議会による概要承認の発給【2年】
HLW及びLILWそれぞれについての概要承認発給に関する議会による承認、国民投票による可決【2年】
建設許可手続き ~2021年 /2028年 HLW及びLILWそれぞれについての建設許可手続き、必要に応じた地球科学的調査の追加実施 【4~8年】
岩盤研究所・地下坑道の建設・操業、操業許可 LILW
~2028年/2035年
LILW処分に向けた岩盤研究所の建設と操業準備【約4年】、岩盤研究所の操業【約3年】
処分場の操業許可申請書の作成・準備
HLW
~2038年/2045年
HLW処分に向けた地下坑道と岩盤研究所の建設【約7年】、岩盤研究所の操業【約10年】
処分場の操業許可申請書の作成・準備
操業開始 LILW
2030年~
LILW処分場の操業開始
HLW
2040年~
HLW処分場の操業開始


【出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2006年3月15日付プレス リリース、http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=3766
  • BFE、特別計画「地層処分場」の方針案(改訂版)、2006年3月15日、http://www.news.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/2205.pdf
  • 原子力法、 http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/732.1.de.pdf
  • 原子力令、 http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/732.11.de.pdf

【2007年1月15日追記】

2007年1月12日付連邦エネルギー庁(BFE)プレスリリースによると、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、特別計画の方針の草案の最新改訂版を国内外の関係自治体などに提出し、意見聴取手続を開始した。意見聴取期間は2007年4月20日までの予定である。UVEKは意見聴取の結果を、特別計画の方針の最終化に当たり考慮することとしている。その後、2007年の夏頃に連邦評議会により、特別計画の方針の決定が行われることが見込まれている。
なお、特別計画の方針の草案については、2006年3月15日の公表後、諮問ワークショップ及びフォーカスグループにおける議論 等を踏まえ、2007年1月11日には最新改訂版が公表されていた。

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2007年1月12日付プレスリリース、 http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=48
  • BFE、特別計画「地層処分場」の方針の草案(最新改訂版)、2007年1月11日、 http://www.entsorgungsnachweis.ch/media/dokumente/Sachplan/Sachplan_geologische_Tiefanlager070111_d.pdf

【2007年3月27日追記】

スイスの特別計画「地層処分場」の方針部分の草案に対する意見聴取について、ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)が設置した専門家グループが行った評価が公表された。2007年3月26日付ドイツ連邦放射線防護庁(BfS)プレスリリースによると、専門家グループは、特別計画が透明性のある選定手続を可能とするものであり、国際的な防護目標や高度な安全基準を考慮したものであると評価している。また、ドイツが潜在的な隣接国として、サイト選定手続に当初から参画できるようにすべきであると勧告している。

なお、ドイツでは、スイスの地層処分場が国境地域に設置される可能性があることから、サイト選定に対する関心が高く、専門家グループはそうした諮問のために設置されたものである。

  • ドイツ連邦放射線防護庁(BfS)、2007年3月26日付プレスリリース、http://www.bfs.de/bfs/presse/pr07/pr0704.html

  1. アルファ廃棄物(アルファ線放射体の含有量が20,000Bq/gを超える廃棄物)は分類され、一部はHLWの処分場、残りはLILWの処分場に処分することが今回の特別計画の方針の草案で示されている。 []
  2. 別途ボーリング調査などが必要な場合、期間が変動する。 []

連邦エネルギー庁(BFE)は2006年2月15日付のプレスリリースにおいて、スイスにおける地層処分場のサイト選定に向けた手続きなどを定めた、地層処分場の特別計画(詳細は こちら)(Sachplan Geologische Tiefenlager、以下「特別計画」という)の策定に関する現在の見通しを公表した。

スイスでは、連邦政府が空間及び環境に大きな影響を与える事業を行う際に、当該事業に関する特別計画を定めることが都市計画法・令において求められている。連邦評議会は2004年12月に、地層処分場についてもこの特別計画を策定し、サイト選定手続き及び適用されるべき判断基準などをその中で定めることを決定した。2005年2月に施行された原子力令には、この特別計画の策定に関する規定が盛り込まれている。
連邦政府は、この特別計画を策定することにより、空間利用計画の観点から関連する事業に関する全ての影響を適切に調整し、公的機関、その他利害関係を有する組織に加え、影響を受ける州、自治体、周辺国の当局などを早い段階から手続きに関与させることを保証するとしている。

同プレスリリースによると、BFEは連邦評議会の指示の下、特別計画の策定のための基礎的な作業を行っており、この特別計画の一部をなす方針(事業目標及びその達成に向けた枠組みなどを定める部分、以下「特別計画の方針」という)について、現段階では草案の第一次案が準備されたところとしている。BFEは国土計画庁(ARE)との共同作業の下、以下のような特別計画の策定プロセスを立案している。

  • 2006年3月中旬:BFEが特別計画の方針(案)を公表し、州の関係部署への意見聴取を実施
  • 2006年6~8月:意見の反映がなされた特別計画の方針(案)について、諮問ワークショップ及びフォーカスグループが協力体制の下で議論を実施。その結果を連邦官庁及び近隣諸国に提示し、意見聴取を実施
  • 2006年11月頃:それまでの意見聴取・議論などを踏まえ、広範囲にわたる意見聴取の実施のために、最新の特別計画の方針(案)を連邦官庁及び近隣諸国、国内の関係諸機関に対して提示
  • 2007年前半:連邦評議会が各州への意見聴取後、特別計画の方針に関する決定を行う見込み

同プレスリリースでは、処分場のサイト選定については、まずスイス全体を対象に検討を行い、次第に候補を絞り込むことがこの特別計画(詳細は こちら)の方針の中で示されるとしている。この流れを受けて、2004年9月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)より、高レベル放射性廃棄物の処分場に関して、チュルヒャー・ヴァインラントの代替候補地域を提示する報告書の提出を求められ 、2005年9月にこの報告書を公表している

2006年には連邦評議会が処分の実現可能性実証プロジェクトに対する決定を行う予定となっているが、その際に この特別計画の方針によって、高レベル放射性廃棄物の処分場に関する将来的な手続きが示されるとしている。なお、原子力法に基づいて放射性廃棄物の管理義務を負う者が放射性廃棄物管理プログラムを作成することが求められているが、NAGRAはプログラム作成のためには、連邦評議会のこうした決定によって、具体的な条件などが示されるのを待つ必要があるとしている。

【出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2006年2月15日付プレスリリース、http://www.energie-schweiz.ch /internet/medienmitteilungen/04123/index.html?lang=de
  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)2004年年次報告書、2005年4月
  • 原子力令、http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/732.11.de.pdf
  • 都市計画法、http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/700.de.pdf
  • 都市計画令、http://www.admin.ch/ch/d/sr/7/700.1.de.pdf
  • 国土計画庁、連邦の方針及び特別計画(都市計画法第13条)、1997年12月

【2006年10月18日追記】

連邦エネルギー庁(BFE)は、2006年10月13日付プレスリリースにおいて、2006年6月から8月にかけて、特別計画の方針案に関し諮問ワークショップ が開催され、フォーカスグループにおける議論2)が実施されたことを公表した1 。また、それらの結果を取りまとめた報告書がBFEウェブサイト上に掲載された。

【追記部出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)、2006年10月13日付プレスリリース、http://www.bfe.admin.ch/energie/00588 /00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=7684

  1. 諮問ワークショップは、様々な組織や政党の代表によるワークショップで2006年6月16日に開催された。また、今回のフォーカスグループにおける議論は、2006年6月から8月にかけて、ラッペルスビル、ベルン、ローザンヌ、ノイエンブルク、オルテンの5ヶ所で 開催された。 []

スイスの連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2005年9月12日付のプレスリリースにおいて、2002年末に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に関する連邦当局による技術的な検証作業が、同日公表された評価文書及び報告書をもって終了したことを発表した。また、2004年9月に連邦環境・運輸・エネルギー・通信相がNAGRAに対し、チュルヒャー・ヴァインラント地域の代替案となる高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域の提示のために作成を要請 した、NAGRAのオプション報告書も公表された。「処分の実現可能性実証プロジェクト」は1978年に連邦政府によってその実施が求められたもので、2002年12月にNAGRAはチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とする「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を発表している

今回のプレスリリースによると、以下の4つの文書によって、評価文書を含む「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書に関連するすべての報告書類が揃ったことになる。

NAGRAのオプション報告書:
NAGRAは地質学的観点から、高レベル放射性廃棄物処分場の候補サイトとして、母岩候補が存在する地域とその岩種、具体的に候補となりうる区域などを記述し、オパリナス粘土とその他の候補となる母岩(結晶質岩と、下部淡水モラッセの粘土層)を比較して、オパリナス粘土の母岩が安全性の観点からみて優位にあるという判断を提示。
処分の実現可能性実証プロジェクトに関する原子力施設安全本部(HSK)の検証:
HSKは、使用済燃料、ガラス固化された高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物に関して、法律で定められた処分の実現可能性の実証が、NAGRAによって適切に実施されたという全体的な見解を提示。
高レベル放射性廃棄物処分の歴史的な経緯に関するHSKの報告書:
HSKは、一般公衆を対象に、高レベル放射性廃棄物処分に関する歴史的な経緯を読みやすいパンフレット形式でまとめ、処分の実現可能性実証のためにチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土が選択された理由を説明。
処分の実現可能性実証に関する原子力施設安全委員会(KSA)の見解表明:
KSAは、スイスにおける高レベル放射性廃棄物処分の実現可能性の実証がNAGRAによって適切に実施されたと結論。


同プレスリリースでは、2005年9月13日から2005年12月12日までの間、関連する全ての文書が公表され、スイス国内のみならず隣接する外国を含めて、関心を有するすべての州、地方自治体、組織及び個人などが、これらの報告書に関する意見を表明することができるとされている。また、この意見収集手続きにおいて、関連する当局、住民及び隣接する外国に対する情報の公開とその継続的な提供が連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)にとって重要であると述べられている。このために、連邦エネルギー庁(BFE)はチュルヒャー・ヴァインラントのあるチューリッヒ州の建設局との協力により、2005年9月17日に同州内の自治体の一つであるマルタレンにおいて、地域住民への情報提供のための集会を開催するとしている。

また、2005年9月9日には、BFE関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリースにおいて、チュルヒャー・ヴァインラント北部での「処分の実現可能性実証プロジェクト」の社会・経済的な影響に関する調査が実施されたことが報じられ、調査報告書が公開された。同プレスリリースによると、この調査は、高レベル放射性廃棄物処分場の建設及び操業が、チュルヒャー・ヴァインラント北部地域の経済及び地元住民の生活の質に与える影響についての調査を目的として、NAGRAの費用負担で、同地域の3つの自治体の代表などからなるオパリナス・ワーキンググループにより実施されたものである。

さらに同プレスリリースは、この調査と並行して、BFEにより、国内外において建設または建設予定の地層処分場に関して、社会・経済的な影響に関する基礎的な調査が実施されており、調査の結果が2005年末に公表される予定としている。

「処分の実現可能性実証プロジェクト」に関する関連評価書・報告書類は以下のサイトで閲覧が可能である。
http://www.entsorgungsnachweis.ch/index.php?navID=39&userhash=457211&lID=1

【出典】

  • BFE関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリース(2005年9月9日) (http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=35)
  • 連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)プレスリリース(2005年9月12日)(http://www.energie-schweiz.ch/imperia/md/content/medienmitteilungen/mm07-122005/24.pdf)

【2005年12月15日追記】

連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2005年12月13日付けのプレスリリースにおいて、2005年12月12日をもって高レベル放射性廃棄物の処分の実現可能性実証に関して公開された文書及び報告書についての意見聴取期間が終了したことを発表した。

同プレスリリースによると、連邦エネルギー庁(BFE)の下には約3,800件の見解が寄せられ、その内訳はスイス国内の個人、州、市町村、政党などから825件、ドイツは連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)からのものも含めて2,770件、オーストリアから200件、フランスから5件となっている。

また、同プレスリリースによると、BFEは今後数ヶ月をかけて寄せられた見解の分析を行い、報告書を取りまとめるとしている。また、連邦評議会はこの報告書及び「処分の実現可能性実証プロジェクト」に関連する文書に基づいて、2006年上半期には処分の実現可能性が実証されたかどうかの判断を行うとしている。

  • 連邦環境・交通・エネルギー・通信省(UVEK)プレスリリース(2005年12月13日)
    (http://www.uvek.admin.ch/dokumentation/00474/00492/index.html?lang=de&msg-id=1189)

【2006年6月20日追記】

2006年6月15日、連邦エネルギー庁(BFE)関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトにおいて、BFEが提出した地層処分場の社会・経済的な影響に関する調査報告書が公開された。

  • 連邦エネルギー庁(BFE)関連の放射性廃棄物処分に関する情報公開用ウェブサイトのプレスリリース(2006年6月15日)
    (http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=43)

2005年4月28日に、放射性廃棄物管理委員会(KNE)1 の「NAGRAのチュルヒャー・ヴァインラントにおけるオパリナス粘土プロジェクト-地球科学的なデータの基礎および工学的な実現可能性についての判断」と題する評価報告書が原子力施設安全本部(HSK)のウェブサイト上に公開された。同報告書は、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書 に対して、KNEが地質学および工学的側面における評価をまとめたものである。この中で、KNEはチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層が、使用済燃料、高レベル放射性廃棄物および長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場サイトとして地質学的に適していることが実証されていると結論を下している。

KNEの評価報告書では、チュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層について、これまでの地質学的な変遷に関する入手可能なデータによる解析および解釈の結果、今後数百万年間のうちに、地層処分場を露出させるような侵食を生じるプロセスの存在を示唆するものは無いとしている。また、NAGRAが長期的な安全評価のために用いた地質学上の仮定は、慎重に収集および解析されたデータに基づいており、地質に関するデータを最新の技術を用いて適切にまた正しく解釈していると評価している。

また、KNEは同報告書の中で、深さ650mのオパリナス粘土層における処分場建設に関する工学的な概念の評価も行い、技術的に実現可能であるという結論を下している。なお、処分場のアクセス坑道のレイアウトや立坑の建設に関して、坑道の規模などに関するいくつかの重要な問題点や提案を示しているが、これらは処分場の実現可能性には影響しないとしている。

さらに、KNEは、評価報告書の中でNAGRAに対して、今後の調査の過程で明らかにされるべき問題点や勧告なども示している。これらの問題点の多くは、処分場の建設過程および放射性廃棄物の処分によって生じ得る熱の発生などの物理的および化学的な変化が、オパリナス粘土の特性に与える影響に関するものである。KNEは、これらの問題に関しては、将来処分場サイトに設置される地下特性調査施設での原位置試験によって解決されるべきであるという見解を示している。

一方、スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2005年4月28日付のニュースリリースで、放射性廃棄物管理ワーキング・グループ(AGNEB)2 の年次報告書が公表されたことを発表した。同ニュースリリースによれば、このAGNEBの年次報告書には、NAGRAの「処分の実現可能性実証プロジェクト」に対する政府関係機関の評価に関する進捗などがまとめられており、評価結果の一つとして今回公表されたKNEによる評価報告書の要旨も示されているとしている。またAGNEBの年次報告書には、2004年4月に公表された経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)の国際レビューチームによる「処分の実現可能性実証プロジェクト」に対する評価報告書において、「NAGRAの安全評価は現行の国際的な勧告および慣行に適合しており、チュルヒャー・ヴァインラントでのオパリナス粘土層の好ましい特性と人工バリアシステムの安全性に関する科学的な根拠が提示されている」と評価されたことも言及されているとしている。

なお、同ニュースリリースでは、現在、HSKおよび原子力施設安全委員会(KSA)による「処分の実現可能性プロジェクト」報告書の評価も進められており、こうした結果は、2005年秋には公表される予定であるとしている。また、これらの報告書および専門家の意見を基に、連邦評議会が2006年中には今後の放射性廃棄物管理の進め方について決定を下す予定であるとしている

【出典】

  • 連邦エネルギー庁(BFE)2005年4月28日付プレスリリース http://www.entsorgungsnachweis.ch/news.php?userhash=&lID=1&newsID=26
  • 放射性廃棄物管理委員会(KNE)「NAGRAのチュルヒャー・ヴァインラントにおけるオパリナス粘土プロジェクト-地球科学的なデータの基礎および工学的な実現可能性についての判断」2005年2月 http://www.hsk.psi.ch/deutsch/files/pdf/gus_28_04_05_d.pdf

  1. 放射性廃棄物管理委員会(KNE):連邦地質学専門委員会(EGK)の小委員会として連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)によって設置され、放射性廃棄物処分に関連した地球科学的な問題に関してHSKに助言を与える機関。 []
  2. 放射性廃棄物管理ワーキング・グループ(AGNEB):1978年に連邦評議会によって設置され、BFE、HSK、パウル・シェラー研究所(PSI)などの代表で構成されており、連邦評議会およびUVEKに代わり、スイスの放射性廃棄物管理に関する専門家の見解などをまとめる役割を有す。 []

スイスの連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2004年12月10日付のプレスリリースで、連邦評議会が新しい原子力令(KEV)を制定したことを発表した。この新原子力令は、連邦会議が可決して公布されていた新原子力法(KEG)(詳しくは こちらを参照)の施行規定を定めた法規命令であり、原子力施設に対する重要な安全要件などもこれによって定められることになる。この新原子力令は新原子力法と共に、2005年2月1日に施行されることも同プレスリリースで示されている。

UVEKのプレスリリースなどによると、この新原子力令の草案は意見募集のために2004年5月12日から8月13日までの間公開され、この期間中に合計68件の意見が提出されていた。今回制定された新原子力令では、草案に含まれる規定はそのまま採用しつつ、寄せられた多くの批判を考慮した修正が加えられているとしている。
これらの修正のうち重要な変更点に関し、地層処分については「深地層処分特別計画(詳細は こちら)」について規定した新原子力令第5条が追加されたことが述べられている。

また、UVEKのプレスリリースによると、連邦評議会が2004年8月18日に採択した保障措置令も新原子力法を法的根拠としているために、新原子力法・令と同時に施行されることとなっている。この保障措置令は、1978年にスイスと国際原子力機関(IAEA)との間で締結された保障措置協定と2000年の付属議定書の合意を具体化したものである。また、新原子力法の施行に伴って整備されるその他の法規命令として、原子力施設の作業員についての要件等に関する法規命令が、2005年半ばには意見募集のために公表される予定であるとしている。

なお、新原子力法は、2003年3月21日に連邦会議で可決され 、2003年5月27日に公布されている 。施行に当たっては、公布後100日目までに5万人以上の署名が集まれば、施行の是非が国民投票にかけられる制度が適用されることになっていたが、国民投票は実施されず、そのまま施行されることになっていた。2005年2月1日に新原子力法が施行されることにより、これまでの「原子力の平和利用に関する法律(原子力法、1959年)」および「原子力法に関する連邦決議(1978年)」が廃止されるほか、新原子力令によって、「原子力分野の定義と許認可に関する法規命令(原子力令、1984年)」、「最終処分場設置の準備行為に関する法規命令(1989年)」など4つの法規命令が廃止され、「原子力施設安全委員会(KSA)に関する法規命令(1983年)」など4つの法規命令が変更されることになる。

【出典】

  • 環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)2004年12月10日付プレスリリース
    http://www.uvek.admin.ch/dokumentation/medienmitteilungen/artikel/20041210/02124/index.html?lang=de
  • エネルギー庁(BfE)ウェブサイト、2004年12月21日
    http://www.energie-schweiz.ch/internet/03362/index.html?lang=de
  • 新原子力令 Kernenergieverordnung (KEV)
    http://www.uvek.admin.ch/imperia/md/content/gs_uvek2/d/energie/div/23.pdf
  • スイスの連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は、2004年9月28日、プレスリリースにおいて、環境・運輸・エネルギー・通信相が、高レベル放射性廃棄物処分の研究開発及びサイト選定実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)との話し合いの場で、これまで調査が行われてきたチュルヒャー・ヴァインラント地域の代替案となる高レベル放射性廃棄物処分場の候補地域を提示するよう要請したことを公表した。

    UVEKのプレスリリースでは、次のように述べられている。

    2002年末に、NAGRAにより、「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書が連邦評議会に提出され、チュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土層における高レベル放射性廃棄物処分が実現可能であることが証明された。しかし、これは処分場サイトの決定を意味するものではなく、サイト選定は2010年以降に行われることになっている。UVEKは、処分場候補地となり得る他の地域とチュルヒャー・ヴァインラントの比較の必要性を指摘し、環境・運輸・エネルギー・通信相は、複数候補地域の比較調査の実施に関する提案を連邦評議会に提出する方針である。さらに、サイト選定のために、複数の岩種を検討対象とし続けるか、あるいはオパリナス粘土層のある地域に焦点を絞るのかについての決定は、安全当局による「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書の評価の完了と2005年に予定されている公開協議手続きの後に下されることになっている。

    さらにこのプレスリリースによると、NAGRAは、処分場計画の概要承認1 (詳細は こちら)申請の際に、処分場サイトの選定が適切な手続きによるものであることを証明しなければならず、そのための判断基準は、都市計画法に基づく連邦政府の特別計画(詳細はこちら)「深地層処分場」の枠組みの中で策定され、その検討作業には連邦機関や州、隣国も参加する予定である。現在、連邦エネルギー庁(BFE)がこの基準策定を進めており、関心のある団体や一般市民にも早い段階から情報提供がなされ、適切な形で参加できることが示されている。(BFEは、UVEKの下で、原子力法などエネルギー関連の法律制定の準備および政策を実行する連邦機関である。)

    一方、NAGRAは、2004年9月28日付けのプレスリリースの中で、連邦評議会が高レベル放射性廃棄物処分場の立地の際に安全性を最重要視する姿勢を歓迎する旨を表明した。また、2005年前半にチュルヒャー・ヴァインラントの代替候補地域を提示し、安全基準に基づいて比較する報告書を提出するとしている。NAGRAは、特別計画「深地層処分場」において、処分場立地のためのプロセスが確定される予定であり、その際に、州や隣国も関与することができるという方針に支持を表明している。

    【出典】

    • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)9月28日付プレスリリースhttp://www.nagra.ch/deutsch/aktuell/f_archiv.htm
    • 環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)9月28日付プレスリリース http://www.uvek.admin.ch/dokumentation/ medienmitteilungen/artikel/ 20040928/02032/index.html?lang=de

    1. 概要承認とは、立地場所および処分プロジェクトの基本的事項に対する連邦評議会の許可のことを指す。処分プロジェクトの基本的事項としては、処分廃棄物の分類、処分容量ならびに主要構造物のおおよその規模や位置などが挙げられる【原子力法に関する連邦決議】。 []

    放射性廃棄物管理共同組合(Nagra)は2004年3月16日、世論調査会社への委託により、スイス国内で放射性廃棄物の処分に関するアンケート調査を行ったことをプレスリリースで公表した。今回の調査は、2003年11月17日から12月5日にかけて、ドイツ語およびフランス語を話すスイス人1000人以上を対象にしたものであり、放射性廃棄物の処分概念、技術および時間的な面での実現可能性について、スイス国民の考え方を明らかにすることを目的としたものである。調査の結果は以下の通りである。

    可能な限り早期の処理を要望

    この調査における回答者の83%が、地下深部の地層中に建設された処分施設における放射性廃棄物の安全な処分ができるだけ早い時期に実施されることを望んでいるほか、地表における長期間にわたる中間貯蔵には明確に反対する姿勢を示した。現在すべての放射性廃棄物は、原子力発電所の中間貯蔵建屋、ヴュレンリンゲン中間貯蔵施設(ZWILAG)及びヴュレンリンゲンにある連邦中間貯蔵施設(BZL)において貯蔵されている。

    国内における廃棄物処分義務には高い評価

    回答した4人のうち3人は、放射性廃棄物をスイス国内の地下深部の地層中に建設された処分施設に処分することを望んでいる。スイスの放射性廃棄物を外国において処分するオプションを支持したのは、わずか17%であった。 

    スイスにおける処分は技術的に可能

    回答したスイス国民の61%は、スイスの科学者が安全な処分技術を実現できる点について信頼感を抱いている。また回答者の86%は、処分施設のサイト選定が何よりもまず安全性に対する配慮に基づいて行われるべきだという見解を示した。住民の政治的な受け入れまたは地域経済への影響がサイト選定において決定的な役割を果たす可能性があるとしたのは、回答者の13%にすぎなかった。 

    スイスでは、高レベルおよび長寿命の中レベル放射性廃棄物については、「処分の実現可能性実証プロジェクト」の報告書が2002年末にNagraから政府に提出されている。同報告書に対する国内外の評価の実施後、2006年頃に連邦評議会が、国内での処分オプションに関する将来の調査をチュルヒャー・ヴァインラント地方の母岩としてのオパリナス・クレイに集中させることを提案する同報告書に対する最終的な評価についての見解を示す予定である 。一方、低中レベル放射性廃棄物については、Nagraによって処分場サイトに選定されていたニドヴァルデン州ヴェレンベルグにおいて、同州が探査坑掘削許可を与えることについて州民投票で否決されたことにより、サイトとして断念することが決定し、実施主体であるヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)は解散し、調査坑の埋め戻し作業も完了している というのが現状である。

    今回の調査結果を受けて、Nagraは、放射性廃棄物の持続的な処分がスイスの国境内で可能な限り速やかに実施されなければならないという判断が明確に示されており、スイス国民の過半数が、科学者が安全な処分のための方策を技術的に実現できるものと考えているほか、処分場サイトを選ぶ際には安全性への配慮が最優先されるべきだと考えていることが明らかになったと考えている。

    【出典】

    ヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)は、2003年12月11日、ニドヴァルデン州ヴェレンベルグ・サイトにおける調査用のボーリング孔の埋め戻し作業が終了したことをプレスリリースにて発表した。プレスリリースによると、作業が行われていたサイトは、原状回復され地主に返還され、地元の自治体当局は作業が完全に終了したことに満足の意を示しているということである。作業は放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)に委託され、所轄の連邦当局および州当局が作業に立ち会っていた。以下、プレスリリースにおける要点を示す。

    低中レベル放射性廃棄物の地層処分場サイトとしてヴェレンベルグ・サイトを断念する決定は、2002年9月22日の州民投票による採決(こちらを参照)に従って下されている。サイト修復作業の実施は、技術的な理由から2003年の天候が穏やかな夏に行われた。1990年代に数百メートルの深さまで掘削されたボーリング孔には、当時より、長期間にわたる調査のために地質学的測定用の機器が設置されていた。そのため、何トンにもおよぶ測定機器類をボーリング孔から引き上げるための重機や装置が設置されて作業が行われていた。 現在では設備は解体され、ボーリング孔は特別なコンクリートで充填され、近辺の環境は元の状態、または地主との協定に基づく状態に修復されている。

    スイス連邦原子力施設安全本部(HSK)の管轄下にある監視委員会は、作業終了報告書を連邦評議会に提出した。また、技術的な作業と平行して、GNWの解散が行われた。2003年8月12日にGNWの整理清算の申請が行われ、2003年11月30日に清算終了に基づく貸借対照表が作成された。

    なお、このGNWのプレスリリースは、NAGRAのウェブサイトからもアクセス可能となっている。

    【出典】

    • ヴェレンベルグ放射性廃棄物管理共同組合(GNW)プレスリリース (http://www.gnw.ch/presse/abschluss2.html)
    • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA) (http://www.nagra.ch/)

    諸外国では、高レベル放射性廃棄物を含む放射性廃棄物の管理に必要な費用を賄うために様々な形で資金確保が行われている。日本を含め多くの国においては、基金制度が導入されており、費用負担責任のある電力会社等は決められた拠出金を基金に払い込む方式を取っている。ただし、基金が設けられている場合でも、基金の対象となる費用の範囲は国により異なっている。

    一方フランス、ドイツ、英国では放射性廃棄物処分に関する基金制度が設けられていないため、廃棄物発生者が、各々に将来に必要な資金を引当金として内部留保している。最近、スウェーデン・スイス・カナダが2002年度の基金の情報を公表したことを受けて、以下に基金制度の有無別に、高レベル放射性廃棄物処分に関連する各国の資金確保制度の概要と最新の基金残高または引当金額を表にまとめた。

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    2003年5月27日に、スイスにおいて新原子力法が公布された。2003年3月21日に連邦議会で可決されたこの新原子力法は、去る5月18日に行われた原子力利用に関する国民発案1 が否決されたことにより公布に至った(新原子力法制定に関する詳細の情報はこちらを、原子力利用に関する国民発案の否決に関する詳細な情報は こちらを参照)。

    同法の施行に当たっては、任意の国民投票2 が適用されることが規定されているため(同法第107条)、公布後100日目に当たる2003年9月4日までに5万人以上の署名が集まれば、2004年に同法施行の是非が国民投票にかけられることとなる。

    しかし、グリーンピースのウェブサイト情報によると、スイスにおける主な環境団体は、署名運動を行わない方針を示している。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)からの情報でも、上述の国民投票の結果により反原子力発案を国民が明確に否決したため、新原子力法施行の是非を問う国民投票を行うための動きは少なく、国民投票には至らないと見ている。

    連邦エネルギー庁(BFE)のウェブサイト情報によると、現時点における見込みとして、国民投票が行われない場合の新原子力法の施行は、以下の関連法令の制定・改正を行い、2005年1月1日には可能であろうとしている(今後の新原子力法の発効までの流れは下図を参照)。

    1. 原子力令の新規作成
    2. 放射線防護、緊急時対応、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金に関する政令の改正
    3. エネルギー令の改正

    新原子力法が施行されると、原子力発電事業者は、政府に対して「放射性廃棄物管理計画書」を提出しなければならない(第32条)。この計画書は、原子力発電所の閉鎖までの資金計画を含む必要がある。計画書は連邦評議会が指定する機関によるチェックと、定期的な見直しが必要とされている。なお、計画書を提出する具体的な日程は連邦評議会が決定するとされている。

    新しい原子力法の発効までのフロー図

    【出典】

    • 新原子力法(Kernenergiegesetz) 2003.3.21
    • 連邦環境・運輸・エネルギー・通信省ウェブサイト 2003年5月18日プレスリリース (http://www.uvek.admin.ch/gs_uvek/de/dokumentation/ medienmitteilungen/artikel/20030518/01404/index.html)
    • 連邦エネルギー庁(BFE)ウェブサイト (http://www.energie-schweiz.ch/bfe/de/recht/gesetzgebungbund/index/html)
    • グリーンピースのウェブサイト (http://info.greenpeace.ch/de/atom/pressreleases_atom/pr230503)
    • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)提供情報より

    1. 国民発案および国民投票はスイスの憲法で認められているもので、国民は憲法の全面改正または一部改正を直接請求出来る権利を有している。連邦レベルでは、憲法の全面改正または一部改正を求める国民発案が提出された後、18カ月以内に10万人の署名が集まれば国民投票にかけらることができる。成立のためには、国民および州の両方で過半数の賛成が必要となる。なお、この場合の国民投票は下記の2)で説明する「任意の国民投票」との比較において、「義務的な国民投票」と呼ばれる。 []
    2. 任意の国民投票とは、連邦法や連邦政府の決定に対して、公布後100日以内に5万人の署名が集まればその施行の是非を国民投票にかけることができるというスイス特有の制度である。 []