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《スイス》連邦エネルギー庁が放射性廃棄物管理プログラム及び同プログラムの評価結果に対する意見募集を開始

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2012年6月15日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が、2008年10月に提出していた放射性廃棄物管理プログラムと、それに対する監督官庁による評価結果に対して、3カ月の意見募集を開始したことを公表した。意見募集は2012年9月28日まで行われる。

放射性廃棄物管理プログラムは、原子力法によって、廃棄物処分義務者が作成し、5年ごとに更新することが義務付けられているものである。放射性廃棄物管理プログラムには、処分場を閉鎖するまでの地層処分の概要を示すとともに、安全な地層処分を実現するための基本的措置が記載されている。NAGRAは、2008年10月に地層処分場の地質学的候補エリアに関する報告書と同時に、放射性廃棄物管理プログラムを提出していた 。放射性廃棄物管理プログラムに対する審査は、BFEのほか、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)がそれぞれ実施した1 。さらに、それらの評価結果に対して、BFEの諮問機関である原子力安全委員会(KNS)が評価した。今回の意見募集は、NAGRAの放射性廃棄物管理プログラム、並びに放射性廃棄物管理プログラムに対するBFE、ENSI、KNSの意見書の全てを対象としたものとされている。

BFEのプレスリリースによると、BFE及びENSIは、NAGRAの放射性廃棄物管理プログラムが、法令で規定された要件を満たしているとの結論を示している。その上で、BFEは、放射性廃棄物管理プログラムの今後の更新に対して、以下のような勧告を行っている。

  • 次回の放射性廃棄物管理プログラムの更新時期は、処分費用及び原子力発電所などの廃止措置費用の見積りと同時に審査できるようにするために、2013年ではなく2016年とすること2
  • 次回の放射性廃棄物管理費用の見積りには、放射性廃棄物の処分場からの回収に必要となる費用の試算を含めること
  • NAGRAだけでなく、原子力発電事業者やその株主が、放射性廃棄物処分に関する情報公開にこれまで以上に責任を持つこと

また、ENSIも以下のような今後の放射性廃棄物管理プログラムの更新に関する勧告を行っている。

  • NAGRAは、次回の放射性廃棄物管理プログラムの提出に先立ち、今後の研究開発及び実証活動の目的、範囲、スケジュール等を示した報告書を提出すること
  • NAGRAの計画では、地下特性調査施設の建設と地下での調査は、原子力施設である地層処分場に関する準備及び許可手続きと平行して進められることから、次回の放射性廃棄物管理プログラムでは、地下特性調査施設で得られた成果を、地層処分場の建設許可申請に取り入れることが時間的に可能であるのかどうかについて、明らかにすること
  • 低中レベル放射性廃棄物処分場サイトにおける地下特性調査施設の許認可、建設から操業に至る期間が10年以下とされているスケジュールは、ENSIの観点からは楽観的すぎる。このため、次回の放射性廃棄物管理プログラムにおいては、地下特性調査施設に関する計画や予定されている試験について、段階別に具体的に示すこと
  • 次回の放射性廃棄物管理プログラムの更新では、情報の長期保存、品質マネジメントプログラムの考え方、モニタリング期間、処分場の閉鎖、放射性廃棄物の回収、標識の概念、並びに操業期間中の処分場の一時的な閉鎖について補足すること

さらに、KNSは、BFEとENSIによる審査は精緻であると評価し、両者が行った勧告を支持した上で、処分の実施計画、放射性廃棄物量、長期安全性、処分概念、研究・開発プログラム、及び処分費用に関する勧告を示している。

BFEのプレスリリースによれば、放射性廃棄物管理プログラム、監督官庁の評価結果、及び意見募集の結果に関する報告書は、承認を得るために2013年に連邦評議会に提出する予定とされている。その後、放射性廃棄物管理プログラムは、連邦議会に報告されるとしている。

【出典】

  1. BFEのプレスリリースによると、地層処分場の地質学的候補エリアの提案に関する審査と評価書の作成を優先し、それらの作業が終了した後から、NAGRAの放射性廃棄物管理プログラムの審査に着手したとされている。 []
  2. 放射性廃棄物管理プログラムは、5年ごとに更新することとされており、NAGRAは2008年に同プログラムを提出していることから、次回の更新時期は2013年となる。他方、放射性廃棄物管理費用の見積りは5年ごとに行われており、前回の見積りは2011年に実施されていることから、次回の見積りの更新時期は2016年となる。BFEは、放射性廃棄物管理プログラムの更新と管理費用の見積りを同時に進めるために、同プログラムの次回の更新時期を2016年にすべきであると勧告している。 []

(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )