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スイス

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)と連邦エネルギー庁(BFE)は、2012年1月20日付のプレスリリースにおいて、20カ所の地上施設の設置区域の案を公表した。これは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続の第2段階において、低・中レベル用(6カ所)、高レベル用(3カ所)の地層処分場の計6カ所の地質学的候補エリア(地下施設の設置が可能な区域)について、NAGRAが、今後の地域参加プロセスでの検討のために提案したものである。

特別計画による3段階のサイト選定手続の第1段階は、地質学的候補エリアが確定され、2011年11月に完了している。現在進められている第2段階は、4年の期間が必要と見込まれており、その目的は、低・中レベル用、高レベル用の地層処分場のそれぞれについて、最低2カ所の候補サイトを選定することとされている。この目的のため、特別計画により、NAGRAは、各々の地質学的候補エリアに対して、最低でも1カ所の地上施設の設置区域を提案することになっていた。

今後、6カ所のサイト地域1 で実施されている地域参加プロセスにおいて、20カ所の地上施設の設置区域に対する検討が実施されることとなる。地域参加プロセスでは、NAGRAとも協力して、地上施設の構成やレイアウト等が検討され、また、NAGRAが提案した以外の地上施設の設置区域を独自に提案することも可能である。その後、これらの検討の成果も踏まえ、NAGRAは、2012年中を目途に、6カ所の地質学的候補エリアのそれぞれについて最低1カ所、地上施設の設置区域を指定する。さらに、NAGRAは、今後実施される予備的安全評価の結果も踏まえ、第2段階において低・中レベル用、高レベル用の地層処分場それぞれについて最低2カ所の候補サイトを提案することとなっている。提案された候補サイトは、連邦原子力安全検査局(ENSI)等の審査を受け、最終的に連邦評議会の承認によって、候補サイトが確定する。

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「提案された地上施設の設置区域」(NAGRA、技術報告書11-01「特別計画地層処分場第2段階 地層処分場の地上施設の設置区域の配置及びその開発 別冊」、2011年12月より))〔※クリックで拡大表示〕

今回NAGRAが提案した地上施設の設置区域は、右図の赤い点で示された20カ所である。緑、及び緑と橙色の縞模様で示されているのが、地下施設の設置が可能な地質学的候補エリアであり、それらを取り囲む灰色の部分が、地上施設の設置が可能な地点を含んだ「計画範囲」である。

NAGRAは、今回の地上施設の設置区域の提案に関して、報告書を公表しているが、それによると設置区域は以下の基準を考慮して提案したとしている。

  • 安全性及び技術的実現性:交通網との接続、地形や面積等の状況、地下施設へのアクセス、安全性
  • 土地利用に関する適合性及び環境との適合性:土地利用の法的制限、地表の水流、地下水流、鉱物及び温泉の利用、自然保護区域の回避
  • 地域との調和:今日の利用状況、都市計画上の状況、保養地の所在、景観の保護

BFEのプレスリリースによると、今回の地上施設の設置区域の提案については、関係する州と自治体や土地所有者に対して、直接通知したとしている。またBFEは、今後数週間にわたって関係自治体の住民に対する説明会を開催するとしている。

【出典】

 

【2012年10月15日追記】

連邦エネルギー庁(BFE)は2012年10月8日付のプレスリリースにおいて、今後の地上施設の設置区域の検討スケジュールを明らかにし、当初、2012年秋に検討が終了すると見込んでいたが、2013年4月末にずれ込むとしている。

スイスでは、地層処分場の地上施設を建設する可能性があるエリアは「計画範囲」と呼ばれており、地下施設が設置される可能性がある6つの「地質学的候補エリア」ごとに計画範囲が設定されている。地質学的候補エリアは、サイト選定手続きの第1段階で決定済みである2 。第2段階では、それぞれの計画範囲の中で、少なくとも1カ所の地上施設の設置区域を決定することになっている。

地上施設の設置区域を議論するための場として、計画範囲ごとに、その範囲内に位置する自治体、並びにその一部を管轄領域に含む自治体の代表で構成される「地域会議」が設立されている。この地域会議は、連邦エネルギー庁(BFE)が主導して設置する会議体であり、州と自治体の当局のほか、一般市民も参加して構成されている(場所によっては、計画範囲外の隣接自治体も参加する場合があるほか、隣国ドイツの代表者も参加する)。各地域会議での議論は、2012年1月から開始されている。特に、2012年1月に実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が、計画範囲ごとに3~4カ所の地上施設の設置区域案を提示してから議論が本格化している。

今回のプレスリリースでBFEは、地上施設の設置区域に関する検討を含むサイト選定手続きの第2段階のスケジュールを以下の通り示している。当初、BFEは2012年秋に「地域会議」の検討が終了すると見込んでいたが、プレスリリースによればこれが2013年4月末にずれ込む(約6ヶ月)としている。

スイスにおける地上施設の設置区域についての検討スケジュール

〔※連邦エネルギー庁(BFE)の2012年10月8日付けプレスリリースを基に作成〕

2012年1月~10月末 「サイト地域」を含む州は地上施設の設置区域の候補となりうる場所の評価基準に関する統一的な見解を提示。6カ所の「サイト地域」は、各地域で設置することになっている地域会議における作業等を継続。
2012年11月初旬~中旬 州による評価基準の策定後、NAGRAは地域ごとに、この基準に対応する、地上施設の設置区域の候補となりうる場所を確認し、結果を提示。
2012年11月中旬~12月 BFEの主催で開催するワークショップで、各「サイト地域」個別に、地上施設の設置区域の候補となりうる場所を公表。「地域会議」は独自の地上施設の設置区域の提案を行うかどうかについて決定。
2012年12月~2013年初頭 「地域会議」が独自の提案を行うことを決定した場合、NAGRAは新たに提案された地上施設の設置区域について概略的な調査を実施し、結果を「サイト地域」と州に提示する。
2013年4月末頃 「地域会議」は、地上施設の設置区域に関するNAGRAの提案、及び独自の提案を行った場合は自らの提案について評価。州も独自に評価を実施。
2013年5月頃 NAGRAは各「サイト地域」について、地上施設の設置区域を最低でも1カ所提示。

 

【出典】


  1. 特別計画「地層処分場」の「2.2.2 地質学的候補エリア、計画範囲、サイト地域」及び「略語一覧、用語」によると、サイト地域は、候補エリア所在自治体(地質学的候補エリアが領域の一部あるいは全体にわたって含まれる自治体)、並びに計画範囲(建設される可能性のある地上施設の配置を考慮して、地質学的候補エリアの広がりによって確定される地理的領域)の境界内に全体が含まれるか、それを管轄領域の一部に含む自治体によって構成される。また、事情によってはその他の自治体がサイト地域に含まれることもある。 []
  2. 特別計画「地層処分場」に基づき、第1段階ではBFEが連邦国土計画庁(ARE)、サイト地域を含む州とともに計画範囲の確定を行い、以降の議論に参加する権利をもつ自治体の範囲や条件が決められた。また、影響を受ける地方自治体や住民が地域参加プロセスに加わるための準備が行われた。 []

スイスの連邦評議会(内閣に相当)は、2011年12月1日付のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続に関して、2008年10月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提案し、連邦エネルギー庁(BFE)が中心となって評価を行っていた地質学的候補エリアについて、全てのエリアを承認したこと、サイト選定手続の第1段階が完了したことを公表した。

プレスリリースによると、連邦評議会は、BFEが提出していた成果報告書の草案 を2011年11月30日に承認しており、これによりNAGRAが提案していた地質学的候補エリアとして、低・中レベル放射性廃棄物について6カ所、高レベル放射性廃棄物について3カ所が承認されたことになる。さらに、連邦評議会は、BFEを所轄する連邦環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に対して、サイト選定手続の第2段階を開始するよう指示した。

サイト選定手続の第2段階は、4年の期間が必要と見込まれており、その目的は、低・中レベル用、高レベル用の地層処分場のそれぞれについて、最低2カ所の候補サイトを選定することとされている。そのため、NAGRAは、特別計画に基づいて、各々の地質学的候補エリアの中で、最低でも1カ所の候補サイトを提案することになる。次に、予備的安全評価及びサイトの比較によって絞り込んだ上で、低・中レベル用、高レベル用のそれぞれの地層処分場について、最低2カ所の候補サイトを提案することとなる 。NAGRAの提案は、連邦原子力安全検査局(ENSI)等により審査され、最終的に連邦評議会が候補サイトを確定することになる。

第2段階においても、第1段階と同様に、安全性を最優先事項として候補サイトの選定が進められるが、それに加えて、地層処分場による州境を越える環境的・経済的・社会的影響に関する調査が行われるとともに、地域参加プロセスが実施されることになっている。

環境的・経済的・社会的影響に関する調査は、全ての地質学的候補エリアを対象として実施されるものであり、第1段階で作成された「地域開発上の評価手法」 に基づいて行われる。地域開発上の評価は、安全性の検証とともに、サイト選定手続の一部をなしており、サイト選定における重要な根拠の一つであるとされている。

地域参加プロセスについては、第1段階において、参加する自治体の確定 や、実施のための文書の作成 などの準備が進められていたが、第2段階において本格化される。プレスリリースには、地域参加プロセスに参加する自治体の役割として、以下の3点が示されている。

  • 地上施設の構成及びレイアウトに関するNAGRAの提案の検討と、設計、配置及びアクセスに関する見解の表明
  • 環境的・経済的・社会的影響に関する評価の実施におけるBFEの支援
  • 地域の持続可能な開発に関する戦略、措置及びプロジェクトの取りまとめ、並びに既存の戦略とプロジェクトの更新

プレスリリースによれば、BFEが提出していた成果報告書の草案に対する意見聴取は、2010年9月1日から11月30日まで行われ、約3,700件の意見等が提出された。その内、299件がドイツ、7件がオーストリア、5件がフランスからのものとされている。意見聴取の結果は報告書として取りまとめられている。

サイト選定の第3段階においては、低・中レベル用、高レベル用のそれぞれの地層処分場について、処分場サイトが1カ所(または全ての放射性廃棄物を処分する処分場サイトが1カ所)選定されることになっている 。サイトの選定のためには、原子力法が規定する概要承認が必要となる。概要承認は、連邦評議会によって発給され、議会の承認が必要となる。また、概要承認に対して、一定数の有権者または州の請求があった場合は、国民投票が実施される。

なお、今回のプレスリリースによると、UVEKによって設置され、地球科学的な観点でENSIに助言を行ってきた放射性廃棄物管理委員会(KNE)が、2011年末をもって解散されるとしている。KNEの業務については、新たに設置される「地層処分場専門家グループ」が、2012年から引き継ぐこととされている。

【出典】

  • 連邦評議会、2011年12月1日付プレスリリース、
    http://www.news.admin.ch/message/index.html?lang=de&msg-id=42480
  • 連邦エネルギー庁(BFE)、「特別計画「地層処分場」第1段階の成果報告書:確定事項とファクトシート」(2011年11月30日)
  • BFE、「特別計画「地層処分場」第1段階の意見聴取に関する成果報告書」(2011年11月30日)
  • 特別計画「地層処分場」方針部分(2008年4月2日)[英訳版]

スイスにおける地層処分場のサイト選定手続きに関係する州の代表によって構成される州委員会は、2011年4月19日付のプレスリリースにおいて、2011年から2012年の冬期に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が弾性波探査を実施することを公表した。今回の弾性波探査は、3カ所の高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアのうち、既にボーリング調査等により詳細な情報が得られているチューリッヒ北東部以外の2カ所を対象としたものであり、ジュラ東部1 、及び北部レゲレンで実施される。この弾性波探査の目的は、全ての地質学的候補エリアの比較可能性の確保・改善としている。

州委員会は、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づき設置されており、州内に地質学的候補エリアが含まれる7つの州に、近接する地方バーゼル半州を加えた8つの州の代表が参加している他、スイスの連邦エネルギー庁(BFE)や連邦原子力安全検査局(ENSI)、及びドイツの関係官庁の代表等が助言を行っている。州委員会は、2010年8月に、3段階のサイト選定のうちの第1段階(地質学的候補エリアを確定するまでの段階)に対する見解を公表していた。州委員会は、全体としては第1段階のプロセスが目的に適っていると評価する一方で、候補となりうる全ての母岩を検討すべきことや、明らかになっていない点が調査によって解明されるまでは、適性を有する地質学的候補エリアを除外すべきではないことなどを勧告していた。

弾性波探査の実施地点

弾性波探査の実施地点(Ⓒ2011swisstopo)

プレスリリースによると、高レベル放射性廃棄物の3カ所の地質学的候補エリアのうち、チューリッヒ北東部(チュルヒャー・ヴァインラント)については、すでに1997年から1999年に弾性波探査とボーリング調査が実施されている2 。今回の弾性波探査は、右図に示すように、主としてジュラ東部、及び北部レゲレンの2カ所の地質学的候補エリアで実施する予定であり、探査対象には約100の自治体が含まれる。弾性波探査は、可能な限り公道を利用して、車両または発破により発生させた振動を、最大220メートルまで掘削するボーリング孔内や地上で観測することで行われる。振動測定のために掘削するボーリングは、地下の地層の正確な調査を行うためのものであり、地層処分場のためのボーリング孔の掘削や探査ボーリングと混同すべきものではないとしている。探査においては、事前に自治体への説明や州当局と協議し、NAGRAが土地所有者に連絡をした上で実施する。

なお、特別計画は、サイト選定の第2段階で行われる予備的安全評価のための追加調査の必要性の検討を求めており、また原子力法は、地球科学的調査には環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要であることを規定している。ただし、原子力法及び原子力令は、弾性波探査や物理探査等、影響の少ない地球科学的調査については許可が不要であることを規定している。また、UVEKの許可が求められる地球科学的調査の第2段階における実施の必要性について、NAGRAはこうした調査を実施しなくても予備的安全評価は可能と判断しており、また、ENSIもこの判断を肯定している

 

【出典】

【2011年10月6日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2011年10月5日付のプレスリリースにおいて、弾性波探査が、2011年10月24日に開始され、2012年3月上旬に完了する見通しであることを明らかにした。
探査は、地質学的候補エリアであるジュラ東部(上図の、青の破線で囲まれた2つのエリアのうち、左側)の、アールガウ州にある西側の部分を対象とした探査から開始され、地質学的候補エリアである北部レゲレン(青の破線で囲まれた2つのエリアのうち、右側)の、チューリッヒ州にある東側の部分を対象とした調査で完了する予定である。探査は、図で黄色で示された14本の探査ラインに沿って、合計約260kmにわたって実施するとされている。
なお、高レベル放射性廃棄物の3カ所の地質学的候補エリアのうち、残りの1カ所であるチューリッヒ北東部では、すでに弾性波探査等が実施されており、今回の弾性波探査の対象外となっている。

【出典】


  1. 連邦エネルギー庁(BFE)は、2011年2月17日付のプレスリリースにおいて、地元の希望により、地質学的候補エリア「ベツベルク」の名称が「ジュラ東部」に、地質学的候補エリア「チュルヒャー・ヴァインラント」の名称が「チューリッヒ北東部」に変更されたことを発表している。 []
  2. NAGRAは、チューリッヒ北東部におけるボーリング調査等の成果を踏まえ、スイス国内における高レベル放射性廃棄物等の処分の実現可能性を実証した「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を2002年に公表している。同プロジェクトにおける安全評価の詳細は、原環センターのウェブサイト「安全評価事例集」を参照。
    []

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)の2011年3月28日付プレスリリースによると、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2010年11月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提出した報告書 に対する審査結果として、原子力法に基づく許可が必要となるボーリング調査等の地球科学的調査を実施しなくても予備的安全評価が可能であるとの結論を公表した。ENSIは、既に得られている知見と第2段階で得られる知見に加えて、ENSIが補足を要求した項目1 をNAGRAが明らかにすることにより、予備的安全評価が可能としている。

スイスでは、2008年4月に連邦政府によって策定された特別計画 に基づいて、3段階からなるサイト選定手続が進められている。特別計画によれば、第2段階では、第1段階で選定された地質学的候補エリアから、2カ所以上の候補サイトが選定される。そのために、第2段階においては、予備的安全評価とサイトの比較が実施されることとなっている。

特別計画は、処分義務者が、第2段階で予備的安全評価を実施するために、地球科学的調査などの必要性を、第2段階の開始に先立ってENSIとともに検討すべきことを規定している。この必要性の検討のため、NAGRAは、2010年11月に地質学的候補エリアに関して現在有する地質学的知見の充足度を取りまとめた報告書をENSIに提出した。NAGRAの報告書では、現時点で既に有している知見に加えて、第2段階で新たに得られる知見により、全ての地質学的候補エリアに関する予備的安全評価とサイトの比較が可能であるとする結論を示していた。

プレスリリースによると、ENSIは、NAGRAが報告書において示した安全性に関係するプロセスとパラメータは検証可能なものであり、現時点では適切であると評価しているとしている。さらに、第2段階での予備的安全評価と安全性の観点からサイトの比較を行う上で、NAGRAが提示したプロセスは、構想として十分なものであるとしている。その上でENSIは、NAGRAが第2段階で得られる知見に加えて、ENSIが補足を求めた項目について明らかにすることにより、第2段階での予備的安全評価とサイトの比較に必要な地質学的知見の水準を達成することができると結論付けている。この結論により、ENSIは、第2段階では地球科学的調査は必要ないとしている。なお、ENSIは、概要承認 の発給によりサイトが決定される第3段階では、地球科学的調査が必要になるとしている。

プレスリリースによれば、現在、NAGRAの報告書は、原子力安全委員会(KNS)と州安全専門家グループによって審査されている。また、放射性廃棄物管理委員会(KNE)のウェブサイトには、同委員会のNAGRAの報告書に対する2011年3月28日付の見解が公表されている。

参考:予備的安全評価の内容と要求される解析及びデータ

特別計画に基づくサイト選定の第2段階で行われる予備的安全評価及びサイトの比較の詳細について、ENSIは2010年4月に、「予備的安全評価と安全性の比較に係る要件」を策定した。この中で、予備的安全評価で明らかにすべき点として次の7項目を挙げている。

  • バリアの機能とその長期的な変遷
  • 放射性廃棄物の地層処分に適用される指針ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」に基づく防護基準の遵守
  • サイトの比較
  • 第3段階で現地調査が必要となった場合の調査内容
  • 母岩の位置、形状及び特性
  • 構造技術的な設計が安全性に及ぼす影響
  • 生物圏

また、予備的安全評価の実施に当たっては、再現性、不確実性、及び情報の確からしさの3点に留意すべきとしている。さらに、予備的安全評価に必要な解析及びデータとして、次の5点を挙げている。

  • 母岩及び枠組み岩石の特性評価
  • 水文地質学と放射性核種の移行のメカニズム
  • 地球化学的な条件
  • 地球力学面での長期的な変遷
  • 生物圏及び被ばく経路

【出典】


  1. ENSIが公表した、審査結果を取りまとめた報告書には、ENSIがNAGRAに対して第2段階における補足を要求している41の項目が示されている。 []

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2011年2月17日付のプレスリリースにおいて、2011年秋に開始する予定の特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)(以下「特別計画」という)に基づく地層処分場のサイト選定手続の第2段階で実施される地域参加プロセスに向け、2種類の文書を公表した。今回公表された文書は、サイト選定の第2段階の開始時点において、処分場に関するプロジェクトを具体的に検討できるよう、そのための能力を備えた組織が構築できるようにすることを目的としたものである。

プレスリリースによると、地域参加プロセスは、影響を受ける可能性のある住民とステークホルダーとが、早い時期から包括的に関与できるようにすることで、透明性が高く公正なサイト選定手続きを実現するものである。今回BFEは、地域参加プロセスの組織の構築の具体化のため、「地域参加の方針:基礎と実施」とともに、全ての地質学的候補エリア に関する社会構造の現状調査の結果を公表した。

「地域参加の方針:基礎と実施」によると、地域参加の主要な課題は、処分場の地上施設の具体化、処分場による社会経済的影響と地域開発計画への影響の検討、及び地域の持続的発展のためのプロジェクトの検討である。また、同文書では、地域参加に関する規則、組織、構造、資金、具体的実施プロセス等が定められている。なお、特別計画は、地域参加に係る経費や専門家の費用は、BFEの承認を経て処分義務者が負担することを規定している。さらに、特別計画は、国家的な課題の解決に貢献している自治体などに対する交付金の支払いについて、第3段階における概要承認(詳細はこちら)の発給前に検討することを規定している1

第2段階スケジュール

第2段階スケジュール(クリックすると拡大)

なお、「地域参加の方針:基礎と実施」では、特別計画に基づくサイト選定手続の第2段階のスケジュールが右のよう示されている。

一方、地質学的候補エリアに関する社会構造の現状調査の結果には、6つの地質学的候補エリア毎に社会経済的・政治的特徴に関する情報が示されている。この調査には、地質学的候補エリアの自治体も参加しており、地質学的候補エリアの人口や年齢、所得、教育、社会組織、外国人比率や言語、宗教、労働状況などの情報が盛り込まれているとしている。

プレスリリースによれば、地域参加のための組織は、地質学的候補エリアの自治体及びそれらが含まれる州、BFE、さらにドイツの自治体の代表(ドイツ国境に隣接する4つの地域)から構成される作業チームによって構築される。BFEは、今回公表された資料を基礎として、地域の現状に合わせて、地域参加のための組織がサイト選定の第2段階に先立って活動を開始することを目指すとしている。なお、地域参加プロセスに参加する自治体は、最終的に連邦評議会が地質学的候補エリアを選定して、第1段階が完了して決定される。連邦評議会による地質学的候補エリアの決定は2011年秋に行われる見込みである

なお、プレスリリースによると、地質学的候補エリアの名称が地元の希望を受けて変更したことが紹介されている。地質学的候補エリア「ベツベルク」の名称が「ジュラ東部」に、地質学的候補エリア「チュルヒャー・ヴァインラント」の名称が「チューリッヒ北東部」に変更されたとしている。

【出典】


  1. 特別計画によると、交付金について、法的根拠は定められていない。同計画によると、透明性の確保のために、交付金は同計画の手続から切り離されたものとならないように配慮される。そのため、第3段階で交付金が検討され、法的拘束力のある概要承認が発給されてはじめて、処分義務者によって支払われる。それによって、国の課題の解決に貢献している自治体などが交付金の支払いを受けるとされている。 []

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年11月25日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が、地質学的候補エリアに関して現在有する地質に関する知見についての充足度を取りまとめた報告書を連邦原子力安全検査局(ENSI)に提出したことを公表した。この報告書は、特別計画「地層処分場」の方針部分(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続の第2段階で実施される予備的安全評価、及び安全性の観点からのサイトの比較のため、地質学的候補エリアに関する知見が十分であるか、第2段階においてボーリング調査等の追加調査1 が必要であるかを示したものとされている。NAGRAは結論として、現在有する知見及び第2段階で得られる知見により、全ての地質学的候補エリアに関する予備的安全評価とサイトの比較が可能であるとしている。

スイスでは、2008年4月に連邦政府によって策定された特別計画に基づいて、3段階からなるサイト選定手続が進められている。特別計画によれば、第1段階では地質学的候補エリアが選定され、第2段階で2カ所以上の候補サイトが選定され、第3段階において概要承認 が発給され、サイトが決定されることとなっている。特別計画は、サイト選定の第3段階において、必要に応じて弾性波探査やボーリング調査といった地球科学的調査を実施すべきことを規定する一方で、処分義務者に対して、第2段階で実施される予備的安全評価の実施のための追加調査の必要性をENSIとともに早期に検討するよう規定している。今回、NAGRAが公表した報告書は、この追加調査の必要性を検討したものである。なお、2008年10月にNAGRAが提案した高レベル放射性廃棄物処分場のための3カ所の地質学的候補エリアの母岩は、すべてがオパリナス粘土という堆積岩である

プレスリリースによれば、NAGRAは報告書において、スイスではこれまでに、弾性波探査や物理探査、ボーリング調査、露頭の調査、トンネルの掘削、地質学的マッピング、及び地下研究所から得られた膨大な情報が、地質学的候補エリア毎に既に存在することを指摘している。その上で、予備的安全評価とサイトの比較を行う上で、現在有している安全性、技術的実現可能性、母岩及び母岩周囲の岩盤の特性、水文地質学、放射性核種の移行、地球化学的条件、生物圏などに関する定量的情報が十分であるかを調査したとしている。

また、現在有する知見で予備的安全評価とサイトの比較の実施が可能かを検証するためにテスト計算を行った結果、NAGRAは、現在の知見と第2段階で得られる知見により、信頼できる定量的評価が可能であるという結論に達したとされている。第2段階で補完される知見は、地形、母岩、地下資源の賦存状況、水文地質学的状況、長期的な地質学的変遷、処分場の設計、ガスの発生と移行などに関する調査により得られるとされている。さらに、NAGRAは、第三者が地熱の調査等を目的として実施するボーリング調査に参画して情報を収集する他、高レベル放射性廃棄物の地質学的候補エリアにおける弾性波観測網の稠密化を計画しているとされている。

プレスリリースによると、今後、報告書はENSIと原子力安全委員会(KNS)により審査され2 、地質学的候補エリアの立地州にも提出され、意見聴取が実施された上で、2011年第1四半期にENSIによる審査結果が公表される。また、第2段階の進行中には、知見の状況を関係官庁が再検討し、それに基づいて、NAGRAが第3段階でのサイト選定のために、どの候補サイトにおいて原子力法上の許可が必要とされる地球科学的調査を実施するのかを確定すべきとしている。

なお、プレスリリースには、第2段階以降のスケジュールが次のように示されている。従来のスケジュールでは、2014/15年に第2段階が終了し、2018/19年には第3段階が終了するとされていた

  • 2011年秋から2015/16年(第2段階):低中レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物のそれぞれに少なくとも2つの処分場候補サイトを選定
  • 2015/16年から2019/20年(第3段階):NAGRAが候補サイトに関する詳細な調査等を実施した上で、概要承認申請を提出

参考:特別計画が規定するサイトの安全性に関する段階毎の評価

特別計画の付属書Ⅲでは、3段階で進められるサイト選定の段階毎の安全性に関する評価の目的や内容、及び進め方が示されている。また、第2段階で行われる予備的安全評価及びサイトの比較の詳細について、ENSIは2010年4月に、「予備的安全評価と安全性の比較に係る要件」を策定している。以下、これらの文書により、スイスの地層処分場のサイト選定における段階毎の安全性に関する評価について示す。

第1段階 安全性に関するジェネリックな検討

安全性に関するジェネリックな検討は、処分すべき放射性廃棄物のインベントリから天然バリアの定量的要件と基準を導出し、下の表に示すサイトの評価基準をできるだけ定量化することを目的としている。定量化においては、指針ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」が定める防護基準である0.1mSv/年が適用される。特別計画によれば、この安全性に関するジェネリックな検討は、地層処分場のセーフティケースそのものではないとされている。

特別計画が規定する安全性と技術的実現可能性に関するサイトの評価基準
基準グループ 基準
1.母岩ないし有効な閉じ込めエリアの特性 1.1 サイト規模
1.2 水力学的バリア機能
1.3 地球化学的条件
1.4 放出経路
2.長期安定性 2.1 サイト・岩盤特性の安定性
2.2 侵食
2.3 処分場による影響
2.4 地下資源の利用による影響
3.地質学的知見の信頼性 3.1 岩盤の特性の評価可能性
3.2 空間的(spatial)な条件の調査可能性
3.3 長期的変化の予測可能性
4.建設上の適性 4.1 岩盤力学的特性と条件
4.2 地下坑道の掘削と排水

なお、NAGRAは、安全性に関するジェネリックな評価の結果を技術報告書08-03「低中レベル放射性廃棄物処分場及び高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアの提案 要件、手続及び成果」(2008年10月)において取りまとめており、ENSIはそれに対する評価を「地質学的候補エリアの提案に対する安全性の評価報告書」(2010年1月)として公表している

第2段階-1 予備的安全評価

予備的安全評価は、放射性廃棄物の閉じ込めにおける個々のバリアの性能及びその挙動の解明と、第1段階で選定されたそれぞれの地質学的候補エリアにおける線量の評価値が、防護基準である0.1mSv/年以下にあることを立証することを目的とする。予備的安全評価の結果は、サイトの安全工学的な比較に用いられるとともに、それにより、概要承認の申請時に必要とされるデータを収集するために第3段階においてどのような調査が必要となるかが明らかになるとされている。

第2段階-2 サイトの比較

サイトの比較は、予備的安全評価の結果に基づき、安全性に関する観点から明らかに他より適性が劣ると評価されるサイトを提案しないようにし、また基礎的なデータに内在する不確実性のみに起因する線量の相違を理由としてサイトを除外しないようにすることを目的としている。サイトの比較は、レファレンスケースによる評価結果、パラメータ変動時の評価結果及び安全性と技術的な実現可能性に関する諸基準の定性的評価に基づき行われる。

第3段階 概要承認手続のための安全評価

これは、原子力法及び原子力令の規定に従って、概要承認段階において要求される安全性に関する立証を行うものである。原子力法、原子力令及びENSI-G03の要件の遵守が求められており、またサイトの予備的安全評価は、この段階に対応して詳細化し、包括的なシナリオ解析とリスク解析によって補完すべきとされている。

【出典】


  1. 原子力法は、地層処分場に関する情報収集を目的として実施される、ボーリング調査や地下研究所による地球科学的調査には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要であることを規定している。 []
  2. ENSIが2010年4月に策定した「予備的安全評価と安全工学的側面の比較に係わる要件」は、今回NAGRAが作成した報告書を、ENSIが審査し、追加的な調査の必要性について判断を行うべきことを規定している。 []

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2010年11月15日付のプレスリリースにおいて、3基の原子炉を新設するために原子力発電事業者が提出していた概要承認の申請に対する審査結果を公表した。ENSIは3カ所の原子力発電所が全て法定要件を遵守していると結論している。また、ENSIは、これらの概要承認の申請において、新規の原子炉からの放射性廃棄物の処分が実現可能であることが証明されているとする審査結果を示した。

原子力法は、原子炉や放射性廃棄物の地層処分場等の原子力施設の建設・操業には概要承認の取得が必要であることを規定している。同プレスリリースによると、今回の概要承認申請は、既存の3カ所の原子力発電所に3基の原子炉を新設しようとするものである。今後、2010年末までに、原子力安全委員会(KNS)がENSIの審査結果に対する見解を表明する。また、州には、2011年の初頭には、3件の概要承認申請に関して見解を表明する機会が与えられる。なお、連邦評議会による概要承認の発給に関する決定は2012年半ばと見込まれているが、連邦評議会の決定には、議会の承認が必要であり、また議会承認は、5万人の有権者の申請等により実施される国民投票の対象となる。なお、国民投票が実施される場合の実施時期は、2013年末頃とみられている。

ENSIの審査結果によると、各原子力発電事業者は、概要承認の申請とともに放射性廃棄物処分の実現可能性の証明に関する報告書を提出したとしている。この報告書の中で、各原子力発電事業者は、低中レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物について、それぞれ1988年6月及び2006年6月に連邦評議会が承認した処分の実現可能性の実証結果に依拠し、原子炉の新設によって発生する放射性廃棄物に対しても、原則的に地層処分が実現可能であるとしているとしている。

ENSIの審査結果は、現在、特別計画「地層処分場」の方針部分(以下「特別計画」という)に基づいて実施されているサイト選定手続において、新規原子炉からの放射性廃棄物を含めた全ての放射性廃棄物を処分できる処分場サイトの選定が進められていることに言及している。また、新規の原子炉から発生する放射性廃棄物の特性は、既存の原子炉から発生する放射性廃棄物と異なるものではないとしている。なお、原子力発電事業者は、建設許可申請時に放射性廃棄物のより具体的な発生量を提示し、処分の実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nagra)の最新の放射性廃棄物処分計画の中に言及されていることが証明されなければならないとしている。また、原子力法は、放射性廃棄物の地層処分場の概要承認の発給時には、処分する放射性廃棄物のカテゴリー及び最大処分容量を確定しなければならないことを規定している。

ENSIは、放射性廃棄物、放射性廃棄物の処理、封入、中間貯蔵、地層処分など新規の原子炉から発生する放射性廃棄物処分の全てに関して申請者が提示した情報は、原子炉の新設に向けた概要承認申請の段階では適切であり、十分に詳細であるとしている。その上でENSIは、新規原子炉のための概要承認申請の際に必要となる放射性廃棄物処分の実現可能性の実証は、申請書類によって確認されたとしている。

【出典】

【2011年1月13日追記】

原子力安全委員会(KNS)は、2011年1月10日付のプレスリリースにおいて、原子炉の新設のための概要承認申請に対する連邦原子力安全検査局(ENSI)の審査結果に関する見解を公表した。KNSは、ENSIが安全性に関して包括的で詳細な審査を行っており、ENSIの審査結果に概ね同意できるとしているが、地質学的情報の充実、航空機落下対策などの追加の指摘事項を示して、それらを概要承認の発給に当たって検討することを勧告している。

また、放射性廃棄物の処理処分について、KNSは、新規原子炉からの放射性廃棄物の発生量と処分の実現可能性に関して原子力発電事業者が提示した情報が、概要承認申請の段階で満たすべき要件に対応しているとしている。しかし、KNSは、地層処分場の母岩として有力なオパリナス粘土が稠密であるため、廃棄体に含まれる金属の腐食と有機物の分解等によって発生するガスの圧力により、バリア機能が損なわれる可能性があることから 、新規原子炉から発生する放射性廃棄物の処理に関して、以下を勧告している。

  • 廃棄体が地層処分場の化学的環境に適合していること
  • 廃棄体の金属と有機物の含有量をできるだけ少なくすること
  • 有機物を含む固化材を使用しないこと

【出典】

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)の2010年8月23日付のプレスリリースによると、BFEは特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)の方針部分に基づく3段階のサイト選定手続の第1段階を総括的に評価する成果報告書の草案を作成した。BFEは、公表した報告書の草案において、2008年10月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提案した全ての地質学的候補エリア を第2段階のサイト選定手続において引き続き候補とするよう提案している。また、プレスリリースによると、NAGRAの提案やそれに対する規制機関等による審査、及びBFEの成果報告書の草案などに対する意見聴取が2010年9月1日から開始されるとしている。

スイスのサイト選定手続は、2008年4月に連邦評議会によって承認された特別計画に基づいて進められており 、第1段階では、2008年10月に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が6カ所の低中レベル放射性廃棄物処分場、3カ所の高レベル放射性廃棄物処分場のための地質学的候補エリアを提案し 、地質学的候補エリアの選定に向けた検討が行われてきた。

同プレスリリースは、第1段階の成果として、以下を示している。

  • 地層処分場が環境、経済、社会に及ぼす影響を評価するためにサイト選定手続の第2段階で適用される「地域開発上の評価手法」の開発
  • 処分場の地上施設が建設される可能性のある「計画範囲」の案の確定
  • 地質学的候補エリアの安全性に関する安全規制当局の審査1
  • サイト選定手続の第2段階以降で実施される地域参加プロセスに参加する自治体の候補の確定

特別計画は、連邦エネルギー庁(BFE)が、サイト選定手続の各段階の最後に成果報告書とファクトシートの草案を作成し、処分義務者である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の提案、当局の審査結果、州委員会の見解2 などとともに公表して、3ヵ月にわたって意見聴取を実施することを定めている。プレスリリースにおいてBFEは、サイト選定の第1段階は最終局面を迎え、全ての報告書などが既に作成されており、これらの資料に基づく意見聴取を2010年9月1日から11月30日まで開催するとしている。さらに、BFEは、意見聴取の間に地質学的候補エリアに関係する自治体において住民説明会を実施するとしている。 

特別計画に基づくサイト選定手続の第1段階は、意見聴取の結果などに基づき、2011年半ばに連邦評議会が最終的に地質学的候補エリアを確定して終了する予定である。

参考:成果報告書とファクトシート

特別計画は、サイト選定の各段階で、成果報告書とファクトシートを作成することを規定している。成果報告書とファクトシートは、地図と文章で構成され、地質学的候補エリアの規模と「計画範囲」、並びに空間と環境の観点からの評価などを具体的に示すものである。各段階の終了後に、成果報告書とファクトシートで確定された内容が連邦評議会によって承認されると、その内容は特別計画に盛り込まれ、同計画の一部となる。

特別計画によると、成果報告書とファクトシートの草案は、意見聴取の後に更新され、最終的な見解表明のために州に提出される。州は、成果報告書とファクトシートについて、連邦評議会に承認を求める前に、都市計画法によって規定された調整手続きを要求することができる。成果報告書とファクトシートに関する連邦評議会の決定に対しては、異議申し立てを行うことはできない。

今回、連邦エネルギー庁(BFE)が公表した成果報告書の草案は、サイト選定の第1段階の成果とファクトシートで構成されている。ファクトシートは、それぞれの地質学的候補エリアについて、「計画範囲」に含まれる自治体や地質の特徴、安全性に関する当局の審査結果などについて記述している。また、地質学的候補エリアや「計画範囲」、及び文化財や保護対象となる自然景観等を示した地図が掲載されている。高レベル放射性廃棄物の地層処分場の地質学的候補エリアの地図は、以下の通りである。

ベツベルク

北部レゲレン

チュルヒャー・ヴァインラント

ファクトシートに掲載された、高レベル放射性廃棄物の地質学的候補エリアの地図(連邦エネルギー庁(BFE)、「特別計画 第1段階 成果報告書:決定内容とファクトシート」の草案(2010年8月20日)より引用・作成)

【出典】


  1. 連邦原子力安全検査局(ENSI)は2010年2月に(2010年3月5日既報)、原子力安全委員会(KNS)は2010年5月に(2010年5月12日既報)、NAGRAの提案を承認する審査結果を公表している。 []
  2. 州委員会は、特別計画に基づき、関係する州の代表等によって設置されているものである。なお、2010年8月に州委員会は、全体として第1段階のプロセスが目的に適っていると評価する見解を公表している(2010年8月24日既報)。 []

スイスにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づき設置されている州委員会は、2010年8月16日付のプレスリリースにおいて、地層処分場のサイト選定手続の第1段階1 に対する見解を公表した。州委員会は、全体としては第1段階のプロセスが目的に適っていると評価する一方で、地質学的候補エリアに関して明らかになっていない点を、今後の調査で解明するよう勧告している。 

州委員会は、関係する州、隣接州及び隣接諸国の政府代表者間の共働を実現し、サイト選定手続の実施において連邦政府を支援し、連邦政府に対して勧告を行うことを目的として設置されたものであり、8つの州2 の代表によって構成されている。スイスでは2010年の夏以降、3ヵ月間にわたって、サイト選定の第1段階における放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の地質学的候補エリアの提案、及び提案に対する安全規制当局の評価に対する、州、隣接諸国、政党などからの意見聴取が実施されることとなっている。今回の州委員会の見解は、意見聴取における州による見解表明を支援するために取りまとめられたものであるが、意見聴取における各州の見解を拘束するものではないとされている。 

プレスリリースには、以下の5点について州委員会の見解がまとめられている。 

  1. 安全性と地質
  2. 「計画範囲」と地域参加プロセスに参加する自治体の設定
  3. 地域参加プロセスの構築
  4. 「地域開発上の評価手法」の策定
  5. 情報公開とコミュニケーション

1.  安全性と地質:透明性は高いものの、追加調査が必要

州委員会は、要求される安全性の実現のためには、適切なサイトの選定が必要であるという認識を示し、サイト選定手続が政治的な対立を克服するための必要条件として、以下の4点を示している。 

  • 候補となりうる全ての母岩を検討しなければならない。データの不足している点は、調査によって補わなければならない。
  • いずれかの母岩を候補から除外する際には、十分な知見に基づかなければならない。除外した場合には、科学的に根拠を明らかにし、透明性のある説明を行わなければならない。
  • 時期尚早で、不確実かつ不均質なデータに基づく地質学的候補エリアの評価は避けなければならない。
  • 明らかになっていない点が適切な調査によって解明されるまでは、適性を有する全ての地質学的候補エリアを候補として維持しなければならない。科学的な評価と予測が行われ、比較可能な知見が得られる前に、いかなる地質学的候補エリアの除外も優先順位の設定も行ってはならない。

州委員会は、低中レベル放射性廃棄物について6カ所、高レベル放射性廃棄物について3カ所の地質学的候補エリアを今後も対象とすることの必要性に留意しつつ、一方で、サイト選定の第2段階の終了前に、明らかになっていない点を、適切なフィールド調査3によって解明するよう勧告している。州委員会は、追加的な調査によってはじめて、全ての地質学的候補エリアの比較評価が可能になるとしている。なお、追加的な調査の例としては、処分容量及び広域的な透水特性の確認のための弾性波調査や、母岩と第四紀地質に関する知見の向上のためのボーリング調査が挙げられている。 

2.  「計画範囲」と地域参加プロセスに参加する自治体の設定:透明性が高い

州委員会は、地上施設を建設する可能性のある地点である「計画範囲」の設定(2009年12月21日既報)については透明性が高いとしている。他方で、地域参加プロセスに参加する自治体4 の設定は、柔軟に理解する必要があり、第1段階の残りの期間においてさらに調整が必要であるとしている。 

3.  地域参加プロセスの構築:目的に適っている

州委員会は、これまで行われてきた地域参加プロセスの構築を目的に適っているものと評価しつつ、地域参加プロセスの構築において可能な限り裁量を認めることが必要であると勧告している。 

4.  「地域開発上の評価手法」の策定:追加調査が必要

サイト選定の第1段階において策定した「地域開発上の評価手法」を利用して、第2段階において地層処分場が環境、経済、社会に及ぼす影響が評価される(2009年5月22日既報)。この点について州委員会は、地域のまとまりと、地層処分場が地域のイメージに与える影響についての、比較可能な調査の実施を勧告している。 

5.  情報公開とコミュニケーション:透明性が高く、公平

州委員会は、特別計画による各組織間の明瞭な役割分担の規定が、はっきりとしたメッセージによるコミュニケーションの実現に貢献してきたと評価している。また、情報提供についても透明性が高く公平に実施されてきたと評価している。 

参考①:スイスにおけるサイト選定手続の決定の経緯

スイスでは、1990年代から2000年代前半にかけて、ヴェレンベルクにおいて低中レベル放射性廃棄物の地層処分場を建設するプロジェクトが進められたが、2度の州民投票で州が発給した許可が否決され、プロジェクトは断念された5

その後、2005年2月に施行された原子力法は、処分場を含む原子力施設についての地球科学的調査、概要承認、建設、運転(操業)、閉鎖に関しては、連邦政府のみが許可を発給することを規定している。また、2008年4月には、州などに対する意見聴取の結果も踏まえて、サイト選定手続等を定めた特別計画「地層処分場」が策定された(2008年4月10日既報)

原子力法及び特別計画「地層処分場」の規定によれば、地層処分場のサイトの決定には連邦評議会が発給する概要承認が必要である。連邦評議会が発給した概要承認については、議会による承認が必要であり、議会承認は、5万人の有権者の申請等により実施される国民投票の対象となる。 

 

参考②:スイスにおける放射性廃棄物の処分の実現可能性の実証

スイスでは、1978年の「原子力法に関する連邦決議」及び連邦政府の要求によって、原子力発電所の新規建設・運転に必要な概要承認の発給及び既存の原子力発電所の運転許可延長の要件として、原子力施設を建設や操業しようとする者に対して、国内における放射性廃棄物の処分の実現が可能であることの実証が求められていた。

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、スイス北部の結晶質岩や堆積岩を対象として、処分の実現可能性の実証のためのプロジェクトを実施し、2002年にはチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土を対象とした調査結果に基づき、「処分の実現可能性実証プロジェクト」報告書を作成し、連邦政府に提出した(2002年12月25日既報)。連邦評議会は、関連当局の検証の結果(2005年10月6日既報)を踏まえ、2006年6月に、「処分の実現可能性実証プロジェクト」によって、処分の実現可能性が実証されたことを承認した(2006年7月5日既報)

なお、「処分の実現可能性実証プロジェクト」の提出の際に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は今後の調査対象をチュルヒャー・ヴァインラントのオパリナス粘土のみに絞ることを提案したが、この提案を連邦評議会は却下している。

【出典】

  • 州委員会、2010年8月16日付プレスリリース
  • 州委員会、特別計画「地層処分場」第1段階に対する見解、2010年7月
  • 特別計画「地層処分場」(2008年4月2日)〔英訳版〕
  • 原子力法
  • 原子力令
  • 原子力法に関する連邦決議

  1. スイスにおける地層処分場のサイト選定は、第1段階(複数の地質学的候補エリアの選定)、第2段階(複数の候補サイトの選定)、第3段階(サイトを選定し、概要承認手続を開始)の3段階で行われることとなっており、第1段階は、連邦評議会が地質学的候補エリアを選定することで2011年に完了する予定となっている。 []
  2. 8つの州は、州内に地質学的候補エリアが含まれるチューリッヒ州・トゥールガウ州・アールガウ州・シャフハウゼン州・ゾロトゥルン州・ニドヴァルデン州・オプヴァルデン州(2008年11月11日既報)に、地方バーゼル半州を加えた各州である。また、州委員会には、投票権は有さないが、スイスの連邦エネルギー庁(BFE)、連邦原子力安全検査局(ENSI)、ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)、及びドイツの3つの自治体の代表者も参加している。 []
  3. フィールド調査については、2009年12月21日速報に対する2010年7月16日の追記を参照 []
  4. 地域参加プロセスは、地質学的候補エリアに一部でも含まれる自治体、「計画範囲」に一部でも含まれる自治体、及び「計画範囲」に含まれる自治体に隣接し、経済や観光の点で特別な関係を有する自治体で構成される。詳細は、2010年6月3日の既報を参照 []
  5. ヴェレンベルクにおける低中レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設に向けたプロジェクトについては、2002年9月26日及び2004年1月14日の速報、並びに ポイントピックアップ「概要承認」の「放射性廃棄物処分事業における概要承認申請の例」を参照。なお、ヴェレンベルクは、特別計画「地層処分場」に基づくサイト選定手続においても、低中レベル放射性廃棄物の地質学的候補エリアとして提案されている。 []

スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年5月28日付のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)の方針部分 に基づく処分場サイト選定手続において、地域参加プロセスに参加する自治体の候補を公表した。地域参加プロセスは、特別計画に基づく3段階のサイト選定の第2段階以降に、地層処分場の安全性や社会経済的影響、及び環境に対する影響などを検討するために実施されるものである。

プレスリリースによれば、地域参加プロセスに参加するのは、次の自治体である。

  • 地質学的な基準のみを考慮して放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が提案した地質学的候補エリアに一部でも含まれる自治体
  • 処分場の地上施設が設置される可能性のある地点が含まれる「計画範囲」に一部でも含まれる自治体
  • 「計画範囲」に含まれる自治体に隣接し、経済や観光の点で特別な関係を有する自治体

スイスでは、2008年4月に策定された特別計画に基づき、3段階の処分場サイト選定手続きが行われており、第1段階として2008年10月に、廃棄物処分義務者(放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA))が、特別計画に示されている安全及び技術的な実現可能性に関する基準に従って、地層処分場の地質学的候補エリアを提案した 。この提案は、安全性と技術的な実現可能性という点のみに基づくものであり、放射性廃棄物の処分に適した地層によって定められている。NAGRAの提案については、2010年2月に連邦原子力安全検査局(ENSI)が安全性及び技術的な観点から承認しており 、さらに2010年5月に、原子力安全委員会(KNS)がENSIの承認に合意したことにより、規制当局の安全性評価は終了している 。また2009年12月には、連邦エネルギー庁(BFE)が、特別計画に基づいて、処分場の地上施設が設置される可能性のある地点が含まれる「計画範囲」の案を設定していた

プレスリリースによれば、地域参加プロセスに参加する自治体の候補は、地層処分場が建設される可能性のある州、「計画範囲」に含まれる自治体内で地域参加の準備を行う作業チーム、及び隣接するドイツ国内の郡の協力の下で選定されており、合計で202(スイス190、ドイツ12)の自治体が含まれている。

地域参加プロセスに参加する自治体の概念図 (連邦エネルギー庁(BFE)、特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)から引用)

地域参加プロセスに参加する自治体の概念図 (連邦エネルギー庁(BFE)、特別計画「地層処分場」 方針部分(2008年4月2日)から引用)

特別計画に基づくサイト選定手続の第1段階では、複数の地質学的候補エリアが選定される。連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年夏に3ヵ月間にわたって、州、近隣諸国、政党などから放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の提案、安全規制当局の評価に対する意見聴取を実施する準備を進めており、最終的に2011年に連邦評議会が地質学的候補エリアを承認して、第1段階が完了する予定であり、それとともに「計画範囲」及び地域参加プロセスに参加する自治体も確定されることとなっている。

右の図は、地域参加プロセスに参加する自治体について模式的に示したものである。

なお、低中レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物の処分のための6カ所の地質学的候補エリアについて、地域参加プロセスに参加する自治体を示した図、及び自治体名を、下記の連邦エネルギー庁(BFE)のウェブサイトで閲覧することができる(ドイツ語)。

http://www.news-service.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/19257.pdf

【出典】