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《スイス》連邦評議会が地層処分場の設置に係る立地地域への交付金及び補償金に関する報告書を公表

スイスの連邦評議会1 は2015年10月8日、地層処分場の設置に係る立地地域への経済的措置としての「交付金」及び影響に対する「補償金」について、現行の法制度の十分性に関する検討結果を取りまとめた報告書を公表した。本報告書は、スイスの国民議会(下院)の環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)が2013年4月9日に連邦評議会に対して検討を要請していたものである。UREK-Nの要請を受けて連邦評議会は、今回公表した報告書「地層処分場の影響—国民議会環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)要請13.3286(2014年4月9日付)に対応する連邦評議会報告」において、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に十分に規定されていることから、追加的な法整備は不要であるとの結論を示している。

特別計画に基づくサイト選定手続では、交通インフラなど他の事業にも共通する土地収用法に基づく補償義務に加え、放射性廃棄物処分場の立地地域に対する経済的措置として「交付金」及び立地地域へ及ぼす影響に対する措置として「補償金」が規定されている。

特別計画における「交付金」

特別計画では、国としての課題の解決への貢献に報いる経済的措置として、処分場の立地地域に対し、「交付金」を支払うことを定めている。特別計画に基づく「交付金」は、補助金法における交付金や土地収用法における補償のような法的根拠に基づく措置とは異なり、立地地域との個別の取り決めに基づいて支払われるものである。なお、スイスではすでに、原子力発電所や中間貯蔵施設について、取り決めに基づいて事業者が立地地域に対し、経済的措置を講じている。

「交付金」の分配・使途については、サイト選定第3段階の概要承認の発給前に、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が地域会議、関係する州、自治体と協議し、取り決める。概要承認が発給され処分場サイトが確定した後に、NAGRAを経由する形で、廃棄物発生者がこの取り決めに基づいて立地地域へ「交付金」を支払う。

特別計画における「補償金」

特別計画では、地層処分場の計画や建設・操業に伴い立地地域に及ぼす影響に対し、「補償金」を支払うことが定められている。「交付金」の場合と同様に、特別計画に基づく「補償金」は、法律に基づく措置ではなく、地域会議及び関係する州が表明する影響に関して、廃棄物発生者、地域会議、関係する州、自治体との交渉の上で取り決められるものである。補償内容は連邦エネルギー庁(BFE)の承認を受ける必要がある。「補償金」に係る資金は、「交付金」と同様に、NAGRAを通じて廃棄物発生者が提供する。

地層処分場により立地地域が受ける影響に関して、特別計画は肯定的な面と影響の両面を早期に確認するよう要求しており、すでに連邦エネルギー庁(BFE)が2014年11月に、放射性廃棄物の地層処分場が立地地域に与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の最終報告書を公表している

なお、「交付金」及び「補償金」の資金は、連邦が監督する放射性廃棄物管理基金により確保されることになっている。廃棄物発生者はこの基金に毎年拠出金を払い込んでおり、積立てられた資金のうち低中レベル放射性廃棄物用処分場については約3億スイスフラン(約381億円、1スイスフラン=127円で換算)、高レベル放射性廃棄物用処分場については約5億スイスフラン(約635億円)が立地地域に対する「交付金」及び「補償金」に充てられることになっている。2 連邦エネルギー庁(BFE)は、サイト選定第2段階終了までに、関係する州、自治体及び廃棄物発生者の関与のもと、「交付金」及び「補償金」に係る交渉の具体的なプロセスをガイドラインとしてまとめる予定である。

 

【出典】

  1. 日本の内閣に相当。 []
  2. 放射性廃棄物管理基金を管理する基金委員会は廃棄物発生者による拠出金の額を決定する際の根拠として、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアによる費用見積(2011年版)を用いている。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )