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《英国》放射性廃棄物移転契約(WTC)における契約価格の設定方法を欧州委員会(EC)が承認-国家補助禁止規則には抵触しないとの結論を公表

欧州委員会(EC)は、2015年10月9日に、英国の新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等の所有権及び地層処分の費用負担責任を廃棄物発生者から英国政府に移転させる契約(Waste Transfer Contracts, WTC.以下「放射性廃棄物移転契約」という)について、契約価格の設定方法が、欧州連合(EU)の国家補助禁止規則に抵触しないとして、価格設定方法を承認することを公表した。

英国では、2008年エネルギー法により、原子力発電事業者に対し、新規原子炉の建設前に、廃止措置、放射性廃棄物の管理・処分費用のうち、自らの負担分の全額を賄うため、確実な資金確保措置を講じること1を義務付けており、原子力発電事業者は、廃止措置資金確保計画(FDP)を担当大臣に提出し、承認を得る必要があるが、このFDP承認の際に、放射性廃棄物移転契約の締結が望まれている。こうしたことから、エネルギー・気候変動省(DECC)は、2010年12月より放射性廃棄物移転契約の価格設定方法に関する公開協議を行い、その結果を踏まえ、2011年12月に「新規原子力発電所から発生する高レベル放射性廃棄物等の処分のための廃棄物移転価格設定方法」を公表している。この放射性廃棄物移転契約の価格設定方法については、事業者支援のために公的資金が利用されるおそれがあるため、欧州条約において原則禁止となっている国家補助禁止規則2に抵触していないかを欧州委員会が2012年6月から審査していた。

欧州委員会は、放射性廃棄物移転契約の価格設定方法がEUの国家補助禁止規則に抵触しないとした理由として、以下の点を挙げている。

  • 現在は地層処分の費用について不確実な点が多いが、契約価格が最終的に決定するのは新規原子炉における発電開始から30年後であり、現在の地層処分スケジュールから見ても、費用はほぼ明確になっていること
  • 契約価格には地層処分に係る全ての変動費と固定費が含まれており、契約価格設定後の処分費用の上昇リスクを考慮した適切な額が価格に上乗せされていること
  • 新規原子炉の発電開始から契約価格が最終的に決定する30年後まで、5年ごとに地層処分費用が見直され、事業者にはそのための資金を確実に確保していく義務が課せられていること
  • 英国政府が地層処分費用の上限額を保守的な方法で見積っていることから、実際の地層処分費用が、放射性廃棄物移転契約に基づいて事業者が支払う上限額を超過し、英国政府が超過分を負担することになるリスクが極めて低いこと
  • 設定価格には、英国政府が上記リスクを負うことに対する補償額が含まれていること
  • 英国政府が最終的に超過分を負担するという事業者支援が発生したとしても、支援によって生じる市場の歪曲は極めて限定的であること

【出典】

  1. 英国では、日本のような地層処分のための資金確保制度(外部独立基金)はなく、廃棄物発生者である事業者が必要な資金を確保することとなっている。 []
  2. EUにおける市場競争の歪曲、または歪曲するおそれのある国家補助に関する規則。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-10-11 )