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《ドイツ》連邦政府がアッセⅡ研究鉱山の閉鎖を促進するための法案を策定

ドイツの連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)は自身のウェブサイトにおいて、2012年12月6日に連邦政府が、アッセⅡ研究鉱山の閉鎖と放射性廃棄物の回収に関する原子力法改正案を閣議決定したことを公表した。この法案は、アッセⅡ研究鉱山の安全な閉鎖のための最も好ましいオプションとして「放射性廃棄物の回収」を明確にするとともに、関連作業の実施を加速させることを目的としたものである。

アッセⅡ研究鉱山では、放射性廃棄物処分に関する調査を目的として、1967年から1978年まで低中レベル放射性廃棄物が試験的に処分されていた。その後も地下研究所として利用されてきたが、地下水の浸入により岩塩から成る処分坑道の安定性が確保できなくなる可能性が示されたことから、2009年に閉鎖する方針となった 。閉鎖方法について、放射性廃棄物の回収、同鉱山のより深い地層への処分、特殊なコンクリートによる埋め戻しという3つのオプションが検討された結果、2010年1月に放射性廃棄物の回収が選択されていた 。なお、アッセⅡ研究鉱山の閉鎖手続の実施主体は、2009年から連邦放射線防護庁(BfS)となっている。

公表された法案では、主に以下の内容が盛り込まれている。

  • 放射性廃棄物の回収後に研究鉱山を閉鎖することを優先オプションとする。
  • 作業の迅速化を図るために、放射性廃棄物の回収作業について、計画確定手続は不要とする。ただし、放射性廃棄物の取り扱いに関しては、原子力法と放射線防護令の適用対象であり、これらの関係法令に基づく許認可は必要である。
  • 許認可手続きを段階的に進めることを法的に可能とし、回収の準備措置や具体的な回収作業に関する法的な手続きの柔軟化を図る。
  • 放射線防護の原則や鉱山技術面の安全性の観点から、住民や作業者に生じるうる影響を正当化できない場合には、回収作業を中止する。
  • 放射性廃棄物の回収及び閉鎖のための作業が原子力法を順守できない場合には、代替となる閉鎖オプションの利点と欠点を比較評価した上で、最善と判断されたオプションにより、閉鎖を行う。
  • 放射性廃棄物の回収作業の中止や代替閉鎖オプションを選択する場合は、その前にBMUは連邦議会に情報提供を行い、BfSは公衆に対して意見を表明する機会を与える。
  • 今後の操業と閉鎖のための費用は、連邦政府が負担する。
  • 同鉱山への放射性廃棄物の新たな搬入とその定置のための許認可の発給は認められない。

アッセⅡ研究鉱山における現状確認調査の進捗

アッセⅡ研究鉱山の閉鎖手続の実施主体である連邦放射線防護庁(BfS)は、2012年12月7日付プレスリリースにおいて、現状確認調査に伴うボーリング作業の進捗に関する情報を公表した。放射性廃棄物の回収計画の策定に先だって、同鉱山の第7及び12処分室において現状確認調査を行うことになっており 、第7処分室におけるボーリング作業は、2012年6月1日に開始されていた 。同プレスリリースでは最初のボーリング調査の結果として以下の点などが示されている。

  • 最初のボーリング孔は、第7処分室の上部に到達した。
  • しかし、ボーリング孔は処分室本体の上縁部には到達しておらず、処分室に関する過去の情報が一部事実に即していないため、処分室の形状を改めて推定しなければならない。
  • ボーリング孔からのレーダーでの調査により、処分室の位置、内部の空洞の有無などを確認した。
  • 処分室内部について、現状では空洞は確認されていない。
  • 試料の分析によれば、現状では放射性物質による汚染は確認されていない。

【出典】

【2013年3月25日追記】

連邦議会及び連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)のウェブサイト情報によると、連邦議会は2013年2月28日、連邦政府が提出していたアッセⅡ研究鉱山の閉鎖と放射性廃棄物の回収に関する原子力法改正案を可決した。また、2013年3月22日付の連邦参議院のプレスリリースによると、連邦参議院はこの原子力法改正案を承認した。これにより、アッセⅡ研究鉱山の閉鎖と放射性廃棄物の回収に関する原子力法改正法が成立した1 。なお、成立した原子力法改正法の主な規定は、連邦政府が提出していた法案から変更されていない。

【出典】

  1. ドイツ基本法の規定により、議会は連邦議会と、州の代表によって構成される連邦参議院に分かれている。また、連邦法は連邦議会が議決すると規定されているが、法律によっては連邦参議院の同意が必要となる。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-11 )