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《ドイツ》アッセⅡ研究鉱山で廃棄物回収に向けた「現状確認調査」の第1段階に関する許認可が発給

ニーダーザクセン州環境省は、2011年4月21日付のプレスリリースにおいて、連邦放射線防護庁(BfS)によるアッセⅡ研究鉱山からの低・中レベル放射性廃棄物の回収について、回収方法を検討するための処分坑道内での試験的な掘削及び調査(現状確認調査の第1段階)に対して、原子力法に基づく許認可を発給したことを公表した。BfSは許認可申請を2010年10月に行っていた

アッセⅡ研究鉱山は、岩塩鉱山跡を利用して、1960~70年代に、現在のミュンヘン・ヘルムホルツセンター(HMGU)が放射性廃物の試験的な処分を実施していた。その後、地下水の浸入により岩塩から成る処分坑道の安定性が確保できなくなるおそれがあることから、早急に処分場としての閉鎖方策を検討することが課題となっていた。BfSは、2009年1月からアッセⅡ研究鉱山の閉鎖手続きの実施主体になったことから、閉鎖方策の検討作業を行い、2010年1月に廃棄物を回収することを決定した。BfSは、回収計画の策定に先だって第7及び12処分室において現状確認調査を行うとして、「試験的な掘削及び調査」、「処分室の掘削」、並びに「廃棄物の試験的な回収」の3段階の工程を公表していた

現状確認調査の第1段階では、放射性廃棄物が実際に処分されている2カ所の処分室について、廃棄物の状態を確認するためにボーリング調査を行うことになっている。調査対象の処分室の1つ(第12処分室)では、定置された廃棄物が岩塩で埋め戻されていない状態にある。

プレスリリースによれば、州環境省は、現状確認調査が安全に実施されるようにするため、BfSに対して32の附帯条件を許認可書類で設定している。また、許認可書類では、次のような事項について詳細な検討を求めている。

  • 処分室から漏出した放射性物質の安全な取り扱い
  • 掘削によって火災や爆発が発生した場合の措置
  • 作業員の放射線防護措置
  • 放射性ガスや放射性ダストの放出の継続的監視

なお、BfSが現状確認調査の第1段階を開始できるようになるには、原子力法に基づく許認可(州環境省が所管)に加えて、鉱山法に基づく操業計画の許認可(州鉱山当局が所管)が必要である。BfSは2010年12月から2011年1月にかけて、主操業計画と3つの特別操業計画の許認可申請を行っている。州環境省のプレスリリースによれば、原子力法に基づく許認可と同時に、鉱山法に基づく特別操業計画も発給されるとしている。

【出典】

参考:廃棄物の回収措置に関するこれまでの検討経緯

ドイツでは、放射性廃棄物処分に関する調査を実施するため、旧岩塩鉱山であるアッセⅡ研究鉱山において、1967年から1978年にかけて低・中レベル放射性廃棄物の試験的な処分が行われ、その後、放射性廃棄物処分に係る地下研究所として調査活動が続けられた。その後、近年になって、地下水の浸入により、岩塩から成る処分坑道の安定性が確保できなくなるおそれが示されたことから、処分場としての閉鎖方策を早急に決定することが急務とされていた。そこで、2009年1月からアッセⅡ研究鉱山の閉鎖手続きの実施主体となった連邦放射線防護庁(BfS)は、処分場としての閉鎖方策として、廃棄物の回収、同鉱山のより深い地層への処分、特殊なコンクリートによる埋め戻しという3つのオプションについて比較検討を行い、2010年1月に、廃棄物の回収が最良な方法であるとする評価結果を公表した

BfSは、2010年5月に、廃棄物の回収計画の立案に先立って、回収に伴う不確実性を評価するために処分坑道の一部(第7及び第12処分室)の試験的な掘削及び調査することを明らかにし、さらに2010年6月には廃棄物の試験的な回収を行うとして、以下の3段階から成る現状確認調査の工程を公表した。

  • 第1段階:処分坑道の一部の試験的な掘削及び調査
  • 第2段階:処分室の掘削
  • 第3段階:放射性廃棄物の試験的な回収

現状確認調査の第1段階に当たっては原子力法及び鉱山法に基づく操業計画の許認可が必要であることから、BfSは、2010年10月に原子力法に基づく許認可申請をニーダーザクセン州環境省に対して行い、2010年12月及び2011年1月に鉱山法に基づく主操業計画及び特別操業計画の許認可申請を同州鉱山当局に対して行っている。その後、州環境省は、連邦放射線防護庁(BfS)の許認可申請に未提出の書類があるとして、BfSに対して追加書類の提出を求めたことから、BfSは、2010年11月以降、追加の申請書類を提出していた

 

【2011年6月13日追記】

連邦放射線防護庁(BfS)は、2011年6月10日付のプレスリリースにおいて、アッセⅡ研究鉱山での試験的な掘削及び調査(現状確認調査の第1段階)について、第7処分室の試験的な掘削を開始するまでの詳細な作業工程を公表した。

プレスリリースによれば、BfSが今回公表した作業工程は、処分坑道内での試験的な掘削及び調査について原子力法に基づく許認可発給に当たって、ニーダーザクセン州環境省が設定した32の附帯条件への具体的な対応を示したものであり、約850の作業工程から成るものである。

なお、BfSは、順調に行けば11月初頭にも、第7処分室の試験的な掘削を開始できるとしている。

【出典】

 

【2012年6月11日追記】

連邦放射線防護庁(BfS)は、2012年6月1日付のプレスリリースにおいて、アッセⅡ研究鉱山での試験的な掘削及び調査(現状確認調査の第1段階)に関して、第7処分室の試験的な掘削が開始されたことを公表した。

なお、同研究鉱山からの放射性廃棄物の回収開始時期について、BfSが2012年5月18日に連邦環境・自然保護・原子炉安全省(BMU)に提示した予備的なスケジュール案に対して、BMUはその遅れを危惧していた。回収開始時期の具体的な情報はウェブ等では公表されていないが、今回のBfSのプレスリリースでは、BfS長官が、2036年からの回収開始は受け入れられず、試験的な掘削及び調査等をとおしてスケジュールの短縮が検討されると発言したことを紹介している。

【出典】

(post by j-nakamura , last modified: 2023-10-11 )