スウェーデンにおける放射性廃棄物の処分実施主体であるスウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2006年5月24日付けのニュースリリースにおいて、同社の所有する地下研究所であるエスポ岩盤研究所での銅製キャニスタの回収試験に成功したことを公表した。SKB社はキャニスタ回収試験を行うために、2000年に研究所内の地下坑道に掘削した定置孔内にキャニスタを縦置きに定置し、緩衝材を設置して埋め戻した後、圧力、温度などの多くの測定を実施していた。
同ニュースリリースによると、2006年1月から定置孔を覆う埋戻材の除去のあと、キャニスタ周囲のベントナイト緩衝材の除去が開始された。今後の分析のために約1,500以上のベントナイトのサンプルが取り出された。ベントナイト緩衝材を除去するために、スラリー法と呼ばれる方法が用いられたことが示されている。この方法は、キャニスタの半分の深さ部分までベントナイトを掘削除去した後、塩化カルシウム溶液を注入してベントナイトをスラリー状に溶かし、ベントナイト・スラリーをポンプで排出する方法である。このスラリー法により、キャニスタの底部のところまで到達した後、2006年5月12日からキャニスタを吊り上げて回収作業が実施されたことが述べられている。回収されたキャニスタ、定置孔周囲の岩盤について今後更に分析を行い、報告書が作成されることになっている。
また、同ニュースリリースによるとSKB社は、いったん定置されたキャニスタの回収が可能であるように地層処分場を設計するという計画である。スウェーデンでは、規則などによってキャニスタ回収は要求されていない。回収が実施されるような理由には、将来、処分場の設計や機能を変更する、または使用済燃料を別の用途に用いることとなった場合があるとされている。SKB社はキャニスタ回収にはかなり大規模な作業が必要であるために、個人や少人数のグループが処分場閉鎖後に、誰にも気づかれることなく、処分場へ入ることは不可能であるとしている。
SKB社は、2005年に使用済燃料キャニスタを密封するための溶接方法に関して「摩擦撹拌溶接法」を採用する見込みであることを発表している 。また、同社は2002年より、オスカーシャム及びエストハンマルの2つの自治体においてサイト調査を実施しており 、2008年までに候補地点を1カ所に絞り込み、処分場立地・詳細特性調査・建設の許可申請を行う予定である 。
【出典】
- スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)2006年5月24日付けプレスリリース、http://www.skb.se/templates /SKBPage____17375.aspx
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-10 )