英国のエネルギー・気候変動省(DECC)は、2010年10月28日付プレスリリースにおいて、英国地質調査所(BGS)による西カンブリア地域の初期スクリーニング結果の報告書を公表した。今回のスクリーニングは、英国政府が実施している地層処分場のサイト選定プロセスの第2段階として、関心表明を行った自治体を対象として、不適格な地域を判断するために実施されていたものである 。これまで、カンブリア州のコープランド市が2008年7月 、カンブリア州が2008年12月 、同州のアラデール市が2009年1月 にそれぞれ関心表明を行っていた。
同プレスリリースによると、今回の初期スクリーニングは、机上調査で既存情報を使用して行われており、地層処分場の最終的な設置場所を特定することが目的ではなく、所定の除外基準に基づいて地層処分場に対して明らかに不適格な地域での不要な作業を避けることを目的としたものである。また、除外基準は、資源採掘のための人間侵入リスクや利用可能な地下水源の保護の必要性に主に基づき、2つの独立専門機関により設定されたとされている。なお、今回公表された英国地質調査所(BGS)による報告書によると、除外基準は以下の表の通りである。
除外基準として適用されるか | 理由/説明及びコメント | |
天然資源 | ||
石炭 | 適用される | 資源が100m以上の深さにある場合のみ、深度に対する侵入のリスク |
石油及びガス | 適用される | 既知の油田・ガス田における場合、深度に対する侵入のリスク |
油頁岩 | 適用される | 深度に対する侵入のリスク |
金属鉱石 | 一部の鉱石 | 深部(100m以上)で採鉱された場合のみ侵入のリスク |
廃棄物の処分/ガス貯蔵 | 適用される | 深度100m以上で確定または承認されている場合のみ |
地下水 | ||
帯水層 | 適用される | 地層処分施設の母岩の全体または一部が帯水層内にある場合 |
浅部透水性地層 | 適用される | 地層処分施設の母岩の全体または一部が将来合理的に開発され得る透水性地層である |
特定の複雑な水文地質学的環境 | 適用される | 深部カルスト地形及び温泉の原岩として知られている |
英国地質調査所(BGS)による報告書では、今回の初期スクリーニングの対象はアラデール市とコープランド市全域、及び沖合5kmまでとし、深度200~1,000mの間に設置される可能性のある地層処分場に対して明らかに不適格となる地域について検討したとされている。このスクリーニングにより、1つまたは複数の除外基準が適用され除外された地域は右図の通りである。ただし、今回除外された地域でも、地層処分場の地上施設としては適格な場所となる可能性はある。
また、エネルギー・気候変動省(DECC)のプレスリリースでは、今後、自治体側がサイト選定プロセスへの参加を決定した場合、詳細な地質及びその他の基準での評価が実施されるとしている。
今回の公表を受けて、西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ 及びコープランド市は、2010年10月28日付で各々プレスリリースを出し、同日から地域住民が今回の調査結果について知る機会を設けるためのコミュニケーションや関与プログラムが開始されているとした。
これらのプレスリリースによると、今後、西カンブリア地域の全世帯にニュースレターが配布されるほか、地域の図書館、メディアやその他の発行物を通して情報提供が行われる。また、カンブリア州においては、展示や同パートナーシップのメンバーとの対話などの地域イベントが行われ、同イベントにはエネルギー・気候変動省(DECC)、原子力廃止措置機関(NDA)、英国地質調査所(BGS)も参加して、政府方針や技術的な点についての質問に答える予定である。
【出典】
- エネルギー・気候変動省(DECC)プレスリリース(2010年10月28日)
- 英国地質調査所(BGS)、報告書「放射性廃棄物の安全な管理-西カンブリア地域の地質学的な不適格性についての初期スクリーニング」、2010年10月
http://mrws.decc.gov.uk/en/mrws/cms/Disposal/Site_selection/Initial_screen/west_cumbria/west_cumbria.aspx - 西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップ、プレスリリース(2010年10月28日)
- コープランド市プレスリリース(2010年10月28日)
【2010年11月11日追記】
西カンブリア放射性廃棄物安全管理パートナーシップは、2010年11月9日付プレスリリースにおいて、西カンブリア地域の各家庭に対して、放射性廃棄物の地層処分に関する情報提供のためのニュースレターの配布を開始したことを公表した。これは、住民とのコミュニケーション及び関与プログラムの一環として行われるものである。
また、同プレスリリースでは、地域住民が更に情報を得るため、また、意見を述べるための機会として、討論会や情報提供イベントの開催を多数準備しているとしている。
【出典】
(post by f-yamada , last modified: 2024-07-23 )