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《スペイン》第7次総合放射性廃棄物計画を策定-自国での地層処分場設置に向けたロードマップを提示

スペインの環境移行・人口問題省(MITECO)1 は2023年12月27日付けのプレスリリースにおいて、スペイン政府が第7次の総合放射性廃棄物計画(GRWP、以下「廃棄物計画」という)を承認したことを公表した。政府は、第7次廃棄物計画において、自国で地層処分場を設置するためのロードマップを提示した。今後2025年末までに利用可能な技術の取りまとめと評価を実施するとともに、2028年末までにサイト選定手続きの策定を目指す計画である。

スペインでは、使用済燃料を含む放射性廃棄物の管理や処分方針、費用見積りなどに関する計画について、政府が廃棄物計画を策定して示すことになっている。廃棄物計画は、放射性廃棄物の管理・処分の実施主体である放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が草案を検討し、政府の承認と国会(2院制)への報告を経て成立する。従前の第6次廃棄物計画(2006年策定)では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の最終管理方策の決定を先送りし、集中中間貯蔵施設(ATC)を新たに建設する方針であった。今回承認された第7次廃棄物計画では、ATCの計画を断念し、当面は7カ所の原子力発電所サイトに建設する分散型中間貯蔵施設において貯蔵する計画となっている。

なお、スペインで運転中の7基の原子炉は、2027年から2035年にかけて順次運転を終了する計画であり、新規の原子炉を建設する計画もない。第7次廃棄物計画でも同様のシナリオを想定している。

■使用済燃料・高レベル放射性廃棄物等の管理方針

スペインにおける地層処分実現に向けたロードマップ

表1 スペインにおける地層処分実現に向けたロードマップ

スペインでは、使用済燃料を再処理しない方針であり、使用済燃料は国内7カ所の原子力発電所((スペインの原子力発電所は、アルマラツ、アスコ、ホセ・カブレラ、トリリョ、バンデロス2、コフレンテス、ガローニャの7カ所にあり、うちホセ・カブレラとガローニャには稼働中の原子炉はない。))の使用済燃料貯蔵プールと乾式キャスク貯蔵施設で貯蔵されている。ただし、過去に一部の使用済燃料を海外で委託再処理したため、発生した高レベル放射性廃棄物が今後返還されることになっている。

第7次廃棄物計画では、使用済燃料を再処理せず、中間貯蔵後に地層処分することを基本オプションと位置付けており、2073年から地層処分場を操業開始する計画が示された。使用済燃料・高レベル放射性廃棄物は、地層処分するまでは分散型中間貯蔵施設において貯蔵する計画である。分散型中間貯蔵施設とは、貯蔵施設に加えて、貯蔵キャスクの保守・修理に必要な設備・施設を備えたものであり、使用済燃料を保管している7カ所の原子力発電所サイトに建設する計画である。

また、第7次廃棄物計画では、フィンランド、スウェーデン、スイス及びフランスの先行事例を参考とした、表1のような地層処分の実現までのロードマップを示している。ただし、このロードマップを構成する各ステージのスケジュールには大きな不確実性があり、特に、サイト選定に時間がかかると予想されるため、サイト選定に必要な法令や手続きなどを早急に策定することが重要であるという認識を表明している。

なお、2006年策定の第6次廃棄物計画の最優先課題であった集中中間貯蔵施設(ATC)の建設計画については、2011年12月に立地サイトをカスティーリャ・ラマンチャ州クエンカ県のビジャル・デ・カニャス自治体に決定し、必要な許可申請・審査等を実施していたが、地元のカスティーリャ・ラマンチャ州政府が中間貯蔵施設の建設に反対したため、許可申請の審査が中断していた。このような状況を踏まえ、第7次廃棄物計画では、ATCは実現不可能であると結論付けており、正式にATC建設計画を断念している。

■極低レベル・低レベル放射性廃棄物の処分

スペインでは極低レベル及び低レベル放射性廃棄物は、エル・カブリル処分場において処分されている。1992年に操業を開始した低レベル放射性廃棄物処分施設は約5万m3の処分容量を有しており、2022年末時点で処分容量の約82%が使用されている。また、2008年に操業を開始した極低レベル放射性廃棄物処分施設は約13万m3までの廃棄物を受け入れる許可を受けている。2022年末現在で許可を受けている処分容量のうち約18%が使用されている。

第7次廃棄物計画では、極低レベル放射性廃棄物は現時点で建設が許可されている容量で今後の発生量を考慮しても十分対応可能であるとする一方で、低レベル放射性廃棄物に関しては、原子力発電所の運転と廃止措置の計画に影響を与えないように、2028年までに新たな処分セルを建設する必要があると認識されている。エル・カブリル処分場は2073年まで操業し、3年かけて閉鎖作業を行った後、モニタリングを行う計画である。

■放射性廃棄物管理費用

第7次廃棄物計画では、地層処分場の閉鎖が開始される2100年までに要する費用は約202億ユーロ(約2兆9,290億円、1ユーロ=145円)と試算している。この費用には放射性廃棄物管理のほか、原子力発電所の廃止措置2 や研究開発などの費用も含まれている。

放射性廃棄物管理等費用内訳

表2 放射性廃棄物管理等費用内訳

【出典】

  1. 2020年1月の省庁再編により、環境移行省から環境移行・人口問題省(MITECO)に名称が変更された。 []
  2. スペインにおいて原子炉の廃止措置は、放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が実施することとなっている。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2024-03-21 )