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《スペイン》集中中間貯蔵施設(ATC)の建設許可審査が中断

スペインの原子力安全審議会(CSN)は2018年7月25日のプレスリリースにおいて、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)に関して、放射性廃棄物管理等の実施主体である放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が2014年1月に提出していた立地・建設許可申請1 のうち、建設許可申請の審査を中断することを公表した。CSNは立地・建設許可のうち立地許可申請については、2015年7月に、条件付きながら肯定的な評価結果を示しており、その後、建設許可申請の審査を実施していた。

今回の原子力安全審議会(CNS)による建設許可申請の審査中断の決定は、スペイン政府の環境移行省(Ministry of Ecological Transition)2 からの要請を受けて行われたものである。スペインでは、集中中間貯蔵施設(ATC)を含む原子力関連施設の立地・建設・操業に係る許可は、CSNによる原子力安全及び放射線防護の観点からの申請書の評価に基づき、環境移行省が発給することとなっている。2018年6月に発足した社会労働党政権は、原子炉の運転期間を40年とし、最後の原子炉が40年を迎える2028年で原子炉を閉鎖する等の方針を打ち出している。また、ATCの立地予定地のあるカスティーリャ・ラマンチャ州の州政府も社会労働党が主導しており、ATCの建設に反対していた。なお、同州には原子力発電所は立地していない。

今回のCSNの決定を受けて、カスティーリャ・ラマンチャ州政府は、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等は各々の原子力発電所サイトで貯蔵すべきとの考え方を示している。

スペインでは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等については、最終管理方策の決定を先送りしており、当面は、集中中間貯蔵施設(ATC)において貯蔵することとしている。ATCの建設地の選定は、公募方式によって2009年から開始され、2011年12月にカスティーリャ・ラマンチャ州クエンカ県のビジャル・デ・カニャス自治体が建設地に決定していた。放射性廃棄物管理公社(ENRESA)のATCに関する資料によれば、同施設では、原子力発電所からの7,000トンの使用済燃料、一部の使用済燃料の再処理に伴う高レベル放射性廃棄物等のほか、約1,900m3の原子力発電所の解体廃棄物が管理される予定である

集中中間貯蔵施設(ATC)の完成予想図

集中中間貯蔵施設(ATC)の完成予想図(ENRESAウェブサイトより引用)

 

【出典】

【2018年9月10日追記】

スペインの環境移行省は2018年9月6日付けプレスリリースにおいて、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)プロジェクトの今後に関して、2019年に判断するとの方針を示した。環境移行省は、2006年に策定された第6次総合放射性廃棄物計画を更新し、2019年に策定する第7次総合放射性廃棄物計画においてATCプロジェクトの今後の計画を織り込むとしている。

環境移行省は、ATCプロジェクトの今後を判断する際に、放射性廃棄物管理公社(ENRESA)がこれまで行ってきたATC建設への投資と、建設コストについて調査するとともに、国会議員、ATCの立地予定地のあるカスティーリャ・ラマンチャ州の州政府や州議会、プロジェクトに関わる技術者等、あらゆる関係者の意見を聴取する方針である。また、議会下院の環境移行委員会に対し、ATC建設について検討し、政府に報告するよう要請している。

【出典】

  1. スペインでは、原子力関連施設の立地と建設の許可を一括して申請できることになっている。 []
  2. 2018年6月の省庁再編により、エネルギー政策の管轄が、産業・エネルギー・観光省(MINETUR)から環境移行省に変更された。 []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-10 )