目次
フィンランドの雇用経済省は、2010年4月21日付のプレスリリースにおいて、新規原子炉の建設に向けたテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)、フェノヴォイマ社1 の原則決定(詳細はこちら)の申請のうち、TVO社とフェノヴォイマ社の申請に対して政府が肯定的な原則決定を行い、FPH社による原則決定の申請は拒否するとする経済大臣2 の提案を公表した。また、同プレスリリースにおいて、ポシヴァ社により、上記のTVO社及びFPH社が申請していた新規原子炉から発生する使用済燃料に対応した、オルキルオト処分場の処分量拡大に関する原則決定の申請について、政府がTVO社からの使用済燃料分については肯定的な原則決定を行い、FPH社からの使用済燃料分についての原則決定の申請は拒否するとする経済大臣の提案を公表した。なお、同プレスリリースによれば、原則決定を行うための閣議は2010年5月6日に行われる予定である。
フィンランドでは、2002年5月の政府の原則決定によって、既存の4基と現在建設中の1基から発生する6,500トンまでの使用済燃料(ウラン換算、以下同じ)をオルキルオト処分場にて地層処分する計画が認められている 。その後、フィンランドにおける使用済燃料処分の実施主体であるポシヴァ社は、2008年4月にTVO社が導入を計画しているオルキルオト原子力発電所4号機から発生する使用済燃料に対応するため、最終処分場での使用済燃料の処分量を9,000トンに拡大するための原則決定の申請を行っていた 。さらにポシヴァ社は、FPH社のロヴィーサ3号機の導入計画に対応するため、2009年3月に最終処分場での使用済燃料の処分量を12,000トンに拡大するための原則決定の申請を行っていた 。
同プレスリリースにおいて、追加の原子力発電所の建設は、政府の温暖化対策及びエネルギー戦略に則ったエネルギー政策の一環とするもの、としている。
2010年4月21日に公表された経済大臣の提案書では、フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に関する原則決定には、同社の原子炉から発生する使用済燃料の処分計画に関する条件が付されるとしている。具体的には、フェノヴォイマ社の新規原子炉建設に向けた原則決定に対して国会が承認してから6年以内に、フェノヴォイマ社が廃棄物管理義務者と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、同社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することを要求するとしている。
フェノヴォイマ社は、2009年1月に雇用経済省に提出した原則決定の申請において、フィンランドの他の事業者(TVO社とFPH社)と協力してオルキルオトでの使用済燃料の最終処分を計画するとしていた。さらに、他の事業者と協力関係を築くことが出来ない場合にも、原子力法第29条により雇用経済省が共同で廃棄物管理の措置を講じるように命令することができることにも言及していた。
【出典】
- 雇用経済省、2010年4月21日付プレスリリース、 http://www.tem.fi/?89521_m=98874&l=en&s=2471
- 雇用経済省、原子力発電所の原則決定の申請に対する閣議の見解に関するペッカリネン経済大臣の提案(2010年4月21日)、 http://www.tem.fi/files/26660/elinkeinoministerin_esitys_VN-kannaksi_ydinvoimalaitoksiin_kesaranta.pdf
- フェノヴォイマ社、原子力発電所に関する原則決定の申請書(2009年1月14日)、
http://www.fennovoima.fi/userData/fennovoima/doc/PAP-materiaali/application_eng.pdf - Ydinenergialaki(原子力法)、http://www.finlex.fi/fi/laki/ajantasa/1987/19870990
【2010年5月7日追記】
雇用経済省は、2010年5月6日付のプレスリリースにおいて、TVO社とフェノヴォイマ社の新規原子炉の建設に関する原則決定の申請、及びTVO社の新規原子炉からの使用済燃料に対応した、ポシヴァ社による最終処分場の処分量拡大に関する原則決定の申請について、政府が肯定的な原則決定を行ったことを公表した。また、FPH社による新規原子炉建設に関する原則決定の申請、及び同社の新規原子炉からの使用済燃料に対応した、ポシヴァ社による最終処分場の処分量拡大に関しての原則決定の申請については、政府が拒否したことを公表した。
また、同プレスリリースによれば、政府により肯定的に行われた原則決定が有効となるためには、それぞれ別個に国会の承認が必要であるとしている。
【追記部出典】
- 雇用経済省、2010年5月6日付プレスリリース「2基の新規原子炉に関する政府決定」、 http://www.tem.fi/?89521_m=99003&l=en&s=2471
【2010年7月1日追記】
雇用経済省は、2010年7月1日付のプレスリリースにおいて、政府が2010年5月に原則決定を行った案件のうち、TVO社とフェノヴォイマ社による新規原子炉の建設、及びポシヴァ社によるTVO社の新規原子炉からの使用済燃料に対応した最終処分場の処分量拡大について、2010年7月1日に国会が承認したことを公表した。
同プレスリリースによれば、具体的な国会での投票結果は、TVO社による新規原子炉建設が120対72、フェノヴォイマ社による新規原子炉建設が121対71、ポシヴァ社による使用済燃料処分場の処分量の拡大が159対35にて、それぞれ支持されたとしている。
【追記部出典】
- 雇用経済省、2010年7月1日付プレスリリース、http://www.government.fi/ajankohtaista/tiedotteet/tiedote/en.jsp?oid=302066, http://www.tem.fi/index.phtml?89521_m=99639&l=en&s=2471
- 国会、2010年7月1日付プレスリリース、http://web.eduskunta.fi/Resource.phx/pubman/templates/56.htx?id=3449
【2012年3月5日追記】
雇用経済省は、2012年2月28日付プレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が新設予定の原子力発電所から発生する使用済燃料の処分に関して、処分計画の策定が進展していない状況を打破するため、政府はポシヴァ社とその出資者であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)及びフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)がフェノヴォイマ社と協力するよう、原子力法に基づく命令を行う用意があることを公表した。フィンランドの原子力法(第29条)では、安全性を向上できるか、費用を大幅に低減できる場合、または他の重要な理由によって必要な場合、雇用経済省は、廃棄物管理義務者に対して、共同して廃棄物管理の措置を講じるよう命令することができるとされている。同プレスリリースの発行時点では、同法に基づく命令はまだ行われていない。
同プレスリリースによると、同日開催された政府の経済政策委員会において、政府は、当事者に対して最終処分に関する技術的な調査を中立かつ公正な方法で行うよう求めているとし、共同の処分が実行可能であり、経済性及び安全性の観点から全体的に最善と判断される場合には、当事者は協力しなければならないとする考えが述べられた。
なお、2010年にフェノヴォイマ社が原則決定を付与された際、国会が承認してから6年以内に使用済燃料管理に関して既存の処分・管理実施主体であるポシヴァ社との協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書を雇用経済省に提出することにより、フェノヴォイマ社の使用済燃料最終処分に関する計画を策定することが条件とされていた。
【出典】
- 雇用経済省2012年2月28日付けプレスリリース
http://www.tem.fi/?89521_m=105630&l=en&s=2471
【2013年1月15日追記】
雇用経済省(TEM)は2013年1月10日付のプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社の使用済燃料管理に関する電力会社間の協力について検討してきた作業部会が、同日、最終報告書を経済大臣に提出したことを公表した。報告書において、作業部会は、フェノヴォイマ社の使用済燃料の最終処分については、ポシヴァ社がこれまでに培ってきた知見を活かすことが最も理に適い費用効率の高い方法であるとして、電力会社間でフェノヴォイマ社の使用済燃料処分問題の解決に向けて交渉を継続することが望ましいとする見解を経済大臣に答申している。
また、同プレスリリースによれば、作業部会はフェノヴォイマ社の使用済燃料管理に関する以下の2つの案を検討し、いずれを採用しても、安全性に重大な差は生じないとの結論を得たとしている。
案①:オルキルオトに建設されるポシヴァ社の地層処分場を拡張して処分する方法
案②:フェノヴォイマ社が独自に最終処分場を建設する方法
雇用経済省は、2012年2月の政府の経済政策委員会での議論(2012年3月5日追記を参照)を踏まえて、この問題を調査・検討する作業部会を2012年3月に設置していた。
【出典】
- 雇用経済省2013年1月10日付けプレスリリース、
http://www.tem.fi/?89521_m=109189&l=en&s=2471
【2015年8月6日追記】
フィンランドの電気事業を行うフォルツム社3 は、2015年8月5日付けのプレスリリースにおいて、フェノヴォイマ社が計画している新規原子炉の建設プロジェクトに出資することを公表した。雇用経済省(TEM)も同日、プレスリリースを公表し、フェノヴォイマ社のプロジェクトに対する出資比率に関する要件(囲み記事参照)が満足されたこと、一旦保留されていた建設許可申請の審査が再開されることを明らかにした。新規原子炉で発生する使用済燃料の処分について、フェノヴォイマ社は、2016年6月末までに、オルキルオトでの使用済燃料処分場の建設を計画しているテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)、フォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)と協力協定を締結するか、独自の使用済燃料最終処分場の建設に向けた環境影響評価(EIA)計画書をTEMに提出することにより、使用済燃料処分に関する計画を策定することが要求されている。
なお、フィンランドでは、TVO社がオルキルオト原子力発電所4号機の建設を計画していたが、TVO社は2015年6月24日に、建設許可申請を断念することを決定し、オルキルオト4号機の建設許可申請はされなかった4 。ポシヴァ社が2012年末に提出した使用済燃料処分場の建設許可申請書(処分容量は最大9,000トン)では、オルキルオト4号機で発生する使用済燃料も処分対象に含まれていた 。
<フェノヴォイマ社の新規原子炉建設プロジェクトをめぐる動き>
フェノヴォイマ社は、フィンランド中西部のピュハヨキにおいてハンヒキビ1号機の建設プロジェクトを進めている。同社が2009年に新規原子炉建設の原則決定申請をした当初は、日本の東芝またはフランスのAREVA社による大型炉(150万~250万kW)を建設する計画としていた。当初のプロジェクトに対して2010年5月に政府により原則決定がなされ、同年7月に国会が承認していた。しかし、その後、プロジェクトに出資していたドイツのエネルギー会社E.ONが2012年にプロジェクトから撤退したことを受け、フェノヴォイマ社は大型炉に代えて、ロシア製の中型炉(AES-2006型、120万kW)を建設する計画に変更し、2014年3月に修正した計画の原則決定を申請した。政府は2014年9月に原則決定をし、同年12月に国会が承認していたが、付帯条件としてプロジェクトへの出資構成として欧州連合(EU)または欧州自由貿易連合(EFTA)圏内に登録されているか本拠地を置いている企業が60%以上であることを要求していた。当初E.ONが出資していた34%の株式については、2014年にロシアのロスアトム社の傘下にあるRAOS Voima社に譲渡されている。
フェノヴォイマ社は原則決定の有効期限となる2015年6月30日に建設許可申請書とともに、出資構成に関する文書を提出したが、雇用経済省は出資比率に関して不明な点があるとして、フェノヴォイマ社に追加文書の提出を求めていた。しかし、追加で提出された文書でも出資比率の要件を満たされているか確認できないとして、雇用経済省は、建設許可申請の取扱いについて保留していた。
【出典】
- 雇用経済省2015年8月5日付プレスリリース
http://www.tem.fi/en/energy/press_releases_energy?89521_m=118506 - フォルツム社2015年8月5日付プレスリリース
http://www.fortum.com/en/mediaroom/pages/fortum-to-participate-in-the-fennovoima-project-with-66-per-cent-share-tgc-1-restructuring-negotiations-in-russia.aspx - TVO社2015年6月24日付プレスリリース
http://www.tvo.fi/news/1615
【2022年5月26日追記】
フィンランドのフェノヴォイマ社は、2022年5月24日付のプレスリリースにおいて、2015年6月に雇用経済省(TEM)へ提出していたハンヒキビ1号機の建設許可申請について、申請を取り下げる意向を同省に通知したことを公表した。同社は、2022年5月2日付のプレスリリースにおいて、ロシアのロスアトム社の傘下にあるRAOS Voima社と締結していた原子力発電所の設計・調達・建設(EPC)に係る契約の解除を公表していた。契約解除の理由としてフェノヴォイマ社は、契約業務の大幅な遅延と事業遂行能力の欠如を挙げ、RAOS Voima社がロシアのウクライナ侵攻に伴う事業リスクの悪化を緩和できていないと説明していた。雇用経済省は、フェノヴォイマ社からの通知を受け、同省が数週間のうちに建設許可申請に係る行政手続きを終了するための決定をする可能性があるとコメントしている。
フェノヴォイマ社は、直近では2021年4月28日に建設許可申請書を更新しており、2022年夏までに建設許可発給を受け、2023年夏に建設を開始する見通しであった。また、ハンヒキビ1号機から発生する使用済燃料については、ハンヒキビ1号機の建設予定地であるピュハヨキ自治体と、使用済燃料処分場の建設が進められているエウラヨキ自治体とのどちらかで処分する計画であり、2つの自治体で環境影響評価(EIA)を実施する予定であった 。
フェノヴォイマ社は、自社が担当する現地の整地工事を既に中止しており、今後、建設予定地の安全とセキュリティの維持に注力することとしている。また、フェノヴォイマ社は、今回の建設許可申請の取り下げに伴い、サプライチェーン企業、ピュハヨキ地域経済のほか、特に、従業員に重大な影響が及ぶことを懸念しており、関係先への情報提供を行うとともに、同社従業員との交渉やサポートに努めていることを明らかにしている。
【出典】
- フェノヴォイマ社、2022年5月24日付プレスリリース(英語)
https://www.fennovoima.fi/en/press-releases/fennovoima-has-withdrawn-hanhikivi-1-construction-license-application-focus-now - フェノヴォイマ社、2022年5月2日付プレスリリース(英語)
https://www.fennovoima.fi/en/press-releases/fennovoima-has-terminated-contract-delivery-hanhikivi-1-nuclear-power-plant-rosatom - フェノヴォイマ社、2021年4月28日付プレスリリース(英語)
https://www.fennovoima.fi/en/press-releases/fennovoima-updates-construction-license-application - 雇用経済省(TEM)、2022年5月24日付プレスリリース(英語)
https://tem.fi/en/nuclear-facilities-and-projects/fennovoima - 雇用経済省(TEM)、2022年5月2日付プレスリリース(英語)
https://tem.fi/en/-/ministry-of-economic-affairs-and-employment-considers-termination-of-pyhajoki-plant-delivery-contract-justified
(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-11 )