カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、自身のウェブサイトにおいて、2009年度の年報を2010年3月25日に連邦天然資源大臣に提出したことを公表するとともに、同年報を掲載した。NWMOによる年報の作成・公表は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)に基づくものである。今回の年報では、2007年6月 に政府決定された使用済燃料の長期管理アプローチ「適応性のある段階的管理」の実施に向けた7つの戦略的目標 について、2009年度における事業の進捗状況が報告されている。なお、適応性のある段階的管理の実施に向けた7つの戦略的目標は以下の通りである。
- 公衆との長期的な関係構築
- 研究推進
- 処分費用の資金確保
- 計画のレビュー、調整、有効化
- 組織の統治・監督等
- 実施主体の増強
- サイト選定手続きの策定 (既報)
このうち公衆との長期的な関係構築の分野では、2009年中に核燃料サイクルに関連している4州の17の地域において公衆との対話集会を開催し、合計で700人以上が参加したことが示されている。また、適応性のある段階的管理のためのサイト選定では、関心のある自治体の協力が必要であるため、核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2009年中にNWMOが地方自治体とのコミュニケーションを行うための地方自治体フォーラムを設立し、3度の会合を行ったことが示されている。
また、研究推進の分野では、結晶質岩及び堆積岩の両岩種を対象とし、使用済燃料の地層処分場の概念設計やセーフティケースのアップデートに関するプロジェクトを開始したとしている。これらの概念設計やセーフティケースは、事前許可審査のため、2012年までに安全規制当局であるカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出するとしている。
さらに同年報では、2002年に核燃料廃棄物発生者の原子力発電会社及びカナダ原子力公社(AECL)によって設定された各信託基金の資金残高が、2009年12月末時点で合計約18億カナダドル(約1,400億円)とされている(1カナダドル=77円で換算)。
なお、核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2009年5月に地層処分場のサイト選定計画案に関する協議文書を公表し、同案に対する意見募集を開始していたが 、同年報によると、NWMOは、寄せられたすべての意見などを考慮に入れ、サイト選定計画を最終版として2010年中に公表することとしている。
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)2009年度年報、 Moving Forward Together, Annual Report 2009, NWMO
【2010年4月2日追記】
核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2010年3月31日、「適応性のある段階的管理」に関する2010年~2014年の実施計画書を公表した。同計画書では、2013年までに候補サイトでの詳細調査、社会経済的評価の開始準備が整う見込みであることが示されている。なお、同計画書は2009年11月に草案が公表され、意見募集が行われていた。
【追記部出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、Implementing Adaptive Phased Management 2010-2014, March 2010
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )