ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が2017年9月から3段階からなるサイト選定手続きを進めている 。BGEは、2020年9月に取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』(以下「中間報告書」という)において、ドイツ全土から最終処分にとって好ましい地質学的条件が存在すると判断される90区域を抽出したが、それらは国土の54%を占めており、さらなる絞り込みに向けて検討を進めているところである 。BGEは2022年12月19日付けのプレスリリースにおいて、絞り込んだ限定数のサイト地域を2027年に提案できる見通しを明らかにした。
■3段階のサイト選定手続き全体の所要期間の見積り
ドイツでは最終処分場の母岩候補として、岩塩、粘土岩及び結晶質岩を検討している。サイト選定手続きの第1段階では、これら3種類の母岩において、高レベル放射性廃棄物の安全な処分の実現にとって好ましい地質学的条件が存在すると予想される「サイト地域」を指定することになっている。BGEは、サイト選定手続きのプロジェクト管理組織として、連邦や州の管轄当局にデータ提供を要請することにより、地球科学的な評価基準をドイツ国土に適用する上で必要となるデータを収集した。BGEの中間報告書の取りまとめを受けて設置された「サイト区域専門会議」は、2021年8月に、今後のサイト地域の指定に向けた公衆参加の計画を検討できるようにするために、サイト選定のマイルストーンを早急に明らかにするようBGEに求めていた 。
今般BGEは、サイト区域専門会議の提言に対応するため、サイト選定手続きを進める上で必要な作業工程を検討(スケジューリング)することにより、サイト決定に至るまでの全体スケジュールの見通しを考察した報告書を取りまとめた。既に着手している母岩の種類別の予備的安全評価や関連する研究開発などの工程計画を踏まえると、BGEによる第1段階における限定数のサイト地域の提案は、約5年後の2027年後半となる見通しである。また、BGEは第2段階において実施する地上からの探査には、対象となるサイト地域数に応じて9~11年を要すると推定している。第3段階で実施する地下探査の所要期間は、その実施内容によって大幅に変わり、ボーリング調査のみの場合には5~6年、地下研究所を設置する調査を行う場合には13~23年と推定している。なお、これらの所要期間の推定には、規制当局による審査や連邦議会での決定プロセスに要する時間は含めていない。
■今後の公衆参加活動に向けたBGEによる提案
ドイツでは2013年に制定されたサイト選定法において、サイト選定手続きは《可逆性のあるプロセス》であると定めており、最終処分場サイトの決定を2031年までに行う目標を掲げている。BGEは、今回提示したサイト選定手続きの所要期間の見積りには多くの未確定・不確定な要素があることに言及した上で、法律上の目標年の達成はもはや現実的ではないとの考えを表明した。また、今後、サイト選定手続き全体を通じた信頼性のあるスケジュールを具体化していくために、継続的でオープンな協議を行っていくことが必要との考えを示した。こうした観点からBGEは、2~3年ごとに公開ワークショップを開催し、一般市民や関係者と対話しつつ、以下に示す課題を検討していくことを提案している。
- 第2・第3段階での絞り込みに必要十分な探査方法
- 第2段階の地上からの探査、第3段階での地下探査のプログラムについて、社会的合意が得られ、かつ許認可プロセスが円滑に進むような計画策定方法
- 第1段階で実施する予備的安全評価を含め、段階的に行われる安全評価が信頼あるものとなるために必要な要素
- サイト選定手続きに関与する多くの関係者(アクター)間の意思疎通が円滑になるような対話の進め方
BGEは、今回のプレスリリースを通じて、BGEがメンバーとして参加している「サイト選定フォーラム計画チーム」1 の企画運営による公開ワークショップが2023年1月13日に開催されることを告知している。
【出典】
- 連邦放射性廃棄物機関(BGE)ウェブサイト、2022年12月19日、
https://www.bge.de/de/aktuelles/meldungen-und-pressemitteilungen/meldung/news/2022/12/bge-will-bis-spaetestens-2027-den-bericht-zu-den-standortregionen-uebermitteln/ - BGE、2022年12月16日、「サイト選定手続きのスケジュール考察~第1段階ステップ2におけるサイト地域提案までのスケジュール及び第2・第3段階の見積り」
https://www.bge.de/fileadmin/user_upload/Standortsuche/Wesentliche_Unterlagen/05_-_Meilensteine/Zeitliche_Betrachtung_des_Standortauswahlverfahrens_2022/20221216_Zeitliche_Betrachtung_StandAW-48_barrierefrei.pdf - 発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律(サイト選定法)
- 2021年8月のサイト区域専門会議の提言 に基づき設置される、サイト地域の提案までの間に公衆参加を行うサイト選定フォーラムの設置準備などを行う組織であり、BGEのほか、規制機関である連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)、社会諮問委員会、社会団体、市民、35歳以下の市民、地方自治体、学術界の代表で構成されている。 [↩]
(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2023-10-11 )