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《英国》カンブリア州のアラデール市が調査エリアの特定に向けてワーキンググループを設置

英国の地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2021年1月14日付けのプレスリリースにおいて、英国カンブリア州のアラデール市が地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:アラデールGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、調査エリアの特定を行っていくが、プロセスを進めるための「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったのは、2020年11月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

アラデール市は、原子力施設が数多く立地するコープランド市の北に隣接しており、原子力産業に従事している住民が多く居住している。アラデール市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても関心表明を行っていたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、当時の選定プロセスから撤退している 。

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている 

アラデール市では、官民再生パートナーシップによる地域再生事業などを手掛けるGenR8 North社1 が地層処分施設の立地に関心を示し、GenR8 North社とRWM社の初期対話が実施された。ワーキンググループのウェブサイトでは、初期対話の期間にRWM社が取りまとめた初期評価レポート(Initial evaluation report)が公表されている。RWM社は、既存の情報に基づけば、GenR8 North社が関心を示すエリア2 は地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。

今回アラデール市で設置されたワーキンググループでは、議長にヨークシャーデールズ国立公園局の元メンバー3 であるジョスリン・マナーズ-アームストロング氏が就任する。また、ワーキンググループには、アラデール市議会、RWM社及びGenR8 North社が参加する。なお、GenR8 North社の意向もあり、アラデール市のうちの湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外されることとなっている。

■今後の取組

コープランド市のワーキンググループと同様に、アラデール市のワーキンググループも、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月7日追記】

(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

英国カンブリア州アラデール市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年10月5日付のプレスリリースにおいて、同市内から約320平方キロメートルの「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。アラデール市では2021年1月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、アラデール市の選挙区4 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。なお、2018年から開始したサイト選定プロセスにおいて、調査エリアの特定に至ったのは、2021年9月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

アラデール市のワーキンググループは、調査エリアの特定やサイト選定プロセスの次の段階に関して、近日中に地域住民へ説明する予定である。

サイト選定プロセスを次の段階に進めるためには、地元コミュニティのメンバー、アラデール市、RWM社などで構成される「コミュニティパートナーシップ」を設立する必要がある。今後、パートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)の資金が提供されることになっている。

 

【出典】

 

  1. GenR8 North社は、カンブリア州に拠点を置く企業である。コープランド市における地層処分施設の立地にも関心を示しており、RWM社との初期対話を行っており、現在、コープランド市のワーキンググループにも参加している。 []
  2. 湖水地方の国立公園を除く、アラデール市の領域と隣接する沿海部を意味している。 []
  3. 英国における各国立公園局(National Park authorities)のメンバーは、法律に基づき、議会や国務長官により任命される。 []
  4. 現在、アラデール市の選挙区は23あり、市議会議員の定数は49名である。今回調査エリアの対象となった13の選挙区の議員定数は、アスパトリア:2名、ブロートンセントブリッジッツ:2名、ダルトン:1名、エレン・ギルクスク:2名、フリンビー:1名、ハリントン・サルターベック:3名、マリポートノース:3名、マリポートサウス:2名、ムーアクローズ・モスベイ:3名、シートン・ノースサイド:3名、セントジョンズ:3名、セントマイケルズ:2名、ステインバーン・クリフトン2名である。 []

(post by f-yamada , last modified: 2024-01-31 )