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《英国》カンブリア州のコープランド市が調査エリアの特定に向けてワーキンググループを設置

英国カンブリア州のコープランド市は、2020年11月4日付のプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:コープランドGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、情報発信を目的としたウェブサイトを開設するとともに、調査エリアの特定と提案、並びに「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、コミュニティパートナーシップに参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったケースは今回のコープランドが初めてとなる。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

コープランド市には、セラフィールド酸化物燃料再処理工場(THORP)などの多くの原子力施設が立地している。同市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても、関心表明を行っており、コープランド市議会は次段階に進むことを賛成多数で可決していたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、コープランド市は当時の選定プロセスから撤退している

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている。コープランド市のワーキンググループは、ウェブサイトにおいて、地層処分施設の立地に関心を示した4者とRWM社の初期対話の期間にRWM社が取りまとめた4つの初期評価レポート(Initial evaluation report)を公表している。

  • コープランド市議会(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 民間企業(対象エリア:低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)近郊の沖合)
  • 民間企業(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 個人(対象エリア:ギル・スコーア採石場と海岸の平原)

RWM社は、既存の情報に基づけば、コープランド市議会を含む4者が関心を示しているエリアはいずれも地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

 コープランド市のワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)


コープランドGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。コープランド市は、RWM社の初期評価レポートの提出を受け、2020年7月にコープランド市議会執行部において、以下の条件の下でワーキンググループの設置に向けて、RWM社と検討を進めることを決定した。

  • 現在、湖水地方の国立公園の敷地内にあるコープランド市の領域は、最初から検討対象として除外すること1
  • 現在コミュニティと進められているプロセスでは、GDFを沖合に設置することも可能となっていることを踏まえ、沖合も検討対象とすること
  • 市議会は、ワーキンググループの議長として、信頼できる独立した人物を任命したいと考えており、また市議会が負担するサイト選定プロセスに参加するために必要な正当な費用は全て補償されるべきであると考えていること

地層処分施設の設置に関心を示していた4者及びRWM社間でワーキンググループの設置に同意が得られたことを受けて、今回、初期のワーキンググループのメンバーのうち、自治体組織であるコープランド市からワーキンググループの設置が公表されることとなった。ワーキンググループの議長には、カンブリア州の南に位置するランカシャー州・ランカスター市議会の事務総長等を歴任してきたマーク・カリナン氏が就任する。なお、ワーキンググループのメンバーには、RWM社も含まれる。

■今後の取組

ワーキンググループは、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定と提案を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月5日追記】

英国カンブリア州コープランド市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年9月29日付のプレスリリースにおいて、同市内から2箇所の「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。コープランド市では2020年11月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する既存の情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、コープランド市の選挙区2 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。

Copeland Search Areas

(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

同プレスリリースにおいてワーキンググループは、今回特定した調査エリアそれぞれを含む選挙区で構成される「コミュニティパートナーシップ」の設立に関して、数週間のうちにコープランド市議会で決定される3 予定であることを明らかにした。コープランド市のコミュニティパートナーシップは、最大で2つ設立される可能性がある。

今後、コミュニティパートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146 円)の資金が提供されることになっている。

【出典】

  1. RWM社による初期評価の対象となった場所についてサイト調査への関心を表明した、コープランド市議会以外の3者も、湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外するべきであるとの見解を示していた。 []
  2. 現在、コープランド市の選挙区は17あり、市議会議員の定数は33名である。今回調査エリアの対象となった4つの選挙区(図A~D)の議員定数は、A:2名、B:1名、C:3名、D:2名である。 []
  3. コミュニティパートナーシップを設立するには、調査エリアを含む自治体組織の同意と参加が必要となる。コープランド市の場合、コープランド市議会がすでにワーキンググループのメンバーとして、これまでの検討にも参加している。 []

(post by f-yamada , last modified: 2024-01-31 )