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§ 2020年11月20日 発行 海外情報ニュースフラッシュ

カナダで天然資源省が放射性廃棄物政策の見直しに向けた関与プロセスを開始

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カナダの天然資源省は、2020年11月16日付けのニュースリリースで、放射性廃棄物政策の見直し(modernize)に向けて、公衆、先住民、廃棄物発生者、州政府などの様々なステークホルダーを含む全国民的な関与プロセス(inclusive engagement process)を開始したことを公表した。天然資源省は、カナダの放射性廃棄物政策が、今後も国際的な最良の慣行に合致するとともに、既存及び将来発生する放射性廃棄物の管理活動を牽引するリーダーシップをもたらすものとしたい考えである。また、天然資源省は、この関与プロセスの一環として、カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に対して、放射性廃棄物の所有者及び発生者、先住民、カナダ国民と協働して、低・中レベル放射性廃棄物を含めた包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発するための対話を主導するよう要請したことを明らかにした。

■放射性廃棄物政策の見直しの背景とスケジュール

カナダの現行の放射性廃棄物政策は、連邦政府が1996年に策定した「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいており、放射性廃棄物の発生者と所有者による処分のための制度と資金確保に関する責任について、以下のように定めている。

  • 連邦政府は、放射性廃棄物処分が安全に、環境面で健全に、包括的に、費用対効果の高い形で、また統合的に実施されるようにする。
  • 連邦政府は、廃棄物発生者と所有者が承認された処分計画に従って資金確保と操業の責任を果たすことができるようにするために、政策を策定し、それらの者を規制・監督する責任を負う。
  • 廃棄物発生者と所有者は、汚染者負担の原則に従い、処分やその他の放射性廃棄物に関して必要となる施設のための資金確保、組織、マネジメント及び操業に責任を負う。
  • 廃棄物発生者は、規制上の審査と承認が必要になる施設や活動に関する計画を策定して実行し、また承認を得たら、報告や遵守に関する審査に加えて、許認可で定められた要件と条件に従う。

「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいて、1997年に安全規制に関する「原子力安全管理法」が制定されたほか、2002年に使用済燃料の長期管理の枠組みを定める「核燃料廃棄物法」が制定され、使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立された

NWMOは、核燃料廃棄物法によって、使用済燃料の長期管理アプローチを開発し、天然資源大臣に提案する任務を与えられた。NWMOは、カナダ国民との関与プロセスを展開し、聴き取った意見を集約・反映して「適応性のある段階的管理」(詳しくは こちら)を提案した。NWMOが提案したアプローチは、天然資源大臣の勧告を踏まえた2007年6月の総督決定により、カナダの使用済燃料の長期管理アプローチとして決定した。NWMOは、2010年5月に使用済燃料処分場のサイト選定を開始し、現在は2カ所の自治体でサイト選定が進められている

一方、低・中レベル放射性廃棄物については、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が所有するブルース原子力発電所サイトでの地層処分場(DGR)の建設を目指していたが、プロジェクトに対する賛否を問う先住民による投票結果を受けて、OPG社は2020年1月31日、同サイトにおけるDGRの建設を断念し、代替サイトを検討する方針に転じている

このような状況から、連邦政府は今回、カナダの全ての放射性廃棄物を安全かつ長期にわたって管理するための確固とした政策と明瞭な道筋を示すため、ステークホルダーと協力し、カナダ国民と対話していく考えを表明した。天然資源省は、カナダ国民との対話に向けた特設ウェブサイトを設置しており、廃棄物の最小化(minimization)と貯蔵施設に関する情報提供を行っているほか、質問を提示して回答を求めるディスカッションペーパーを公表している。その他のトピックのディスカッションペーパーも追加される予定である。カナダ国民との関与プロセスは、2021年3月31日までを継続する。天然資源省は、関与プロセスを通じて寄せられた意見を集約した報告書を公表して、コメントを募集した後、2021年秋には最新化した政策を公表する予定である。

■包括的な放射性廃棄物管理戦略の開発

天然資源大臣は、低・中レベル放射性廃棄物を含めた放射性廃棄物政策の見直しに向けたカナダ国民との関与プロセスの開始の公表に先がけ、2020年11月13日に核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に書簡を送り、カナダにおける唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略(an integrated strategy)の開発のための対話をNWMOが主導するよう要請していた。

天然資源大臣は、現行の放射性廃棄物政策においては放射性廃棄物の発生者と所有者(以下「事業者」という)に対して、それぞれが個別に廃棄物管理計画(長期を含む)を開発するよう求めており、様々な事業者が多様な取組を検討しているものの、そのような取組が対話を通じてステークホルダーやカナダ国民に周知されなければならないと指摘している。また、事業者は自らが管理する放射性廃棄物の特性を最も良く理解しており、それらの事業者が協力して唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発しなければならないとも考えている。こうした理由から、天然資源大臣は、事業者やステークホルダー、カナダ国民との対話を始めるにあたり、これまで使用済燃料管理と公衆関与のリーダーを果たしてきたNWMOが適任であるとしている。

天然資源大臣は、今後開発していくカナダの包括的な放射性廃棄物管理戦略には、以下の要素が含まれなければならないとしている。

  • 現在と将来における廃棄物量という観点からの、カナダにおける現在の放射性廃棄物管理の状況の説明。なお、小型モジュール炉(SMR)を導入した場合に発生する廃棄物や、廃棄物の特性、場所及び所有権を考慮する。
  • カナダの放射性廃棄物の長期管理や処分方策における現行の計画と進捗のアップデート、及び対処しなければならないギャップ。
  • 現在及び将来の放射性廃棄物インベントリに対応するための概念的なアプローチ。これには、様々なタイプの放射性廃棄物の長期管理や処分のための技術オプション、及びカナダにおける放射性廃棄物の長期管理施設のそれぞれに関するオプションを含む。
  • 廃棄物の長期管理施設の計画、統合、設置及び操業に関する考慮事項。

天然資源大臣からの要請を受けたNWMOは、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関して、実用的な勧告を連邦政府に提示したいとの考えとともに、使用済燃料の長期管理アプローチの開発から実施を通じ、カナダ国民との関与に関する20年にわたる経験と知識を活用して協力する姿勢を明らかにした。

【出典】

(post by nunome.reiko , last modified: 2020-11-20 )