カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施を行う核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2004年3月26日に、2003年の年報「対話から意思決定へ:核燃料廃棄物管理」を天然資源大臣に提出、公開した。この年報は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)における規定(第16条(1)および第26条(1))に基づくもので、設立後約3ヶ月で発行された第一回目の年報 に引き続き、今回が二回目のものである。
この年報によると、2003年における公衆や様々な団体との対話活動として、円卓会議やワークショップの開催のほか、上半期に250回を超える非公式な対面形式の会合をもったこと、全国を対象に1900人規模の電話意識調査を実施したことが紹介されている。また、公衆との議論を進めるために計画された第一段の報告書「適切な問題設定をしているか? カナダの使用済燃料の長期管理」を11月28日に公表 し、この報告書についての意見募集の活動を開始したことが示されている。
2004年の活動予定については、公衆との議論を進めるために計画された第二段の報告書「選択肢についての理解」の公表に向けて、核燃料廃棄物の様々な管理アプローチの評価に重点をおいた活動を行うとされている。管理アプローチの評価のために、NWMOは、社会問題、市民の関与、科学、原子力工学、環境保護、経済学、リスク評価などの分野に精通する人から構成される評価チームを結成したことが紹介されている。
年報によれば、NWMOは今後以下の報告書を作成する予定としている。
- 2004年中頃に、公衆との議論を進めるための第二段の報告書「選択肢についての理解」の発表
- 2005年初頭に、第三段の報告書「進むべき道の選択-草案」の発表
- 核燃料廃棄物法に基づき、核燃料廃棄物の管理アプローチの比較評価、実施計画、および最終的な勧告を含む報告書「進むべき道の選択」を2005年11月15日までに天然資源大臣に対して提出
カナダでは核燃料廃棄物管理の資金確保のために信託基金が設置されている。NWMOの2003年度の年報には以下のように、各原子力企業が核燃料廃棄物法に規定された2003年の拠出金を納付したことが示されている。(2002年における拠出金額は既報を参照)
オンタリオ・パワージェネレーション社 | 1億CAD(85億円) |
ハイドロ=ケベック社 | 400万CAD(3.4億円) |
ニューブランズウィック社 | 400万CAD(3.4億円) |
カナダ原子力公社(AECL) | 200万CAD(約1.7億円) |
(CAD=カナダドル、1CAD=85円として換算)
なお、核燃料廃棄物法では、信託基金に拠出された資金は、最終的な核燃料廃棄物管理アプローチが決定された後、そのアプローチを実施する目的のためだけに引き出すことが可能であると規定されており、現在のNWMOの活動費用は、AECLを除くカナダの原子力企業が、その使用済燃料の保有量に基づいて負担している。
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト3月28日ニュースリリース http://www.nwmo.ca/default.htmx?DN=553,50,19,1,Documents
- From Dialogue to Decision Managing Canada’s Nuclear Fuel Waste, 2004, NWMO
- 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律 (An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )