カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施を行う核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、機関設立の2002年秋からの3カ月間の活動をまとめた年報、「対話から意思決定へ:核燃料廃棄物管理」を公表した。この年報は、2002年11月に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(略称:核燃料廃棄物法)における規定(第16条(1)および第26条(1))に基づいて作成されたものであり、2003年3月28日に初の年報として天然資源大臣に提出された。(核燃料廃棄物法の施行およびNWMOの設立については既報を参照のこと)。
同法の定めによれば、NWMOは、2005年11月15日までに核燃料廃棄物の長期管理に対する計画を政府に対して提案しなければならない。この使命を達成するために、NWMOは、科学技術的な側面からだけでなく、倫理、社会、経済的な問題も考慮したさまざまな管理方法の総合的な研究を行わなければならない。
年報では、2002年における主な活動が記述され、また、関係機関との対話の開始、対話から得られた教訓および今後の予定などがまとめられている。主な内容は以下のとおりである。
1.2002年における主な活動
NWMOは、非営利の法人で、核燃料廃棄物の主な所有者であるオンタリオ・パワージェネレーション社、ハイドロ=ケベック社、ニューブランズウィック社によって創設されたものである。核燃料廃棄物法では、資金確保方策について「信託基金」の設立を規定し、基金への拠出は上述の3つの原子力事業者およびカナダ原子力公社(AECL)が行うことが規定されている。2002年における拠出額は以下のとおりである。
オンタリオ・パワージェネレーション社 | 5億CAD(約405億円) |
ハイドロ=ケベック社 | 2,000万CAD(約16億円) |
ニューブランズウィック社 | 2,000万CAD(約16億円) |
カナダ原子力公社(AECL) | 1,000万CAD(約8.1億円) |
(CAD=カナダドル、1CAD=81円として換算)
また、NWMOは、2002年秋に「諮問機関」を設立しており、そのメンバーには原子力技術に精通した人だけでなく、連邦、州および地元レベルの政府機関において優れたキャリアを有し、公共政策の社会的な側面などの重要性についても見識のある人が選任された。この諮問機関は、NWMOの廃棄物管理オプションを倫理および社会的な側面から評価し、また市民を含めた関連機関とのオープンで透明性の高い対話を行うこととなっている。
さらに、NWMOは、設立の当初より、原子力発電所が所在する地元の市長、コンサルタント、規制機関、議員などを含めた幅広い利害関係者や、諸方面の専門家などとの対話を行ってきている。
2.今後の活動に向けて
さまざまな利害関係者との対話を通してNWMOが受けたメッセージには、「核燃料廃棄物管理研究の分析は、総括的、独立的かつ客観的でなければならず、また過度に原子力産業や政治による影響を受けてはならない」ことや、「研究の過程は、透明性が確保され、またさまざまな人が関与出来る方法で進めなければならない」というものがあった。
これらのコメントを受け、NWMOは今後の活動計画を予備検討段階で公表し、NWMOの考えを提供しつつ対話を進める方針である。NWMOは2005年11月15日までの3年間に行う研究を3段階に分け、それぞれの段階で以下の事項に焦点を置いて研究を進めようと考えている。
- 第1段階: 期待することについての対話
- 一般公衆と対話をし、NWMOの使命を知ってもらい、研究計画をまとめるために助言を得る
- 第2段階: 基本的な問題の探求
- 第1段階で明らかとなった基本的な問題を考慮し、さまざまな放射性廃棄物管理オプションを研究する
- 第3段階: 核燃料廃棄物の管理アプローチの評価
- 第2段階で明らかとなった特定の管理アプローチについて評価を行う
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト3月28日ニュースリリース http://www.nwmo.ca/default.htmx?DN=73,50,19,1,Documents
- Annual Report 2002 From Dialogue to Decision: Managing Canada’s Nuclear Fuel Waste, NWMO, 2003 http://www.nwmo.ca/adx/asp/adxGetMedia.asp?DocID=72,18,1, Documents&MediaID=140&Filename=NWMO_2002_Annual_Report_E.pdf
- 核燃料廃棄物の長期管理に関する法律(An act respecting the long-term management of nuclear fuel waste)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )