カナダにおける核燃料廃棄物管理の実施を行う核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2003年11月28日、「適切な問題設定をしているか? カナダの使用済燃料の長期管理」と題する報告書を公表した。この報告書は公衆との議論を行うための第一回目の報告書で、NWMOは、この報告書は核燃料廃棄物の長期管理に関する複雑な問題について、カナダの公衆に関与してもらう手段であるとしている。NWMOはこの報告書の目的として以下の4点を挙げている。
- 法的な責務と、どのように研究を行うかについて提案を示す
- 議論を行うために、カナダの公衆とのこれまでの対話のなかで上がった幅広い問題と懸念を共有する
- 異なるアプローチの評価をどのような枠組みで分析するかについて当初の考え方を示す
- 背景情報として、使用済燃料管理に関する代替技術について、重要な情報を提供する。
NWMOは、予備的な議論などを踏まえ、公衆および機関との早期の会話、将来への構想、管理概念の探求、その他の幅広い問題等について検討を行ってきており、今後の議論を活発に行うために、今後の分析的枠組みのバックボーンとなる以下の主要な問題点を提起しており、これらについてのフィードバックを求めている。
- 全体的な側面
- 問1:制度と管理
- 問2:意思決定における関与と参加
- 問3:先住民の価値観
- 問4:倫理的な問題
- 問5:統一性および継続的な研究
- 社会的な側面
- 問6:公衆衛生、安全性、福祉
- 問7:安全保障(security)
- 環境的な側面
- 問8:環境保全
- 経済的な側面
- 問9:経済的な妥当性
- 技術的な側面
- 問10:技術的な妥当性
なお、NWMOはウェブサイトにおいてもコメントの受付を行っている。
NWMOは、上述の主要な問題点が確定したところで、さらに詳細な点についてまとめることとしている。NWMOは、2004年中頃に、2回目の議論のための報告書として、「選択肢についての理解」を発表する予定である。その後、2005年初頭には、「進むべき道の選択-草案」という最終報告書の草案を3回目の議論のための報告書として公表し、2005年11月15日に天然資源大臣に対して最終報告書を提出する予定である。
NWMOは、2002年に施行された「核燃料廃棄物の長期管理に関する法律」(核燃料廃棄物法)(制定については こちらを参照、また施行については こちらを参照)で規定されている3つの選択肢として、地層処分、集中貯蔵、サイト貯蔵について説明を行うとともに、国際的な検討が行われている再処理、核種分離・変換、国際処分場、超深孔処分、さらには、特には関心は得られていない海洋底下処分や宇宙処分のほか計8つの管理方法についてもコメントを行っている。その上で、NWMOは、核燃料廃棄物法に基づく研究を行うこととし、法律に規定された3つの選択肢の組合わせを始めとして、他の合理的な代替案があれば検討を行う準備があることも示している。
【出典】
- 核燃料廃棄物管理機関(NWMO)ウェブサイト11月28日ニュースリリース
http://www.nwmo.ca/default.htmx?DN=341,50,19,1,Documents - Asking the Right Quesions? The Future Management of Canada’s Used Nuclear Fuel, 2003, NWMO
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )