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《英国》規制機関が地層処分場の一般的な条件でのセーフティケース(2016年版)に対する評価報告書を公表

英国の原子力安全規制機関である原子力規制局(ONR)とイングランドを所管する環境規制機関(EA)(以下、両機関を合わせて「規制機関」という。)は、2018年11月15日に、放射性廃棄物管理会社(RWM社)が作成した地層処分施設の一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)の2016年版(以下「2016年版gDSSC」という。)に対する評価報告書を公表した。2016年版gDSSCは、地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階に分けて、放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する目的で作成されている(下記コラムを参照)。gDSSCは許可申請文書の一部となるものではないが、規制機関とRWM社の協定のもと、RWM社の要請に基づいてレビューが実施されている。なお、同様なレビューは、RWM社が取りまとめた2010年版gDSSCに対しても実施されている

今回の評価報告書において規制機関は、2016年版gDSSCが前回の2010年版と比べて大幅に改善していると評価する一方、サイト固有の処分施設が設計されなければ十分な評価はできないとしており、今後の包括的なサイト固有のセーフティケースの作成に向けて、多くの作業が必要であると指摘している。また、規制機関は、以下に示す環境セーフティケースに関する指摘を含め、2016年版gDSSC全体を対象として38項目の改善点を指摘している。

  • 地層処分施設の操業期間(建設、操業、閉鎖及び廃止措置を含む)を対象とした環境安全評価において、全ての潜在的な環境影響を網羅していない。また、現段階では、地層処分施設の操業期間と閉鎖後を個別に評価しても構わないが、2つの評価間の整合性を保つように改善すべきである。
  • 処分施設閉鎖後のニアフィールドにおけるガスの発生量や移行経路、人間侵入の評価方法を更に開発する必要がある。
  • 将来的に作成するサイト固有の環境セーフティケースでは、地層処分施設の安全性をバランスの取れた、偏りのない観点で示すことが期待される。一般的な条件における環境セーフティケースでは、地層処分施設の操業時及び閉鎖後の長期にわたって環境安全を確保できる証拠を示しているが、今後、環境安全の確保のため、必要な作業に関する重要な前提条件の存在や不確実性について、十分に説明されていない。
  • 回収可能性のアプローチを明確にし、廃棄物パッケージの回収を実現するために必要な研究を特定すべきである。
  • 回収可能性を維持したままでも、地層処分施設のセキュリティ、保障措置、操業安全及び閉鎖後安全が確保されることを立証するために、回収可能性を維持するために必要となる条件を操業セーフティケース(OSC)に含めるようにすべきである。

なお、英国の規制機関は、現時点では廃棄物パッケージの回収可能性に関する規制要件を定めていないものの、英国政府は2014年に公表したサイト選定プロセス等を示した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、廃棄物パッケージを回収する確固たる理由がある場合には、廃棄物パッケージの回収を行う余地があるとしている。そのため、RWM社は、廃棄物パッケージの回収が必要となる万一の事態に備えて、回収可能性の技術的なオプションを排除しないような地層処分施設の設計を行うという意向である。

(2017年8月9日の速報より再掲)

2016年版gDSSC の目的と構成

一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)は、①gDSSCを構成する文書全体の構成、目的、主要成果を示した概要報告書(Overview)、②地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階におけるセーフティケース報告書(Safety Cases)、③3つのセーフティケースの根拠となる評価報告書(Assessments)、④評価のために利用された基礎情報文書(System Information)で構成されている(下図参照)。

2016年gDSSCの文書校正

図:2016年gDSSCの文書構成

<2016年版gDSSCの目的>

  • 放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する
  • 規制機関及び廃棄物発生者や原子力廃止措置機関(NDA)のようなステークホルダーとの協議に利用できる
  • 放射性廃棄物管理会社(RWM社)が廃棄物発生者に対して、廃棄物パッケージに関するアドバイスの根拠となること、及び廃棄物パッケージの処分可能性評価のための基礎情報となること
  • 地層処分施設の受け入れに関心のある自治体(コミュニティ)に情報提供を行うことで、サイト選定プロセスを支援する
  • 研究開発が必要な分野を特定し、RWM社の科学技術プラン3  の策定に資する
  • 地層処分施設の開発における明確な処分概念と設計に関する情報を提供し、サイト選定プロセスの早期段階において、潜在的な候補サイトの適合性を評価するための基礎情報となること
  • サイト固有の設計及びセーフティケースの開発を支援する情報となること

【出典】
• 英国政府ウェブサイト、Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://www.gov.uk/government/publications/joint-regulators-assessment-of-the-2016-generic-disposal-system-safety-case
• 原子力規制局(ONR)及びイングランドの環境規制機関(EA)、Pre-application advice and scrutiny of Radioactive Waste Management Limited: Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/756205/Joint_regulators__assessment_of_the_2016_generic_Disposal_System_Safety_Case.pdf

(post by f-yamada , last modified: 2024-07-23 )