スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が提出した使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等について、安全審査を行っている放射線安全機関(SSM)は2016年6月29日、土地・環境裁判所に対して、SKB社は安全要件を遵守して処分場を建設する能力を有しているとする意見書を提出した。
SKB社は、KBS-3概念1 と呼ばれる処分概念による使用済燃料の最終処分の実現に向け、2006年11月にオスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書を提出し 、その後、2011年3月にフォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書を提出した 。現在、スウェーデンにおける使用済燃料処分場及びキャニスタ封入施設に関する許可申請では、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく3つの申請書の審査が並行して進められている(下記の囲みを参照)。
(2006年11月にSSMに提出済、2011年3月16日更新)…原子力活動法に基づく申請
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請
今回SSMが土地・環境裁判所に提出した意見書は、上記のうち③の環境法典に基づく使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請の審査に係わる意見書である。
SSMは、土地・環境裁判所に提出した意見書において、SKB社の許可申請に関して、以下のような総括的な評価結果を示している。
- SKB社による環境影響評価書、及びその補足文書と原子力活動法に基づく許可申請書は、環境法典に基づく許可プロセスにおける原子力安全と放射線防護に関連する論点をSSMが評価するために十分な根拠となるものである。環境影響評価のための意見募集プロセスにおいて、SSMには見解を表明する機会が与えられ、SKB社はそれに対応してきた。
- SKB社は、放射線から人間や環境を防護するため、環境法典第2章「配慮に関する一般規定」を遵守している、遵守する能力を有していることを立証している。
- 使用済燃料の最終処分システムを構成しているキャニスタ封入施設及び処分場は、放射線から人間や環境を防護するために規定された放射線安全要件を遵守する能力を備えている。
また、SSMは、SKB社が、原子力安全と放射線防護の観点から、処分場の長期安全性を十分に立証したと評価しており、その根拠として以下の3点を挙げている。
- 処分場として望ましいサイトとしてのフォルスマルクの選択の根拠
- 最終処分方法の選択の根拠、及びそれが他の方法に比して望ましいとされる理由の説明
- 放射線安全要件を遵守してキャニスタ封入施設及び処分場の建設・操業を行う能力
今後、土地・環境裁判所での審理手続きとして、2016年10月から12月の間で口頭弁論が実施される予定となっている。土地・環境裁判所での審理手続きの後、SSM及び土地・環境裁判所はそれぞれ、SKB社による申請を認めるか否かに関する意見書を政府に提出することとなっており、SSMは意見書の提出は2017年内になるとの見通しを示している。SKB社が計画している使用済燃料の処分事業の実施是非は、SSM及び土地・環境裁判所の意見書を踏まえて政府が判断することになる 。
【出典】
- 放射線安全機関(SSM)、2016年6月29日付けプレスリリース
http://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/In-English/About-the-Swedish-Radiation-Safety-Authority1/News1/SSMs-consultation-response-to-the-land-and-environmental-court-SKB-has-the-potential-to-fulfil-repository-safety-requirements/ - 放射線安全機関(SSM)、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)の使用済燃料の管理及び処分システムのための環境法典に基づく許可申請における意見募集に対する意見書
http://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/Global/Slutf%C3%B6rvar/MMD%20juni%202016/SSM2016-546-5%20Yttrande%20MMD%20p%C3%A5%20engelska%20P.pdf - スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2016年6月29日付けプレスリリース
http://www.skb.com/news/swedish-radiation-safety-authority-endorses-skbs-application/
【2017年12月22日追記】
スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)による使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請に対して、原子力活動法に基づく審査を行っている放射線安全機関(SSM)は、2017年12月21日付のプレスリリースにおいて、SKB社による申請を認めるか否かに関する意見書を2018年1月23日に政府へ提出する予定であることを公表した。SKB社による申請に対する環境法典に基づく審理を行っているナッカ土地・環境裁判所も、2018年1月23日に政府へ意見書を提出する予定であり 、土地・環境裁判所及びSSMによる政府に対する意見書の提出が同日となるように調整が図られている。
なお、SSMは2016年6月に、土地・環境裁判所に対して、SKB社は安全要件を遵守して処分場を建設する能力を有しているとする意見書を提出している。
【出典】
- 放射線安全機関(SSM)、2017年12月21日付けプレスリリース
https://www.stralsakerhetsmyndigheten.se/press/nyheter/2017/slutligt-yttrande-om-slutforvarsansokan-lamnas-i-borjan-av-2018/
- KBS-3概念とは、スウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、使用済燃料を銅製のキャニスタに封入し、処分坑道の床面に掘削した処分孔に縦置きに定置して、キャニスタの周囲を緩衝材(ベントナイト)で囲うというもの。本概念を検討した報告書の略称に由来しており、フィンランドも同様な概念を採用している。 [↩]
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-10 )