スイスの連邦エネルギー庁(BFE)は、2010年2月26日付のプレスリリースにおいて、2008年に放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が放射性廃棄物の地層処分場の建設に適しているとして提案した地質学的候補エリアに対する、安全性及び技術的な観点からの連邦原子力安全検査局(ENSI)による審査結果を公表した。審査の結果、ENSIはNAGRAが提案していた全ての地質学的候補エリア(高レベル放射性廃棄物(HLW)は3エリア、低中レベル放射性廃棄物(LILW)は6エリア)を正式に地質学的候補エリアとすることを承認した。今後、2011年には連邦評議会の承認を経て、地質学的候補エリアが最終的に選定される。
プレスリリースによれば、今回の審査には連邦原子力安全検査局(ENSI)に加えて、放射性廃棄物管理委員会(KNE)、スイス国土地理院(swisstopo)及びその他の専門家が参加した。審査においてENSIは、NAGRAが地質学的候補エリアの選定に関連する全ての情報を考慮に入れ、特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)で示された基準を厳密かつ適切に適用していると結論付けている。KNEは、NAGRAの提案資料の作成における高い透明性と専門的能力、及び審査機関からの質問や情報提供の要求に対する対応を評価しつつも、建設技術等の観点からの未解決の問題を指摘している。
スイスでは、処分場のサイト選定基準や手続を定めた特別計画の方針部分が2008年4月に連邦評議会によって承認された 。特別計画では、3段階の手続でサイト選定が行われることが定められており、現在、特別計画に基づき、地質学的候補エリアを選定するサイト選定の第1段階が実施されている。放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、第1段階の開始として2008年に低中レベル放射性廃棄物(LILW)及び高レベル放射性廃棄物(HLW)のそれぞれに6エリア及び3エリアを地質学的候補エリアとして提案していた 。
プレスリリースによれば、今後、2ヵ月以内に原子力安全委員会(KNS)が連邦原子力安全検査局(ENSI)の審査結果に対する見解を表明する。KNSの見解表明後、連邦エネルギー庁(BFE)は、成果報告書を作成して州、近隣諸国、政党などに送付し、3ヵ月間の意見聴取が実施される。その後、2011年に連邦エネルギー庁(BFE)の成果報告書を連邦評議会が承認し、第2段階で検討対象となる地質学的候補エリアが最終的に選定されるとしている。
なお、プレスリリースでは、第2段階以降のスケジュールとして、以下が示されている。
- 2011~2014/15年(第2段階):低中レベル放射性廃棄物(LILW)及び高レベル放射性廃棄物(HLW)のそれぞれに少なくとも2つの候補サイトを選定
- 2014/15~2018/19年(第3段階):放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)が候補サイトに関する詳細な調査等を実施した上で、概要承認(詳細はこちら)申請を提出
【出典】
- 連邦エネルギー庁(BFE)、2010年2月26日付プレスリリース、
http://www.bfe.admin.ch/energie/00588/00589/00644/index.html?lang=de&msg-id=32016 - 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)、2010年2月26日付プレスリリース、
http://www.nagra.ch/g3.cms/s_page/78140/s_name/aktuellesdetail/newsID/2724 - 連邦原子力安全検査局(ENSI)、地質学的候補エリアの提案に対する安全性についての評価、2010年1月、
http://www.news-service.admin.ch/NSBSubscriber/message/attachments/18420.pdf - 特別計画「地層処分場」方針部分(2008年4月2日) http://www.ensi.ch/fileadmin/deutsch/files/Konzeptteil_Sachplan.pdf
(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )