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《米国》DOEがユッカマウンテン処分場の許認可申請の取り下げを申請

米国のエネルギー省(DOE)は、2010年3月3日、原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)に対してユッカマウンテン処分場の許認可申請を取り下げる申請書を提出した。オバマ政権のユッカマウンテンプロジェクト中止の方針を受け、DOEは、ユッカマウンテン処分場の許認可申請を30日以内に取り下げる意向を示していた。今回提出された許認可申請取り下げの申請書では、DOEはユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物等の処分場の許認可申請を再度提出する意向がないことを理由として、申請書の再提出ができないことを唯一の条件として取り下げを認めるよう求めている。NRCの許認可手続規則(10 CFR Part 2)の許認可申請取り下げに関する規定では、ASLBが許認可申請の取り下げを承認する際に条件を付すことが可能となっている。

許認可申請取り下げ申請書においてDOEは、使用済燃料の引き取り及び高レベル放射性廃棄物等の処分の責務を再確認したうえで、ユッカマウンテン処分場は実施可能なオプションではないと決定したとしている。また、大統領の指示により使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物管理の代替方策を検討し勧告するための「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)を設置したとしており、ブルーリボン委員会に対し議会により500万ドルの予算が付けられている。そのうえで、終了するプロジェクトの許認可手続にこれ以上の出費を避けるために申請の取り下げを決定したとしている。さらに、ユッカマウンテンプロジェクト開始後20年以上の間に高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分に関連した科学・技術面の知識は大幅に進歩したとしている。DOEは、将来のこれらの廃棄物の処分に関しては、これまでの期間に効果的ではないと証明されたアプローチではなく、科学技術の知識などに裏付けられた、広範なサポートが得られる方策を含むオプションの包括的かつ慎重な評価に基づき提案が行われるべきであるとしている。

また、DOEは、ASLBがDOEの政策判断に従うべきであるとしている。許認可申請の取り下げは、1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)に反するという議論があることは理解しており、少なくとも1件の訴訟が連邦裁判所に提訴される動きがあるとしている。しかし、DOEは、NWPAではDOEの許認可申請者としての申請を取り下げる権利を奪う条文は存在しないとし、取り下げがNWPAの規定に反するという主張が誤ったものであるとしている。

さらに、許認可申請取り下げ申請書では、DOEがヒアリングの参加当事者と事前に協議を行ったことが示されている。参加当事者のうち、ネバダ州及びカリフォルニア州は許認可申請の取り下げに同意し、原子力エネルギー協会(NEI)は取り下げに同意しないとし、意見書を提出する意向を示したとしている。一方、サバンナリバーサイトが存在するサウスカロライナ州は、許認可申請の取り下げに反対するためにASLBに当事者として参加するための申請を2010年2月26日に行っている。

なお、DOEは、2010年3月3日付プレスリリースにおいて、2010年3月2日付で設立趣意書が公表されていたブルーリボン委員会が2010年3月25日及び26日に最初の会合を開くことを公表した。

【出典】

【2010年3月24日追記】

2010年3月16日までにワシントン州、サウスカロライナ州エイケン郡及び全米公益事業規制委員協会(NARUC)は、エネルギー省(DOE)が提出したユッカマウンテン許認可申請の取り下げ申請に反対することを目的として、原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)にヒアリング手続に対する当事者としての参加申請を行った。また、2010年3月18日に、サウスカロライナ州及びワシントン州選出の下院議員5名は、ユッカマウンテン計画の中止に向けDOEが提案していた2010会計年度のユッカマウンテン関連予算の利用計画の変更及び許認可申請の取り下げに反対する書簡をエネルギー長官に送付した。なお、今回、当事者申請を行ったサウスカロライナ州エイケン郡は、2010年2月16日のNRC・ASLBによる許認可審査手続きの一時停止決定を受け、2010年2月19日に、DOE、NRC等を相手取った訴訟を起こしている。

【追記部出典】

【2010年4月7日追記】

2010年4月6日、米国の原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、エネルギー省(DOE)が提出したユッカマウンテン許認可申請の取り下げ申請に反対するために提出されていた下記5件からのヒアリング手続に対する当事者申請、及びDOEによって提出されていた許認可取り下げ申請についての検討を停止することを決定した。

  • サウスカロライナ州
  • ワシントン州
  • サウスカロライナ州エイケン郡
  • プレーリーアイランド・インディアン共同体
  • 全米公益事業規制委員協会(NARUC)

これは、サウスカロライナ州エイケン郡などがDOE等を相手取って訴訟を起こしており(2010年3月24日付追記参照)、これら5件の当事者申請及びDOEの許認可取り下げ申請については、裁判所の判決により解決される可能性があるとの理由から、裁判所からの判断が出るまでASLBでの検討を停止するというものである。

【追記部出典】

【2010年4月13日追記】

2010年4月12日、エネルギー省(DOE)は、2010年4月6日に原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)が裁判所からの判断が出るまでASLBでの検討を停止すると決定したことについて、NRCの委員が決定を再審査するとともに、決定を破棄するように申立てを行った。

【追記部出典】

【2010年4月26日追記】

2010年4月23日、原子力規制委員会(NRC)の4名の委員は、2010年4月6日にNRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)が裁判所からの判断が出るまでASLBでの検討を停止するとした決定について、これを破棄することを決定した。また、同委員は、2010年6月1日までにDOEの許認可取り下げ申請に関する決定を行うようASLBに対して指示した。

【追記部出典】

【2010年4月28日追記】

2010年4月27日、米国の原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、DOEによる許認可取り下げ申請に関して、2010年6月30日までの出来るだけ早い時期に、取り下げに対する決定を下すとの意向を表明した。当該課題の複雑性、口頭弁論の開催が望ましいことなどから、NRCの4名の委員が指示した2010年6月1日までに決定するのは困難としている。

【追記部出典】

【2010年5月7日追記】

2010年5月3日、連邦控訴裁判所は、サウスカロライナ州エイケン郡などが起こしている訴訟について、エネルギー省(DOE)によるユッカマウンテン計画の中止に向けた作業、原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)での許認可取り下げに関する審査手続きなどの差し止めを求めた請求を却下した。一方、DOEによる許認可取り下げ申請の可否については、口頭弁論を2010年9月に開催することを命令した。

【追記部出典】

【2010年5月31日追記】

2010年5月27日、エネルギー省(DOE)は、原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)に対して、DOEが許認可申請を取り下げる法的な権限を有しているとする見解書を提出した。今回のDOEの見解書は、2010年4月27日付けのASLBによる命令に基づいて、ヒアリング手続きの当事者などが2010年5月17日までに提出していた許認可取り下げ申請への反対意見に対して提出されたものである。ヒアリング手続きの当事者及び当事者申請者である、原子力エネルギー協会(NEI)、サウスカロライナ州、ワシントン州などは、DOEには許認可申請を取り下げる法的な権限がないなどとし反対する立場を示していた。

【追記部出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )