英国政府等が設置した放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2013年12月6日に、英国政府による地層処分施設のサイト選定プロセスの改善案について、見解文書を英国政府に提出したことを公表した。本見解文書は、英国政府のエネルギー・気候変動省(DECC)が9月12日に公表した協議文書「地層処分施設のためのサイト選定プロセスのレビュー」に関して、公衆からの意見を求める公開協議 に対するCoRWMの書面での回答となっている。
CoRWMは、見解文書の作成のため、サイト選定プロセスへの関心表明を行っていた1州2市(カンブリア州、カンブリア州アラデール市及びコープランド市)の2013年1月のサイト選定プロセスからの撤退決定 以降、DECC大臣、DECCやウェールズ政府の職員、原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理局(RWMD)、カンブリア州、コープランド市及びアラデール市の各議会の議員や職員、原子力遺産諮問フォーラム(NuLeAF)などの関係者と会合を持ったとしている。また、CoRWMは、これらの会合を通して情報収集・意見交換を行い、自治体の懸念や今般の撤退決定の背景について理解するとともに、関係者等の見解をよりよく理解するために英国政府が5月に実施したサイト選定プロセスに関する「根拠に基づく情報提供の照会」(Call for Evidence) において英国政府に提出された個人、企業、自治体、政府機関等からの見解についての分析を実施したとしている。
CoRWMは見解文書において、今回の見解に至った検討経緯、英国政府の協議文書全般に対する勧告・見解を示すとともに、協議文書で英国政府から問いかけられた個々の質問に対して回答をしている。また、サイト選定プロセスの改善に関するCoRWMの案として、右図のような「プロセスダイヤグラム」を提案した。
CoRWMは、見解文書の中で、サイト選定プロセスの改善に特に重要な点として、英国政府に対して以下のような勧告を行っている。
- 自治体がサイト選定プロセスからの撤退権を失う前に実施される住民の支持の調査・確認(test)については、CoRWMが提案する当該自治体の全有権者に対して地層処分施設の受け入れ意思を表明する機会が与えられるような方法、または、今後適用されるその他の方法により、独立機関によって組織され、実施されるべきである。また、住民の支持の調査・確認及びその実施時期は、将来発行される白書に含められるプロセスダイヤグラムで示されるべきである。
- 英国政府の協議文書の図( 中の図)で示されている複数の縦の矢印は、意思決定のポイントを示しているように誤解される恐れがあるため、「学習」(Learning)及び「集中」(Focusing)という段階設定はすべきではなく、CoRWMが提案するプロセスダイヤグラムのようにすべきである。また、必要な情報を取得するための特定の期限があるという印象を与えないようにするためには、ダイヤグラムの中に時間軸を設けるべきではない。
- 実施主体が当該地域で最初に接触するのが自治体でない場合(例えば、土地所有者の場合)には、自治体を可能な限り速やかに討議に参加させるべきである。
- 自治体が撤退権を失うのは、地層処分施設の開発同意(DCO)1 申請が英国政府に提出された時とすべきである。
- 実施主体は、英国全体レベル・地元レベルのいずれにおいても、地層処分施設の設置を主導する立場であるべきである。
- 自治体への利益供与は、実施主体の責任範囲とすべきである。
- 地層処分施設をイングランドに設置することになる場合、2008年計画法における「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)に含めることには賛成するが、将来発行される白書においてはウェールズと北アイルランドにおける地層処分施設の計画プロセスについて、より明確に示すべきである。また、以下のような点についても、より明確に示すべきである。
- サイト選定プロセスの異なる段階で求められる調査やボーリング調査に対する合意プロセス
- 土地及び鉱物に関する権利の収用権限
- サイト選定方針及び国家声明書(NPS)2 における応募地域外でのボーリング調査、潜在的な将来の地下作業についての取り扱い方法、並びにコミュニケーション・関与方法(例えば、適切な規模の母岩が応募地域には近いが応募地域外にある場合など)
- どのような国家声明書(NPS)を策定すべきか。一般的な地層処分施設のNPSを策定すべきか。将来の地層処分施設のサイト固有のNPSも策定すべきか。
- 開発同意(DCO)申請は環境許可申請には含まれないこと
- 新しいサイト選定プロセスの策定・開始以降は、英国政府はサイト選定プロセスに積極的に関与すべきでない。
- 地層処分の対象となる新規原子炉から発生する放射性廃棄物のインベントリの規模を、多くの仮定と考えに基づいた例示により明確にすべきである。また、一つの処分場に処分できる最大のインベントリについても検討すべきである。
- 自治体が受ける利益の規模は明確にすべきである。また、新方針で利益供与の開始時期やプロセスを通してどの時点で利益が供与されるのかが特定すべきである。さらに自治体が撤退権を失う前に供与される利益があるべきであり、撤退権を失った後はより多くの利益が供与すべきである。
- 自治体が受ける利益は、実施主体の予算に組み込んで合意を得るべきである。
- 英国政府は、利益を受けるべき自治体を明確に定義すべきである。
【出典】
- 英国政府ウェブサイト、2013年12月6日、 https://www.gov.uk/government/news/corwm-submit-their-response-to-deccs-geolocial-disposal-facility-gdf-siting-review
- 放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)、2013年12月5日付見解文書、 https://www.gov.uk/government/publications/corwms-response-to-the-geological-disposal-facility-gdf-siting-process-consultation
https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/263893/CoRWM_Response_to_GDF_Siting_Consultation_December_2013_CoRWM_doc_3138.pdf - エネルギー・気候変動省(DECC)、2013年12月4日付ウェブサイト、 https://www.gov.uk/government/consultations/geological-disposal-facility-siting-process-review
(post by f-yamada , last modified: 2024-07-23 )