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韓国

韓国産業通商資源部(MOTIE)1 は、2013年10月30日のプレスリリースにおいて、政府から独立した民間諮問機関である「使用済燃料公論化委員会」(以下「公論化委員会」という。)が発足し、使用済燃料管理方策に関する本格的な公論化プログラム(ステークホルダー、一般市民、専門家などから広範囲な意見の取りまとめ)が開始したことを公表した。今後、公論化委員会が公共討論や公論調査などを含む公論化プログラムを進め、その結果に基づいて、2014年末までに勧告を韓国政府に提出する計画である。

公論化委員会は、放射性廃棄物管理法の規定に基づいて韓国産業通商資源部長官が設置するものであり、2012年11月に当時の韓国知識経済部(現在は韓国産業通商資源部)が策定した「使用済燃料管理対策推進計画」において、公論化委員会の機能や委員構成の考え方などが定められた。プレスリリースによれば、公論化委員会の委員構成は、人文社会・技術工学分野の専門家7名、原子力発電所立地地域の代表5名、市民社会団体の代表3名の計15名である。韓国政府は、2013年1月から約9ヵ月間にわたって原子力発電所立地地域、民間団体、政治家、専門家などとの50回以上の説明会、懇談会・討論会などを開催し、寄せられた意見を踏まえて委員会を構成したとしている。

  • 人文社会・技術工学分野の専門家7名:委員選定過程での公正と透明性を確保するため、民間委員で構成する「公論化委員推薦委員会」を設置し、委員候補を選定。
  • 原子力発電所立地地域の代表5名:原子力発電所立地地域に対して、巡回説明会、地方自治体懇談会などを通して公論化推進について共感を醸成し、当該地方自治体から5名の公論化委員を直接推薦。
  • 市民社会団体の代表3名:環境団体・市民社会団体との持続的な議論を通して民間団体を代表する3名の委員候補を推薦。

プレスリリースによれば、公論化プログラムは、専門家、市民・環境団体、原子力発電所立地地域住民、一般国民などの様々なステークホルダーから使用済燃料の管理方策に対する具体的な意見を聴取することを意図したプロセスである。今回の公論化プログラムは、過去に経験した社会的葛藤を繰り返さずに社会で共感できる使用済燃料の管理方策を探るための国民的議論過程であり、使用済燃料管理のための特定の施設のサイト選定を目的とした手続きではないとしている。公論化プログラムに係る全ての過程は公論化委員会が独自に定め、多くの国民が参加できるように公開で進められる予定である。韓国政府は、2014年末までに公論化委員会が取りまとめる勧告を基にして、使用済燃料管理対策基本計画を策定する計画である

 

公論化の工程V4

図 予定されている公論化の段階

韓国政府は、公論化委員会が使用済燃料の管理に対する公論化プログラムを円滑に遂行するため、公論化委員会に対して財政的・行政的に支援する役割を担う計画である。また、公論化プログラムで委員会と関係部署間の疎通及び協力を強化するため、国務調整室を主管とする汎部署協議体2 を設置する計画である。

なお、韓国では毎年約700トン以上の使用済燃料が発生しており、現在、各原子力発電所のサイト内で中間貯蔵されている。サイト内の中間貯蔵容量は2016年には貯蔵容量の限度に達する見込みである。貯蔵施設の拡充等を行ったとしても、2024年には貯蔵容量が不足する時期を迎えるとされている。

 

【出典】


  1. 韓国知識経済部(MKE)は2013年3月8日に、韓国産業通商資源部(MOTIE)に改編された。 []
  2. 国務調整室第2次長、並びに産業通商資源部及び未来創造科学部などの室長級で構成する協議体。 []

2012年11月20日付の韓国教育科学部(MEST)のプレスリリース及び翌日の政府広報によれば、11月20日に開催された第2回原子力振興委員会1において、「使用済燃料管理対策推進計画」が審議・議決を経て確定され、今後の使用済燃料管理方策の策定に向けた議論の枠組みとスケジュールが示された。また、同日の委員会では、「原子力施設廃止措置技術開発計画」も確定され、関連する中核技術に関する今後の研究開発方針が示された。

政府広報及びMESTのプレスリリースでは上記の議決内容に加えて、政府広報では「使用済燃料管理対策推進計画」について、MESTでは「原子力施設廃止措置技術開発計画」について、上記の第2回原子力振興委員会を経て確定されたそれぞれの計画内容や関連する補足情報が報道資料として公表されている(政府広報での補足情報に関する報道資料は韓国知識経済部(MKE)が作成)。

使用済燃料管理対策推進計画

放射性廃棄物管理法は、韓国知識経済部(MKE)長官に放射性廃棄物管理基本計画の策定を要求している。MKEのプレスリリース等によれば、今回確定された使用済燃料管理対策推進計画は、国民的なコンセンサスを得て使用済燃料管理計画を策定すべきとした2004年の原子力委員会(現原子力振興委員会)の議決を踏まえてMKEが策定したものである。具体的には、使用済燃料管理方策を含む放射性廃棄物管理基本計画(基本計画)を2014年までに策定することを目標として、基本計画策定の方針、策定までの議論の枠組みならびにスケジュール等について、次のように計画している。

  1. 基本計画の策定方針として(特に使用済燃料管理方策について)、安全性を最優先として、短・中期的対策と長期的対策を区分した取組を計画する。関係する管理施設の新設等に関連して、地域住民と将来世代に対する社会的負担に対して、国民が共感できるレベルでの支援方策を講ずる。
  2. 基本計画の今後の具体化においては、社会的コンセンサスを得るために、放射性廃棄物管理法の規定に基づく「公論化委員会」を2013年上半期に設置する。
    • 公論化委員会は政府から独立した民間諮問機関として、人文・社会科学、技術工学分野、市民・社会系ならびに原子力発電所の地域代表などで構成される。
    • 公論化委員会では、討論会、説明会、公聴会などの多様なプログラムをとおして、国民に対する公論化を推進する。
    • 公論化委員会における議論のテーマは限定されないが、使用済燃料管理に関する中間貯蔵に先立つ乾式の暫定貯蔵の実施など、主に短・中期的な現実的対策案の検討が集中的に行われることが想定される。

    ※MKEから公表されている使用済燃料管理対策推進計画によれば、放射性廃棄物管理法に基づいて政府から独立した民間の諮問機関として設置される公論化委員会には、右図のような独立的な権限と責任が付与される。また、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)、韓国水力原子力株式会社(KHNP)、韓国原子力安全技術院(KINS)、韓国原子力研究所(KAERI)ならびに韓国原子力文化財団(KNEF)などで構成される公論化支援団体が公論化委員会の活動を支援する予定である。

  3. 公論化委員会の活動結果は、2014年までに政府への勧告として原子力振興委員会及びMKEに提示され、MKEは同勧告を反映して、関連する新たな管理施設等に関するサイト選定計画及び投資計画を含む基本計画を同年中に策定する。

 

今回確定された使用済燃料管理対策推進計画に関する公論化のプロセスを中心とした上記計画の工程は以下のとおりであり、MKEは、2014年に「放射性廃棄物管理基本計画」を策定した後、2015年以降にサイト選定などの関連の手続に着手するとしている。

  • 公論化の事前準備(2012年12月~2013年3月):公論化推進に係る詳細な方策の策定、公論化支援団体の設置など
  • 公論化委員会の設置・運営(2013年4月~2014年):中間貯蔵の方法(位置、運営期間、方法など)、サイト選定手順、誘致地域の支援方策などを含む政府への勧告案の作成
  • 「放射性廃棄物管理基本計画」の策定(2014年):放射性廃棄物管理施設のサイト選定計画及び投資計画などを含めた、放射性廃棄物管理法に基づく基本計画の策定
  • 公論化委員会の勧告を反映して、必要に応じてサイト選定などの関連施策への着手 (2015年以後)

図1 使用済燃料管理対策推進手順(案)

 

なお、韓国では2011年11月に「使用済燃料政策フォーラム」を設置し、使用済燃料の管理政策や管理政策の策定のための公衆協議の方法などに関する議論が行われていた。使用済燃料管理対策推進計画によれば、使用済燃料政策フォーラムは2012年9月に政府への勧告書を取りまとめ、韓国知識経済部(MKE)に提出していた(後述の「参考」に勧告内容を整理)。同フォーラムによる14項目の勧告のうち次の2つの項目について、今後公論化委員会によって本格的な議論が行われる予定である。

  • 2024年までに使用済燃料の中間貯蔵施設の建設を完了すること
  • 暫定貯蔵施設の設置、暫定貯蔵方法(フォーラムは暫定的な貯蔵施設として、モジュラー型の乾式貯蔵施設を勧告)、サイト選定手順の作成など

 

原子力施設廃止措置技術開発計画

韓国教育科学部(MEST)のプレスリリースによれば、第2回原子力振興委員会では、「原子力施設廃止措置技術開発計画」の審議・議決も行われ、計画が確定されている。同計画は、2025年以降に拡大が見込まれる国際的な廃止措置市場への参画を目指して、関連研究開発を長期的な観点から体系的に推進し、廃止措置技術分野における先進国との競争力を向上させる方針である。具体的には、これまでの10年間の研究開発成果も踏まえた現状の技術レベルの評価を踏まえ、今後10年間の研究開発の方針や取組を次のように計画している。

  • 廃止措置市場への進出に必要となる中核基盤技術として抽出された38項目の技術のうち、先進国の技術レベルに達していない21項目の技術について、2012年からの10年間で1,500億ウォン(政府1,300億ウォン、民間200億ウォン)を投資して技術開発を完了させ、廃止措置に関する中核技術を先進国のレベルに引き上げる。
  • 原子力先進技術センターの指定などを通して人材を養成する一方、400億ウォンを投資して産学研が共同で活用できる「原子力廃止措置技術研究センター」を設立する。

 

参考:使用済燃料政策フォーラムの勧告

韓国における使用済燃料の管理政策や、管理政策の策定のための公衆協議の方法などについて議論するために、2011年11月に使用済燃料政策フォーラムが設置された。使用済燃料政策フォーラムは、議論の結果を基に、2024年までに使用済燃料の中間貯蔵施設を建設完了するための使用済燃料の管理方策及び公論化の方向性に関する政府への勧告案を取りまとめ、2012年8月に韓国知識経済部(MKE)及び原子力振興委員会に提出した。

使用済燃料の管理政策の策定原則、公論化の推進、公論化のテーマ、原子力発電所の立地地域の補償など、全14項目で構成される使用済燃料政策フォーラムの政府への勧告は以下のとおりである。

<使用済燃料の管理方策に係る勧告(6項目)>

  • 管理政策は、透明性と説明責任を基本に関連手順により決定。
  • 管理政策を中間貯蔵と恒久的な処分に区分して策定し、暫定貯蔵(サイト内貯蔵)は中間貯蔵のための準備段階とする。
  • 中間貯蔵方策の策定のために安全、保安、可逆性、費用に対する基準を設定し、最適な方策を導出。
  • 中間貯蔵施設の建設・運営に必要な規制基準を法制化して、貯蔵期間及び手順を早急に決定。
  • 2016年には暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設が満杯になるとして、2024年以前に中間貯蔵施設の建設を完了。
  • 暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設から中間貯蔵施設までの運搬経路・容器に対して十分に検討して技術開発に着手。

<公論化の勧告(6項目)>

  • 管理政策決定の緊急性を考慮して、早急に公論化に着手、このために公論化委員会を構成。
  • 公論化委員会は、使用済燃料に関する正確な事実を国民に伝え、社会的な熟慮を基に最善の管理方案を導出。
  • 公論化委員は、使用済燃料の管理及び社会との意思疎通に学識と経験がある者で構成され、原子力発電所の地域代表の参加が原則。
  • 公論化の議論テーマは、議論の効率性のために、中間貯蔵を中心テーマとして扱うが、他の管理方策に対する議論を制限しない。
  • 公論化委員会は、使用済燃料の管理問題に対する認識を共有し、乾式の暫定貯蔵(サイト内貯蔵)施設の設置、中間貯蔵方法・サイトの選定手順と制度などに対して議論。
  • 公論化の統合性、独立性、透明性を考慮して、公論化委員会の地位を格上げ。

<その他の勧告(2項目)>

  • 管理政策決定のための主要事項を法律で定めて関連制度を整備。
  • 地域住民及び将来世代が負うことになる社会的負担に対して、国民が同意できるレベルでの補償又は支援。

 

【出典】


    1. 原子力振興委員会は、原子力振興法に基づき原子力政策に関する重要事項を審議議決する組織であり、委員長となる国務総理と、財政・外交・教科・知識経済部の各長官及び民間委員4名の委員で構成される。2011年に従前までの原子力法が改正され、原子力の安全管理に関する「原子力安全法」と原子力の利用(研究・開発・生産・利用)に関する「原子力振興法」とに分離された。この改正を受けて、原子力法に基づき設置されていた「原子力委員会」は「原子力振興委員会」へと改組された。 []

韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)は、2012年1月13日付のプレスリリースにおいて、建設中の中・低レベル放射性廃棄物の処分場である慶州市の「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の竣工予定を再度変更し、2014年6月としたことを公表した。

月城原子力環境管理センターは2008年8月に着工した。当初は2010年6月の竣工(工期53ヶ月)を予定していたが、2009年6月には、竣工時期が予定から2年以上遅れた、2012年12月に変更された。今回、さらに18ヶ月工期が延長(総工期71ヶ月)されることになる。

KRMCは、2011年10月に新体制になった後、処分場建設事業全般に対して精密な見直しを実施した。その結果として、工法の改善にもかかわらず工期が不足するという結論に至ったとしている。延期の理由として以下の3点をあげている。

  • 岩盤特性を反映した設計の再検討の結果、建設予定の6つの処分坑道のうち、第1、第2処分坑道の工期として7ヶ月程度の延長を要する。
  • 地下水の湧水量の増加にともなう進入坑道の掘削工事に5ヶ月の延長を要する。
  • 処分坑道の施工のための設計審査に約3ヶ月(2011年1月~2011年3月)を要するほか、進入坑道のライニング工事に別途3ヶ月を要する。

さらに、KRMCは、処分場の安全性について、これまでにも許認可審査過程や国内外の専門機関による確認を受けているが、韓国国民の不安を解消するため、今後、海外の専門機関による安全性の検証を進めることを明らかにした。また、原子力発電所で発生している中・低レベル放射性廃棄物については、2010年12月に操業を開始した貯蔵施設での貯蔵容量を増やすことで、管理に支障がないようにするとしている。なおプレスリリースによると、処分場の施工会社から、処分場を部分的に竣工させることにより、処分場の建設と操業を並行して進める代替案の提示を受けていたが、KRMCは、工期を延長してでも安全に操業するほうが望ましいと判断したとしている。

【出典】

 

【2014年7月4日追記】

韓国放射性廃棄物管理公団(KORAD)は、2014年6月24日付のプレスリリースにおいて、慶州市で建設中である中・低レベル放射性廃棄物処分施設「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の建設工事が2014年6月30日に完了し、2014年7月中旬に竣工検査を実施予定であることを公表した。

この発表に先立ち、KORADの監督官庁である韓国産業通商資源部(MOTIE)は、 2014年6月23日付の告示において、月城原子力環境管理センターの建設事業の事業期間が2014年6月末の予定から2014年12月末に延長される見通しであることを公表した。MOTIEは、建設事業期間の延長の理由について、中・低レベル放射性廃棄物処分施設の操業開始に必要な許認可を取得するため、必要な協議等の期間を暫定的に確保するためと説明している。

建設事業期間の変更(MOTIE発表)

変更前:2007年7月~2014年6月(総工期84カ月)

変更後:2007年7月~2014年12月(総工期90カ月)

【追記部出典】

【2014年12月15日追記】

韓国原子力環境公団(KORAD)は、2014年12月11日付のプレスリリースにおいて、原子力安全委員会(NSSC)による使用前検査の結果の承認により、中・低レベル放射性廃棄物処分施設「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第一段階の処分施設(地下空洞型処分)の操業が可能になったことを公表した。

 月城原子力環境管理センターは、2008年7月に建設・操業に係る 許可を受けていた。今回の原子力安全委員会により承認を受けた処分施設に係る使用前検査は、原子力安全委員会の規制支援機関である韓国原子力安全技術院 (KINS)が「原子力安全法施行令」第101条の規定に基づいて約6年間にわたって実施してきた。

今後、韓国原子力環境公団(KORAD)は、今回承認された第一段階の処分施設の建設事業の完了を受け、第二段階の処分施設の建設事業(浅地中処分、事業期間:2012年1月~2016年12月)を推進していくとしている。

【追記部出典】

【2015年7月16日追記】

韓国原子力環境公団(KORAD)は、慶州市の中・低レベル放射性廃棄物処分場「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第一段階の地下空洞型処分施設において、2015年7月13日より廃棄物の処分を開始した。2015年7月13日付のプレスリリースにおいては、同日に容量200リットルのドラム缶に封入された廃棄物16本を処分し、2015年末までに計3,008本を処分する計画としている。 第一段階の処分施設は、地表から深さ80~130mに建設されたサイロ6基から構成されており、ドラム缶10万本分の廃棄物を処分できる。

【追記部出典】

韓国政府の知識経済部(MKE)1は、2011年9月2日付のプレススリリースにおいて、使用済燃料の管理政策を確立する方針を示し、原子力専門家が検討して「技術的に可能なオプション」を取りまとめた報告書の提出を近く受ける見通しであること、本報告書に対する意見を取りまとめる計画であることを明らかにした。また、MKEは、ステークホルダーの代表から構成される「使用済燃料政策フォーラム」を組織し、政策に関する提案を取りまとめる考えを示している。最終的には、原子力委員会2での審議・議決をへて、国の使用済燃料管理政策の「基本原則」を策定する計画としている。

MKEのプレスリリースによると、使用済燃料管理の「技術的に可能なオプション」の検討は、韓国の原子力学会を中心としたコンソーシアム3が2009年12月から2011年8月まで(20ヶ月間)で実施したものである。コンソーシアムの最終報告会が、2011年9月2日に韓国原子力研究所(KAERI、テジョン)で開催された。

現在、韓国では、使用済燃料は4カ所の原子力発電所で貯蔵されている。原子力学会のコンソーシアムは、今後の短・中・長期での技術的に可能な管理方策を検討している。短期オプションとしては、①発電所間での移送、②既存の湿式貯蔵施設での稠密ラックへの交換、③乾式貯蔵施設の新設―があり、これらによって2024年までの貯蔵容量を確保できるとしている。中期オプションとしては、集中中間貯蔵施設、または既存の原子力発電所内における中間貯蔵施設の建設の必要性を指摘している。長期オプションについては、今後の再処理・最終処分の国際動向や、国内で実施している乾式再処理技術の研究の成果を勘案して継続検討が必要としている。

今後、MKEは、地域、NGO、消費者団体、言論、法曹界、学界などから推薦された、30~50人で構成される「使用済燃料政策フォーラム」において検討し、必要に応じて、討論会・懇談会などの意見収集の機会を設ける考えである。

【出典】

  • 韓国知識経済部(MKE)報道資料 2011年9月2日
  • 原子力法
  • 放射性廃棄物管理法

【2011年11月30日追記】

知識経済部(MKE)は、2011年11月25日付のプレスリリースにおいて、「使用済燃料政策フォーラム」の委員を任命し、同フォーラムを設置したことを明らかにした。同フォーラムは、2011年11月から2012年4月までの期間に、韓国における使用済燃料の管理政策や、管理政策の策定のための公衆協議の方法などについて議論する予定である。

「使用済燃料政策フォーラム」の委員は、原子力発電所の所在する自治体の代表4名、人文科学系の専門家12名、理工系の専門家7名の計23名で構成されている。

「使用済燃料政策フォーラム」では、使用済燃料管理の具体的な政策と、政策の策定のための手続き的側面が検討される。具体的な検討内容は、次に示すとおりである。

○短・中・長期の、使用済燃料管理の具体的な政策

  • 発電所内での貯蔵容量の拡大
  • 中間貯蔵の方法と期間
  • 再処理の実施や最終処分などの長期政策

○管理政策の策定のための手続き的側面

  • 公衆協議の方法や手続き
  • そのための組織の構成
  • 意見を求めるべき範囲など

【追記部出典】

  • 知識経済部(MKE)報道資料 2011年11月25日

  1. 韓国の「部」は、わが国の「省」に相当 []
  2. 原子力法によると、原子力委員会は、国務総理を長とし、原子力利用に関する重要事項を審議・議決する。 []
  3. 原子力学会コンソーシアムは、原子力学会、放射性廃棄物学会に加えて、社団法人グリーンコリア21フォーラムによって構成されている。 []

韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)は、2010年12月27日のプレスリリースにおいて、建設中の中低レベル放射性廃棄物の処分場である慶州市の「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」において、同年12月24日から、蔚珍(ウルチン)原子力発電所で発生した中低レベル放射性廃棄物のドラム缶1,000本の受入を開始したことを公表した。

専用の輸送船によって運搬された中低レベル放射性廃棄物は、同センターの地上に設置された貯蔵施設内に保管され、処分場の竣工後に最終処分される。なお、処分場の竣工は、当初2010年6月が予定されていたが、2009年6月には、予定が2年以上遅れて、2012年12月になることが公表されている

プレスリリースによると、中低レベル放射性廃棄物の貯蔵施設は、鉄筋コンクリート構造で、放射線を遮へいするための最新の設備が備えられている。貯蔵施設の放射線レベルは、レントゲン検査の5分の1のレベルである年間0.01mSv以下に抑えられ、外部には環境放射線モニター6台が設置されており、線量を地元住民がリアルタイムで確認することができるとされている。

また、プレスリリースによると、「中低レベル放射性廃棄物処分施設の誘致地域支援に関する特別法」第8条によって放射性廃棄物の発生者である韓国水力原子力株式会社(KHNP)から処分場の建設自治体に支払われる特別支援金3,000億ウォン(約216億円、100ウォン=7.2円で換算)のうち、1,500億ウォン(約108億円)は処分場建設の実施計画承認時に慶州市の特別会計に振り替えられていたが、今回の受入開始によって、残りの1,500億ウォンが慶州市の特別会計に振り替えられる。さらに、同法に従い、放射性廃棄物の受入によって、ドラム缶1本当たり637,500ウォン(約4万5,900円)の搬入手数料がKHNPから支払われる。同法の施行令に従い、この搬入手数料の内75%は慶州市に割り当てられ、地域支援事業に充てられる予定であり、25%は放射性廃棄物処分場の事業者である韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が地域振興事業に利用することとされている。なお、慶州市と韓国政府の監督官庁である知識経済部(MKE)1 は、地域振興や処分事業の円滑な推進のための協力事項について、2010年8月に覚書を締結していた

【出典】


  1. 韓国の「部」は、わが国の「省」に相当 []

韓国政府の知識経済部(MKE)1 の2010年8月5日付のプレスリリースによると、知識経済部と中低レベル放射性廃棄物処分場の立地自治体である慶州(キョンジュ)市 は、放射性廃棄物管理における政府と自治体の協力を規定した放射性廃棄物管理法に基づき、「知識経済部・慶州市間の放射性廃棄物処分場の建設に関する協力覚書」を締結した。本覚書は、処分場建設に伴う地域支援事業の推進や、今後の処分場建設を円滑に進めることなどを確認するものである。慶州市は2005年11月に住民投票を経て処分場のサイトとして決定されており、2009年1月には処分事業の実施主体として韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が設立されていたが、KRMCは同年6月に、岩盤等級が当初の想定よりも低いことが判明したため、処分場の竣工が遅れることを明らかにしていた

本覚書では、主として以下の3点に関する確認事項が示されている。

  1. 特別支援事業の推進
  2. 一般支援事業のうち、優先的に取り組む事業
  3. 処分場建設を円滑に進めていく上での協力事項

(以下、100ウォン=7.5円で換算)

1.  特別支援事業の推進

4件の特別支援事業2 について、下記の点が示されている。

  • 特別支援金:総額3,000億ウォン(約225億円)が慶州市に支給されており、そのうち1,500億ウォンは放射性廃棄物の搬入時に使用可能となる3(参考:2006年5月17日既報)
  • 放射性廃棄物搬入手数料:放射性廃棄物が搬入されると、ドラム缶1本当たり637,500ウォン(約4万7,800円)が支払われる4
  • 韓国水力原子力株式会社(KHNP)本社の移転:覚書によれば、KHNP本社とともに、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)の本社も、2014年までに慶州市に移転される。
  • 陽子加速器事業:422億ウォン(約31億6,500万円)の国費の追加により事業を推進する。

2.  一般支援事業のうち、優先的に取り組む事業

55件の一般支援事業(総予算約2.8兆ウォン(約2,100億円))の中から、優先的に取り組む12件の事業(下表)が選定されている。55件の一般支援事業は、「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」に基づき設置された誘致地域支援委員会が選定したものである。なお、これらの事業のうち、コンベンションセンター及び多目的施設の建設と、エネルギー博物館の建設は、韓国水力原子力株式会社(KHNP)が実施するものである。

優先的に進められる一般支援事業(12件)

事業名 総事業費(億ウォン) 事業終了期限
コンベンションセンター及び多目的施設の建設 1,280 2014年
エネルギー博物館の建設 2,000 2014年
国民賃貸住宅の建設 500 2012年
地方道路929号線の迂回道路の建設 338 2012年
慶州甘浦(カンポ)港の総合開発 322 2015年
観光客休憩施設の整備 100 2012年
慶州歴史都市文化館の建設 600 2014年
市立火葬場の整備事業 144 2011年
放射性廃棄物処分場周辺地域における上水道の拡充 218 2015年
下水最終処理施設の設置 766 2012年
廃棄物焼却場の設置 350 2012年
慶州東学発祥地の整備事業 100 2014年

3.  処分場建設を円滑に進めていく上での協力事項

了解されている協力事項として、以下が示されている。

  • 知識経済部(MKE)と韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)による、中低レベル放射性廃棄物処分場の第1段階における建設の安全な実施のための管理
  • 放射性廃棄物の貯蔵施設への早期搬入に向けた、知識経済部と慶州市の協力(なお、同処分場における放射性廃棄物の貯蔵施設の使用許可は、2010年6月7日に慶州市より発給されている。)
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場における第2段階(ドラム缶12万5,000本)の処分に向けた、知識経済部と慶州市の協力
  • 協力の実現のための、知識経済部の放射性廃棄物課と慶州市の国策事業団で構成される協議会の活用

参考:韓国における中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定と建設の経緯

韓国では、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の貯蔵施設を同一のサイトに建設する方針でサイト選定が進められてきたが、中低レベル放射性廃棄物の原子力発電所サイトにおける貯蔵容量の逼迫等を背景として、2004年12月に、2つの施設の建設を分離して推進する政策が策定された(2005年1月7日既報)

その後、地域振興策を含めたサイト選定に関する法制度が整備され、中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に応じた4自治体の中から、住民投票で最も賛成率が高かった慶州市が、2005年11月にサイトとして決定された(2005年11月8日既報)

処分場の総処分容量は200リットルドラム缶80万本であり、現在進められている第1段階では10万本を、地下80mの岩盤に設置される垂直円筒状の空洞に処分することとされている。2006年6月の情報では、処分場の面積は約210万㎡で、総事業費は1兆1,445億ウォン(約858億3,800万円)となっている(2006年7月5日既報)

処分事業の実施主体は、韓国水力原子力株式会社(KHNP)であったが、2009年1月に施行された放射性廃棄物管理法の規定に従い、新たな実施主体として韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が設立された(2009年1月22日既報)
KRMCは、放射性廃棄物の発生者による負担金等で構成される放射性廃棄物管理基金などによって運営されている。

【出典】

  • 知識経済部(MKE)、2010年8月5日付プレスリリース
  • 放射性廃棄物管理法
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法施行令

  1. 韓国の「部」は、わが国の「省」に相当 []
  2. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」は、4件の事業のうち、特別支援金の支給、搬入手数料の徴収、及び韓国水力原子力株式会社(KHNP)本社の移転について規定している。なお同法には、陽子加速器事業に係る規定はない。 []
  3. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」によれば、原子力発電事業者は処分場の建設自治体に対して、特別支援金による支援を行うことができる。2006年5月に、韓国水力原子力株式会社(KHNP)は慶州市に対して、特別支援金3,000億ウォンを支給したことを公表した。3,000億ウォンのうち、1,500億ウォンは処分場建設の実施計画承認によって、既に使用可能となっている。 []
  4. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」によれば、放射性廃棄物の管理事業者は放射性廃棄物の納入者より、放射性廃棄物の納入手数料を徴収することができる。同法は、この手数料は施行令の規定に従い処分場の建設自治体と管理事業者に割り当てるとしている。施行令は、建設自治体の地域支援に充てる手数料を、ドラム缶1本当たり637,500ウォンと規定している。 []

韓国知識経済部は、2008年12月31日付けプレスリリースにおいて、韓国における放射性廃棄物管理事業の実施主体として、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC。以下、管理公団)が2009年1月2日に設立され、活動を開始することを公表した。これまで、韓国における放射性廃棄物管理事業は、放射性廃棄物の発生者である韓国水力原子力株式会社(KHNP)が実施してきた。管理公団は、2009年1月1日に施行された放射性廃棄物管理法第18条の規定に基づいて設立されるもので、放射性廃棄物の発生者と管理者とを分離することなどを目的としている。また、同法第10条の規定により、今後は、管理公団が処分事業も含めた放射性廃棄物管理事業と、放射性廃棄物管理のための財源である放射性廃棄物管理基金(以下、管理基金)の運用・管理も実施することになる。

管理公団の管理対象となる放射性廃棄物は、「放射性物質または放射性物質によって汚染されたもので、廃棄の対象となるもの(使用済燃料を含む)を言う」と定義されており、現在、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)で、処分場が建設されている中低レベル放射性廃棄物や廃棄物とされた使用済燃料が含まれる。

また、管理公団の行う放射性廃棄物管理事業には以下が含まれる。

  • 放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処理及び処分(使用済燃料の処理は除く)
  • 放射性廃棄物管理施設サイトの選定、建設・操業及び閉鎖後の監視
  • 放射性廃棄物の管理に向けた資料の収集・調査・分析及び管理
  • 放射性廃棄物管理に関する広報

同プレスリリースによると管理公団は、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)に本部を置き、管理公団の初代理事長には、前KHNP放射性廃棄物本部長のミン・ギェホン(閔啓泓)氏が就任する。

管理公団が管理することとなる管理基金の財源は、放射性廃棄物の管理費用、使用済燃料管理負担金、原子力発電所の解体費用として、原子力発電所の所有者(中低レベル放射性廃棄物、使用済燃料の発生者)と、放射性同位元素(RI)廃棄物の発生者から徴収される資金である。管理基金は、放射性廃棄物の管理、貯蔵、処分を含む放射性廃棄物管理事業などを実施するための財源となる。

なお、2009年1月1日には、放射性廃棄物管理法と同時に、管理基金の運営方法などを規定した管理基金の運用・管理規定(告示2008-226号)なども施行された。

【出典】

  • 韓国知識経済部(MKE)、2008年12月31日付報道資料
  • 原子力法
  • 放射性廃棄物管理法
  • 放射性廃棄物管理基金の運用・管理規定(告示2008-226号)

【2009年6月8日追記】

知識経済部(MKE)の2009年6月1日付のプレスリリースにおいて、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)で建設中の中低レベル放射性廃棄物処分場の第1段階工事の竣工時期について、予定されていた2010年6月から2年以上遅れて、2012年12月になることが発表された。

2009年6月1日にKRMCが報道機関向けに配布した資料は、竣工時期が遅れる理由として、処分坑道へと続く進入坑道の施工段階において、岩盤等級が当初の想定よりも低いことが判明し、掘削速度が遅れ、補強工事のための時間も必要であるためと説明している。

竣工時期が遅れることで、一部の発電所では中低レベル放射性廃棄物の貯蔵量が飽和状態となることが予想されているが、処分サイト内に設置される受入れ貯蔵建屋を活用するなどの対策によって、今後の放射性廃棄物管理に支障が出ないようにすることが検討されている。

  • 知識経済部(MKE)、2009年6月1日付プレスリリース
    (http://www.mke.go.kr/news/photo/photoList.jsp)
  • 韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)、報道資料

韓国水力原子力株式会社(KHNP)は、同社が運営する放射性廃棄物に関する情報提供ウェブサイトにおいて、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)に建設される中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可が、教育科学技術部(MEST)1 により2008年7月31日に発給されたことを公表した。KHNPは、今回の建設・操業許可の取得により、掘削工事を含む本格的な処分場建設工事を開始できることとなったとしている。

教育科学技術部(MEST)が2008年8月1日に公表した処分場の建設・操業許可に関する資料によると、KHNPが2007年1月15日に申請した慶州市の中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可は、原子力安全規制の専門機関である韓国原子力安全技術院(KINS)によって、サイト構造の適合性、主要機器設備の安全性、環境放射線影響などの安全性が総合的に審査されてきたとしている。この結果、KHNPの申請内容は原子力法の技術基準に適合し、中低レベル放射性廃棄物処分場の建設、操業、閉鎖において発生する放射性物質からの国民の健康と環境への影響がないなど、建設・操業許可基準を満たしていることが確認された。KINSの審査を受け、MESTは2008年7月31日に第37回原子力安全委員会を開催し、中低レベル放射性廃棄物処分事業の安全性について審議し、中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業を許可した。

今回、建設・操業が許可された中低レベル放射性廃棄物処分場は、第1段階として、地下80~130mの間に6基のサイロを設置する岩盤空洞方式を採用し、ドラム缶10万本を処分する計画である。今後、中低レベル放射性廃棄物の発生量の推移や、サイト条件などを考慮して、段階的にドラム缶80万本まで処分容量を拡張する予定である

また、教育科学技術部(MEST)の2008年8月1日付けの資料によると、韓国水力原子力株式会社(KHNP)は今回の建設・操業許可を受けて、中低レベル放射性廃棄物処分場の本格的な建設工事を開始し、2009年に完成して操業を開始する予定とされている。

【出典】

  • 放射性廃棄物管理センターウェブサイト、2008年8月7日発表記事、http://www.4energy.co.kr/
  • 韓国教育科学技術部(MEST)、2008年8月1日付公表資料
  • 韓国教育科学技術部(MEST)ウェブサイト、「沿革」、http://www.mest.go.kr/ms_kor/intro/general/history/history_01/index.jsp

  1. 教育科学技術部(MEST)は、省庁再編によって2008年2月29日に、科学技術部(MOST)などが改組され設立された。 []

韓国産業資源部(MOCIE)は、2007年6月14日、韓国における放射性廃棄物管理(処分)の総合的な制度改善に向けた「放射性廃棄物管理法」の法案を公表し、2007年6月20日に立法予告1 を行った。

現在、韓国では、放射性廃棄物管理の技術・安全基準及び許認可に関する事項は「原子力法」、放射性廃棄物の管理事業者・処分費用・管理対策に関する事項は「電気事業法」において規定されている。今回の放射性廃棄物管理法の制定は、複数の法令に分散していた放射性廃棄物管理に関連する規定を一つにまとめ、現行の放射性廃棄物管理制度を改善・補完するためとされている。また、現在、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)地域において計画が進められている中低レベル放射性廃棄物処分施設を円滑に運営し、放射性廃棄物を安全かつ効率的に管理することを目的としている。

今回公表された放射性廃棄物管理法案に示されている主な内容と、法律が施行された場合の現状からの変更点は、以下の通りである。

放射性廃棄物管理法
施行前(現在)
施行後
1.放射性廃棄物管理事業者 韓国水力原子力株式会社(KHNP) 韓国放射性廃棄物管理公団
2.放射性廃棄物管理資金 韓国水力原子力株式会社(KHNP)が引当金として確保 引当金の一部を放射性廃棄物管理基金とし、産業資源部が管理
3.放射性廃棄物管理に関する重要事項 原子力委員会で審議 放射性廃棄物管理委員会で審議の後、原子力委員会で審議
4.放射性廃棄物の発生者責任 費用負担 費用負担
発生量の最小化

法律が施行された場合の現状からの変更点

1.放射性廃棄物管理の専従機関の設立

電気事業法第82条では、放射性廃棄物の管理事業を実施できる者として、「原子力発電事業者」又は「特別法によって設立され、原子力発電関連業務を行う法人」と規定されており、現在は原子力発電事業者である韓国水力原子力株式会社(KHNP)が放射性廃棄物の管理事業を行っている。

今回の放射性廃棄物管理法案では、放射性廃棄物の管理事業を円滑に進めるため、放射性廃棄物管理の専従機関となる、「韓国放射性廃棄物管理公団」の設立が規定されている。「韓国放射性廃棄物管理公団」は、原子力発電事業者から独立した法人として設立され、放射性廃棄物管理全般を実施することとされている。

2.放射性廃棄物管理基金の設置と運用

電気事業法第94条第2項では、韓国における放射性廃棄物の処分財源について、原子力発電事業者が引当金方式で管理することが規定されている。放射性廃棄物管理法案では、現行の引当金方式を一部基金方式に変更し、基金管理の透明性と専門性を確保するため、管理・運用は産業資源部(MOCIE)長官が行うと規定している。なお、放射性廃棄物発生者は、放射性廃棄物を韓国放射性廃棄物管理公団に引渡す際、管理費用を公団に拠出し、公団はこれを管理基金に積み立てることになっている。

3.放射性廃棄物管理委員会の設置

放射性廃棄物管理法案には、放射性廃棄物管理に関する重要事項を審議するため、放射性廃棄物管理委員会を産業資源部長官の下に設置することが規定されている。現在は、放射性廃棄物管理の基本計画及び実施計画については、それぞれ産業資源部(MOCIE)及び韓国水力原子力株式会社(KHNP)が作成し、原子力委員会の審議を受けている。この法律が施行された場合、放射性廃棄物管理に関する重要事項については、原子力委員会の審議の前に、新設される放射性廃棄物管理委員会の審議を受けることになる。

4.放射性廃棄物の発生者責任

電気事業法第83条では、放射性廃棄物の発生者が放射性廃棄物の管理費用を負担することが規定されている。今回の放射性廃棄物管理法案では、放射性廃棄物発生者の管理費用負担に加えて、放射性廃棄物の発生量の最小化や安全な管理の実施が責務として規定されている。

なお、産業資源部(MOCIE)では、この法案に対するコメントを2007年7月10日まで受け付けるとしている。

【出典】

  • 韓国産業資源部(MOCIE)公告 第2007-207号(2007年6月)
  • 電源事業法
  • 原子力法
  • 行政手続法

【2008年4月17日追記】

2008年3月28日、韓国知識経済部(MKE)2 はウェブサイトにおいて、放射性廃棄物管理法に関する情報を公表した。この放射性廃棄物管理法は、2008年3月28日に制定された。制定された放射性廃棄物管理法では、2007年6月の立法予告時の法案に含まれていた放射性廃棄物管理委員会の設立に関する規定が削除されている。また、同法は、2009年1月1日に施行されることが示されている。

  • 知識経済部(MKE)ウェブサイト、法令改正に関するページ (http://www.mke.go.kr/info/law/re_view.jsp?tab=P_03_02_02&board_id=P_03_02_02&sn=26648&code=3420&div=4)
  • 放射性廃棄物管理法
  • 産業資源部(MOCIE)ウェブサイト(http://www.mocie.go.kr/)

  1. 立法予告とは、「行政手続法」第41条に基づき、法律を制定、改正または廃止する際に、官報、広報、インターネット、新聞等を通じ、法案について意見を受け付ける制度である。 []
  2. 知識経済部(MKE)は、省庁再編により、2008年2月29日に産業資源部(MOCIE)などが改組され設立された。 []

韓国水力原子力株式会社(KHNP)は、同社が運営する放射性廃棄物に関する情報提供ウェブサイトにおいて、慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)地域に建設予定の中低レベル放射性廃棄物処分場に関して、2007年1月11日に電源開発事業実施計画の承認を産業資源部(MOCIE)に申請し、2007年1月15日に処分場建設・操業の許可を科学技術部(MOST)に申請したことを公表した。

電源開発事業実施計画は、電源開発促進法第5条に基づき、産業資源部(MOCIE)長官が事業者であるKHNPの詳細事業計画を承認するものであり、中低レベル放射性廃棄物処分場建設へ向けて必要とされる手続きである。

同ウェブサイトによると、今回の電源開発事業実施計画の承認申請において、KHNPは処分事業の詳細実施計画書(事業の概要、処分場の位置、面積、施工期間、資金調達など)、施設の配置図及び環境影響評価書を産業資源部(MOCIE)に提出したとしている。今後、産業資源部(MOCIE)は、該当自治体からの意見収集を実施し、関係省庁(財政経済部、科学技術部、行政資源部、国防部、農林水産部、情報通信部、環境部、建設交通部、海洋水産部、山林庁など)と協議した後、電源開発事業推進委員会の審議・議決を経て、実施計画の承認に関して判断を下すこととなっている。
電源開発事業実施計画が承認されると、処分場建設のための国土の計画及び利用に関する法律に基づく開発事業や、道路法による道路工事、河川法による河川工事、農地法による農地転用、港湾法による港湾工事など、合計21の関係法令に対する許認可、承認、協議などが完了したものとしてみなされ、KHNPは公共施設(道路、電気、水道施設など)の設置及びサイト整地工事の着手など、処分施設の建設に向けた基盤工事を開始することができるとしている。

また、中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可は、原子力法第76条に基づき、科学技術部(MOST)長官が中低レベル放射性廃棄物処分場の安全性に関する諸般要件を審議し、施設の建設及び操業を許可する手続きである。

同ウェブサイトによると、KHNPは、中低レベル放射性廃棄物処分場の建設・操業許可申請とともに、安全評価報告書、放射線環境影響評価書、安全管理規定、設計及び工事方法に関する説明書、建設及び操業の品質保証計画書などの資料を許可発給機関である科学技術部(MOST)に提出したとしている。また、処分場の建設・操業許可を得るためには、以下の要件を満たす必要があるとされている。

  • 処分施設の建設・操業に必要な技術的・経済的能力の確保
  • 位置・構造・設備及び性能が技術基準に適合しており、放射線による人体及び公共の災害防止
  • 建設・操業過程において放射線による国民の健康及び環境保護

科学技術部(MOST)は建設・操業許可申請を受けて、韓国原子力安全技術院(KINS)の専門的な評価結果を踏まえた安全性審査を行い、必要に応じて政府の関係省庁と話し合った後に、原子力安全委員会1 の審議・議決を経て、建設・操業の許可を発給することとなっている。

なお、産業資源部(MOCIE)の 2006年6月28日付けプレスリリース(既報)によると、電源開発事業実施計画の産業資源部(MOCIE)による承認は2007年10月頃、科学技術部(MOST)による建設・操業許認可発給は2007年12月頃と予想されている。また、中低レベル放射性廃棄物処分場の部分竣工は2008年12月、処分場の第一段階であるドラム缶10万本分の施設の最終竣工は2009年12月を予定している。

【出典】

  • 放射性廃棄物管理センターウェブサイト、2007年1月17日発表記事、http://www.4energy.co.kr/
  • 電源開発促進法
  • 原子力法

【2007年7月31日追記】

韓国産業資源部(MOCIE)は、2007年7月19日、韓国水力原子力株式会社(KHNP)が申請していた中低レベル放射性廃棄物処分場に関する電源開発事業実施計画を承認したことを発表した。これにより、KHNPは、道路、森林、河川、農地整理などの処分事業を進めるための基盤工事が可能になるとされている。

追記部出典

  • MOCIE告示第2007-91号(2007年7月19日)(http://www.mocie.go.kr/info/law/gosi_list.jsp)

  1. 原子力安全委員会:原子力安全管理に関する事項の総合調整及び審議・議決する意思決定機構として、科学技術部長官を委員長とし、科学技術部長官と産業資源部長官とで調整し、任命・委嘱した6~8人の民間専門家で構成された委員会。 []