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米国

米国で2016年2月9日に、2017会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。DOEは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分に係る「使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として、合計150,638千ドル(約181億円、1ドル=120円で換算)を要求している。なお、ユッカマウンテン処分場計画の実施に係る予算の要求はないが、DOEのレガシーマネジメント(LM)局の予算要求資料において、許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)などのユッカマウンテン・サイトのための記録及び情報システムの維持について、LM局が責任を有していることが示されている。

DOEの2017会計年度の予算要求では、従来は使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの下に置かれていた「統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)の設計に係る活動」が格上げされ、UNFD研究開発プログラムとIWMSプログラムが、並列のプログラムとして計上されている。なお、2016会計年度予算要求に織り込まれていた「DOE管理の高レベル放射性廃棄物及びする使用済燃料の代替処分オプションの検討に係る活動」に関する予算は、2016会計年度包括歳出法で認められておらず、2017会計年度予算要求では計上されていない。

2017会計年度の予算による実施事項のうち、「使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2016会計年度歳出予算額より11,838千ドル多い74,338千ドル(約89億2,100万円)の予算が要求されている。UNFD研究開発プログラムは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵・輸送・処分に係る研究開発、及び代替オプションの同定を支援するものとして、以下の事項を行うとしている。

  • 産業界との協力による乾式キャスクの設計・配備の実証試験
  • 貯蔵中の使用済燃料の性能ベースライン確定のため民間原子力発電所から取り出された燃料棒試験の継続
  • 通常の輸送条件下での燃料棒への外部荷重の評価
  • 超深孔処分のフィールド試験に係る活動の継続
  • 長期貯蔵・輸送関連の安全上重要な部品に係る材料劣化現象の理解構築
  • 粘土層での処分に関する性能評価ツールのプロセスレベルモデルの統合・実施手法の評価
  • フィールド試験による発熱性廃棄物の岩塩における処分時の科学的・工学的基盤の構築の継続
  • 閉鎖後の安全性の他、操業安全・効率性、輸送・貯蔵オプション、米国固有の状況等を考慮した、米国に適した処分要件の評価及び構築
  • 標準化キャニスタ関連作業の継続など
  • 米国鉄道協会基準に沿った原型キャスクの設計・試験・製造
  • 種々の廃棄物及び使用済燃料の代替処分オプションの可能性に係る研究開発活動の継続

なお、超深孔処分については、2016年1月5日に、特性調査のためのボーリング孔の掘削を含めたフィールド試験(模擬廃棄体を使用)をノースダコタ州で実施する予定が発表されている

また、2017会計年度の予算による実施事項のうち、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)については、2016会計年度歳出予算額より53,800千ドル多い76,300千ドル(約91億5,600万円)の予算が要求されている。本予算は、2013年1月にエネルギー省(DOE)が策定した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(DOE戦略)を現状の権限内で支援するものであり、2017会計年度からは、①貯蔵・輸送、②同意に基づくサイト選定の2つの活動に体系化され、以下の事項を行うとしている。

輸送・貯蔵(36,900千ドル(44億2,800万円))

  • 種々の建屋に収納しない使用済燃料貯蔵方式の一般設計概念の開発
  • パイロット規模の中間貯蔵施設の一般設計及びトピカル安全解析レポート(TSAR)の完成とNRCへの提出
  • 中間貯蔵施設の配備のための小規模検査・修復能力の一般設計概念の開発
  • 大型乾式貯蔵キャスクの開封及び取り出し燃料の性能試験を実施するサポート研究所の一般設計概念の開発
  • 輸送・貯蔵キャニスタから処分キャニスタへの移載設備の一般設計概念の開発
  • 輸送車両及び輸送キャスクのメンテナンス施設の設計概念開発
  • 全体的な廃棄物管理システム、パイロット規模の中間貯蔵施設及び輸送システムの機能・運用要件の開発・維持
  • パイロット規模の中間貯蔵施設等の経年管理の必要性の決定・対応
  • 既存の輸送キャスク適合証明(CoC)のレビューによる確認事項の同定・対応
  • 既存の貯蔵キャスクの容器承認のレビューによる許可条件・パラメータの纏め
  • 中間貯蔵及び輸送許可に関連する規制解釈・含意の理解向上、規制要件や課題等の理解のため原子力規制委員会(NRC)と協議
  • 政策決定者に示す国家環境政策法(NEPA)戦略の構築・評価
  • 中間貯蔵の一般的な環境影響評価(EIS)のスコーピング文書ドラフトの準備
  • 中間貯蔵の環境影響評価(EIS)の契約者起用と準備開始
  • 輸送経路の自治体等への訓練・資金提供の方針構築のため、州等の地域グループとの検討を継続
  • 輸送経路の自治体等への訓練・資金提供の方策実施のため、机上演習の開発・実施
  • 輸送経路の自治体等への訓練・資金提供のための詳細計画・実施
  • 輸送経路設定手法の開発とステークホルダーとの協議
  • 廃止措置された原子炉サイトを優先した使用済燃料輸送計画の評価・開発
  • 柔軟な対応力を備えた輸送・貯蔵・処分の統合的なアプローチを評価するシステム解析の実施
  • 貯蔵・輸送・処分の多目的コンポーネントシステムなど、廃棄物管理システムにおける標準化・統合の可能性の同定・評価
  • 使用済燃料輸送・貯蔵・処分の解析リソースデータシステムのデータベースの拡充

同意に基づくサイト選定(39,400千ドル(47億2,800万円))

  • 中間貯蔵施設のサイト選定における公衆・ステークホルダーとの協議・協力活動(パブリックミーティングの開催、交付金のレビュー・提供など)
  • サイト特性調査に必要なデータの収集・検証とサイト特性調査の解析の実施
  • サイト選定プロセスに定義された形で州や地方政府等のステークホルダーとの同意に係る交渉実施
  • 自治体等が中間貯蔵施設の立地を希望する条件等を含む、法的拘束力ある同意書の案を策定
  • 中間貯蔵、軍事起源廃棄物の処分、及び使用済燃料等の輸送に係る広報関連の計画・戦略文書の開発
  • コミュニケーションツールやメッセージについてのフォーカスグループ調査・テストを実施
  • 放射性廃棄物の貯蔵・処分施設のサイト選定、特性調査、操業に係る公衆の意識調査・分析を継続
  • 同意に基づくサイト選定に関連した州等の地域グループへの交付金・資金の提供の実施
  • 中間貯蔵施設と軍事起源廃棄物処分場のための協議・協力計画・戦略の構築
  • 軍事起源廃棄物処分場と中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定プロセスの案を、過去の教訓を踏まえて策定
  • 軍事起源廃棄物処分場の初期サイトスクリーニングプロセスの準備
  • 軍事起源廃棄物処分場の候補サイトの予備的スクリーニングを実施(予備的フィールド試験のサイト選定、サイト選定を支援する予備的安全評価など)

ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査を実施している原子力規制委員会(NRC)については、ユッカマウンテン処分場の審査に関する予算要求は行われていない。一方、テキサス州及びニューメキシコ州で許認可申請書提出の意向がNRCに通知されている集中中間貯蔵施設については、許認可申請書の審査のための予算が要求されており、テキサス州のウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は歓迎の意向を表明している。

2014年2月に地下施設で火災事故及び放射線事象が発生した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、復旧に向けた活動が行われているが 、2016年末には操業を再開する予定として、271,000千ドル(約325億円)の予算が要求されている。

【出典】

 

【2016年4月18日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2016年4月14日に、2017会計年度2 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下、「歳出法案」という)を承認し、上院本会議に提出した。本歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度まで上院で検討されていた2016会計年度の歳出法案と同様に、パイロット規模の中間貯蔵施設の開発等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。なお、本歳出法案ではユッカマウンテン関連の予算及び記述は織り込まれていない。

今回上院本会議に提出された歳出法案に織り込まれた中間貯蔵関連の条項では、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、政府または民間所有の1つ、または複数の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを1つ、または複数の民間パートナーと実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザル公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 本活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

なお、上院歳出委員会のプレスリリースでは、原子力規制委員会(NRC)の許可を受けた民間の貯蔵施設においてエネルギー省(DOE)が使用済燃料の貯蔵を行うことを認める条項も含まれているとしているが、前年度に上院で検討されていた歳出法案で規定されていた「民間の中間貯蔵施設での貯蔵」(2016会計年度歳出法案第311条)と同様の条項は、本歳出法案には含まれていない。

上院本会議に提出された歳出法案と同時に公開された上院歳出委員会報告書では、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)の活動について、全米に分散した使用済燃料の集中中間貯蔵の計画を推進するための予算として61,040千ドル(約73億2,480万円、1ドル=120円で換算)が計上されている。また、上院歳出委員会報告書では、同意に基づくサイト選定に係るDOEの取組を支持するとした上で、DOEはサイト選定についてより積極的な役割を担って、超深孔処分の実証プロジェクトにおけるノースダコタ州での教訓を今後の同意に基づくサイト選定プロセスに活かすよう命じている。

また、上院歳出委員会報告書で「使用済燃料処分等プログラム」(UNFD)の研究開発活動については、長期貯蔵や輸送中、また、様々な地層における使用済燃料の挙動等に係る研究開発活動のための予算として14,250千ドル(約17億1,000万円)が計上されている。なお、ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算はゼロとなっており、原子力規制委員会(NRC)でのユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算も割り当てられていない。

さらに、上院歳出委員会報告書において、2014年2月に発生した地下施設での火災事故と放射線事象 の復旧に向けた活動が行われている廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP) については、約274,540千ドル(約329億4,500万円)の予算が割り当てられている。また、WIPPが安全性確保を第一として予定通り2016年末までに操業を再開することに注力することなどをエネルギー長官に求めている。

【出典】

 

【2016年4月22日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2016年4月19日に、2017会計年度3 のエネルギー・水資源開発歳出法案の草案(以下、「歳出法案草案」という)を承認した4 。本歳出法案草案では、2016会計年度の下院の歳出法案と同様に、ユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として150,000千ドル(180億円)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として20,000千ドル(24億円)が割り当てられている。また、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じる条項が規定されている。

歳出法案草案に付随する下院歳出委員会報告書の草案では、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として61,128千ドル(約73億3,540万円)が記載されているが、エネルギー省(DOE)の予算要求で示された「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)についての予算は記載されていない。

また、下院歳出委員会報告書の草案において、2014年2月に地下施設での火災事故と放射線事象が発生して復旧に向けた調査・対応が行われている廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、292,720千ドル(351億2,640万円)の予算が計上されている他、ニューメキシコ州との和解5 に基づく同州への経済支援として、26,800千ドル(32億1,600万円)が別枠で計上されている6

【出典】

 

【2016年5月16日追記】

米国の連邦議会上院は、2016年5月12日の本会議において、2017会計年度7 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下、「歳出法案」という)を90対8で可決した。本歳出法案については、種々の修正が上院本会議で行われているが、高レベル放射性廃棄物処分に関係する部分の修正は行われていない。

上院歳出委員会の委員長及び副委員長のプレスリリースでは、本歳出法案は2017会計年度の歳出法案の中で最初に可決されたものであること、紛糾する政治的条項を排除して歳出法案策定の本来の秩序を回復するものであることなどを歓迎するコメントが示されている。連邦議会上院本会議でエネルギー・水資源開発歳出法案が単独で可決されたのは、2010会計年度の歳出法案以来7年ぶりとなる。

なお、本歳出法案(H.R.2028)は、2016年4月14日に上院歳出委員会で策定され、本会議に提出されていた法案(S.2804)の内容について、2015年5月1日に下院本会議で可決されたものの上院で未審議のままとなっていた2016会計年度の歳出法案(H.R.2028)の全文を置き換える修正案との形態を取っている。

【出典】

 

【2016年9月30日追記】

米国の連邦議会上下院は、2016年9月28日に、2017会計年度(2016年10月1日~2017年9月30日)のうち、2016年10月1日から2016年12月9日を対象とした継続歳出法案を可決し、2016年9月29日に大統領の署名を得て継続歳出法として成立した。これは、エネルギー・水資源分野を含めて、2016年12月9日までの期間について、2016会計年度の予算を規定した包括歳出予算法での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

今回制定された2017会計年度の継続歳出法では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2016年12月14日追記】

米国の連邦議会は、2016年12月9日に、2017会計年度(2016年10月1日~2017年9月30日)のうち、2017年4月28日までを対象とした継続歳出法案を可決し、2016年12月10日に大統領の署名を得て再度の継続歳出法として成立させた。

今回成立した継続歳出法での対象範囲以降の2017年4月29日から2017年9月30日までについては、2017年1月に誕生する新政権・連邦議会の下で新たな2017会計年度歳出法が検討されることとなっている。

なお、今回制定された2017会計年度の再度の継続歳出法では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2017年5月1日追記】

米国の連邦議会は2017年4月28日に、2017会計年度(2016年10月1日~2017年9月30日)のうち、2017年5月5日までを対象とした継続歳出決議(CR)を可決した。2017会計年度の歳出予算については、2017年4月28日までを対象とした継続歳出法が2016年12月10日に制定されていたが、今回、上下両院合同で可決された継続歳出決議は、継続予算法で規定された継続予算の期限を2017年5月5日まで1週間延長するものとなっている。

なお、今回可決された2017会計年度の継続歳出決議では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

 

【2017年5月8日追記】

米国の連邦議会は2017年5月4日に、2017会計年度包括歳出法案を可決し、2017年5月5日に大統領の署名により「2017会計年度包括歳出法」として成立した。

高レベル放射性廃棄物関連の予算については、2017会計年度包括歳出法の条文には規定されていないが、2017会計年度包括歳出法案説明文書において、「使用済燃料処分等プログラム」(UNFDプログラム)の歳出予算として、2016会計年度歳出予算と同額の85,000千ドル(96億500万円、1ドル=113円で換算)が計上されている。UNFDプログラムの歳出予算の内訳も2016会計年度歳出予算と同額であり、「研究開発活動」が62,500千ドル(約70億6,000万円)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)が22,500千ドル(約25億4,000万円)となっている。なお、IWMSでは、国防勘定の歳出予算は認められていない。

また、今回成立した2017会計年度包括歳出法では、原子力規制委員会(NRC)における許認可審査活動に係るものを含め、ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算は計上されていない。ただし、地層処分場の解析に係る専門知識の維持のための資源の削減については、組織スリム化の一環とするとしたNRCの提案は否認されている。

2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2016年4月19日に下院歳出委員会で採択された歳出予算案と同様に、292,720千ドル(約330億7,740万円)の予算が計上されているほか、ニューメキシコ州との和解に基づく同州への経済支援として、26,800千ドル(30億2,840万円)が別枠で計上されている。

なお、今回成立した2017会計年度包括歳出法については、ネバダ州選出の下院議員から、ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算が計上されなかったことはネバダ州民の勝利などとして歓迎するプレスリリースが出されている。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2017会計年度の予算は2016年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 上記の1.を参照。 []
  3. 上記の1.を参照。 []
  4. 歳出委員会で承認された歳出法案は、通常は本会議での審議のため直ちに上程されるが、下院では予算決議(連邦政府全体の歳出入基準)が可決されていない場合には5月15日より前に歳出法案の下院本会議での審議はできないものとされている。したがって、現状、下院歳出委員会のウェブサイトにおいても法案番号が付された歳出法案は掲載されていない。 []
  5. WIPP及びロスアラモス国立研究所(LANL)の同州規則違反に対する罰金の支払いに代えて、DOEがインフラ整備等を実施・支援することが合意されていたもの。 []
  6. 上院歳出委員会報告書で同金額は、WIPP向け予算の内数として計上されていた []
  7. 上記の1.を参照。 []

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年1月5日に、超深孔処分のフィールド試験を実施することを公表した。フィールド試験は、ノースダコタ州のラグビーにおいて、16,000フィート(約4,900メートル)以深の結晶質岩に達する大深度ボーリング孔の掘削を伴うものであるが、今回、フィールド試験を行う契約者としてバテル記念研究所(Battelle Memorial Institute)、ノースダコタ大学、油田検層事業等を行うシュルンベルジェ社などからなるチームを選定したとしている。大深度ボーリング孔の適用としては、一部の高レベル放射性廃棄物の超深孔処分が考えられているが、地熱開発も候補とされている。大深度ボーリング孔のフィールド試験は、DOEの研究開発活動である使用済燃料処分等(UNFD)プログラムの一部として行われるものであり、2016会計年度のDOEの予算要求において、「大口径の超深孔処分の可能性を実証するフィールド試験の開始」が挙げられていた
本フィールド試験は、約20エーカー(約81,000m2)のノースダコタ州所有地において5年間のプロジェクトとして実施され、費用は3,500万ドル(1ドル=120円として約42億円)と推定されており、超深孔処分の実現可能性を見極めることが目標とされている。フィールド試験で実施される調査では、大深度における母岩の水文地質学的、地球化学的、地質工学的な特性の検証などが行われ、掘削時のデータ収集の他、掘削完了後には科学的試験が実施される。今回のフィールド試験では、放射性物質は使用されない。DOEは、米国にはノースダコタ州のラグビーと同様の、地質学的に安定した地層が広い範囲で存在する地域が多数確認されているとしている。

結晶質岩の基盤面までの深さ

米国における結晶質岩の基盤面までの深さ

2015年10月の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)1 が開催した放射性廃棄物超深孔処分国際技術ワークショップで公表されたDOEの資料においては、超深孔処分のフィールド試験について、2015年7月9日に、サイトの確保を含む契約者の公募が行われ、2015年9月23日に提案が締め切られていたことが示されている。また、2016年9月に特性調査用のボーリング孔の掘削を開始して2017年2月に特性調査を完了し、2017年7月からフィールド試験としてボーリング孔の掘削を開始し、2019年には模擬廃棄体定置の実証試験を完了した上で、解析・評価報告書を発行する予定が示されている。
超深孔処分については、「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」の2012年1月の最終報告書において、「特に再利用の可能性が全く無い廃棄物の一部の代替処分オプション」として、大深度ボーリング孔の活用可能性を研究することが勧告されていた。DOEは、2015年3月に、軍事起源の高レベル放射性廃棄物を民間の使用済燃料とは分離して処分する方針を示しており、軍事起源の高レベル放射性廃棄物の一部は廃棄体も小さく、超深孔処分が有効との見解を示している。
なお、放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2015年6月に公表した報告書の中で、超深孔処分に係る課題として、ボーリング孔のシーリング技術の研究、強固な人工バリアの必要性の評価などの実施を勧告している

超深孔処分の概念図

超深孔処分の概念図

【出典】

 

【2016年2月3日追記】

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2016年2月1日に、エネルギー省(DOE)の超深孔処分の研究開発プログラムについて、評価報告書「DOEの超深孔処分研究開発プログラムについての技術的評価」を公表し、9項目からなる勧告などを行った。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性を評価することを職務として設置された独立の評価機関であり、本評価報告書は連邦議会及びエネルギー長官に提出された。

本評価報告書では、フィールド試験を含め、一部の高レベル放射性廃棄物の超深孔処分の実現可能性を評価するためにDOEが行っている活動について、NWTRBの気付き事項及び勧告が示されている。NWTRBは、2015年10月20日及び21日に、超深孔処分の国際技術ワークショップを開催しており、本ワークショップでは、DOEから超深孔処分概念が示され、フィールド試験の詳細などが議論されていた。

本評価報告書では、国際技術ワークショップでの議論も踏まえ、①超深孔処分の実現可能性に影響を与える技術的・科学的問題、②DOEのフィールド試験により超深孔処分の実現可能性の評価のために必要な技術的データや科学的知見が得られるかの2点を対象としている。NWTRBのプレスリリースでは、気付き事項及び勧告として以下の事項が示されている。

気付き事項:

  • 仮に、一部の高レベル放射性廃棄物の超深孔処分が実現可能となった場合でも、地層処分場の必要性は無くならない。
  • 規制枠組みの構築、受容可能なサイトの同定、及び5kmの大深度ボーリング孔の特性調査は、困難で時間が掛かる活動であり、超深孔処分施設の完成に必要となる時間は地層処分場と似たものになる可能性がある。
  • フィールド試験では、超深孔処分概念の実現可能性評価及びサイト選定に限定的な情報しか得られない。
  • 高レベル放射性廃棄物の大深度での取扱い及び定置に係る操業上の予測・限界は、模擬の放射性廃棄物を対象としたものとは極めて異なるが、超深孔処分施設の設計や超深孔処分概念の実現可能性評価には、こうした予測・限界の評価及び理解が最も重要である。

勧告:

  • 独立した専門家のレビュー
    DOEは掘削プログラムの設計・実施について、掘削や孔内作業(検層や孔井仕上げなど)、高レベル放射性廃棄物の取扱い機器の設計・運転に豊富な経験を持つ独立の専門家からレビューを受けるよう勧告する。
  • 包括的なリスク解析
    超深孔処分の実現可能性評価の一環として、掘削・定置プログラムの側面について、より包括的なリスク解析を完了するよう勧告する。
  • 地下地質の不均質性とデータ・解析結果の転用可能性
    DOEは、地下地質の不均質性の可能性及び大深度での複雑な原位置条件に関する技術的・科学的問題に対応することにより、超深孔処分オプションの実現可能性評価を強化することを勧告する。
  • 掘削前の物理探査による地下の特性調査
    フィールド試験には、掘削前に地下の構造及び物理的状況を詳細に描写する、地表からの物理探査を含めるよう勧告する。
  • ロバストな廃棄体、廃棄物容器、及び封入
    DOEは、超深孔処分概念の実現可能性評価及び関連したセーフティケースの構築の一環として、よりロバストな廃棄体及び廃棄物パッケージの安全上の利点を明示的に解析することを勧告する。
  • 操業上の安全戦略の構築
    DOEは、通常のボーリング孔作業と高レベル放射性廃棄物の遠隔取扱いを統合したフィールド試験の操業上の安全戦略を構築することを勧告する。
  • 回収可能性の要件の定義について規制機関との連携
    高レベル放射性廃棄物の超深孔処分の実現可能性評価の一環として、超深孔処分における回収可能性の要件の定義について、規制機関と協力・連携することに高い優先度を置くことを勧告する。
  • フィールド試験からサイト選定への透明性ある進め方
    フィールド試験は、サイト選定アプローチに関する知見を得ることに活用すべきものと勧告する。
  • フィールド試験の担当の主任研究員
    DOEは、工学的活動(特性調査ボーリング孔・フィールド試験ボーリング孔の掘削、模擬廃棄物の定置・回収など)やサイト特性調査活動の統合に責任を持つフィールド試験プログラムの主任研究員を置くことを勧告する。

【出典】

 

【2016年4月7日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2016年1月に、超深孔処分のフィールド試験プロジェクトの予定地としてノースダコタ州のピアス郡を選定していたが、ピアス郡は、2016年3月1日に、フィールド試験の受入れを拒否することを決定した。今回、本決定を示したノースダコタ州ピアス郡の郡政委員会の議事録が公開された。

ピアス郡では、フィールド試験プロジェクトの実施チームの一員であるノースダコタ大学エネルギー環境研究センター(EERC)らによる住民向け説明会が2016年2月15日に開催され、本プロジェクトは純粋に科学技術的な調査であることなどが説明されていた。公開された議事録によると、2016年3月1日に開催されたピアス郡の郡政委員会では、2,000を超える反対署名が提出されたこと、将来世代を守ることなどの理由から、ピアス郡における超深孔処分のフィールド試験プロジェクトの検討を中止するよう求める書簡をノースダコタ大学EERCに送付することが満場一致で決定された。

なお、エネルギー長官は、ピアス郡における動きを受けて代替のサイトを検討する取組を始めていることについて、2016年3月2日に連邦議会下院エネルギー・商務委員会で開催されたヒアリングで明らかにしている。

【出典】

 

【2016年5月12日追記】

米国のエネルギー省(DOE)が実施を計画している超深孔処分のフィールド試験プロジェクトについてバテル記念研究所は、現在、サウスダコタ州のスピンク郡でフィールド試験の実施を検討していることを公表した。これまでフィールド試験の予定地として選定されていたノースダコタ州のピアス郡は、フィールド試験の受入れ拒否を決定していた。今回、バテル記念研究所が率いる実施チームには、サウスダコタ鉱山技術大学(SDSMT)とサウスダコタ州の技術コンサルティング会社であるRESPEC社等が加わっている。

バテル記念研究所はスピンク郡について、地震・火山活動や石油・ガス掘削などによる擾乱を受けておらず、フィールド試験には理想的な母岩を有するとしている。一方で、スピンク郡を潜在的な最終処分地としては見なしていないとして、ダコタ帯水層と呼ばれる地下水が接近していること、放射性廃棄物処分には州知事の同意を必要とする州法が存在することなどを理由として挙げた上で、放射性廃棄物は持ち込まないこと、プロジェクト終了時にはボーリング孔は埋め戻すことなどを示している。

バテル記念研究所、サウスダコタ鉱山技術大学及びDOEは、既にスピンク郡で2度のパブリックミーティングを開催しており、今後もさらに地域からの声を聞き続ける意向を示している。

バテル記念研究所のウェブサイトでは、超深孔処分フィールド試験についてのページ、及びスピンク郡のフィールド試験の可能性を示すページが設けられており、プロジェクトの概要やよくある質問(FAQ)等の資料やポスター類に加え、州知事がサウスダコタ州におけるフィールド試験の実施の支持を伝えるエネルギー長官宛の書簡及びその返書が掲載されている。

【出典】

 

【2016年6月15日追記】

米国のエネルギー省(DOE)が実施を計画している超深孔処分のフィールド試験プロジェクトについては、新たな候補地としてサウスダコタ州のスピンク郡が挙がっていたが、2016年6月9日のスピンク郡の郡政委員会において、フィールド試験の実施は困難である旨を伝える書簡をバテル記念研究所に送付することを決定した。

今回公表されたサウスダコタ州スピンク郡の郡政委員会の議事録によれば、バテル記念研究所は公衆の支持を得ておらず、仮に申請が提出された場合にも、許可のために十分な賛成票を獲得する見込みはない旨の書簡を送付するとしている。また、本書簡は郡政委員会の総意とされている。さらに、本書簡を新聞で公表することを求める要求も、郡政委員会によって承認されている。

一方、超深孔処分のフィールド試験を計画しているDOEは、2016年2月1日に公表された放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)の超深孔処分の研究開発プログラムに関する評価報告書において、フィールド試験を含むDOEの活動についての勧告がされていたが、NWTRBの勧告に対するDOEの2016年6月9日付けの書簡が公表された。この中でDOEは、NWTRBの勧告の多くはフィールド試験の計画に既に含まれていることなどを示している。

【出典】

 

【2016年6月28日追記】

米国のエネルギー省(DOE)が実施を計画している超深孔処分のフィールド試験プロジェクトについて、候補地とされていたサウスダコタ州のスピンク郡は、2016年6月10日付けの書簡により、スピンク郡でのフィールド試験の実施は困難である旨をバテル記念研究所に伝えており、この程、スピンク郡の書簡に対するバテル記念研究所及びDOEからの返書と合わせてスピンク郡のホームページで公表した。

2016年6月14日付けのバテル記念研究所及びDOEからの返書は、両者連名により出されたものであり、放射性廃棄物を取り扱わない科学的なプロジェクトである超深孔処分のフィールド試験に対して、スピンク郡からの支持が得られなかったことは残念であるとしつつも、スピンク郡の決定を尊重するとしている。

なお、バテル記念研究所及びDOEからの返書は、2016年6月21日に開催されたスピンク郡の郡政委員会で報告されており、出席委員によりスピンク郡ウェブサイトでの公表が要求されていたものである。

【出典】

 

【2016年12月22日追記】

米国のエネルギー省(DOE)原子力局(NE)は、2016年12月19日に、超深孔処分のフィールド試験プロジェクトについての新たな公募を行った結果、4社を選定したことを公表した。超深孔処分のフィールド試験については、2016年1月にバテル記念研究所が主導するチームが選定されていたが、当初の予定地とされていたノースダコタ州のピアス郡、次の予定地とされたサウスダコタ州スピンク郡の何れにおいても、地元の支持が得られずにフィールド試験は中止となっていた。DOEは、当初の公募プロジェクトを断念し、2016年8月に、公募条件を見直した上で改めて公募(以下「再公募」という)を行っていた。

2016年8月5日に公示された再公募プロジェクトでは、フィールド試験の候補サイトが将来の処分地とはならないことを明確にするとともに、地域コミュニティと連携することを重視した段階的なアプローチが取られている。フィールド試験の候補サイトは、最終的に1カ所に絞られるが、初期段階では複数の応募者が選定され、各々の候補サイトの地域での理解促進活動を行って、地方政府及び地域関係者の支持を得ることがプロジェクトの一部として位置付けられている。

今回DOEが選定した応募者及び候補サイトの立地州は、以下の通りとなっている。

  • AECOM社(テキサス州)
  • ENERCON社(ニューメキシコ州)
  • TerranearPMC社(ニューメキシコ州)
  • RE/SPEC社(サウスダコタ州)

DOEの再公募資料においては、プロジェクトの開始予定時期を2017年1月16日とし、プロジェクト期間を約5年としている。

【出典】

 

【2017年5月25日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2017年5月23日に、2018会計年度での予算上の優先度の変更により、これまで進めてきた超深孔処分のフィールド試験プロジェクトを継続せず、直ちにプロジェクトを実質的に終了させるプロセスを開始したことを公表した。2017年5月23日に公表されたDOEの2018会計年度の予算要求では、超深孔処分のフィールド試験に係る活動を含む「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)の予算を計上せず、同プログラムを廃止する方針が示されていた

【出典】


  1. 1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて行政府内に設置された機関であり、高レベル放射性廃棄物等の処分の技術的・科学的分野の独立した評価を行い、少なくとも年2回は連邦議会、エネルギー長官に勧告等を行う。 []

米国のエネルギー省(DOE)は、2015年12月23日付けの連邦官報において、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地に向け、同意に基づくサイト選定プロセスの実施に関する意見募集の開始を告示した。DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスでは、「統合放射性廃棄物管理システム」を構成する施設の立地に関心を示す自治体、州などと協働するとしており、今回告示した意見募集に加え、同意に基づくプロセスの構築について議論するため、自治体などと一連のパブリックミーティングを開催する意向も示している。

今回の意見募集の案内では、同意に基づくサイト選定プロセスに関して、公正で有効なプロセスを設計する上で重要な検討事項について意見を求めるとして、以下の5つの質問が示されている。

  1. DOEは、どのようにしたらサイト選定プロセスの公正さを確保できるか。
    同意に基づくサイト選定では、現在及び将来における費用、便益、リスク及び責任の公正な配分を目指すが、どのようにすればサイト選定プロセスで公正さが確保できると思うか。
  2. サイト選定プロセスを設計する上で、DOEはどのようなモデル、経験を活用すべきか。
    サイト選定では、先行事例や進行中の事例から学ぶ必要があるが、サイト選定プロセスの設計において、どのような経験やモデルを考慮、導入すべきと思うか。
  3. サイト選定プロセスには誰が関与すべきか。また、それぞれの役割は何か。
    DOEは、様々な自治体等がサイト選定について学ぶことや参加を希望していると考えているが、サイト選定プロセスへの参加は重要な責任を伴うものとなる。誰がサイト選定に参加すべきであり、その参加者の役割はどうすべきか。
  4. どのような情報や資源が参加を促すものになると思うか。
    DOEは、サイト選定に全面的かつ効果的に関わるに当たって、十分な情報と資源の利用が必要と考えているが、サイト選定プロセスについて最大限に学び、参加を可能にするため、どのような情報や資源が最も重要と考えるか。
  5. 他に何を考慮すべきか。
    以上の質問は、同意に基づくサイト選定プロセスの設計に係る議論の出発点になるが、関連する質問や問題点、アイデアなど、その他に重要と思うものがあるか。

今回の連邦官報で告示された書面による意見募集は、2016年6月15日まで行われる。書面による意見とパブリックミーティングでの意見とを得た上で、その後、同意に基づくサイト選定の段階的なプロセスについての初期段階の案を策定することととしている。サイト選定に関するドラフト報告書は2016年夏に公表し、意見募集を行う予定としている。

なお、同意に基づくサイト選定アプローチの構築に向けた取組を開始し、連邦官報により意見募集を行うことなどは、2015年12月21日に、DOEのウェブサイトにおいて公表されていた。DOEのウェブサイトでは、同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイトが設けられ、使用済燃料等の貯蔵や処分を巡る現状と課題、統合放射性廃棄物管理システムとDOE戦略、同意に基づくサイト選定プロセスの構築などの今後に向けた情報が掲載されている。同意に基づくサイト選定プロセスについては、下の図に示されたような形で、段階的に構築する計画が示されている。

同意に基づくサイト選定プロセスの構築の今後のステップ

なお、DOEの同意に基づくサイト選定イニシアティブのウェブサイトでは、キックオフミーティングとして、第1回目のパブリックミーティングを2016年1月20日にワシントンD.C.で開催することが示されている。

【出典】

 

【2016年2月5日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年1月20日に、同意に基づくサイト選定イニシアティブのキックオフミーティングをワシントンD.C.で開催した。キックオフミーティングには、各方面のステークホルダーを代表する120名以上が参加したほか、オンラインで200名が参加した。キックオフミーティングでは、DOEの科学・エネルギー担当次官の基調講演に続いて、DOE原子力局(NE)の3名によるパネルディスカッション、及び質疑応答が行われた。また、質疑応答の終了後には、約1時間のポスターセッションが開催され、約100名が参加した。

パネルディスカッションでは、2015年12月23日付けの連邦官報に示されていたとおり、同意に基づくサイト選定イニシアティブの重要性と進め方、サイト選定基準、輸送関連、超深孔処分なども含めた技術分野の活動状況、同意に基づくサイト選定イニシアティブにおける公衆参加について、DOEから説明が行われた。また、質疑応答の時間も約1時間が確保され、会場参加者及びオンライン参加者からの質問が集められた。質問は、同意に基づくサイト選定、輸送、貯蔵及び処分、その他に4分類され、質問内容に応じてパネルディスカッションのパネリストが回答を行った。質疑応答の時間内に約30件の質問への回答が行われたが、時間の関係で取り上げられなかった質問については、DOEが回答を作成中としている。

同意に基づくサイト選定イニシアティブの今後のパブリックミーティングについては、2016年3月にイリノイ州シカゴ、2016年4月にはジョージア州アトランタで開催する予定であり、その後は調整中とされている。

【出典】

 

【2016年2月19日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年2月18日に、同意に基づくサイト選定イニシアティブに係るパブリックミーティングの今後の開催予定などを公表した。パブリックミーティングは、2016年7月にかけて合計8回開催される予定であり、最初の2回については具体的な日時や議事次第(案)も公表され、参加受付が開始されている。なお、DOEは、2016年1月20日に、ワシントンD.C.でキックオフミーティングを開催している。

今回公表された今後のパブリックミーティングの開催予定は下表の通りである。DOEは、開催地の選定は全米からの参加が可能となるよう行ったが、会場参加ができない場合にはオンラインでの参加も可能としている。

開催日 開催地(州) 議事等

1

2016年3月29日

シカゴ(イリノイ州)

議事次第(案)

2

2016年4月11日

アトランタ(ジョージア州)

議事次第(案)

3~8

 ~2016年7月
 (詳細未定)

ボイジー(アイダホ州)
ボストン(マサチューセッツ州)
デンバー(コロラド州)
ミネアポリス(ミネソタ州)
サクラメント(カリフォルニア州)
テンピ(アリゾナ州)

未公表

なお、第1回のシカゴ及び第2回のアトランタでのパブリックミーティングの議事次第(案)では、DOEからの説明及びパネルディスカッションの後は、ワシントンD.C.で開催されたキックオフミーティングでの質疑応答に代わり、小グループでの議論(Facilitated Small Group Discussions)の時間が設けられている。

【出典】

 

【2016年3月23日追記(2016年3月29日開催日更新)】

米国のエネルギー省(DOE)は、2016年3月22日付けの連邦官報において、同意に基づくサイト選定イニシアティブに係る意見募集の期間を延長し、2016年7月31日までとすることを告示した。

なお、意見募集に並行して開催されるパブリックミーティングについては、最新の開催予定等は以下のとおりとなっている。

開催日 開催地(州) 議事等

1

2016年3月29日

シカゴ(イリノイ州)

議事次第

2

2016年4月11日

アトランタ(ジョージア州)

議事次第(案)

3

2016年4月26日

サクラメント(カリフォルニア州)

議事次第(案)

4

2016年5月24日

デンバー(コロラド州)

5

2016年6月2日

ボストン(マサチューセッツ州)

6

2016年6月23日

テンピ(アリゾナ州)

7

2016年7月14日

ボイジー(アイダホ州)

8

2016年7月21日

ミネアポリス(ミネソタ州)

【出典】

 

【2016年7月27日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、高レベル放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地に向けた同意に基づくサイト選定イニシアティブの一環として、プロセスの構築について議論するためのパブリックミーティングを開催しており、2016年7月21日にミネソタ州ミネアポリスでの開催により、全米8カ所で予定されていたパブリックミーティングをすべて終了した。

DOEの同意に基づく立地選定プロセスのウェブサイトでは、8回にわたるパブリックミーティング、及びパブリックミーティングに先立って開催されたキックオフミーティングについて、ミーティングで提示された資料の他、質疑応答を含めたミーティングの議事録、ビデオ等が掲載されている。各々のミーティングの資料、ビデオ等は、下表に示すリンクから確認可能である。

パブリックミーティングの開催地の地図

パブリックミーティングの開催地

ミーティング
種類、回
開催日 開催地(州)
<議事・資料掲載URL>

キックオフ
ミーティング

2016年1月20日

ワシントンD.C.
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-initiative-kick-meeting

パブリック
ミーティング

1

2016年3月29日

シカゴ(イリノイ州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-chicago-march-29-2016

2

2016年4月11日

アトランタ(ジョージア州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-atlanta-april-11-2016

3

2016年4月26日

サクラメント(カリフォルニア州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-sacramento-april-26-2016

4

2016年5月24日

デンバー(コロラド州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-denver-may-24-2016

5

2016年6月2日

ボストン(マサチューセッツ州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-meeting-boston-june-2-2016

6

2016年6月23日

テンピ(アリゾナ州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-tempe-june-23-2016

7

2016年7月14日

ボイジー(アイダホ州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-boise-july-14-2016

8

2016年7月21日

ミネアポリス(ミネソタ州)
http://www.energy.gov/ne/downloads/consent-based-siting-public-meeting-minneapolis-july-21-2016

なお、同意に基づくサイト選定プロセスに関するパブリックコメントの募集は、2016年7月31日まで行われている。DOEは、提出されたパブリックコメント、及び8カ所のパブリックミーティングで示された意見を踏まえ、サイト選定に関するドラフト報告書を2016年後半に公表し、意見募集を行う予定としている。

【出典】

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2015年11月20日に、「高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の地層処分場のサイト選定プロセスの設計」と題する報告書(以下「NWTRB報告書」という)を公表した。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動について、技術的及び科学的有効性を評価することを職務として設置された独立の評価組織であり、本報告書も連邦議会及びエネルギー長官に宛てたものである。

今回のNWTRB報告書の目的は、米国及び他国における高レベル放射性廃棄物の地層処分場の立地に向けた取組に関する情報を政策決定者に提供することとしており、NWTRBは日本を含む10カ国での過去半世紀に行われた24のサイト選定活動事例の比較検証などを行った上で、以下のような4つの勧告を行っている。

  • 1984年にエネルギー省(DOE)が策定した「放射性廃棄物処分場の候補サイトの予備的スクリーニングに関する一般指針」(10 CFR Part 960、以下「1984年一般指針」という)は、将来のサイト選定プロセスを構成する規則の策定においても確固とした基盤として採用すべきである。DOEが2001年に策定したユッカマウンテン・サイト適合性指針(10 CFR Part 963)のように、技術的に複雑な性能評価に依拠するようなサイト適合性規則については、サイト選定の初期段階での確固とした基盤を提供するものとはならない。
  • 1984年一般指針は、岩塩、結晶質岩及び粘土層/頁岩(シェール)の3岩種における高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分に係る地層固有の処分概念(関連する人工バリアを含む)に適用できるよう、母岩固有の基準で補完されるべきである。
  • 新たなサイト適合性基準の策定においては、可能な限り、基準の適用に係る実施主体の裁量を許すような曖昧さを最小化し、プロセスの客観性、及び結果に対する公衆の信頼性を確保しやすいようにすべきである。仮にプロセスの途中で基準の変更が必要となった場合、実施主体は、透明で意味ある参加型プロセスを用いるべきである。
  • 新たなサイト選定プロセスにおいては、最終的なサイト選定を詳細な地下の特性調査の完了後とし、1982年放射性廃棄物政策法での要件を維持すべきである。

なお、放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、新たなサイト選定活動が、米国での高レベル放射性廃棄物の第1処分場または第2処分場の何れに適用されるかは政策決定者が決定すべきものであり、NWTRBは、その技術的な職務に沿って、いずれの立場も取っていないとしている。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年11月18日から19日の日程で、使用済燃料管理部門の規制会議を開催しており、規制会議のページに発表資料等が公開されている。本規制会議は、NRCの核物質安全・保障措置局(NMSS)の使用済燃料管理部(DSFM)が主催する年次会議であり、NRC、産業界、許認可保有者、その他の関係者が、使用済燃料の乾式貯蔵・輸送等に係る規制上、技術上の問題などについての議論を行う場として開催されている。

2015年の規制会議の議題は以下に示す通りであり、規制の効率化、長期貯蔵に関連する問題等に加え、2015年は新たに「集中中間貯蔵」のセッションが設けられている。

  • セッション1:貯蔵の許認可手続
  • セッション2:許認可変更管理
  • 情報セッション1:ステークホルダーの視点
  • セッション3:検査・操業経験
  • セッション4:技術的問題
  • セッション5:輸送承認
  • 情報セッション2:集中中間貯蔵

集中中間貯蔵に係る情報セッション2の発表資料としては、テキサス州での集中中間貯蔵施設に関する許認可申請の意向を表明しているウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社、ニューメキシコ州でエディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)が計画している集中中間貯蔵施設の設計、許認可、建設及び操業を担当する予定のホルテック・インターナショナル社(以下、「ホルテック社」という)、エネルギー省(DOE)、NRC、及び廃止措置済みの原子力発電所の代表者として「廃止措置プラント連合」(Decommissioning Plant Coalition, DPC)の発表資料が公開されている。

このうち、DOEの発表資料は、2013年1月にDOEが公表した「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分戦略」(DOE戦略)に沿ってパイロット規模の中間貯蔵施設の一般的設計の検討作業について示すものであり、テキサス州及びニューメキシコ州で検討されている民間の中間貯蔵施設の利用可能性などには触れられていない。

なお、ホルテック社の発表資料では、エディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)が計画している集中中間貯蔵施設について、許認可申請の意向通知が2015年8月3日にNRCへ提出されたこと、2016年6月に許認可申請書を提出し、2019年9月から建設を開始して2020年には操業を開始するとの計画などが示されている。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年7月22日に、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(以下「GTCC廃棄物」という)1 の処分について、NRCの運営事務局長(EDO)がNRC委員に対して、テキサス州に許認可権限を与えるという提案の承認を求めた2015年7月17日付の文書を公表した。テキサス州では、ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が、連邦政府に処分責任があるGTCC廃棄物等について、GTCC廃棄物等を低レベル放射性廃棄物処分場で処分することを禁止しているテキサス行政法(TAC)の修正を州当局に求めており、このため、テキサス州はNRCに対して、GTCC廃棄物、GTCC類似廃棄物及び超ウラン核種を含む放射性廃棄物(以下「TRU廃棄物」という)2 の処分に対する法的権限の明確化を求めていた。

今回公表された2015年7月17日付の文書によれば、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法では、GTCC廃棄物はNRCの許可を受けた施設で処分すべきことを規定しており、さらに、NRCは1989年に、低レベル放射性廃棄物処分場において処分を行うという提案がNRCにより承認されなければ、GTCC廃棄物は地層処分しなければならないとする連邦規則を定めている。しかし、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法においては、協定州3など にGTCC廃棄物の処分場に対する許認可権限があるのか、あるいはNRCのみが権限を有するのかについては不明確である。このため、NRC委員はNRCスタッフに対して、GTCC廃棄物の処分を歴史的な観点から整理するよう指示していた。

今回公表された2015年7月17日付の文書は、上記のNRC委員からの指示及びテキサス州からの明確化の要求に答えるために作成されたものである。本文書では、以下の3つのオプションが検討対象とされた。

  • オプション1: WCS社によるGTCC廃棄物の受け入れ及び処分に対して、NRCが許認可を発給し、規制する。また、現在はTRU廃棄物の処分には適用されないNRCの連邦規則10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」を、TRU廃棄物の処分にも適用できるように改正を図る。
  • オプション2:NRCは、テキサス州がGTCC廃棄物の処分に対して許認可を発給し、規制を行うのを認める。また、現在はTRU廃棄物の処分には適用されない連邦規則10 CFR Part 61を、TRU廃棄物の処分にも適用できるように改正を図る。
  • オプション3:特段の対応を行わない。

NRCスタッフは、これらの3つのオプションについての検討を行った結果、オプション2(テキサス州が許認可権限を持つ)を採用する提案を承認するよう、NRC委員に求めるとしている。オプション2を支持する理由としては、GTCC廃棄物とTRU廃棄物の処分についての共通的な規制要件を定めることができること、GTCC廃棄物処分の許認可権限を州に認めるオプションを維持するというこれまでのNRCの見解との一貫性を確保できること、テキサス州は既にWCSテキサス処分場の許可・規制を行っているために規制の効率上は望ましいことなどを挙げている。今後、NRC委員の本文書に対応して出される指示に基づいて、NRCはテキサス州に対する回答を作成する予定としている。

なお、米国では、GTCC廃棄物の処分責任は連邦政府にあるとされており、この責任の履行のため、エネルギー省(DOE)は2005年に、GTCC廃棄物の処分に関する環境影響評価書(EIS)の準備を行うことについての事前通知を行っており、また、2007年には、GTCC廃棄物の処分オプションに関する環境影響評価を実施することを公表していた。さらに、2011年には、GTCC廃棄物の処分オプションに関するドラフト環境影響評価書(DEIS)を公表し、処分方策を含む望ましい管理方策は最終環境影響評価書(FEIS)において提示することを示していた。しかし、DOEの主要な環境影響評価のスケジュールに関する2015年7月15日付の情報によれば、未だにFEISの作成に向けたスケジュールは確定していない。ただし、2015年7月17日付けの文書においてNRCは、DOEが2015年内にステークホルダーの意見等を反映し、望ましい管理方策を示したFEISを出すことが見込まれるとしている。

【出典】

 

【2015年8月20日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年8月13日に、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(以下、「GTCC廃棄物」という )の処分に向けた課題及び現在の規制環境について、NRCの委員に対する公開でのブリーフィングを開催した。ブリーフィングは、以下に示すように、外部関係者によるパネルと政府関係者によるパネルの2部構成で実施され、それぞれのパネルに対してNRCの委員による質疑が行われた。

パネル1:外部関係者

原子力エネルギー協会(NEI)

GTCC廃棄物の処分に対する産業界の見解

DWジェームズ・コンサルティング社

GTCC廃棄物を含む、原子力発電プラントから発生する低レベル放射性廃棄物

ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社

すべてのGTCC廃棄物の受入れに対する低レベル放射性廃棄物処分サイトの関心

エネルギー環境研究所(IEER)

GTCC廃棄物の処分に対する公衆の関心の視点

パネル2:政府関係者

エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)

GTCC廃棄物の処分

テキサス州環境品質委員会(TCEQ)

GTCC廃棄物の処分についてのテキサス州における検討

NRCスタッフ(核物質安全・保障措置局(NMSS)など)

・歴史的な展望
・政策的問題
・課題

なお、2015年8月18日に公開された議事録において、GTCC廃棄物の放射能濃度について、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で処分される超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)と比較した場合、両者の放射性核種と放射能インベントリは似通っているが、原子力発電所など非軍事起源のGTCC廃棄物の放射能濃度は、セシウム-137を除いて、平均でTRU廃棄物の50倍強、最高で1,200倍以上になること、WIPPでの「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)の放射能濃度に匹敵することをNRCスタッフが説明したことが記されている。

【出典】

 

【2015年12月25日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年12月22日付けの運営事務局長(EDO)宛ての指示文書において、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(以下、「GTCC廃棄物」という )の処分に係る許認可権限をテキサス州に与える案の検討に関して、テキサス州宛の回答案を作成することなどを指示した。この回答案においては、地層処分以外の方法によるGTCC廃棄物の処分の規制基盤(regulatory basis)を検討し、必要に応じて処分基準等を策定するとした上で、今後検討する規制基盤がテキサス州による規制権限の明確化に対する回答の根拠を与えるものであること、規制基盤の検討の過程で州からの意見を要請する旨を伝えることとされている。

本指示文書では、現在行われているNRCの連邦規則(10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」)の改定作業の完了から6カ月以内に、浅地中処分など地層処分以外の方法によるGTCC廃棄物の処分に係る規制基盤を検討し、NRC委員に提出することをNRCスタッフに命じている。さらに、この規制基盤は、GTCC廃棄物が、協定州への権限委譲を禁ずる1954年原子力法第274条c.(4)の規定に該当する程度の危険性を持つ放射性廃棄物であるかどうかを分析するものとされ、分析の結果として浅地中処分が適している可能性があるとの結論に達した場合、NRCスタッフは、連邦規則10 CFR Part 61の下でGTCC廃棄物の処分を許可するための処分基準を含む規則改定案を策定すべきとしている。

さらに、本指示文書では、NRCスタッフが、規制基盤の策定過程で、テキサス州及び他の関心あるステークホルダーからの意見を聴くため、公開のワークショップを開催すべきことも指示している。なお、NRCの委員は、近い将来にGTCC廃棄物の処分を求める者に対しては、NRCの連邦規則10 CFR Part 61に規定されているケースバイケースの審査が引き続き可能であることを確認している。

また、本指示文書において、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の処分についても、NRCの連邦規則10 CFR Part 61が適用されるべきとするNRCスタッフの提案を承認している。

【出典】


  1. 米国では、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法、原子力規制委員会(NRC)の連邦規則(10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」)において、地下30mより浅い浅地中処分が可能な低レベル放射性廃棄物としてクラスA、B、Cの分類が定められている。GTCC廃棄物は、放射能濃度などがクラスCの制限値を超える放射性廃棄物であり、連邦規則に基づいて操業されている浅地中処分に適さないものとされている。 []
  2. 「TRU廃棄物」は、低レベル放射性廃棄物のカテゴリーには含まれないが、NRCは10 CFR Part 61において、TRU核種を含有していても一定の条件を満たす廃棄物については、低レベル放射性廃棄物の処分場において処分することを認めている。 []
  3. 原子力法及び1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法の規定に基づいて、州とNRCとが協定を締結することにより、州は低レベル放射性廃棄物の処分を規制する権限を得ることができる。 []

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2015年6月16日に、「エネルギー省(DOE)が管理する使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の独立した処分計画の実施に伴う技術的課題の評価」に関する報告書(以下「NWTRB報告書」という)を公表し、超深孔処分の計画などに対する勧告を行った。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性を評価し、連邦議会及びエネルギー長官に対して勧告等を行う目的で設置された独立の評価組織である。

今回のNWTRB報告書の評価対象は、DOEが2015年3月24日に公表した「軍事起源の高レベル放射性廃棄物の独立した処分に関する報告書」、及びその根拠とされた2014年10月の報告書「DOE管理の高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料の処分オプションの評価」(以下「処分オプション報告書」という)である。NWTRBは評価の目的を、DOEの新しい独立した処分計画に付随する技術的及び科学的課題の評価を行うこととしている。NWTRB報告書では、以下の4点が勧告されている。

  1. 異なる母岩における廃棄物容器について、劣化後の廃棄体の性能について検討すべきである。
  2. 可能性ある処分場の地質環境について、DOE保有の使用済燃料の劣化速度に関する理解を深めるべきである。
  3. 相対的に低温の海軍使用済燃料を小さな廃棄物容器に再封入する方法及び費用・便益を評価すべきである。
  4. ボーリング孔のシーリング技術の研究を実施し、超深孔処分で対象とする廃棄体を処分するため、より強固な人工バリアが必要とされないかを評価すべきである。

超深孔処分についてNWTRBは、DOEの処分オプション報告書の基となったサンディア国立研究所(SNL)の2011年10月の報告書「高レベル放射性廃棄物の超深孔処分のリファレンス設計及び実施」に対して、2013年7月に技術的課題を指摘していた。今回のDOEの処分オプション報告書においても、開発に要する時間が示されていないこと、廃棄体の劣化速度、人工バリア、核種の半減期・移行速度、発熱量等の重要な要因を考慮せずに大きさのみで超深孔処分の対象廃棄物を選定していること、廃棄物の回収可能性を担保する廃棄物容器の健全性等を検討していないことなどを指摘し、セーフティケースの改善が必要としている。また、社会的な受容性を含め、DOEの独立した処分計画が、民間の使用済燃料の処分場開発に与えるマイナスの影響の可能性が評価されていないことも付言している。

【出典】

エネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2015年4月16日に、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の地下施設内で2014年2月14日に発生した放射線事象について、事故調査委員会(AIB)による2回目となる「事故調査報告書(フェーズ2)」を公表した。事故調査報告書(フェーズ2)では、事故調査委員会の調査結果として、2013年12月にロスアラモス国立研究所(LANL)で処理した1本の廃棄物ドラムについて、処分されたドラム中での有機物質と硝酸塩との混合による発熱化学反応が放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因と結論づけている。

DOEの環境管理局(EM)のニュースリリースにおいて、事故調査委員会は、WIPP及びロスアラモス国立研究所での徹底的な調査が実施され、放射線事象の発生原因の調査の他、同様な事故の再発防止などに必要な安全対策、管理統制の特定を実施したとしている。また、事故後の化学的、放射線学的及び火災の科学的分析に基づいて、放射線事象及び放射性物質の漏洩の発生原因が究明されたとしている。さらに、2014年2月5日の火災事故は、放射線事象及び放射性物質の漏洩の原因ではなく、また、関連性もないと結論づけられたとしている。

今回公表された事故調査報告書(フェーズ2)では、放射線事象及び放射性物質の漏洩の直接原因がロスアラモス国立研究所(LANL)から運び込まれた廃棄物ドラム番号68660にあること、今回の事象に限った根本原因としてロスアラモス国立研究所での有害廃棄物施設許可の理解・実施及びカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)による管理に欠陥があったことを挙げている。また、管理システムとしての根本原因としては、危険物の適切な処理に係る手順書の作成、レビュー・承認、実施における欠陥を挙げている。さらに、放射線事象につながった寄与要因の12項目を列挙した上で、24項目の結論・問題点(CON)、40項目の措置必要事項(JON)が示され、一覧表で整理されている。

今回の事故調査報告書(フェーズ2)については、2015年4月16日のタウンホール・ミーティングにおいて、事故調査の様子を視覚的に示した説明用のスライドなどで概要が説明された。

【出典】

 

【2016年7月4日追記】

米国ニューメキシコ州で廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を操業するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2016年6月30日に、WIPPにおける廃棄物受入基準(WAC)の改訂版を公表した。今回の廃棄物受入基準では、2014年2月に発生した放射線事象に関する事故調査委員会(AIB)の事故調査報告書で示された確認事項に対応するための改訂が行われている。

改訂版の廃棄物受入基準は、2016年7月5日に発効する。改訂版の廃棄物受入基準に適合することが確認されるまでは、DOEのTRU廃棄物発生サイトでの認証プログラムは停止される。改訂版の廃棄物受入基準では、TRU廃棄物発生サイト及びWIPPでの認証プログラムとして、廃棄物発生サイト技術審査及び品質保証の監査を受けることが必要とされている。

放射線事象の発生以前に認証され、WIPPでの処分が行われていない廃棄物容器は、WIPPへの搬出を行う前に改訂版の廃棄物受入基準への適合を検証することが必要となる。一部の廃棄物容器は処理及び再封入が必要となる可能性があるが、その見極めには数カ月を要するとされている。DOEは、新しい廃棄物受入基準に適合する廃棄物容器は全米で約1,000本あり、仮に一部の廃棄物について処理・再封入が必要とされた場合でも、WIPPの操業再開のスケジュールには影響しない見込みとしている。

改訂版の廃棄物受入基準の主な変更点は、以下の通りである。

  • WIPPの管理・操業契約者を廃棄物受入基準遵守プログラムの責任主体に追加
  • 受入可能とするための情報(AK)に関する要件の強化
  • TRU廃棄物の充填物管理に係る承認済み手法の各種文書等における用語を他の承認文書等と整合するよう変更
  • 臨界管理オーバーパック(CCO)と呼ばれる新たな「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)の容器の追加
  • プルトニウム239当量放射能量(PE-Ci)の限度を超える廃棄物容器の取り扱い
  • 線量当量率要件を満たす廃棄物容器について合理的な範囲での遮へい
  • ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物とTRU廃棄物を含む廃棄物容器における視認可能な液体の取り扱い
  • 核分裂当量重量等に関する適合方法として10 CFR Part 71.15を追加
  • CH廃棄物と「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)のラジオアッセイを含む形で添付書類Aを「TRU廃棄物のラジオアッセイ要件」として拡張
  • 添付書類F「CH廃棄物の環境保護庁(EPA)基準適合のためのラジオグラフィー要件」の改訂
  • その他(用語集への追加、インターネットリンクの更新、など)

 

【出典】

米国の連邦議会下院議員のハーディー議員(ネバダ州選出、共和党)は、2015年3月22日に、ネバダ州ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物の地層処分場の建設について、議論を呼び掛ける署名記事を地元新聞に投稿した。3月23日には、記事と同様の内容を議員の公式ウェブサイトにも掲載しており、拒絶のみでなく率直な議論が必要などとしている。ハーディー議員は、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡などからなる選挙区選出の下院議員として、2014年11月4日の連邦議会議員選挙で初当選した。

ハーディー議員は、ユッカマウンテン問題は長らく「中間」を失った問題となっているとして、連邦議会議員が真の解決策よりも再選を気にしているなどの問題点を指摘し、連邦政府が精力的に調査してきたユッカマウンテン処分場について、ネバダ州知事などが一貫して拒絶してきたが、立地が適切であれば信用しようなどとしている。その上で、エネルギー省(DOE)、大統領府などが示していない「ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分をネバダ州が受入れることができるシナリオはどのようなものか」との基本的な論点を示し、州内の学校への継続的な投資などネバダ州の地位を向上させる投資、コロラド川からの水利権割合の増加、輸送・インフラ投資の増加、世界から学術研究を呼び寄せる教育システムの確立に繋がる可能性など、具体例を挙げながらこの論点に対する問い掛けを行っている。

ハーディー議員は、ネバダ州民がユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分を望まず、上記の論点に対する答えが、そのようなシナリオは存在しないというものであれば、ネバダ州が立地を強制されることがないよう同議員も州民のために戦うとしつつ、シナリオの成立の可能性があるのであれば、安全基準が確実に守られることを前提として、少なくとも率直な対話は行うべきなどとしている。

ハーディー議員の署名記事の投稿に対して、強行にユッカマウンテン計画に反対しているリード上院議員(ネバダ州選出、民主党、少数党院内総務)は、2015年3月22日のプレスリリースにおいて、ネバダ州での高レベル放射性廃棄物処分は絶対に許容できるものでなく、ネバダ州民を環境破壊から守ることに見合う利益はないとしている。また、ネバダ州独自の専門家による評価では、ユッカマウンテンはリスクが大きく、技術的欠点の多い提案であることがわかっているとしている。なお、ネバダ州選出の連邦議会議員では、他にタイタス下院議員(ネバダ州選出、民主党)も公式ウェブサイトにおいて、ハーディー議員の署名記事を批判するプレスリリースを出している。

【出典】

米国テキサス州のウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2015年2月7日に、低レベル放射性廃棄物のWCSテキサス処分場のサイトにおける使用済燃料の中間貯蔵施設の建設について、2016年4月までに許認可申請を行うとした意向通知(2015年2月6日付け)1 を原子力規制委員会(NRC)に提出したことを公表した。WCS社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設については、WCSテキサス処分場が立地するテキサス州アンドリュース郡が、2015年1月20日に、建設計画を承認する決議を行っていた

WCS社は、中間貯蔵施設の建設プロジェクトの専用ウェブサイトを開設し、親会社であるヴァルヒ社からの公式プレスリリースのほか、中間貯蔵施設の建設サイト予定図などのプロジェクトの概要等を伝えている。建設サイト予定図では、中間貯蔵施設は約14,000エーカー(約5,700万m2)のWCS社サイト内に低レベル放射性廃棄物の処分場等と隣接して設置され、第二期分の中間貯蔵施設のための拡張スペースも確保されていることが示されている。

専用ウェブサイトに掲載された公式プレスリリースでは、2016年4月までに「独立使用済燃料貯蔵施設」(ISFSI)の許認可申請書を原子力規制委員会(NRC)に提出する計画であり、2020年12月には許認可手続を経て建設を完了するとの目標が示されている。

専用ウェブサイトに掲載されたプロジェクト概要資料では、建設プロジェクトの実施に向けてAREVA社と協力していること、使用済燃料の輸送は鉄道に拠ることなどが示されている。また、WCS社の計画は、WCS社の顧客と見込まれる連邦政府に対して、原子力発電所から使用済燃料を引き取る契約義務について、それが果たされる機会を提供するものであるとしている。なお、WCS社は、中間貯蔵施設の許認可・建設等について、連邦政府や州からの資金は求めないとしている。

今回のWCS社の公表に対して原子力エネルギー協会(NEI)は、2015年2月9日に、「集中貯蔵はユッカマウンテン処分場の計画を補完する」とした上で、WCS社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設計画を歓迎するニュースリリースを公表している。NEIのニュースリリースでは、連邦議会に対し、ユッカマウンテン処分場に係る許認可手続の完了のための予算確保とともに、WCS社のプロジェクトなどの機会を活かすため、エネルギー省(DOE)に集中中間貯蔵プログラムに係る実施の権限と予算を与えるように行動することを促している。

【出典】

 

【2015年2月12日追記】

ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社による使用済燃料の中間貯蔵施設の建設計画について、許認可申請に係る原子力規制委員会(NRC)への意向通知(2015年2月6日付け)がNRCのウェブサイトで公表された。今回公表された意向通知では、中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイトや公式プレスリリースで示されていなかった情報として、以下の点が示されている。

  • 中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請は、2016会計年度2 の第1半期中に行う。
  • 使用済燃料のほか、原子炉関連の「クラスCを超える低レベル放射性廃棄物」(GTCC廃棄物)の貯蔵も行う。
  • 中間貯蔵施設の候補サイトとして、WCS社の14,000エーカー(約5,700万m2)のサイトにおける数百エーカーの土地の評価を行う。
  • 中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請書、及び付随する環境報告書(environmental report)の作成はAREVA社の協力を得て行う。

【出典】

 

【2015年7月2日追記】

ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2015年6月16日に、使用済燃料の集中中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請について、原子力規制委員会(NRC)との許認可申請前ミーティングを行った。公開で開催された本ミーティングの目的は、許認可申請書の一部として提出される環境報告書及び安全解析書の策定方法について協議することとされており、以下の議題が設定されていた。

  • 環境報告書
    • 環境報告書の準備のための全般的方法
    • 社会経済的影響
    • その他の環境への影響
  • 安全解析書
    • 許認可申請の全般的方法
    • 集中中間貯蔵施設に固有の問題への対応方法
    • 安全解析書の構成の概要
  • 一般傍聴者からの質問・コメント

NRCが公表したWCS社の環境報告書のプレゼンテーション資料では、プロジェクトの概要の他、集中中間貯蔵の立地が計画されているWCSテキサス処分場の近傍での他の環境影響評価の事例の参照、地域・公衆の支持、国家環境政策法(NEPA)に基づく代替案の検討を含めた評価の方針及びサイト選定、輸送による影響、社会経済的影響、土地利用・生態等その他の環境影響などについて、策定方針等が示されている。

なお、WCS社の中間貯蔵プロジェクト専用ウェブサイトにおいては、NRCとの許認可申請前ミーティングが順調に行われたとの報告が掲載されている。

【出典】

 

【2015年7月16日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2015年7月10日に、ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が計画中の使用済燃料の集中中間貯蔵施設の建設に係る許認可申請について、2015年6月16日に開催されたNRCとWCS社との許認可申請前ミーティングの議事要旨を公表した。議事要旨では、許認可申請書の一部として提出される環境報告書及び安全解析書の作成方法について、NRCとWCS社などとの間で具体的な説明・質疑の概要が報告されている。

議事要旨によれば、WCS社は、NRCへの説明の中で、環境報告書では4万トンの使用済燃料を貯蔵する場合の影響について評価を行うものの、許認可申請書では既に廃止措置された原子炉サイトで保管されている5,000トン未満の使用済燃料のみを対象とすること、その後の貯蔵容量の増加は許認可修正により行う意向であることを表明している。また、WCS社からは、集中中間貯蔵施設が事実上の処分サイトとなる可能性の懸念も表明されたが、NRCは本ミーティングの範囲外との回答であった。さらに、WCS社からは、エネルギー省(DOE)が使用済燃料の所有権を取得しない場合、許認可申請を進めないことが付言された。

本許認可申請前ミーティングは公開で行われており、一般の傍聴者及び電話参加者からも質問・意見表明が行われた。テキサス州に隣接するニューメキシコ州の自治体住民からは、同自治体住民は中間貯蔵を支持しておらず、WCS社の申請に反対であること、環境正義(environmental justice)の評価範囲を広げるべきである、当初から4万トンの貯蔵の申請をするべきなどの意見が出された。また、安全性については、キャニスタの経年劣化、水圧破砕法(シェールガス等の採掘で使用される方法)の影響を含めた地震関連の問題、輸送関連の懸念などについての質問が寄せられたことが報告されている。

【出典】

 

【2016年4月20日追記】

ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社は、2016年4月18日に、WCS社の中間貯蔵プロジェクトの専用ウェブサイトにおいて、許認可申請に係る現況報告書を公表した。WCS社は、「前進」(Moving Forward)と題する本現況報告書について、集中中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書の原子力規制委員会(NRC)への提出が近づく中で、立地自治体・周辺自治体などに対するコミュニケーションの取組を強化するため、NRCでの許認可申請の状況の報告を行うものとしており、今回公表された現況報告書はその創刊号となる。

WCS社は、2015年2月に、使用済燃料の中間貯蔵施設の許認可申請の意向通知をNRCに提出したことを公表しており、その中で2016年4月までに許認可申請書を提出する予定を示していた3。今回公表された現況報告書では、NRCへの許認可申請書の提出は予定通りに行われる見込みであるとしている。さらに、WCS社は、パートナーのAREVA社とNACインターナショナル社とともにNRCとの許認可申請前ミーティングを重ねてきた中で、NRCの安全審査が標準的な3年間で完了することを確信しており、2019年に建設を開始し、2021年には使用済燃料の受入れを開始できる見込みであるとしている。

今回公表された現況報告書では、その他に、パートナーとして「WCSチーム」を構成するAREVA社とNACインターナショナル社の概要、エネルギー省(DOE)による使用済燃料の中間貯蔵を可能とするための法案提出などの連邦議会における中間貯蔵プロジェクト支援の動き、テキサス州等における民間の中間貯蔵施設開発の動きを支持するとの連邦議会におけるエネルギー長官の証言などが報告されている。

【出典】


  1. 提出は任意であるが、原子力規制委員会(NRC)の人員及び予算の確保のため、通例、申請時期を知らせるためのものとなっている。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、2016会計年度は2015年10月1日からの1年間となる。 []
  3. 実際にNRCに提出された意向通知書では、2016会計年度の第1半期中(2016年3月まで)の提出見込みが示されていた。 []