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米国

米国のエネルギー省(DOE)は、2018年1月17日付けのWIPPのフェイスブック・ページにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下の処分施設の掘削活動を4年振りに再開したことを公表した。WIPPでは、1999年3月から軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が行われているが、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止していた。4年間の復旧作業の後、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2017年4月にはDOE各サイトからのTRU廃棄物の受入れを再開していたが、地下施設の掘削活動は中断したままであった。

今回再開した掘削活動は、2018年1月15日から開始されており、WIPP地下処分施設の第8パネルでの掘削が行われている。WIPPでは現在、第7パネルでTRU廃棄物の定置活動が行われているが、第7パネルでの定置が完了すると、第8パネルでの定置が開始される。第8パネルの掘削は、2013年遅くに開始されていたが、2014年2月の火災事故及び放射線事象で中断していた。第8パネルの完成は、2020年の予定とされている。

掘削活動には連続掘削機が使用されており、WIPPのフェイスブック・ページでは、連続掘削機の写真やビデオも掲載されている。WIPPは岩塩層に建設された地層処分施設であり、時間の経過に従って岩塩のクリープ現象によって地下の開口部分が閉鎖される動きがあるため、処分パネルの掘削は、処分に必要となる時期に合わせて行われている。

なお、WIPPのフェイスブック・ページでは、2018年1月11日付けの情報として、2018年1月15日~28日の予定で、定期のメンテナンスのためにWIPPでの操業を停止することも公表されている。

【出典】

  • エネルギー省(DOE)の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)フェイスブック・ページ「WIPP掘削作業を再開(WIPP Resumes Mining Operations)」(2018年1月17日))[アクセス日:2018年1月19日]
    https://www.facebook.com/WIPPNews/

 

【2019年2月12日追記】

米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2019年2月5日付けのニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、TRU廃棄物の定置が行われていた第7パネル第5処分室が満杯となり、定置作業上のマイルストーンに達したことを公表した。WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置が再開し、2018年1月には地下施設の掘削活動も再開されていた

第7パネル第5処分室でのTRU廃棄物の定置作業が終了したことにより、今後は第7パネル内の処分室を繋ぐ坑道での定置が第3処分室に到達するまで行われ、その後は第3処分室での定置が開始される1 。また、第7パネルでの定置作業と並行して、第8パネルの掘削も行われている。第7パネルでの定置及び第8パネルの掘削は、ともに2013年に開始されており、第7パネルは2021年春には容量の上限に達する見込みとされている。

WIPP地下処分施設の第7パネルの状況

WIPPでは、2018年には、2017年の133回を上回る310回以上のTRU廃棄物の受入れが行われた。WIPPが1999年に操業を開始してからのTRU廃棄物受入れ回数は、12,300回以上に達する。また、WIPPの地下処分施設では、175,000以上のTRU廃棄物容器が定置された。なお、WIPPウェブサイトによれば、2019年2月2日現在のTRU廃棄物の処分量は約95,000m3となっている。

【出典】

 

【2020年2月5日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2020年2月4日付けのEMニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下処分施設の第8パネルの粗掘削(rough cut)が完了したことを公表した。WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置が再開し、2018年1月15日には地下施設の掘削活動も再開されていた

粗掘削の完了により姿を見せた第8パネルは、WIPPを構成する8つの処分パネルの一つである。WIPPの1つの処分パネルは7つの処分室で構成されており、各処分室は、幅が33フィート(約10m)、高さが13フィート(約4m)、長さが300フィート(約91m)となっている。岩塩の掘削は、上下可動式の回転ドラムにより岩塩を掘削する高効率の連続掘削機によって行われている。連続掘削機は、毎秒10トンの岩塩を掘削することが可能であり、岩塩の掘削ずり(岩石片)はベルトコンベアでトラックに積み込まれる。岩塩の掘削ずりの一部は地下施設で使用されるほか、残りは地上に搬出される。

第8パネルの作業は今後も継続し、リブ(rib)及び壁面が広げられ、廃棄物パッケージの定置が可能な高さを確保するために床面も掘削される。掘削活動は、2020年後半に完了することが見込まれており、完了時までに15万トン以上の岩塩が掘削されることになる。掘削活動の進展とともに、岩塩の壁面の安定化のためのロックボルト打設が行われるほか、掘削完了後は、照明設備、鋼製バルクヘッド(steel bulkhead)や金網が設置される。なお、WIPPの岩塩には時間の経過に従って、クリープ現象によって地下の開口部分が閉塞する動きがあるため、パネルの掘削は必要サイズよりやや大きめに行われる。

WIPPでは、第1~第6パネルにおける処分は既に終了し、現在は第7パネルでTRU廃棄物の定置が行われている。第7パネルは、2021年後半には容量の上限に達する見込みとされており、その後は第8パネルで処分が行われることとなる。

粗掘削が完了した第8パネル

連続掘削機

 

【出典】


  1. WIPPにおけるTRU廃棄物の定置活動は、各処分パネルの一番奥に位置する第7処分室から第1処分室に向かって行われる。現在TRU廃棄物の定置が行われている第7パネルでは、第7処分室が2014年2月の放射線事象による汚染で閉鎖されたほか、岩盤管理作業の問題から第6処分室及び第4処分室が立入禁止とされている。 []

米国の環境保護庁(EPA)は、2017年7月13日に、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、適合性再認定の決定を行ったことを公表した。WIPPでは1999年3月から、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分をエネルギー省(DOE)が実施しているが、1992年WIPP土地収用法において、処分開始以降の5年毎に、廃止措置段階が終了するまで、連邦規則の要件に適合していることの認定を受けることが要求されている。前回は、2009年3月24日に適合性再認定申請書をDOEが提出し、2010年11月18日に適合性再認定の決定をEPAが行っていた。今回は3度目の適合性再認定になり、2014年2月の火災事故・放射線事象で操業が停止している中、DOEは2014年3月26日に適合性再認定申請書をEPAに提出していた

EPAが公表した適合性再認定の決定文書において、適合性再認定の決定は、DOEが提出した情報の詳細な審査、独自の技術的な解析、パブリックコメントに基づいて行われたことが示されている。また、本決定は、EPAの放射性廃棄物処分規則、WIPPの適合性基準の変更、WIPPにおける操業再開に関係するものではなく、DOEが引き続きWIPPの適合性基準の要件を満たしていることをEPAが確認したものとしている。また、EPAは、次回の適合性再認定の申請に向けて、DOEの技術的解析や説明根拠には改善の余地がある領域も確認されたとしている。

なお、EPAによる適合性再認定の決定は、決定文書の連邦官報での掲載をもって正式なものとなるが、決定の期限となる2017年7月13日までに連邦官報への掲載ができなかったため、署名済の決定文書をEPAのウェブサイトに掲載するとともに、関連文書を連邦政府の規制情報ウェブサイトにおいて公表した。適合性再認定の決定は、EPAがDOEによる適合性再認定申請書の完全性を確認して決定してから6カ月以内に行うものとされており、EPAは、2017年1月13日に、適合性再認定申請書の完全性の決定を行っていた

【出典】

米国の政府説明責任院(GAO)は、2017年5月26日に、ユッカマウンテン処分場の建設に係る原子力規制委員会(NRC)での許認可申請の審査について、審査手続の再開・完了のための必要事項等を検証した報告書を公表した。本報告書は、連邦議会下院のエネルギー・商務委員会の委員長らが2016年2月29日に、GAOへ依頼したことを受けて取りまとめられたものである。本報告書では、①エネルギー省(DOE)による2010年3月の許認可申請書の取下げ申請以降に実施された活動、②許認可手続を再開して完了するために必要と考えられる主要ステップ及びその成否に影響し得る要因が検証されている。

2010年3月のDOEによる取下げ申請以降の動きとしてDOE及びNRCは、技術的審査や裁判形式の裁決手続など、NRCにおける許認可プロセスを実施する能力をほぼ壊滅的状態にしたこと、特に、許認可プロセスを実施する組織及び資金が消滅したこと、NRCスタッフによる技術的審査を停止したこと、NRCが保有していた専用のヒアリング施設を廃止した一方で、数百万の文書など関連データの保存も行ったことなどが示されている。DOE及びNRCは、NRCが2011年9月に正式に許認可プロセスを停止したときには、実施体制の解体作業をほとんど完了していた。2013年11月の連邦控訴裁判所判決により、NRC許認可手続の再開が命じられたことを受けてNRCは、残予算の範囲内で許認可審査活動を再開したが、裁判形式の裁決手続は再開されていない。2016年末から2017年初めの時点では、DOEもNRCも、裁決手続を再開するための公式の計画はないとしていた。

政府説明責任院(GAO)の報告書では、許認可プロセスを再開し、完了するために必要な主なステップとして、以下の4点が示されている。

  1. NRCの委員会が許認可プロセスの再開、時期その他の詳細を決定し、通知を受けた許認可プロセス参加者とNRCが、裁決手続に必要となる資金を確認
  2. DOE及びNRC、その他参加者のプロジェクト部局を再設置するための人員確保など、組織的対応力の再構築
  3. 裁決手続の参加者を再招集し、証人の証言書や証拠開示手続など、裁決手続の残されたプロセスを完了
  4. 処分場の建設の認可に係るNRCの委員会の最終決定など、許認可プロセスの残りのステップを実施

政府説明責任院(GAO)の報告書では、裁判形式の裁決手続において許認可申請書を弁護する専門家証人を復帰させることができるかなど、様々な要因が許認可プロセスの再開・完了のために必要な時間に影響を与え得るとしている。

なお、本報告書は、政府説明責任院(GAO)が2016年3月から2017年4月にかけて調査したものであり、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)その他の関連法令、関連文書等を精査した上で、DOEの処分実施主体であった民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の元職員などのDOEやNRCの担当官、NRC許認可手続に参加していた関係者などに対して聞き取り調査が実施されている。

【出典】

  • 政府説明責任院(GAO)報告書、「ユッカマウンテン処分場の許認可手続の再開にはエネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)の体制再構築などが必要」、2017年4月26日(2017年5月26日公表)
    https://www.gao.gov/products/GAO-17-340

 

【2017年5月30日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は2017年5月26日に、ユッカマウンテン処分場に関する政府説明責任院(GAO)の報告書に対するプレスリリースを公表し、GAOの報告書を歓迎するなどを主旨とするエネルギー小委員会委員長及び環境小委員会委員長の見解を示した。両委員長は2016年2月に、ユッカマウンテン許認可申請を再開・完了するためのエネルギー省(DOE)の実施能力について評価する報告書を策定するよう、GAOに要求していた。

プレスリリースの中で両委員長は、政府説明責任院(GAO)報告書で確認された今後必要な主な4つのステップを示した上で、以下の見解などを示している。

  • いくつかの課題は残されているものの、政府説明責任院(GAO)報告書は、エネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)がユッカマウンテン許認可プロセスを完了するために必要なステップのロードマップを提供している。
  • 許認可申請を完了するためのプロセスは、独立した立場のNRC行政判事の前で、公式に正当性を主張する機会をネバダ州に提供するものであり、極めて重要である。
  • 下院エネルギー・商務委員会が放射性廃棄物政策に係る包括的な法案の制定を目指す中で、政府説明責任院(GAO)報告書で示された課題に対応するためにDOEと協調して取り組んで行く。

【出典】

米国で2017年5月23日に、2018会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「使用済燃料等」という。)の管理については、新たに「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムが設けられ、120,000千ドル(約136億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでも予算要求資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続の継続のための予算として、30,000千ドル(約33億9,000万円)が要求されている。

DOEの予算で新たに設けられた「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムは、使用済燃料等に対する連邦政府の責務を満足するとともに、国家安全保障を強化し、将来の納税者の負担の軽減に資するものとされている。本プログラムは、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続を復活させるという現政権の決定を実施に移すものであり、処分場が開発されるまでの近い将来については、中間貯蔵の体制を確立するものとしている。本プログラムでは、2018会計年度の実施事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(110,000千ドル(約124億円))2

  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • NRCの原子力安全許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略の構築

中間貯蔵(10,000千ドル(約11億3,000万円))3

  • 商業的な使用済燃料中間貯蔵サービスの競争的調達の計画・策定の開始
  • 使用済燃料等の将来における輸送を支援する、輸送計画・調達・国家環境政策法(NEPA)分析を加速する活動の開始
  • 将来の使用済燃料等の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

DOEの予算要求資料では、現在は停止されている原子力発電事業者からの放射性廃棄物基金への拠出金について、2020会計年度から徴収を再開することが示されている。拠出金の徴収には、金額の妥当性評価報告書が必要であることが1982年放射性廃棄物政策法で規定されており、DOEは2018会計年度において、拠出金の妥当性評価報告書の策定を開始するとしている。

なお、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動としては、前政権ではDOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下で、「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として、研究開発活動、同意に基づくサイト選定プロセスの構築、超深孔処分フィールド試験などが実施されてきたが、今回公表されたDOEの予算要求文書では、両プログラムとも廃止が提案されている。ただし、中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管するものとされている。

一方、NRCの予算要求資料では、高レベル放射性廃棄物の予算として30,000千ドル(約33億9,000万円)が計上されており、主な活動として、処分場建設認可に係る許認可申請書の審査活動の継続、裁判形式の裁決手続再開の準備、関連訴訟への参加と準備が挙げられている。これまでNRCにおけるユッカマウンテン処分場の許認可申請書に係る審査活動は、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内で限定的に行われていた

また、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2016~2017会計年度と比較して約18,000千ドル(約20億円)増の323,041千ドル(約365億円)の予算が要求されている。要求額には換気システムや排気立坑の費用が含まれているが、主な増加要因として、2017年に操業が再開されたこと、是正活動の維持、輸送回数増加のための対応などが挙げられている。

【出典】

 

【2017年6月23日追記】

米国の連邦議会において、2017年6月20日~23日に、エネルギー省(DOE)の2018会計年度の予算要求に関するヒアリングが実施された。ヒアリングは、以下に示す日程で上下両院の関連委員会が開催したものであり、エネルギー長官が証人として出席して2018会計年度の予算要求について説明するとともに、各委員会の委員による質疑が行われた。

開催日 開催委員会

2017年6月20日

下院歳出委員会(エネルギー・水資源小委員会)

2017年6月21日

上院歳出委員会(エネルギー・水資源小委員会)

2017年6月22日

上院エネルギー・天然資源委員会

エネルギー長官が各委員会に提出した証言書では、高レベル放射性廃棄物処分に係る前進が必要との認識の下、ユッカマウンテン処分場に係る許認可活動の再開及び使用済燃料の中間貯蔵プログラムの開始のために1億2,000万ドル(約136億円、1ドル=113円で換算)の予算を要求していることが示されている。その上で、長期にわたり停止していたユッカマウンテン処分場の許認可活動の再開及び中間貯蔵施設の確保を明確に示した2018会計年度の予算要求は、高レベル放射性廃棄物に対応する連邦政府の義務を満足し、国家安全保障を強化し、将来の米国納税者の負担を軽減するものとしている。これはまた、原子力安全・安全保障に対する公衆の信任を増し、原子力が米国のエネルギー需要に貢献し続けることを支援するものとしている。

エネルギー長官は、各委員会の質疑での回答においても、ユッカマウンテン計画の再開と中間貯蔵プログラムの開始に強い意欲を示している。これに対し、ネバダ州知事及びネバダ州選出の連邦議会議員は、ネバダ州はユッカマウンテン処分場計画に一貫して反対を続けており、DOEは同意に基づくサイト選定の取組を継続すべきであるなどの主旨で、エネルギー長官が一連のヒアリングで示した見解を批判するプレスリリースを発出している。

【出典】

 

【2017年7月13日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2017年7月12日に開催した法案策定会合において、2018会計年度4 のエネルギー・水資源開発歳出法案の草案(以下「歳出法案草案」という。)を承認した。本歳出法案草案では、エネルギー省(DOE)のユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として120,000千ドル(135億6,000万円、1ドル=113円で換算)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として30,000千ドル(33億9,000万円)と、いずれもエネルギー省(DOE)等の予算要求と同額が割り当てられている。

歳出法案草案では、DOEに計上されたユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算の一部について、ネバダ州及び影響を受ける自治体等に対し、許認可活動への参加に係る費用などとして補助金等を財政支給することが規定されている。ただし、これらの資金は、訴訟費用や中間貯蔵活動等には使用できないことなどが規定されている。また、2017会計年度の下院歳出法案と同様に、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じることも規定されている。

また、歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書では、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として45,000千ドル(50億8,500万円)が計上されている。DOEが2017年5月23日に公表した予算要求では、同プログラムの予算は要求されていなかった。

なお、2017年7月12日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合において技術的な事項に係る修正案が承認されているが、これらの修正事項を反映して、法令番号を付した歳出法案は2017年7月12日時点では公表されていない。

【出典】

 

【2017年7月25日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2017年7月20日に、2018会計年度5 のエネルギー・水資源開発歳出法案(S.1609)を承認し、上院本会議に提出した。本歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院で可決された2017会計年度の歳出法案と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。また、本歳出法案では、エネルギー省(DOE)の予算要求では廃止とされた予算として、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発及び統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)プログラムの予算が計上されている。なお、ユッカマウンテン関連の予算及び記述は盛り込まれていない。

下表は、2018会計年度の歳出法案での高レベル放射性廃棄物関連予算について、上下両院で提出された歳出法案における予算計上金額及びポイントを示したものである。

項目 連邦議会上院の歳出法案 連邦議会下院の歳出法案
研究開発 65,000千ドル(73億4,500万円、1ドル=113円で換算) 45,000千ドル(50億8,500万円)
  • 使用済燃料処分等(UNFD)研究開発として、処分及び貯蔵に係る一般的な研究開発活動を継続するための予算を計上
地層処分 【予算計上なし】 120,000千ドル(135億6,000万円)
  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • ユッカマウンテン処分場計画の再開のため許認可活動予算等を計上
中間貯蔵 35,000千ドル(39億5,500万円) 【予算計上なし】
  • 統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)として集中中間貯蔵計画の実施のための予算を計上
  • 予算金額のうち10,000千ドル(11億3,000万円)については、集中中間貯蔵に係る民間事業者との契約締結をエネルギー長官に許可
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラムの実施をエネルギー長官に命じる規定(第307条)
  • 集中中間貯蔵プログラムの実施に関する記述はなし
高レベル放射性廃棄物の規制 【予算計上なし】 30,000千ドル(33億9,000万円)
  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • 原子力規制委員会(NRC)における許認可手続予算を放射性廃棄物基金から引き出す

今回、上院本会議に提出された歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案第307条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中中間貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法の施行後120日以内に、集中中間貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中中間貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザル公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

今回、上院本会議に提出された歳出法案にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、ネバダ州選出の連邦議会議員からは、これを評価した上で、今後も闘いを継続する旨のプレスリリースが発出されている。また、ネバダ州選出の連邦議会下院議員は、ユッカマウンテン計画の再開を図る下院の歳出法案に対して、ユッカマウンテン関連の予算を削除するなどの修正案を提出している。

下院では、2017年7月12日の歳出委員会会合での承認を経て、2017年7月17日にエネルギー・水資源開発歳出法案(H.R.3266)が本会議に提出されているが、安全保障に関連する4つの歳出法案をまとめた「米国安全保障歳出法案」(H.R.3219)として下院本会議で審議を行うことが予定されている。

【出典】

 

【2017年8月2日追記】

米国の連邦議会下院は、2017年7月27日の本会議において、2018会計年度6 「米国安全保障歳出法案」(H.R.3219、以下「本歳出法案」という。)を、235対192で可決した。本歳出法案は、2018会計年度の国防歳出法案(H.R.3219)に「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.3266)などを統合し、安全保障に関連する4つの歳出法案をまとめたものである。本歳出法案での高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2017年7月12日に下院歳出委員会で承認された内容から変化はなく、歳出法案に付随する委員会報告書についても、2017年7月12日に下院歳出委員会で承認されたものとなっている。

本歳出法案及び付随する下院歳出委員会報告書では、2018会計年度の高レベル放射性廃棄物関連予算について、以下のとおり規定されている。

  • エネルギー省(DOE)のユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として120,000千ドル(135億6,000万円、1ドル=113円で換算)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として30,000千ドル(33億9,000万円)を計上
  • DOEに計上されたユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算の一部について、ネバダ州及び影響を受ける自治体等に対し、許認可活動への参加に係る費用などとして支給(ただし、訴訟費用や中間貯蔵活動等には使用できない)
  • ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じる条項(第507条)を規定
  • 「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として45,000千ドル(50億8,500万円)を計上

本歳出法案で計上された予算のうち、ユッカマウンテン関連の予算金額についてはDOE等の予算要求と同額が割り当てられているが、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムとしての一般的な研究開発予算については、DOEの予算要求では要求されていなかった。

なお、本歳出法案の下院本会議での審議において、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じた第507条を削除する修正案がネバダ州選出の下院議員から提出されたが、発声投票により否決された。

本歳出法案の下院本会議での可決及びネバダ州選出議員提出の修正案の否決について、ネバダ州選出の連邦議会の上院議員及び下院議員からは、これを非難し、今後も反対を続けることなどを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2017年9月11日追記】

米国の連邦議会では、上院が2017年9月7日に、下院が2017年9月8日に、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)のうち、2017年10月1日から2017年12月8日を対象とした継続歳出法案をそれぞれ可決し、2017年9月8日に大統領の署名を得て継続歳出法として成立した。かねてから検討されていたユッカマウンテン許認可手続の再開等については、今回の継続歳出法では予算が付かないものとなった。

2018会計年度の継続歳出法は、エネルギー・水資源分野を含めて、2017年12月8日までの期間について、2017会計年度の予算を規定した包括歳出予算法での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

今回制定された2018会計年度の継続歳出法では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2017年9月25日追記】

米国の連邦議会下院は、2017年9月14日の下院本会議において、2018会計年度の全期間(2017年10月1日~2018年9月30日)を対象とした「米国安全保障・繁栄歳出法案」(H.R.3354、以下「包括歳出法案」という。)を211対198で可決した。本包括歳出法案は、2018会計年度の内務省・環境分野の歳出法案(H.R.3354)に対して、すべての他分野の歳出法案を統合して、包括歳出法案としてまとめたものである。
エネルギー関連については、2017年7月12日に下院歳出委員会で承認された「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.3266)、及び同法案を統合して2017年7月27日に下院本会議で可決された「米国安全保障歳出法案」(H.R.3219)から変更はなく、2018会計年度の高レベル放射性廃棄物関連予算は以下のとおり規定されている。

  • エネルギー省(DOE)のユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として120,000千ドル(135億6,000万円、1ドル=113円で換算)、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算として30,000千ドル(33億9,000万円)を計上
  • DOEに計上されたユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算の一部について、ネバダ州及び影響を受ける自治体等に対し、許認可活動への参加に係る費用などとして支給(ただし、訴訟費用や中間貯蔵活動等には使用できない)
  • ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じる条項(第507条)を規定
  • 「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として45,000千ドル(50億8,500万円)を計上

2018会計年度の高レベル放射性廃棄物関連予算に関して、連邦議会上院の歳出委員会で2017年7月20日に承認された上院版歳出法案(S.1609)では、ユッカマウンテン関連の予算及び関連する記述は盛り込まれず、集中中間貯蔵計画の実施のための予算が計上されるなど、今回下院で可決された包括歳出法案とは内容が大きく異なっている。包括歳出法案が法律として成立するためには、上院で同じ内容の法案が可決されることが必要であり、上院で異なる内容の歳出法案が可決された場合には両院協議会等で調整が行われることとなる7

【出典】

 

【2017年12月11日追記】

米国の連邦議会は2017年12月8日に、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)のうち、2017年12月22日までを対象とした継続歳出決議(CR)を可決し、また、同日に大統領の署名を得て公法(Public Law No.115-90)として成立した。2018会計年度の歳出予算については、2017年12月8日までを対象とした継続歳出法(H.R.601)が2017年9月8日に成立していたが、今回、上下両院合同で可決された継続歳出決議は、前回の継続歳出法で設定された継続予算の期限を2017年12月22日まで延長するものとなっている。

なお、今回可決された2018会計年度のうちの2017年12月22日までの継続歳出決議では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

 

【2017年12月25日追記】

米国の連邦議会は2017年12月21日に、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)のうち、2018年1月19日までを対象とした継続歳出法案(H.R.1370)を可決し、2017年12月22日に大統領の署名を得て公法(Public Law No.115-96)として成立した。2018会計年度の歳出予算については、2017年12月8日までを対象とした継続歳出法(H.R.601、Public Law No.115-56)が2017年9月8日に成立し、その後、2017年12月8日に成立した継続予算決議(CR)で継続予算の期限が2017年12月22日まで延長されていたが、今回成立した継続歳出法(Public Law No.115-96)は、この継続予算の期限を2018年1月19日までさらに延長するものとなっている。

なお、今回可決された2018会計年度のうちの2018年1月19日までの継続歳出法では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

 

【2018年1月25日追記】

米国の連邦議会は2018年1月22日に、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)のうち、2018年2月8日までを対象とした「2018会計年度の継続歳出延長法」(H.R.195)を可決し、同日に大統領の署名を得て公法(Public Law No.115-120)として成立した。2018会計年度の歳出予算については、2017年12月8日までを対象とした継続歳出法(H.R.601、Public Law No: 115-56)が2017年9月8日に成立し、その後、2017年12月8日に成立した継続予算決議(CR)、及び2017年12月22日に成立した継続歳出法(H.R.1370、Public Law No: 115-96)によって継続予算の期限が2018年1月19日まで延長されていたが、今回成立した2018会計年度の継続歳出延長法は、この継続予算の期限を2018年2月8日までさらに延長するものとなっている。

なお、2018会計年度歳出予算については、2018年1月19日までとなっていた期限内に継続予算の期限の延長が行われなかったため、連邦政府機関の一部は2018年1月20日から閉鎖されることとなっていた。

今回可決された2018会計年度の継続歳出延長法では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

 

【2018年2月13日追記】

米国の連邦議会は2018年2月9日に、2018会計年度(2017年10月1日~2018年9月30日)のうち、2018年3月23日までを対象とした「2018会計年度の継続歳出追加延長法」(H.R.1892)を可決し、同日に大統領の署名を得て公法(Public Law No.115-123)として成立した。2018会計年度の歳出予算については、2017年12月8日までを対象とした継続歳出法(H.R.601、Public Law No.115-56)が2017年9月8日に成立し、その後、2017年12月8日に成立した継続予算決議(CR)、2017年12月22日に成立した継続歳出法(H.R.1370、Public Law No.115-96)、及び2018年1月22日に成立した継続歳出延長法(H.R.195、Public Law No.115-120)によって継続予算の期限が2018年2月8日まで延長されていたが、今回成立した「2018会計年度の継続歳出追加延長法」(Public Law No.115-123)は、この継続予算の期限を2018年3月23日までさらに延長するものとなっている。

なお、2018会計年度歳出予算については、2018年2月8日までとなっていた期限内に予算が成立しなかったため、連邦政府機関の一部は数時間ながら閉鎖される状態となっていた。

今回可決された「2018会計年度の継続歳出追加延長法」では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、使用済燃料の中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定はない。

【出典】

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【2018年3月27日追記】

米国の連邦議会は2018年3月23日に、2018会計年度11 包括歳出法案(H.R.1625)を可決し、同日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.115-141)として成立した。これまで2018会計年度の歳出予算については、2017年12月8日までを対象とした継続歳出法(H.R.601、Public Law No.115-56)が2017年9月8日に成立し、その後、数次にわたる期限の延長を経て、2018年3月23日までを期限とする継続予算が執行されていた。

高レベル放射性廃棄物関連の予算については、2018会計年度包括歳出法の条文には規定されていないが、2018会計年度包括歳出法案説明文書において、「使用済燃料処分等プログラム」(UNFDプログラム)の歳出予算として、2017会計年度歳出予算から微増の86,415千ドル(約97億6,490万円、1ドル=113円で換算)が計上されている。UNFDプログラムの予算の内訳も2017会計年度歳出予算と同様であり、「研究開発活動」が63,915千ドル(約72億2,220万円)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)が22,500千ドル(約25億4,250万円)の歳出予算とされているが、IWMSに対して国防勘定の歳出予算は認められていない。

一方、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書について、トランプ政権は、審査手続を再開させる方針を示していた。しかし、トランプ政権の決定を実施に移すものとして、エネルギー省(DOE)の予算において120,000千ドル(約136億円)が計上された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムについては、今回制定された2018会計年度包括歳出法では予算が計上されなかった。ユッカマウンテン許認可審査手続の再開については、原子力規制委員会(NRC)も30,000千ドル(約33億9,000万円)の予算を要求していたが、2018会計年度包括歳出法では予算が計上されなかった。

2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、換気システムの建設に係る予算などがDOE予算要求比で増額されており、2017会計年度の歳出予算を3割近く上回るものとして、376,571千ドル(約425億5,250万円)の予算が計上されている。

なお、今回成立した2018会計年度包括歳出法については、ネバダ州選出の連邦議会議員から、ユッカマウンテン処分場関連の歳出予算の計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが出されている。また、DOEからも、2018会計年度包括歳出法の成立を歓迎するプレスリリースが出されているが、高レベル放射性廃棄物管理関連の言及はなかった。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  3. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  4. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  5. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  6. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  7. なお、上院では本会議での歳出法案の審議は進んでおらず、上院版の歳出法案を審議・可決することなく下院との調整が行われる可能性もある。 []
  8. H.R.1370は、元々は2002年国土安全保障法を改正するための法案であったが、継続歳出法の成立に向けて内容が置き換えられ、第A編(Division A)が「2018会計年度のさらなる追加の継続歳出法」とされている。ここでは簡略化のため、H.R.1370を継続歳出法として記載している。 []
  9. H.R.195は、元々は連邦官報の印刷物の無償配布を制限する法案であったが、継続歳出法の成立に向けて内容が追加され、第B編(Division B)が「2018会計年度の継続歳出延長法」とされている。ここでは簡略化のため、H.R.195を2018会計年度の継続歳出延長法として記載している。 []
  10. H.R.1892は、元々は殉職警官等への半旗掲揚などに関する法案であったが、継続歳出法等の成立に向けて内容が追加され、第B編の一部(Division B Subdivision 3)が「2018会計年度の継続歳出追加延長法」とされている。ここでは簡略化のため、H.R.1892を継続歳出追加延長法として記載している。 []
  11. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  12. H.R.1625は、元々は人身売買根絶に関連した法案であったが、包括歳出法成立に向けて内容が置き換えられた。 []

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2017年4月19日付けのプレスリリースにおいて、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」に係るヒアリングを実施することを伝えるとともに、法案の討議用ドラフトを公表した。2017年放射性廃棄物政策修正法案は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)を修正するものであり、同プレスリリースでは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分に係る連邦政府の義務の履行を確実にするため、米国の放射性廃棄物管理政策の現実的な改革を行うものであるとしている。また、今回公表した法案の討議用ドラフトは、放射性廃棄物管理政策の改革について、ステークホルダーからのフィードバックを促進するものであるとしている。

2017年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトにおける法案の構成及び主要条文タイトルは、以下の通りとなっている。

第I章 監視付き回収可能貯蔵1
監視付き回収可能貯蔵(第101条)、権限と優先度(第102条)、協力協定の条件(第103条)、サイト選定(第105条)、便益協定(第106条)、許認可(第107条)

第Ⅱ章 永久的な処分場
土地収用・管轄権・保留地(第201条)、水利権(第202条)、申請手続とインフラ活動(第203条)、申請中の処分場許認可申請(第204条)、軍事廃棄物専用処分場開発の制限(第205条)、輸送経路に関する連邦議会意見(第206条)

第Ⅲ章 エネルギー省(DOE)の契約履行
物質[使用済燃料]の所有権

第Ⅳ章 立地自治体に対する便益
同意(第401条)、協定の内容(第402条)、対象となる地方政府(第403条)、使用済燃料処分(第406条)、更新レポート(第407条)

第Ⅴ章 資金
見積り及び拠出金の徴収(第501条)、放射性廃棄物基金の使用(第502条)、一定金額の利用可能性(第503条)

第Ⅵ章 その他
基準(第601条)、民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)(第602条)

下院エネルギー・商務委員会のプレスリリースでは、法案の討議用ドラフトにおける提案は、過去6年間に亘る数多くのヒアリング記録等に基づいて綿密に策定されたものであるとしている。主要な規定として、具体的には以下のようなポイントが含まれている。

  • 中間貯蔵
    第Ⅰ章の監視付き回収可能貯蔵(MRS)は、使用済燃料の中間貯蔵施設プログラムについて規定するものであり、ユッカマウンテン処分場の建設に係る許認可申請に対する原子力規制委員会(NRC)による決定が行われることを条件として、民間事業者との協力契約の締結を含む中間貯蔵の実施権限などを、エネルギー長官に認める規定などが置かれている2
    また、第Ⅲ章では、中間貯蔵を目的としてエネルギー長官が民間の使用済燃料を引取り、所有権を取得する権限を認める規定が置かれている。
  • 処分場プログラム
    水利権に係る州の差別的対応を禁止し、エネルギー長官による水利権取得を認める規定、処分場建設に必要な土地の収用を認める規定などが置かれている3
    また、ネバダ州がラスベガス近郊における使用済燃料輸送について懸念を示していることから、エネルギー長官は可能な限りラスベガスを回避する輸送経路を検討すべきであるとの連邦議会意見も規定されている。
  • 立地地域への便益
    便益の提供を受けることは処分場立地への同意を意味しないとして、処分場計画に反対する州も便益提供の対象とすること(ただし、訴訟費用等への充当は制限)、エネルギー長官は、州のみでなく地方政府とも便益協定を締結することを認めること、放射性廃棄物政策法に規定された以外の便益協定を締結可能とすることなど、放射性廃棄物政策法における便益提供の枠組みを修正する規定が置かれている。
  • 資金
    放射性廃棄物基金からの支出については、各年度の連邦政府の歳出法における承認が必要とされているが、ユッカマウンテンサイトにおける使用済燃料等の受入れ開始後は、処分事業進捗の段階に応じて一定金額を歳出法による承認なしに使用可能とする規定が置かれている。

今回の2017年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトの公表に対して、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡は、同法案がネバダ州の懸念点の多くに対応するものであることを評価し、ネバダ州は検討手続に参加すべきであるなどとして、連邦議会の動きを歓迎する声明を出している。

一方、ナイ郡を選挙区に含むキヒューエン下院議員は、2017年9月19日付けのプレスリリースにおいて、ヒアリングへの参加要求をエネルギー・商務委員会に送付したことを公表するとともに、ネバダ州の代表者が参加しない委員会で審議検討を進めることは不適切であるとの見解を表明している。

【出典】

 

【2017年4月25日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は2017年4月24日に、同委員会ウェブサイトの「2017年放射性廃棄物政策修正法案」に係るヒアリングのページにおいて、2017年4月26日に実施が予定されているヒアリングでの証言者のリストとともに、本ヒアリングに係る背景メモを公表した。

「2017年放射性廃棄物政策修正法案」に係るヒアリングは2部構成で行われ、第1部ではネバダ州及びサウスカロライナ州4 選出の連邦議会議員が、また、第2部では各分野のステークホルダー組織、及びエネルギー省(DOE)民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)の元局長が、それぞれ証言者として予定されている。

また、今回公表された背景メモでは、放射性廃棄物管理に係る背景・経緯に係る情報とともに、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフトの逐条解説が示されているほか、本ヒアリングで検証する問題点として以下の5点が示されている。

  • 「2017年放射性廃棄物政策修正法案」討議用ドラフトの条項
  • 処分場に関する許認可と要件
  • 監視付き回収可能貯蔵(MRS)の承認、及び中間貯蔵プログラムを実施するためのDOEの契約上の仕組み
  • MRS、または処分場の立地州・自治体等とのパートナーシップの可能性
  • DOEサイトの環境修復を迅速化する取組

なお、今回開催されるヒアリングに対してネバダ州知事は、2017年4月21日付けのプレスリリースにおいて、ヒアリングを主宰するエネルギー・商務委員会の委員長及び少数党最上席議員に宛ての書簡を公表した。今回のネバダ州知事の書簡では、ユッカマウンテンにおける処分場建設に対して強く一貫して反対を行うこと、あらゆる手段を用いてプロジェクトを阻止する意向であることが示されている。また、ヒアリングに参加するネバダ州選出議員からもプレスリリースが出されており、ヒアリングへの参加が認められたことは評価しつつも、ユッカマウンテン計画に対するネバダ州民の反対は強固であることなどが訴えられている。

【出典】

 

【2017年4月27日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2017年4月26日に、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」に係るヒアリングを実施した。これを受けてエネルギー・商務委員会は、2017年4月26日付けのプレスリリースにおいて、本ヒアリングにおける証言者の証言等を伝えている。また、エネルギー・商務委員会ウェブサイトのヒアリングのページでは、証言者の証言書、委員長等の冒頭声明書、その他のヒアリング提出文書とともに、ヒアリングの様子を伝えるビデオが公開されている。なお、本ヒアリングで証言を行ったネバダ州選出の下院議員3名からは、再度、反対の意向を示したプレスリリースが出されている。

一方、ネバダ州知事は、本ヒアリングが実施された2017年4月26日にプレスリリースを発出しており、エネルギー長官を訪問して以下の事項について意見交換したことを公表した。

  • ユッカマウンテン計画への反対を改めて表明し、放射性廃棄物問題に対する現実的で安全な代替策の検討を要求した。
  • コミュニケーション強化のためにネバダ州とエネルギー省(DOE)のワーキンググループを再確立する必要性を議論した。
  • ネバダ国家セキュリティサイト(ユッカマウンテンの立地サイト)における研究開発任務強化の重要性を議論した。
  • DOEとネバダ州高等教育組織とのパートナーシップ強化に向けた両者の要望について議論した。
  • DOEのネバダ州に貯蔵されている低レベル放射性廃棄物の厳重な監督継続に係るネバダ州の要望を議論した。
  • サイバーセキュリティの重視と州・DOEの協力方法を議論した。

なお、下院エネルギー・商務委員会の2017年4月26日付けのプレスリリースでは、2017年3月20日に同委員会からエネルギー長官に宛てた書簡に対して、エネルギー長官が発出した返書を掲載している。この中で、ユッカマウンテン処分場の建設に係る許認可手続再開の重要性については、2017年3月27日のユッカマウンテン視察時により明確となったとして、連邦議会と協力して短・長期の取組の前進を図りたいとするエネルギー長官の意向は示されているものの、2017年3月20日付けのエネルギー・商務委員会の書簡で示された具体的な政策への言及はない。

【出典】

 

【2017年5月19日追記】

米国ネバダ州の州議会は2017年5月17日に、ネバダ州のユッカマウンテンにおける使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「使用済燃料等」という。)処分場の開発に反対を表明する合同決議を可決した。本合同決議案は、2017年3月に同州議会下院に提出され、下院では2017年4月21日に32対6で、上院では2017年5月17日に19対2の賛成多数で可決されていた。

今回ネバダ州議会で採択された合同決議は、ユッカマウンテンにおける処分場開発に対して改めて反対を表明した上で、以下について、上下両院が合同で決議を行ったものである。

  • ネバダ州議会は、ユッカマウンテン処分場計画の復活を図る連邦議会における動きに最大限の抗議(protest)を行う。
  • ネバダ州において使用済燃料等の貯蔵施設、処分施設の立地を図る法案には、拒否権を発動するよう大統領に要求する。
  • ユッカマウンテン処分場は不適切(unsuitable)であることを確認し、ユッカマウンテンにおける処分場立地の検討を断念し、革新的で成功を収めるような戦略を米国が再び取り組むプロセスを開始するようエネルギー長官に要求する。
  • ユッカマウンテンにおける処分場開発、及びネバダ州内での使用済燃料等の貯蔵や処分に対するネバダ州議会の強い反対を改めて公式に表明する。
  • 本合同決議の写しを、大統領、連邦議会上下両院議長5 、エネルギー長官、及びネバダ州選出の連邦議会議員に送付する。
  • 本決議は可決と同時に発効し、ネバダ州議会の公式見解となる。

【出典】

 

【2017年6月19日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会環境小委員会は2017年6月15日に、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」の審議検討を行う会合(以下「法案策定会合」という。)を開催した。エネルギー・商務委員会の法案策定会合に係るウェブサイトでは、法案のドラフト、修正案、背景メモ、付属資料、委員長等の冒頭声明書などとともに、法案策定会合の様子を伝えるビデオが公開されている。エネルギー・商務委員会が2017年6月15日に公表したプレスリリースでは、環境小委員会の法案策定会合において、2017年放射性廃棄物政策修正法案のドラフトを満場一致で承認しており、今後、エネルギー・商務委員会の本委員会に送られるとしている。

今回の法案策定会合で検討が行われた2017年放射性廃棄物政策修正法案のドラフトは、2017年4月19日に公表された討議用ドラフトから大きな変更は行われていないが、中間貯蔵施設関連、許認可審査関連、便益協定関連、処分基準関連などで軽微な字句修正が行われている。

なお、本法案に係るヒアリングでの証言や書簡を通して反対の意を表明していたネバダ州選出の連邦議会議員からは、改めて法案に対して反対の意向を示したプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2017年6月29日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2017年6月28日に、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053)を含む8法案の検討・策定を行う会合(以下「法案策定会合」という。)を開催した。エネルギー・商務委員会ウェブサイトの法案策定会合のページでは、各法案及び修正案、背景メモ、委員長の冒頭声明書などとともに、法案策定会合の様子を伝えるビデオが公開されている。

2017年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.3053)については、4本の修正案が承認され、これら修正案を反映した法案が49対4の賛成多数で承認された。

今回の法案策定会合で承認された2017年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.3053)に係る修正事項の多くは、2017年6月15日に開催されたエネルギー・商務委員会環境小委員会における法案策定会合で示された懸念に対応したものとなっている。今回承認された法案の主な修正点は、以下のとおりである。

  • 監視付回収可能貯蔵(MRS)施設の開発について、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請に対する原子力規制委員会(NRC)の決定が行われる前段階においても、エネルギー長官が1件のMRS協力協定を締結することを認める
    • 2020~2025会計年度6 におけるMRSプログラムの歳出予算を承認
    • 最初のMRS施設では、廃止措置済みの原子力発電所からの使用済燃料の受入れを優先
    • ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請に対するNRCによる決定時期が迫るまでは貯蔵の開始は認められない
  • ユッカマウンテン処分場における水利権や大気質に係るネバダ州の許認可事項について、許認可取得を規定していた条項を削除
  • 第2処分場が操業を開始するまでのユッカマウンテン処分場における処分容量制限を撤廃するとした条項を廃止し、同時点までの処分容量上限を7万トンから11万トンに変更7
  • 五大湖近傍での放射性廃棄物処分及び長期貯蔵に対する連邦議会の反対意思を表明する条項を追加
  • 高レベル放射性廃棄物の海洋処分(ocean water disposal)及び海洋底下処分(subseabed disposal)を禁止する条項を追加し、海洋底下処分の評価等について規定した1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)の規定(第224条)を削除

なお、本法案に係るヒアリングでの証言や書簡を通して反対を表明していたネバダ州選出の連邦議会議員からは、改めて反対の意向を示したプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2017年10月25日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は2017年10月19日に、2017年6月28日に開催した「2017年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053)を含む8法案の検討・策定を行う会合(以下「法案策定会合」という。)において承認された修正等を反映した法案とともに、本法案に付随する委員会報告書(H.Rept.115-355)を下院本会議に報告した。「2017年放射性廃棄物政策修正法案」は、エネルギー・商務委員会の他に下院軍事委員会及び下院天然資源委員会にも付託されていたが、両委員会ともにさらなる審議は行わないことを公式に表明しており、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」の下院本会議における審議・採決の準備が整ったことになる。

2017年10月24日に連邦議会資料室ウェブサイトで公表された委員会報告書(H.Rept.115-355)では、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」の条文に続いて、法案の目的・概要、背景・経緯、手続経過、連邦議会予算局(CBO)によるコスト評価8 、逐条解説、1982年放射性廃棄物政策法など現行法の改正状況の整理などが示されている。

なお、下院軍事委員会に所属するネバダ州選出の連邦議会議員は、ユッカマウンテン処分場への輸送経路が空軍訓練等に影響するなどとして、「2017年放射性廃棄物政策修正法案」に反対するよう下院軍事委員会に申し入れている。

【出典】

 

【2018年5月11日追記】

米国の連邦議会下院は2018年5月10日に、「2018年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053)を340対72で可決した。本法案(H.R.3053)は、2017年6月26日にエネルギー・商務委員会環境小委員会の委員長であるシムカス議員によって「2017年放射性廃棄物政策修正法案」として提出され、2017年10月19日にエネルギー・商務委員会で承認した上で下院本会議に報告されていた。

「2018年放射性廃棄物政策修正法案」は、2018年5月10日の下院本会議審議に向けて、「2017年」を「2018年」に変更するなどの事務的な修正に加え、資金関連の条項などの修正を加える形で下院本会議に報告された。2017年10月19日に下院本会議に報告された法案では、ユッカマウンテンサイトにおける使用済燃料等の受入れ開始後は、処分事業進捗の段階に応じて一定金額を歳出法による承認なしに使用可能とされていたが、本規定は削除されている。したがって、今後も放射性廃棄物基金からの支出には毎年の歳出法による承認が必要となるが、本法案の成立後に放射性廃棄物基金に払い込まれる拠出金収入は、同基金からの支出を相殺する収入として扱う形に変更する規定が置かれている9

2018年5月10日に行われた下院本会議の審議では、民主党議員から提出された3本の修正案が審議された。このうち、放射性廃棄物基金の財務報告の公表、閉鎖された原子力施設の立地自治体への連邦政府による支援可能性の報告などをエネルギー長官に命じる修正案2本は可決されたが、処分場立地決定には同意に基づくサイト選定が必要とするネバダ州選出のタイタス議員から提出された修正案は、80対332で否決された。

なお、「2018年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053)の下院本会議審議の規則について決定した下院議事運営委員会には、全部で17本の修正案が提出されていたが、下院本会議の審議が認められたのは上記の3修正案のみである。ネバダ州選出議員の提出によるものとしては、ユッカマウンテンプロジェクトの実質的阻止を図る修正案がローセン議員・キヒューエン議員から提出されていたが、アモデイ議員からは、ネバダ州での原子力研究開発、高速道路新設、再処理等の原子力施設その他連邦プロジェクトの検討などを求める修正案が提出されていた。

「2018年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053)の下院本会議での審議の決定、及び可決に対して、ネバダ州知事及びネバダ州選出議員からは、ユッカマウンテンプロジェクトに対する反対の意を改めて示し、今後も戦い続けていくことなどを表明するプレスリリースが出されている。一方、原子力エネルギー協会(NEI)は、今回の連邦議会下院における超党派支持による法案可決は、長く続いてきた問題を解決するための必要な一歩であるなどとして歓迎するプレスリリースを出している。

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが、安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。 []
  2. 中間貯蔵については、これまで連邦議会上院の歳出法案等において、中間貯蔵の早期実施のための規定が盛り込まれていたが、下院の歳出法案ではユッカマウンテン計画の実施が最優先として、中間貯蔵施設開発に係る予算要求を認めていなかった。 []
  3. また、ネバダ州ユッカマウンテンにおける処分場開発については、NRCが策定した安全性評価報告(SER)において、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係るDOEの許認可申請書は、土地の所有権及び水利権に関する要求事項 を除いては、NRCの連邦規則の要求事項を満足しているとの結論が示されていた。 []
  4. サウスカロライナ州では、4カ所の商業用原子力発電所のほか、DOE保有の高レベル放射性廃棄物等が貯蔵されているサバンナリバー・サイトが立地している。 []
  5. 上院は副大統領 []
  6. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、例えば2020会計年度は2019年10月1日からの1年間となる。 []
  7. 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)では、第114条(d)項において、原子力規制委員会(NRC)による第1処分場に対する許可では、第2処分場が操業を開始するまでは7万トンを超える量の使用済燃料等の処分は禁止されることが規定されている。 []
  8. 議会予算局(CBO)が「2017年放射性廃棄物政策修正法案」制定による財政への影響等を評価したものであり、本法案に規定された地元支援等で2億6,000千ドル(約290億円、1ドル=113円で換算)の支出増が見込まれるものの、今後10年間における政府財政に大きな影響を与えるものではないなどとの評価が、2017年10月4日付で公表されていた。 []
  9. 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)では、放射性廃棄物基金に払い込まれる拠出金収入の予算上の扱いについての規定はなく、予算上は一般歳入の一部としてカウントされてきた []

米国のホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)は、2017年4月6日付のハイライト情報において、ニューメキシコ州のカールスバッド市近傍の自治体で構成されるエディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)サイトにおける使用済燃料の中間貯蔵施設について、2017年3月31日に原子力規制委員会(NRC)へ建設に係る許認可申請書を提出したことに関する記者会見のビデオを公表した。

ホルテック社は、2015年8月3日に、許認可申請の意向通知をNRCに提出してNRCとの事前協議を進めてきたほか、採用する地下貯蔵方式のHI-STORM UMAX(Holtec International STORage Module Underground MAXimum securityの頭字語)システムについて、米国で使用中のすべての乾式貯蔵キャスクの受入れ・貯蔵が可能となるよう、適合承認(CoC)の変更申請を2016年8月30日にNRCに提出している

ホルテック社が許認可申請書を提出した中間貯蔵施設は、HI-STORE CIS(CISは集中中間貯蔵施設(Central Interim Storage)の略)と呼ばれ、HI-STORM UMAXシステムにより、ELEAサイトの最大貯蔵容量である10,000基の乾式貯蔵キャスクが貯蔵された状態でも、環境放射線量は実質的にゼロで無視できるレベルであるとしている。また、ホルテック社は、今回の許認可申請では、同様な貯蔵システムを採用して許認可までを取得し、中止された民間燃料貯蔵(PFS)社の集中中間貯蔵施設の計画において、許認可申請書の審査を通じて得られた10,000年間での再来地震(return earthquake)等の知見が活かされているとしている。さらに、ホルテック社の貯蔵システムは、ウクライナのエネルゴアトム社による集中中間貯蔵施設でも採用されているとしている。

なお、ホルテック社は、今回の許認可申請書の提出に際し、ニューメキシコ州、ELEAを構成するエディー郡、リー郡、カールスバッド市及びホッブズ市など地元自治体等の支持に感謝を示すとともに、エネルギー省(DOE)が民間による中間貯蔵施設の開発の動きを支持する姿勢を見せていることを評価するとの見解を示している。

【出典】

 

【2017年5月25日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)が計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、2017年3月31日にNRCが受領した建設・操業に係る許認可申請書を公開した。本許認可申請書は、初期分として5,000トンの使用済燃料の40年間の貯蔵について、NRCの連邦規則10 CFR Part 72「使用済燃料、高レベル放射性廃棄物及び原子炉関連のクラスCを超える廃棄物の独立貯蔵の許認可要件」に基づく許認可の発給を求めて申請されたものである。

ホルテック社の許認可申請に係るNRCのウェブサイトでは、下記の許認可申請書などが公表されている。

  • 許認可申請書の提出書簡
  • 安全解析書(SAR)
  • 環境報告書
  • 許認可付帯条件案

ホルテック社が建設・操業を申請した中間貯蔵施設は、HI-STORE CIS(CISは集中中間貯蔵施設(Central Interim Storage)の略)と呼ばれるものであり、地下貯蔵方式のHI-STORM UMAX(Holtec International STORage Module Underground MAXimum securityの頭字語)システムが採用されており、安全解析書(SAR)においては既にNRCが承認済みのHI-STORM UMAXシステムが参照されている。ホルテック社は、HI-STORM UMAXシステムについて、米国で貯蔵されているすべての乾式貯蔵キャスクの受入れ・貯蔵が可能となるよう、適合承認(CoC)の変更申請を2016年8月にNRCへ提出している

ホルテック社の環境報告書では、最終的に想定される10万トンの使用済燃料の貯蔵に係る環境影響等が評価されている。また、中間貯蔵施設の建設については、20段階に分けて20年間で進める予定が示されている。なお、ホルテック社の環境報告書及び安全解析書(SAR)では、想定するスケジュールとして、2019年 3月に許認可申請書をNRCが承認し、2022年6月に建設が完了して使用済燃料の受入を開始することが示されている。

【出典】

 

【2017年7月11日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、2017年3月31日にNRCへ提出した建設・操業に係る許認可申請書に関する情報の十分性を確認する受理審査を実施した。その結果、技術的情報等が十分に示されていないとして、2017年7月7日付けのNRCの書簡及び添付書類において、ホルテック社に対する補足情報要求(RSI)等が示された。

NRCは、補足情報要求(RSI)への対応の期限を書簡の日付けから28暦日としており、対応ができない場合は2週間以内にNRCに通知することを求めている。NRCは、補足情報要求(RSI)へ十分に対応できない場合、許認可申請書を受理しない可能性もあるとしている。

なお、NRCは、補足情報要求(RSI)に加えて、許認可申請書の受理審査を通じた所見(Observations)として課題・問題点も示している。所見については、許認可申請書の受理のために必要となる補足情報要求(RSI)をする段階には達していなが、許認可申請書が受理された後に、さらなる明確化を要求する場合があるとしている。

【出典】

 

【2017年9月26日追記】

原子力規制委員会(NRC)は2017年9月25日に、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、許認可申請書に対する補足情報要求(RSI)に関して行われた2017年8月21日の公開ミーティングの議事要旨を公開した。

2017年7月7日付けのNRCの補足情報要求(RSI)では、RSI通知書簡の日付から28暦日以内の情報提出がホルテック社に要求されていた。ホルテック社は、2017年7月21日にNRCへ提出した対応計画において、ほとんどの項目については2017年10月6日までに、残る3項目については2017年12月22日までに補足情報を提出する予定を示していた。2017年8月21日に行われた公開ミーティングでは、NRCの補足情報要求(RSI)への対応計画等についてホルテック社から説明が行われ、その後、NRCとの質疑応答が行われている。

【出典】

 

【2018年3月1日追記】

原子力規制委員会(NRC)は2018年2月28日に、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、許認可申請書の審査に十分な情報が含まれていることが確認されたとして、正式な受理に関する書簡を発出した。ホルテック社が2017年3月31日に提出した許認可申請書については、NRCから2017年7月に補足情報要求(RFI)が出されており、ホルテック社は2017年12月までにRFIへの対応を行ってきた。

NRCがホルテック社に宛てた受理に関する書簡では、NRCは安全性・セキュリティ・環境の審査を行うスケジュールを設定し、追加情報要求(RAI)を2018年3月から2018年8月までの間に行うこと、必要に応じて、さらなるRAIを2019年2月から行う可能性があること、RAIへの対応が高品質で遅滞なく行われるとの前提で、2020年7月には安全性・セキュリティ・環境の審査を完了する見込みであることが示されている。なお、NRCは近く、審査プロセスに関する詳細などについて協議するため、公開ミーティングを開催する予定としている。

なお、テキサス州で使用済燃料の中間貯蔵施設を計画しているウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社の許認可申請書の審査については、WCS社が2017年4月18日付の書簡で審査手続の一時停止を要請したことを受けて、現在も停止された状態が続いている。WCS社が許認可審査停止要請の理由として挙げたエナジーソリューションズ社によるWCS社の買収は、独占禁止法に抵触するとの判決を受けて断念されたが、WCS社の親会社のヴァルヒ社は2018年1月26日に、WCS社をJ.F.リーマン社グループに売却したことを公表している。2018年2月末現在、WCS社の中間貯蔵施設の許認可審査については、新たな情報はWCS社などから公表されていない。

【出典】

 

【2018年4月2日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2018年3月30日付けの連邦官報において、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、環境影響評価(EIS)の準備の実施、EISのスコーピング手続によるパブリックコメントの募集、パブリックミーティング等の開催に関する告示を行った。このうち、パブリックコメントの募集期限については、2018年5月29日までとされている。

スコーピング手続でのパブリックミーティング及びオープンハウスの開催についてNRCは、以下のとおり、計画している中間貯蔵施設サイトの近郊及びNRC本部において開催する日程を2018年3月30日に公表している。

  • スコーピングミーティング
    • 2018年4月25日:メリーランド州NRC本部
    • 2018年5月 1日:ニューメキシコ州ホッブス市
    • 2018年5月 3日:ニューメキシコ州カールスバッド市
  • オープンハウス
    • 2018年4月30日:ニューメキシコ州ロズウェル市

【出典】

 

【2018年5月14日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2018年5月11日付けのニュースリリースにおいて、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設について、環境影響評価(EIS)のスコーピングに係るパブリックミーティングを追加で2回開催するとともに、一般からの要求に基づいてパブリックコメントの募集期限を2018年7月30日まで(当初は2018年5月29日まで)の約2カ月間延長することを公表した。

追加で実施されるパブリックミーティングは、以下で開催される予定となっている。

  • 2018年5月21日:ニューメキシコ州ギャラップ市
  • 2018年5月22日:ニューメキシコ州アルバカーキ市

【出典】

 

【2018年7月19日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2018年7月18日付けのニュースリリースにおいて、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)によるニューメキシコ州リー郡での使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書について、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催要求及びヒアリングへの当事者としての参加申立ての受付を開始したことを公表した。ヒアリングの開催要求及び参加申立てについては、2018年7月16日付けの連邦官報で告示されており、提出期限は2018年9月14日とされている。

ホルテック社は、2017年3月30日付けで中間貯蔵施設の許認可申請書をNRCに提出しており、ニューメキシコ州のカールスバッド市とホッブズ市の中間に位置する中間貯蔵施設において、当初は500基、最終的には10,000基の乾式貯蔵キャスクで使用済燃料を貯蔵する計画である。NRCは、2018年2月28日に許認可申請書を公式に受理し、2018年3月30日には環境審査を開始しており、2018年7月30日までの期限で環境影響評価(EIS)のスコーピングに係るパブリックコメントを募集している。

ヒアリングの開催要求及び参加申立てが認められた場合には、NRCの原子力安全・許認可委員会パネル(ASLBP)から選定される3人の行政判事により、裁判形式の裁決手続によるヒアリング手続が実施される。ヒアリングでは、ホルテック社の許認可申請書に示された事実または法的問題について、争点を提起することができる。

【出典】

 

【2019年5月9日追記】

原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は2019年5月7日に、ホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)がニューメキシコ州で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書について、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催要求をすべて否認することを決定した。ヒアリングの開催要求及び参加申立てについては、2018年7月16日付けの連邦官報で告示された後、6件の開催要求及び参加申立てが提出されていた。ASLBはNRCから独立した行政判事団であり、参加申立てを行った者は、NRCの委員会に対して、ASLBの決定に関する不服申立てを行うことができる。

今回の決定でASLBは、2つの環境団体と地域の採鉱事業者については「当事者の適格性(standing)」を認めたが、市民グループ連合、及びキャスク供給事業者(ナック・インターナショナル社)については当事者の適格性を否認した。ヒアリングの開催要求では、全部で50件近い争点が提出されていたが、ASLBは、当事者の適格性を認めた者から提出されたものも含め、ホルテック社の許認可申請書に対する「真正な争点(genuine dispute)」が確立されておらず、すべて争点としては認められないとの決定を下している。

【出典】

 

【2019年7月5日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2019年7月1日付けのホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)宛の書簡において、ホルテック社によるニューメキシコ州での使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請について、審査スケジュールを改定したことを通知した。NRCの書簡では、これまで2020年7月と見込まれていた安全性・セキュリティ・環境の審査の完了が、2021年3月に先送りになるとのスケジュールが示されている。

NRCは、今回の審査スケジュールの改定は、NRCによる追加情報要求(RAI)の発行、及びホルテック社によるRAIへの回答の時間を考慮したものとしている。また、改定前のスケジュールと同様に、改定したスケジュールでも、ホルテック社がRAIに対する回答を高い品質で60日以内に行うことを前提としており、ホルテック社の回答の品質や提出の遅れがNRCでの審査の遅延につながる可能性もあるとしている。

なお、ホルテック社の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書の審査については、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)が2019年5月7日に、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催要求をすべて否認していたが、ヒアリング開催を要求した環境団体等は、NRCの委員会に不服申立てを行っている。

当初、ホルテック社による中間貯蔵施設の建設は、州が歓迎するものとなっていたが、2019年6月7日にニューメキシコ州知事が反対を表明する書簡をエネルギー長官とNRCの委員長に送付したほか、州当局や同州選出連邦議会議員の一部も反対を表明している。なお、ホルテック社の中間貯蔵施設は、ニューメキシコ州南東部のエディ郡、リー郡、カールスバッド市及びホッブズ市の4自治体から構成されるエディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)のサイトでの建設を計画するものであり、ELEAを構成する4自治体の支持に加え、ニューメキシコ州の前知事も同計画を支持する書簡をエネルギー長官に送付するなどしていた

【出典】

米国で2018会計年度1 の大統領予算教書に係る予算方針を示した文書(以下「予算方針文書」という。)が、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表され、エネルギー省(DOE)の予算として、ユッカマウンテン処分場に係る許認可活動の再開及び中間貯蔵プログラムの開始のために1億2,000万ドル(約125億円、1ドル=104円で換算)が計上されている。ユッカマウンテン処分場の許認可手続については、2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決 により原子力規制委員会(NRC)における許認可申請書の審査の再開が命じられたものの、連邦議会はNRCによる許認可手続の予算を計上せず、過年度の残予算の範囲内で安全審査等の活動が実施されたが、許認可発給のための裁判形式の裁決手続は再開されていなかった

2018会計年度の予算方針文書では、これらの投資は、放射性廃棄物に対する連邦政府の義務の履行を加速し、国家安全保障を強化し、将来の税負担を軽減するものとしている。なお、今回公表された予算方針文書では、主な省庁のみが対象とされており、原子力規制委員会(NRC)の予算は示されていない。DOE全体の予算については、約5.6%の削減要求となっている。また、大統領府予算管理局(OMB)からは、2017会計年度の予算において軍事費を増額して他の一般歳出を削減する修正要求も公表されているが、軍事費以外の詳細については示されていない。

予算方針文書の公表についてDOEは、エネルギー長官の声明がニュースリリースとして公表されているが、放射性廃棄物関連を含め、具体的な内容についての言及はない。また、連邦議会上下両院の歳出委員会の委員長からもプレスリリースが出されているが、予算要求の内容についての具体的な言及はない。

ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州選出の連邦議会議員からは、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。一方、原子力エネルギー協会(NEI)は、DOEの研究開発費の削減には懸念を示しながらも、ユッカマウンテン処分場の許認可活動の再開と中間貯蔵プログラムの両者に予算要求が行われたことについて歓迎することを趣旨とするニュースリリースを出している。

なお、テキサス州は2017年3月14日に、連邦政府は1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に定められた高レベル放射性廃棄物処分に係る義務を果たしておらず、同意に基づくサイト選定プロセスの取組などは同法に違反しているなどとして、連邦政府を相手取った訴訟を起こしている。テキサス州の訴状では、違法性の確認などとともに、DOE及びNRCがユッカマウンテン処分場に係る許認可手続の予算を要求すること、許認可申請書の審査の再開を命じることを旨とする判決が出されることを求めている。

【出典】

 

【2017年3月22日追記】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会及び同環境小委員会の委員長は、連名での2017年3月20日付け書簡において、今回就任したエネルギー長官に対して、大統領予算教書に係る予算方針においてユッカマウンテン処分場の許認可手続再開のための予算が含められていることを評価する旨を表明した。また、エネルギー省(DOE)の放射性廃棄物管理政策について、以下の事項を要請した。

  • 法律で要求されているOCRWMの再設置
    1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)(以下「放射性廃棄物政策法」という。)では、エネルギー長官に対して直接的に責任を負う民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)について、同法による高レベル放射性廃棄物処分プログラムの実施に係る組織として設置する旨が規定されており、放射性廃棄物管理政策の実施には専門的に設置された機関が必要である。
  • 軍事起源廃棄物の独立した処分に係る2015年決定の見直し
    軍事起源の高レベル放射性廃棄物 (以下「軍事起源廃棄物」という。)の処分については、1985年の大統領決定を受けて、既に37億ドル(約3,800億円、1ドル=104円で換算)の税金を使用してユッカマウンテン処分場の開発を行ってきており、軍事起源廃棄物の独立した処分場を開発するのであれば、2015年決定の基となった費用・スケジュールの再評価が必要である。
  • ネバダ州及びナイ郡への資金提供
    放射性廃棄物政策法は、処分場により影響を受ける地方政府の技術的活動を支援するための資金提供を認めており、ネバダ州のステークホルダーとの建設的対話構築の一歩として資金提供を行うことが望ましい。
  • 放射性廃棄物政策法の修正に向けた協働
    DOEが使用済燃料の中間貯蔵施設の開発が必要とするのであれば、処分場での処分という確立された放射性廃棄物管理政策と抵触しない形でプログラムが推進できるよう、放射性廃棄物政策法の修正のために協力することを期待する。
  • 放射性廃棄物基金からの支出の月次報告
    2013年8月13日の連邦控訴裁判所の判決 以降、DOEの放射性廃棄物処分勘定の残高及び支出対象活動の説明に係る月次報告書を要求しており、今後も同様に、放射性廃棄物基金からの支出の詳細な報告を継続するよう要求する。

なお、下院エネルギー・商務委員会では、連邦議会議員とともにユッカマウンテンの視察を計画しており、本書簡ではエネルギー長官の視察参加も呼び掛けている。

【出典】

 

【2017年3月29日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2017年3月27日付のニュースリリースにおいて、ペリー・エネルギー長官がネバダ州のユッカマウンテン処分場予定地を視察し、その後、ネバダ州知事と会談したことについて、エネルギー長官の声明を公表した。この中でエネルギー長官は、大統領は2018会計年度の予算においてユッカマウンテン許認可手続の再開のために1億2,000万ドルを要求しており、今回のネバダ州知事との会談は、様々な連邦、州及び民間のステークホルダーとの対話を含むプロセスの第一歩であるとしている。

公表されたエネルギー長官の声明では、ネバダ州知事とは率直で生産的な対話が行われたこと、ネバダ州知事はエネルギー長官の訪問を評価しつつも、ユッカマウンテン計画への反対を改めて表明したことを伝えている。エネルギー長官は、ネバダ州知事に対し、以前から親交があるネバダ州知事と今後も様々な問題について協議を続けていくこと、ネバダ州が米国の核・軍事産業に果たしてきた貢献への感謝とともに、今後も使用済燃料管理において重要な役割を維持し続ける必要性などを伝え、冷戦初期から米国の安全保障に貢献してきたネバダ州が、今後も主導的な役割を維持することへの期待を示したとしている。

これに対してネバダ州知事は、2017年3月27日付のプレスリリースを発出しており、ネバダ州は連邦政府機関と様々な問題で協力してきているが、ユッカマウンテンにおける処分問題は考慮する意思のない問題であるとして、今回のエネルギー長官との会談はユッカマウンテンに関する交渉の開始ではないことを表明している。また、ネバダ州選出の連邦議会議員数名も、2017年3月27日付のプレスリリースを発出しており、ユッカマウンテン計画には反対する立場を改めて表明している。

 

【出典】

 

【2017年3月31日追記】

米国のネバダ州知事は、2017年3月29日のプレスリリースにおいて、エネルギー長官との会談の後、ユッカマウンテン計画への反対を継続するために州が取るべき行動について、ネバダ州原子力プロジェクト室と協議したことを公表した。本プレスリリースの中で知事は、自身がネバダ州司法長官であった当時にユッカマウンテン問題の訴訟を提起したことなどを示した上で、ネバダ州における高レベル放射性廃棄物処分に係る連邦政府のいかなる取組みに対しても、訴訟を含む手段を尽くして反対することの他、ユッカマウンテン計画を復活させる動きを見直すよう政権に要求し続けることなどを表明している。

【出典】

 

【2017年4月18日追記】

米国のネバダ州知事は、2017年4月13日のプレスリリースにおいて、テキサス州がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)を相手取って、ユッカマウンテン処分場の許認可手続に係る予算を要求することなどを求めた2017年3月14日の訴訟について、訴訟参加の申立てを第5巡回区連邦控訴裁判所に提出したことを公表した。

ネバダ州知事はプレスリリースの中で、テキサス州の訴訟は、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州の力量を著しく削ぐものであるなどとしている。また、ネバダ州知事は、今回のネバダ州の申立ては、今後数週間、数カ月における一連の行動の一歩に過ぎないとしている。

この他、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州の動きとしては、ネバダ州選出のヘラー上院議員も、連邦議会上院歳出委員会の幹部議員に対して、ユッカマウンテン計画に対する予算計上を行わないように求める書簡を提出している。

なお、テキサス州による連邦政府に対する訴訟については、原子力エネルギー協会(NEI)及び原子力事業者7社が2017年4月5日に訴訟参加の申立てを行っている。これは、テキサス州の訴訟において、DOEとの契約に基づいて原子力発電事業者が拠出した放射性廃棄物基金について、処分場開発のために使用されていない状況に関連した救済請求の一部に、不当利得返還などの放射性廃棄物基金の制度破綻に繋がる項目が含まれている点について申立てを行ったものである。

【出典】

 

【2017年6月15日追記】

米国のネバダ州知事は、2017年6月14日付けのプレスリリースにおいて、エネルギー省(DOE)と原子力規制委員会(NRC)とに対してユッカマウンテン処分場の許認可手続に係る予算を要求することなどを求める2017年3月14日のテキサス州による訴訟について、訴訟却下の申立書を第5巡回区連邦控訴裁判所に提出したことを公表した。ネバダ州は、2017年4月12日に本訴訟への参加を求める申立てを行っており、第5巡回区連邦控訴裁判所は2017年5月19日に、これを認める決定を行っていた。

ネバダ州が2017年6月12日に提出した訴訟却下の申立書では、以下に示す理由から、テキサス州による訴えは却下されるべきであるとしている。

  • テキサス州の請求内容は、認められる可能性がない他、第5巡回区連邦控訴裁判所は本件の管轄権を有していない。
  • 予算に関するテキサス州の要求は、司法判断に適さない政治的な問題である。
  • 仮処分を必要とするような現状変更の理由がない。

ネバダ州知事はプレスリリースの中で、テキサス州の訴訟はユッカマウンテン処分場に係る許認可申請に関して、NRCの審査手続の短縮などを求めているが、仮に現政権や連邦議会がユッカマウンテン処分場計画を再開する場合には、NRCの審査手続におけるネバダ州の適正な手続の権利を断固として守り抜くとしている。なお、ネバダ州知事は、訴訟、NRCの審査手続及び法改正を通して、ユッカマウンテン計画に反対するための計画を策定済みであり、テキサス州による訴訟に対する訴訟却下の申立ては、計画された法的闘争の第一歩に過ぎないことを改めて表明している。

【出典】

 

【2018年6月4日追記】

米国の第5巡回区連邦控訴裁判所は2018年6月1日に、連邦政府は1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に定められた高レベル放射性廃棄物処分に係る義務を果たしておらず、同意に基づくサイト選定プロセスの取組などは同法に違反しているとして、エネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)に対してユッカマウンテン処分場の許認可手続に係る予算を要求することなどを求めた2017年3月14日のテキサス州の訴訟について、ネバダ州の訴訟却下の申立てを認め、テキサス州の申立てを却下する決定を行った。

第5巡回区連邦控訴裁判所の決定文書では、テキサス州が違法などとした連邦政府の行為について、DOEによる同意に基づくサイト選定プロセスの取組はDOEの最終決定行為ではないこと、連邦控訴裁判所が第一審となり得るオバマ前政権の決定行為は数年前に行われたものであり、既に訴訟開始の最終期限の180日を過ぎていることなどを示した上で、テキサス州の申立ては適時性(timeliness)や終局性(finality)の訴訟要件を満たしていないために却下されるとしている。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2018会計年度の予算は2017年10月1日からの1年間に対するものである。 []

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2017年1月17日のニュースリリースにおいて、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の操業再開の式典が、エネルギー長官、ニューメキシコ州知事等が列席して2017年1月9日に開催されたことを公表した。WIPPは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されていたが、2016年12月23日に操業再開が決定され、操業再開後の初めてのTRU廃棄物の定置が2017年1月4日に行われていた

エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)の2017年1月17日のニュースリリースでは、WIPPの操業再開について、WIPPを監督するDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)から、以下のような情報が示されている。

  • 操業再開に際しては、DOEの事故調査委員会(AIB)の指摘、ニューメキシコ州環境省(NMED)や国防核施設安全委員会(DNFSB)、環境保護庁(EPA)、労働省鉱山安全保健管理局等の詳細な監督を受けて、多くの改善が行われた。
  • 火災事故の影響による電力供給の回復、安全管理プログラムの改善、施設・装備等の強化、岩盤管理(ground control)、除染など、復旧活動は複雑であり、35カ月という長期を要した。
  • 作業環境が放射能で汚染された環境へ変化するとともに、天井や壁のロックボルト打設などの岩盤管理作業が特に困難な課題となった。
  • 放射能汚染区域は処分施設南側区域の早期閉鎖で約6割が減少したほか、岩塩による放射性核種の吸収等で表面汚染は減少を続けているが、第7パネルが閉鎖されるまで放射能汚染区域は残る見込みである。
  • 廃棄物受入れは徐々に頻度を上げて、2017年後半には週5回程度の受入れを見込んでいるが、以前と同じペースでの廃棄物受入れには、2021年以降に完成予定の新たな排気立坑等による換気能力の強化が必要である。
  • TRU廃棄物の各DOEサイトからの輸送は、2017年春頃の再開を見込んでおり、詳細な予定を策定中である。
  • 放射能汚染された地下施設での復旧作業では、防護服等の着用により、最大75%も作業効率が低下したが、作業員の努力により復旧を達成できた。

【出典】

 

【2017年4月12日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2017年4月10日のニュースリリースにおいて、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、2017年1月4日に操業を再開してから初めてとなるTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)のWIPP復旧情報のウェブサイトにおいても、同様な内容を伝えるWIPP更新情報が掲載され、廃棄物受入れの様子を伝えるビデオも公表されている。

今回受入れが行われたTRU廃棄物は、アイダホ国立研究所(INL)から搬入されたものであり、DOEは、2014年2月の火災事故及び放射線事象でWIPPの操業が停止されてからTRU廃棄物の貯蔵を余儀なくされていた各DOEサイトにとっても、WIPP自身にとっても、重要なマイルストーンであるとしている。WIPPにおけるTRU廃棄物の受入れは、当初は週2回のペースで行われ、2017年末までには週4回のペースに増加する予定とされている。

なお、DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、今回のTRU廃棄物輸送の再開に向けて、各DOEサイトからWIPPまでの輸送経路及びWIPP近傍において、実際の廃棄物輸送容器の展示や説明を行う「ロードショー」を実施していた。

【出典】

 

【2020年1月23日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2020年1月14日付けのニュース記事において、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、操業停止後の6年間で初めて大型輸送容器であるTRUPACT-IIIの受入れを行ったことを公表した。今回受入れたTRU廃棄物は、DOEのサバンナリバーサイト(SRS)から搬出されたものであり、TRUPACT-III輸送容器を使用することにより、DOE環境管理局(EM)が管轄する廃棄物発生サイトにおいては、大型のTRU廃棄物を切断等せずにそのまま梱包・輸送できるようになり、各DOEサイトでのクリーンナップ活動が加速化されるとしている。

大型のTRU廃棄物には、汚染されたグローブボックス、モーター、大型分析機器などが含まれている。TRUPACT-III輸送容器は、幅8.2フィート(約2.5メートル)、高さ8.7フィート(約2.7メートル)、長さが14フィート(約4.3メートル)の直方体で、廃棄物を含めた最大重量は55,116ポンド(約25トン)となり、専用に設計されたトレーラーで運搬される。TRUPACT-III輸送容器での輸送時には、処分される廃棄物は専用の標準大型容器(SLB2:Standard Large Box 2)に封入され、WIPPの処分室でSLB2が廃棄体としてそのまま定置される。

TRUPACT-III輸送容器は標準大型容器(SLB2)を輸送するために設計されている

TRUPACT-III輸送容器から取り出された標準大型容器(SLB2)

標準大型容器(SLB2)は廃棄体としてWIPPの処分室に定置される

 

TRUPACT-III輸送容器によるTRU廃棄物の輸送は、WIPPが操業を開始してから12年後となる2011年に開始されたが、2014年2月の火災事故及び放射線事象でWIPPの操業が停止されたことにより中断していた。今回のTRUPACT-III輸送容器による輸送の再開に当たっては、搬出元のサバンナリバーサイト(SRS)とWIPPの双方において、チームの再訓練、再認証が行われたほか、6年前に使用されていた機器の点検、修理などが行われた。

なお、WIPPへのTRU廃棄物の輸送物は、衛星を利用したDOEの輸送追跡・通信システムを使用して、リアルタイムでの追跡などが行われている。

【出典】

 

【2020年8月4日追記】

米国のエネルギー省(DOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2020730日付けのニュース記事で、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)において、サンディア国立研究所(SNL)からのTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。今回受け入れたTRU廃棄物は、「遠隔ハンドリングが必要なTRU廃棄物」(RH廃棄物)であり、遮蔽容器アセンブリ(Shielded Container Assembly, SCA)と呼ばれる容器に梱包されて輸送された。SNLからのTRU廃棄物の受入れは過去10回にわたって行われたが、今回の廃棄物受入れは2012年以来となる。

HalfPACT輸送容器による輸送

今回のTRU廃棄物の輸送に使用された遮蔽容器アセンブリ(SCA)は、鉛遮蔽ライナー付きドラム容器であり、比較的線量の低いRH廃棄物について、「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)を輸送容器に収納した場合と同様に輸送基準が満足できるような遮蔽能力を有している。SCAは、空の状態で約1,700ポンド(約770kg)あり、80,000ポンド(約36トン)という運輸省(DOT)の重量制限に適合するよう、HalfPACT輸送容器で輸送された。なお、今回のSNLから輸送されたTRU廃棄物は、CH廃棄物と同様の方式で輸送・処分されるが、処分実績上の区分はRH廃棄物として扱われる。

 

遮蔽容器アセンブリ(SCA)の構造

遮蔽容器アセンブリ(SCA)は3本パックで輸送され、廃棄体として処分される

WIPP処分室における遮蔽容器アセンブリ(SCA)廃棄体の定置イメージ

なお、WIPPでは、RH廃棄物はRH-72Bと呼ばれる輸送容器(キャスク)で輸送され、処分室の壁面に掘削された水平処分孔に定置する形で処分が行われてきた。しかし、2014年2月の放射線事象の後は、水平処分孔掘削による処分室内汚染への懸念から、RH-72BキャスクによるRH廃棄物の輸送は中止されていた。2025年と想定されている新換気システム及び新たな立坑の完成までは、RH廃棄物用の水平処分孔の掘削を行う計画はないものとされ、DOEは新しいタイプの遮蔽容器を開発している。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)は、2017年1月12日に、「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の集中貯蔵・処分施設のための同意に基づくサイト選定プロセス案」(以下「サイト選定プロセス案」という)を公表するとともに、2017年4月14日までコメントの募集を行うことを2017年1月13日付の連邦官報の告示文書に記載した。DOEは、2016年12月に、同意に基づくサイト選定イニシアティブを開始しており、本サイト選定プロセス案は、全米8カ所でのパブリックミーティングや意見募集で収集した意見、及び「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」の最終報告書・勧告などを反映し、同意に基づくサイト選定プロセスの実施のための具体的なステップや設計原則について、DOEの考え方を示したものとされている。本サイト選定プロセス案については、2016年9月15日に開催された意見集約ミーティングにおいて、2016年内に発行する予定が示されていた。

今回公表されたサイト選定プロセス案では、安全性などに加えて、公正・公平、十分な情報を得ながらの参加、立地地域への便益、任意参加/撤退の権利、透明性、段階的・協調的意思決定など、サイト選定プロセスを設計する際の原則を示した上で、具体的なサイト選定の段階が、下表のように示されている。なお、以下で示される「コミュニティ」は、直接の立地コミュニティのみならず、サイト選定プロセスで重要な役割を担う州や地方政府、地域選出の連邦議会議員や先住民族政府等も含むものとされている。

フェーズI 同意に基づくサイト選定プロセスを開始し、より多くを学ぶためのコミュニティへの参加要請
ステップ1 実施主体が法律上の権限と予算を取得
ステップ2 実施主体が同意に基づくサイト選定プロセスを開始
ステップ3 コミュニティがより多くを学ぶための資金供与プログラムを実施主体が開始
ステップ4 学びたいコミュニティが資金供与プログラムに関心を表明
ステップ5 実施主体が申請書を評価して資金供与コミュニティを決定
ステップ6 コミュニティが予備的サイト評価を要求
フェーズII サイト評価
ステップ7 実施主体が予備的サイト評価を実施(わが国の「概要調査」に相当)
ステップ8 コミュニティが詳細サイト評価を要求
フェーズIII 詳細評価
ステップ9 実施主体が詳細サイト評価を実施(わが国の「詳細調査」に相当)
ステップ10 適合サイトのあるコミュニティが受入意向の可能性を決定
フェーズIV 合意
ステップ11 コミュニティがさらに進むための条件を提示
ステップ12 コミュニティと実施主体が協定について交渉・承認
ステップ13 コミュニティと実施主体が協定を締結(ここまで、コミュニティは撤退の権利を有する)
フェーズV 許認可、建設、操業、閉鎖
ステップ14 施設の許認可
ステップ15 施設の建設・操業
ステップ16 施設の閉鎖・廃止措置
ステップ17 閉鎖後もサイトを監視し、コミュニケーションを維持

今回公表されたサイト選定プロセス案の報告書では、サイト選定プロセスにおける考慮事項についても案が示されている。サイト選定プロセスの初期段階においては、大枠の除外要件が示されるとした上で、詳細なサイト評価段階においては、以下を含むサイト選定要件項目について、評価に必要な情報が取得されるとしている。

  • サイト周辺の人口
  • 土地の広さ
  • 地震動及び大規模断層
  • 鉱山活動など人工的な地震の誘発
  • 地表面の断層
  • 流動化など地盤動に繋がり得る土壌・母岩条件
  • 地耐力
  • 洪水の影響
  • 施設設計や操業安全に影響する自然現象
  • サイト及び設計に影響し得る地域産業
  • 輸送インフラへの近接

また、地層処分場の詳細なサイト評価段階については、さらに、水文地質学、地球化学、母岩特性、侵食、溶解、地質構造、人間侵入の可能性などのサイト選定要件項目が必要になるとしている。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2016年12月23日の更新情報において、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)におけるTRU廃棄物の処分について、操業再開をDOEが承認したことを公表した。WIPPでは、火災事故及び放射線事象が2014年2月に発生して以来、現在まで操業が停止されている。操業再開後の初めての廃棄物の定置は、坑道の岩盤管理(ground control)などの準備作業が終了した後、2017年1月初めに実施の見込みとされている。

現在、WIPPの廃棄物取扱建屋に保管されているTRU廃棄物を地下に移送するために必要とされる活動は、すべての審査を受けて検証が完了しており、廃棄物定置の公式の再開日は、坑道床面の平準化などの第7処分パネルで必要とされる軽微な準備作業の完了後に決定するとしている。

今回のDOEの決定は、DOEの操業準備審査(DORR)で指摘された操業開始前段階での是正活動について、すべて完了・検証されたことを確認するものとなる。2016年12月23日のWIPP更新情報では、独立の審査や監督規制組織による報告書として以下が示されている。

  • DOEの操業準備審査(DORR)(http://www.wipp.energy.gov/Special/WIPP_DORR_Final_Report.pdf)
    DOEの操業準備審査チームによる評価であり、緊急時対応、廃棄物受入れ、火災防護などの機能的領域、及びDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)の監督能力などが評価された。操業準備審査での指摘事項への対応として、操業開始前に対応が必要とされた21項目の完了が確認され、操業開始後に廃棄物定置活動と並行して対応が可能とされた15項目の是正活動計画が承認された。
  • 契約者操業準備審査(CORR)(http://www.wipp.energy.gov/Special/WIPP_CORR_Final_Report.pdf)
    契約者操業準備審査では、「直接ハンドリングが可能なTRU廃棄物」(CH廃棄物)の定置作業に係るすべての側面を対象として、管理・操業契約者の準備状況に対する独立的な評価がDOEに提供された。初動対応を含む緊急時対応や訓練、調達管理など7項目が操業開始前に必要とされたほか、放射線管理など5項目の操業開始後の対応事項が指摘された。
  • 国家環境政策法(NEPA)補足分析(http://www.wipp.energy.gov/Special/Supplemental_Analysis.pdf)
    DOEは、2016年12月21日に最終版とした補足環境影響評価書(SEIS)に対する補足分析において、WIPPへの廃棄物の輸送とWIPPにおける処分の再開・継続は、WIPP操業開始時の補足環境影響評価書(SEIS)や2009年の補足分析に対して重大な変更を行うものではなく、新たに重大な環境上の懸念等もないとして、さらなる国家環境政策法(NEPA)文書の策定は不要と決定した。
  • 鉱山安全保健管理局―技術支援評価(http://www.wipp.energy.gov/Special/MSHA_Technical_Support_Evaluation.pdf)
    労働省鉱山安全保健管理局がDOEカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)らの依頼を受けて行った評価であり、地下における換気の制約や防護服着用による生産性低下等の課題が認識されたが、違反等の指摘はなかった。
  • WIPPサイト事象の独立レビューチーム(WSIR)―ニューメキシコ鉱山技術大学(http://www.nmt.edu/images/stories/WSIIRFINALReport2016.pdf)
    DOEの要請によりニューメキシコ鉱山技術大学の科学者らが独立の評価を行ったものであり、DOEの事故調査委員会(AIB)や技術評価チーム、ロスアラモス国立研究所等のレポートが評価された。

また、WIPPでの有害廃棄物処分に係る規制機関であるニューメキシコ州環境省(NMED)は、2016年12月16日に、WIPPの有害廃棄物の許可条件及び是正活動について検査を行った結果として、WIPPにおける通常の操業状態への復帰を承認することを通知している。

なお、WIPPの操業再開時期については、2014年9月公表の復旧計画では2016年第1四半期とされていたが、その後、2016年末へと変更されていた。

【出典】

 

【2017年1月6日追記(エネルギー省(DOE)プレスリリース(2017年1月9日)の追加)】

米国のニューメキシコ州環境省(NMED)は、2017年1月4日に廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)が操業を再開したこと、操業が停止されてから初めてのTRU廃棄物の定置が行われたことなどを公表した。WIPPは、ニューメキシコ州カールスバッド近郊でエネルギー省(DOE)カールスバッド事務所(CBFO)が1999年3月26日から操業を行ってきた軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場であるが、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されてきた。WIPPでの操業再開については、2016年12月23日に、DOEが管理・操業契約者(M&O)による操業再開を承認していた。

ニューメキシコ州環境省(NMED)は、2014年2月の火災事故及び放射線事象の発生以来、包括的な調査を実施し、DOEの責任を明確にするとともに、指定した是正活動の実施を監督してきたことが、今回の操業再開に繋がったとしている。

【出典】