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米国

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2019年11月20日付けのプレスリリースにおいて、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.2699)を承認し、下院本会議に報告したことを公表した。2019年放射性廃棄物政策修正法案は、2018年5月に連邦下院本会議で可決された「2017年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053、以下「2017年版法案」という。)と同様の法案であり、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)を修正するものとなっている。プレスリリースで本法案は、短期的には使用済燃料の中間貯蔵に係る権限をエネルギー省(DOE)に付与するとともに、ユッカマウンテン処分場の建設・操業に向けた「インフラ活動」の実施をDOEに認めるなど、DOEの放射性廃棄物管理能力を更新するものであり、本法案により、原子力発電所の立地地域からの放射性廃棄物の搬出が確実に開始されるための重要な一歩になるとしている。

2019年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.2699)は、2019年5月14日に下院に提出され、2019年11月20日の下院エネルギー・商務委員会の法案策定会合において、2本の修正案を織り込む形で承認された。2019年11月20日に下院本会議に報告された2019年放射性廃棄物政策修正法案の構成及び主要条文タイトルは以下の通りであり、2017年版法案(H.R.3053)から若干の変更が行われている。

第I章 監視付き回収可能貯蔵1
監視付き回収可能貯蔵(第101条)、権限と優先度(第102条)、監視付き回収可能貯蔵協定の条件(第103条)、サイト選定(第105条)、便益協定(第106条)、許認可(第107条)、財政的支援(第108条)

第Ⅱ章 永久的な処分場
土地収用・管轄権・保留地(第201条)、申請手続とインフラ活動(第202条)、申請中の処分場許認可申請(第203条)、軍事廃棄物専用処分場開発の制限(第204条)、輸送経路に関する連邦議会意見(第205条)

第Ⅲ章 エネルギー省(DOE)の契約履行
物質[使用済燃料]の所有権(第301条)

第Ⅳ章 立地自治体に対する便益
同意(第401条)、協定の内容(第402条)、対象となる地方政府(第403条)、高等教育機関への優先的資金供与(第405条)、使用済燃料処分(第406条)、更新レポート(第407条)

第Ⅴ章 資金
見積り及び拠出金の徴収(第501条)、放射性廃棄物基金の使用(第502条)、複数年度予算要求の年次提出(第503条)、一定金額の利用可能性(第504条)

第Ⅵ章 その他
基準(第601条)、申請書(第602条)、輸送安全の支援(第603条)、使用済燃料局(Office of Spent Nuclear Fuel)(第604条)、海洋底下処分(subseabed disposal)または海洋処分(ocean water disposal)(第605条)、予算上の効果(第606条)、取り残された放射性廃棄物(Stranded Nuclear Waste)(第608条)

2019年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.2699)は、2017年版法案(H.R.3053)と比較して、以下などが変更されている2

  • 監視付き回収可能貯蔵(MRS)での貯蔵における優先対象先として、廃止措置済みの原子力発電所に加え、地震多発地帯に立地する原子力発電所、及び主要水域に近接した原子力発電所を追加。
  • 1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)第304条で設置された民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)に関する規定について、以下のとおり変更。
    • 組織名称を、民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)から使用済燃料局(Office of Spent Nuclear Fuel)に変更
    • 使用済燃料局の長官の任期を5年とするなどの2017年版法案の規定を撤廃

なお、2019年11月20日の下院エネルギー・商務委員会の法案策定会合では、法案全体を中間貯蔵に限定した内容に置き換える修正案が民主党議員から提出されるなどしたが、最終的には撤回され、2019年放射性廃棄物政策修正法案は、発声投票による超党派の合意により承認された。

【出典】

 

【2019年12月2日追記】

米国の連邦議会上院の環境・公共事業委員会の委員長は、2019年11月20日のプレスリリースにおいて、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」(S.2917、以下「本法案」という。)を提出したことを公表した。本法案は、2019年11月20日に、連邦議会下院のエネルギー・商務委員会で開催された法案策定会合に当初提出された下院版「2019年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.2699)と同じ内容となっている。なお、H.R.2699は、下院委員会の法案策定会合において、2件の修正案が承認されているが、現状で修正された法案は未公表となっている。

本件に関連して、上院環境・公共事業委員会では、2019年4月24日に、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフトが公表され、2019年5月1日には討議用ドラフトに関する公聴会が開催されていた

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。 []
  2. その他、ウェストレイク埋立処分場に関する規定が削除され、ウラン採鉱・精錬の疫学的影響に係る補助プログラムの規定が追加されている。 []

米国において、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を所管するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2019年8月22日に、「2019-2024年戦略計画」の最終ドラフト(以下「ドラフト戦略計画」という。)を公表した。ドラフト戦略計画は、WIPPの今後5年間の戦略計画を示すものであり、ステークホルダーの意見を求めるものとされている。ドラフト戦略計画に対するコメントは、2019年9月30日まで受け付けられている。

公表されたドラフト戦略計画は、2014年にWIPPで発生した事象から得られた教訓を反映したプログラムの強化策を示すとともに、以下のような項目についての将来を展望するものであるとされている。

  • インフラの再投資
  • 施設及び操業方法の刷新
  • 今後に必要となるプロジェクトの承認を得るため、規制プロセスの戦略的利用
  • 有害廃棄物施設許可の10年目の許可更新1
  • 1992年WIPP土地収用法で規定する処分容量2のTRU廃棄物を定置するための処分パネル増設
  • 輸送のためのTRU廃棄物の特性評価/認証活動の合理化・改善

また、ドラフト戦略計画では、直近のDOE戦略計画との整合性を示した上で、カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)の4つの達成目標、規制アプローチ、岩盤管理(ground control)、地下の処分施設南側区域の閉鎖、ステークホルダーとの関わりなどが示されている。CBFOの達成目標としては、以下の4点が掲げられている。

  1. 安全上重要で不可欠なWIPPの主要インフラシステムの再投資及び刷新
  2. フル操業の定置能力までの輸送の大幅な増加
  3. カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)の安全管理プログラムの継続的改善
  4. 関連する規制戦略とともに処分場計画・設計の成熟化

なお、カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2019年8月19日付のフェイスブック記事においても、ドラフト戦略計画を公表して意見を求める予定を伝えていた。このフェイスブック記事では、以下の2回のパブリックミーティングを開催することが伝えられている。

  • 2019年8月26日:ニューメキシコ州サンタフェ市
  • 2019年8月28日:ニューメキシコ州カールスバッド市

【出典】


  1. 資源保全・回収法(RCRA)に基づく有害廃棄物処分に係る許可であり、RCRAの下での規制権限を有するニューメキシコ州環境省(NMED)によって発給されている。許可期間は10年間であり、2010年に1回目の許可更新が行われている。 []
  2. WIPPにおけるTRU廃棄物の処分容量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量で計算されることとなった。2019年8月17日時点での1992年WIPP土地収用法上の処分量は約68,489m3であり、従来ベースの処分量(約96,718m3)より3割近く少なくなっている。 []

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2019年7月17日付けのニュースリリースにおいて、クラスCを超える(GTCC)低レベル放射性廃棄物及びエネルギー省(DOE)が管理するGTCC類似廃棄物(以下、GTCC低レベル放射性廃棄物とGTCC類似廃棄物とを合わせて「GTCC廃棄物等」という。)1 の処分に係る新たな規制のためのドラフト規制基盤(regulatory basis)について、パブリックコメントを募集することを公表した。GTCC廃棄物等の処分に係る規制基盤は、2015年12月22日付けのNRC委員会文書で策定が指示されたものであり、GTCC廃棄物等が浅地中処分施設で処分可能であるか、可能な場合に規制変更が必要なのか、協定州2 による規制が認められるべきかなどについて評価・分析が行われている。ドラフト規制基盤に対するパブリックコメントの募集は、連邦官報の告示から60日間行われ、2019年8月27日にはテキサス州でパブリックミーティングを開催する予定も示されている。

規制基盤の策定を指示した2015年12月22日のNRC委員会文書では、規制基盤における分析の結果として、浅地中処分が適している可能性があると結論が得られた場合には、連邦規則(CFR)の改定案を策定することとされていたが、今回公表されたドラフト規制基盤では具体的な連邦規則案を含むものではなく、以下のような内容を示すものとなっている。

  • 連邦規則改定により、どのように問題が解決し得るかの説明
  • 規制問題に対応するためのいくつかのアプローチを同定し、連邦規則策定及びその他のアプローチの費用便益を評価
  • 評価において使用された科学、政策、法律、技術的情報の提供
  • 規制基盤のスコープや品質上の限界についての説明
  • 規制基盤の技術的部分の策定過程でのステークホルダーとのやり取り、及びステークホルダーの見解についての議論

ドラフト規制基盤では、GTCC廃棄物等の危険性、連邦規則の改定やその他のオプションを評価した上でのNRCの結論として、以下の2点が示されている。

  1. ほとんどのGTCC廃棄物等(全体量の約80%)は、偶発的な人間侵入やサイト外での個人の確実な防護に係る変更など、追加的な管理や解析が行われれば、浅地中処分が適している可能性がある。
    ※GTCC廃棄物等の処分場の許認可申請に際しては以下が必要となる。

    • 偶発的な人間侵入に関するNRCの連邦規則の性能要件を満たしていることを示すサイト固有の人間侵入評価の提出
    • GTCC廃棄物等の処分は、地表から5m以深とし、500年以上にわたって有効な侵入防止バリアの設置
  2. ほとんどのGTCC廃棄物等(潜在的に浅地中処分に適していると決定されたGTCC廃棄物等の量の約95%)は、NRCの連邦規則(10 CFR Part 150「協定州における規制の適用除外及び継続等」)の一部に変更が推奨されるものの、協定州によっても安全に規制し得る。

米国でGTCC廃棄物等は、連邦政府が処分責任を有し、DOEがNRCの許可を受けた施設で処分すべきことが「1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法」で規定されている。NRCの連邦規則では、NRCが個別に承認した場合を除き、GTCC廃棄物等は地層処分しなければならないことが規定されており、テキサス州の規制当局が、GTCC廃棄物等の処分場に対する許認可権限が協定州にあるのかなど、法的権限の明確化をNRCに求めていた。テキサス州では、GTCC廃棄物等を低レベル放射性廃棄物処分場で処分することを禁止しているテキサス州法の修正をウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が求めていた

一方、GTCC廃棄物等の処分責任を有するDOEは、GTCC廃棄物等の処分方策に係る最終環境影響評価書(FEIS)を2016年2月に公表し、その後、2017年11月に連邦議会に提出した報告書では、推奨される処分方策として商業施設における陸地処分を主として考慮しているとの見解を示している。さらに、2018年10月には、テキサス州のWCS社の低レベル放射性廃棄物処分場でのGTCC廃棄物等の処分に係る環境アセスメント(EA)も公表している。NRCのドラフト規制基盤においても、DOEのFEISが参照されており、FEISで示されたGTCC廃棄物等が分析の対象とされている。

DOEが商業施設における陸地処分をGTCC廃棄物等の処分方策として推奨し、NRCで規制基盤の検討作業が進められる中、2019年4月26日にテキサス州知事は、州が許認可権限を持たない現状ではテキサス州のWCS社処分場におけるGTCC廃棄物等の処分には反対する主旨の書簡をエネルギー長官及びNRCの委員長に送付している。NRCの委員長から州知事に宛てた返書では、ドラフト規制基盤の公表後のプロセスでテキサス州や他のステークホルダーの見解表明の機会があること、2019年後半にテキサス州で規制基盤に関するパブリックミーティングを開催する予定であることなどが示されている。

なお、2015年12月25日付けのNRC委員会の指示文書では、NRCの連邦規則(10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」)の改定作業の完了から6カ月以内にGTCC廃棄物等の処分のドラフト規制基盤を提出することとされていた。しかし、10 CFR Part 61の改定作業が長期化・遅延する中で、GTCC廃棄物等の規制基盤の策定は10 CFR Part 61の改定作業とは切り離して行うことが、2018年10月23日に指示されていた。

【出典】


  1. 米国では、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法、原子力規制委員会(NRC)の連邦規則(10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」)において、地下30mより浅い浅地中処分が可能な低レベル放射性廃棄物としてクラスA、B、Cの分類が定められている。GTCC廃棄物は、放射能濃度などがクラスCの制限値を超える低レベル放射性廃棄物であり、連邦規則に基づいて操業されている浅地中処分場での処分をNRCが承認しない場合、地層処分しなければならないこととなっている。 []
  2. 原子力法及び1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法の規定によれば、州はNRCと協定を締結し、低レベル放射性廃棄物の処分を規制する権限を得ることができる。 []

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は2019年5月8日に、処分場科学及び国際的な地下研究所(URL)研究活動における最近の進展に関する2019年春季ワークショップ(以下「本ワークショップ」という。)の資料等を公表した。本ワークショップは、2019年4月24日及び25日の2日間にわたって米国サンフランシスコで開催されたものである。なお、NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性をレビューするため、独立した評価組織として設置されたものである。

本ワークショップの目的は、エネルギー省(DOE)が実施または計画している研究開発活動についてレビューを行うこと、DOEによる研究活動及びNWTRBによるレビューに資する情報を得ることとされている。国際的な経験に関する議論の焦点は、各国の地下研究所で実施されてきた研究について、高レベル放射性廃棄物の地層処分場の長期的挙動の科学的理解、技術、操業に係る最近の進展などに当てられている。なお、2019年2月26日には、本ワークショップの準備のため、DOEの研究活動の現況を確認するNWTRBミーティングが開催されている。

本ワークショップでは、主に以下のような報告や議論が行われた。

  • 国際的な地下研究所プログラムについて、フランス、スウェーデン、スイス及び英国の4カ国からの報告とパネルディスカッション
    • スイス:放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)
    • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)
    • フランス:放射性廃棄物管理機関(ANDRA)
    • 英国:放射性廃棄物管理会社(RWM社)
  • DOEの地層処分研究開発プログラムの概要、及び国際的な地下研究所での研究との統合
  • DOEにおける地下研究所に関連した研究開発活動(特に、天然バリア、人工バリアの健全性、地下水流動と核種移行、全体システムの挙動)
  • 地下研究所での研究開発プログラムから得られた教訓と重要事項(全体セッション)

なお、現在、DOEは、「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)の中で、処分及び貯蔵・輸送に係る一般的な研究開発活動を実施している。DOEは、2020会計年度の予算要求書において、UNFD研究開発プログラムの大幅な縮小を提案しているが、潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究については継続するとしている。

【出典】

 

【2020年1月30日追記】

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2020年1月27日に、「ギャップを埋める:エネルギー省(DOE)の地層処分研究開発プログラムにおける地下研究所(URL)の重要な役割」(以下「地下研究所報告書」という。)を公表した。地下研究所報告書は、地下研究所に関連したDOEの研究開発活動と、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物処分プログラムとの関係について、NWTRBが評価した結果を示すものである。NWTRBは、2019年4月に開催した2019年春季ワークショップにおいて、処分場科学及び国際的な地下研究所(URL)研究活動の最近の進展を取り扱っており、今回の地下研究所報告書は、このワークショップ及び準備ミーティングで示された情報に基づくものとされている。

NWTRBは地下研究所報告書において、地下研究所に関連した国際的研究にDOEが参画していることには大きなメリットがあるなどの所見を示した上で、以下のような勧告を行っている。

  • DOEは、地層処分研究開発の能力を強化するため、地下研究所活動に係る国際共同研究を拡大すべきである。国際的プログラムで最大の成果を享受するためには、以下を考慮すべきである。
    • 様々な母岩の地層処分場の設計・許認可・建設・操業のための技術的ニーズに対応できるよう、地下研究所における研究開発を活用
    • 炭素(CO2)貯留など非放射性廃棄物処分への適用も含め、DOEが設計・建設・操業段階に参画可能な地下研究所研究開発の国際的パートナーシップを追及
    • 他国の地下研究所プログラムの経験から、公衆の理解促進や関わり、及びリスクコミュニケーションにおける良好事例や革新的アプローチ、顕著な成功・失敗例の取りまとめ
  • 異なる母岩での兼用キャニスタの直接処分を含め、一般的な地層処分場のセーフティケースが公衆にも分かりやすく示せるよう、地下研究所の研究開発成果を体系的に活用すべきである。
  • DOEは、処分概念の開発・実証を進め、米国の次世代の科学者・技術者の訓練の場を提供するため、米国内で1カ所以上の地下研究所を追及すべきである。米国内での地下研究所プログラムの拡大に際しては、以下を考慮すべきである。
    • 地下研究所の研究開発プログラムを、処分場閉鎖後の性能評価に関する技術的問題のみならず、建設や操業概念の開発・設計も含めるように拡大
    • 廃棄物処分の任務に必要な地層処分研究における、大規模でより公式の訓練機会を支援
    • DOEの地層処分研究開発プログラム以外の者も含め、米国内での地下研究所を国内外の研究者に広く開放
  • DOEは、熱-水-応力-化学に基づく研究やモデル開発を継続するとともに、特に高温環境における地下研究所及び研究所ベースの研究をさらに追及すべきであり、その際には以下を考慮すべきである。
    • 想定外のプロセス・挙動の受入れ余地は残しつつ、地下研究所における技術的活動を仮説や仮定の検証に向けて設計・実施
    • 基礎的プロセスに注目した研究所での実験、モデル化、実地での経験・観察について、双方向的なプロセスの採用
    • 破砕帯の流動・移行モデルにおける地盤力学的拘束条件と熱影響
    • 岩塩層へ焦点を合わせ、岩塩の挙動の構造的モデルの改善のため、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)におけるヒーター試験の活用

 

時間的及び空間的な観察尺度

 

なお、DOEは、2012年から欧州及びアジアの地下研究所において共同研究を実施してきている。特に、2010年にはユッカマウンテン処分場に係る活動が中止され、DOEが代替母岩(結晶質岩、粘土層、岩塩)に関する一般的な研究を開始したこともあり、DOEは、地下研究所に係る国際共同研究がDOEの使用済燃料・高レベル放射性廃棄物処分の研究プログラムに貢献してきたとしている。

【出典】

米国の連邦議会上院の環境・公共事業委員会は、2019年4月24日付けのプレスリリースにおいて、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフト及び逐条解説を公表した。2019年放射性廃棄物政策修正法案は、2018年5月に連邦下院本会議で可決された「2017年放射性廃棄物政策修正法案」(H.R.3053、会期終了にともない廃案)と同様の法案であり、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)を修正するものとなっている。同プレスリリースにおいて今回の討議用ドラフトは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分に係る連邦政府の義務の履行を確実にするため、米国の放射性廃棄物管理政策の現実的な改革を行うものであるとしている。環境・公共事業委員会のウェブサイトでは、今回公表された法案の討議用ドラフトについて、検討する公聴会を2019年5月1日に開催する予定が示されている。

今回公表された2019年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトにおける法案の構成及び主要条文タイトルは以下の通りであり、2017年放射性廃棄物政策修正法案(H.R.3053)において下院本会議で採択された修正案も織り込まれた内容となっている。

第I章 監視付き回収可能貯蔵1
監視付回収可能貯蔵(第101条)、権限と優先度(第102条)、監視付回収可能貯蔵協定の条件(第103条)、サイト選定(第105条)、便益協定(第106条)、許認可(第107条)、財政的支援(第108条)

第Ⅱ章 恒久処分場
土地収用・管轄権・保留地(第201条)、申請手続とインフラ活動(第202条)、申請中の処分場許認可申請(第203条)、軍事廃棄物専用処分場開発の制限(第204条)、輸送経路に関する連邦議会意見(第205条)

第Ⅲ章 エネルギー省(DOE)の契約履行
物質[使用済燃料]の所有権(第301条)

第Ⅳ章 立地自治体に対する便益
同意(第401条)、協定の内容(第402条)、対象となる地方政府(第403条)、高等教育機関への優先資金供与(第405条)、使用済燃料処分(第406条)、更新レポート(第407条)

第Ⅴ章 資金
見積り及び拠出金の徴収(第501条)、放射性廃棄物基金の使用(第502条)、複数年度予算要求の年次提出(第503条)、一定金額の利用可能性(第504条)

第Ⅵ章 その他
基準(第601条)、申請書(第602条)、輸送安全の支援(第603条)、民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)(第604条)、海洋底下処分(subseabed disposal)または海洋処分(ocean water disposal)(第605条)、五大湖近傍での放射性廃棄物貯蔵に関する連邦議会意見(第606条)、予算上の効果(第607条)、残置された放射性廃棄物(第609条)

上院環境・公共事業委員会のプレスリリースでは、法案の討議用ドラフトのポイントとして以下を示している。

  • 停止状態のユッカマウンテン許認可審査の解決を支援し、処分場の許認可発給及び建設が可能かを決定する公式の許認可手続を可能とする。
  • 電気料金負担者を守るため、破綻した資金メカニズムを改革し、DOEが多世代に亘るインフラプロジェクトを建設・操業するために適切な資金が確保できるようにする。
  • ユッカマウンテン処分場の手続を進める間に、閉鎖された原子力発電サイトの使用済燃料を集約するための中間貯蔵プログラムを進めることを、非連邦組織との契約締結権限を含めて、DOEに指示する。
  • ネバダ州及び地域ステークホルダーが、処分場の立地地域として利益を享受できる取決めを連邦政府と行う機会を提供する。
  • 放射性廃棄物プログラムをより効果的に実施できるようDOEのプログラム管理及び組織を強化する。

今回の2019年放射性廃棄物政策修正法案の討議用ドラフトの公表に対して、ユッカマウンテンが立地するネバダ州選出の上院議員からは、連邦議会はネバダ州の意思を尊重すべきなどとし、ユッカマウンテン計画の再開を図る動きには強く反対することを表明するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年5月7日追記】

米国の連邦議会上院の環境・公共事業委員会は、2019年5月1日に、「2019年放射性廃棄物政策修正法案」の討議用ドラフトに関する公聴会を開催した。本公聴会では、ネバダ州選出の連邦議会上院議員2名のほか、電力会社、州公益事業委員会、非営利環境団体の代表らが証人として出席し、証言と質疑応答が行われた。

公聴会の終了後に環境・公共事業委員会のウェブサイトに掲載されたプレスリリースでは、2019年放射性廃棄物政策修正法案によってユッカマウンテン計画を進めることが解決策だとする見解をバラッソ委員長(共和党、ワイオミング州選出)が示す一方で、カーパー少数党最上席議員(民主党、デラウェア州選出)からは、同意に基づくサイト選定が重要であるなどの見解が示されている。

また、証人として出席した2名のネバダ州選出の上院議員からは、ユッカマウンテン計画への強い反対が示されたほか、ネバダ州知事からも書簡が提出された。一方、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡からは、ユッカマウンテン処分場に係る原子力規制委員会(NRC)の許認可審査手続きの完了を求める書簡が提出されている。

さらに、連邦議会上院では、2019年4月30日に、「2019年放射性廃棄物管理法案」(S.1234)も提出された。本法案は、上院エネルギー・天然資源委員会の委員長、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長及び少数党最上席議員の3名が共同提出した超党派法案であり、過去に提出された「2013年放射性廃棄物管理法案」等と同様の法案とされている。

上院エネルギー・天然資源委員会の委員長のプレスリリースでは、2019年放射性廃棄物管理法案の主要な内容として、以下の点が示されている。

放射性廃棄物管理組織
行政府に放射性廃棄物プログラムを管理する独立組織を設置する。同組織の長官は、大統領が指名し、上院の承認を経て任命される。

処分場及び集中貯蔵施設の同意に基づくサイト選定プロセス
閉鎖された原子力発電所からの使用済燃料などの優先的な使用済燃料のためのパイロット貯蔵施設、及びその他の使用済燃料のための集中中間貯蔵施設の建設を新組織に命じる。
貯蔵施設及び処分場のサイト選定プロセスを確立する。

貯蔵施設と処分場のリンク
パイロット貯蔵施設の建設は、貯蔵量の制限なしに直ちに承認する。
優先的な使用済燃料以外のための新たな貯蔵施設については、並行して進められる処分場プログラムの進捗を条件として、サイト選定を可能とする。

放射性廃棄物基金
放射性廃棄物管理組織が歳出予算措置を経ずに利用可能となる、新しい運営資本基金を財務省に創設し、電力会社が拠出金を払い込む。本法案の成立前に払い込まれた拠出金は、従来からの1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)に基づく放射性廃棄物基金に残り、歳出予算の対象となる。

軍事起源廃棄物
エネルギー長官が、軍事起源廃棄物を民間の使用済燃料と共同で処分するとした方針を見直すことを認め、必要、適切と判断された場合には軍事起源廃棄物の専用処分場の開発を認める。

なお、ネバダ州選出議員からは、処分場に関する放射性廃棄物基金からの支出には、州知事などの関係者の承認・協定締結を必要とすることなどを規定する「放射性廃棄物インフォームドコンセント法案」(S.649、H.R.1544)や、「2019年廃棄物よりも雇用法案(Jobs, Not Waste Act of 2019)」(S.721)が提出されている。

【出典】


  1. 監視付き回収可能貯蔵(MRS、Monitored Retrievable Storage)施設は、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)において、高レベル放射性廃棄物及び使用済燃料を監視付きの回収可能性を有する中間貯蔵施設に長期貯蔵することが、安全・確実な管理の選択肢であるとし、エネルギー長官に中間貯蔵施設の設置に係る権限を与えている。 []

米国のエネルギー省(DOE)は、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、2019年3月26日付の適合性再認定申請書(CRA)(以下「2019年CRA」という。)をウェブサイトで公表した。WIPPでは、1999年3月26日から、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が実施されているが、1992年WIPP土地収用法により、廃棄物の定置開始以降の5年毎に、廃止措置段階が終了するまで、連邦規則(CFR)の要件に適合していることの認定を受けることが要求されている。これまで3回の適合性再認定申請を行い、環境保護庁(EPA)が適合性認定の決定を行っており、今回が4度目の適合性再認定申請となる。

適合性再認定申請 適合性再認定の決定
1 2004年3月26日 2006年3月29日
2 2009年3月24日 2010年11月18日
3 2014年3月26日 2017年7月13日

前回の2014年3月26日に提出された3度目の適合性再認定申請書(以下「2014年CRA」という。)は、2013年1月1日までのデータに基づいて策定されていたが、その提出直前の2014年2月に、WIPPで火災事故及び放射線事象が発生し、微量の放射性物質が環境モニタリングで検出された。この放射線事象を受けてWIPPの操業は一時停止され、復旧活動が進められたが、DOEは、この放射線事象は処分場の長期的性能に影響するものではなく、WIPPはEPAの連邦規則である「使用済燃料、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の管理と処分のための環境放射線防護基準」(40 CFR Part 191サブパートB・C)の要件を引き続き遵守しているとして、2017年1月に処分場の操業を再開している。EPAは、2017年7月13日に、WIPPが引き続きEPAの連邦規則に適合しているとして、適合性再認定の決定を行った。

DOEは、今回提出した2019年CRAの要約版において、今回の適合性再認定のサイクルは、次の2点で従来のサイクルとは異なるとしている。

  • 2014年CRAに係るEPAの決定が遅れたため、次の2019年CRAまでの間隔が短くなった。
  • 2014年CRAに係るEPAの決定文書では、DOEが2019年CRAで対応すべき技術的懸念や勧告が示されていた。

このため、DOEとEPAは2017年12月に、2019年CRAにおける性能評価(PA)の提出を2019年後半まで遅らせることで合意していた模様である。DOEは、2014年CRAの決定文書でEPAが指摘した技術的懸念事項への回答は、後に性能評価とともに提出されるとしている。なお、2014年CRAに係るEPAの決定の後、DOEはEPAの承認を必要とするような変更要求(PCR、planned change request)を行っていないことから、2014年CRAにおける性能評価は、2019年CRAにおいても引き続き性能評価のベースとして参照されているとしている。なお、DOEは、2014年CRA以降に、EPAの連邦規則への適合性に影響するような新たな情報は確認されていないとしている。

【出典】

 

【2019年7月4日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2019年7月2日付けのニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で、1999年の操業開始から12,500回目となるTRU廃棄物の受入れを行ったことを公表した。

WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されていたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2018年1月には地下施設の掘削活動も再開された。また、連邦規則への適合性に関する4回目の再認定申請についても、2019年3月26日に環境保護庁(EPA)へ提出されている。

今回のニュースによれば、12,500回目の受入れとなったTRU廃棄物は、アイダホ国立研究所(INL)から搬出されたものであり、2019年6月27日にWIPPで受入れが行われた。WIPPへのTRU廃棄物の輸送距離は延べ1,490万マイル(約2,400万km)以上となっており、178,500以上の廃棄体容器の輸送が行われた。WIPPの輸送手順は、TRU廃棄物の発生サイトを出発してからWIPPに到着するまで一つの問題も発生しないように実施されており、輸送業界の中で最も厳しいものの一つとされている。

なお、WIPPでTRU廃棄物の受入れが開始されたのは1999年3月26日であり、操業開始から20周年となる2019年3月26日には、WIPPの20周年の記念式典も行われていた。WIPPウェブサイトによれば、2019年7月1日現在のTRU廃棄物の処分量は、約96,300m3となっている。

【出典】

 

【2019年9月30日追記】

米国でエネルギー省(DOE)が提出した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)に係る適合性再認定申請書について、申請書の完全性の審査を実施している環境保護庁(EPA)は、2019年9月25日付けの連邦官報において、パブリックコメントの募集を開始することを告示した。軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場であるWIPPについてEPAは、DOEの適合性再認定申請書のすべての側面についてコメントを求めるとしている。

EPAは、DOEの適合性再認定申請書の完全性が確認されたと決定したときには、DOEに書面で通知するとともに、連邦官報で告示することとしている。また、パブリックコメントの募集期限は、完全性の決定後、改めて連邦官報に掲載するとしている。なお、1992年WIPP土地収用法においては、EPAは完全性の決定から6カ月以内に適合性再認定の決定を行うことと規定されている。

【出典】

 

【2021年11月29日追記】

環境保護庁(EPA)は、エネルギー省(DOE)が提出していた適合性再認定申請書の完全性を確認して決定(以下「完全性決定」という。)した旨を、2021年11月26日付けの連邦官報で告示した。また、EPAは、DOEの適合性再認定申請書のすべての側面についてのコメントを求めるとして、パブリックコメントの募集を2019年9月25日に開始していたが、このコメント募集の期限を2021年12月27日とすることも、併せて連邦官報で告示した。

EPAがDOEの適合性再認定申請書の完全性を確認したことは、2021年11月17日付けの書簡でエネルギー長官に通知されており、本書簡は、連邦政府の規制情報ウェブサイトの廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)適合性再認定のページで2021年11月26日に公表された。

なお、1992年WIPP土地収用法においては、EPAは完全性決定から6カ月以内に適合性再認定の決定を行うことが規定されている。

【出典】

米国で2019年3月11日に、2020会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求のファクトシートが公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムとして116百万ドル(約131億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでは予算要求に係る概要資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が要求されている。

大統領の予算教書では、今回の予算要求は、中間貯蔵プログラムの実施を支援し、ユッカマウンテン地層処分場の許認可審査手続を再開することにより、トランプ政権の決意を示すものであるとしている。また、予算教書では、現在は停止されている原子力発電事業者からの放射性廃棄物基金への拠出金 について、2022会計年度から徴収を再開することも示されている。

DOEの予算要求に関して、2019会計年度の歳出法では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして63,915千ドル(約72億2,240万円)、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されているが、2019年3月11日時点では2020会計年度のDOEの予算要求に係る詳細資料は公表されておらず、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの詳細は不明である。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が計上されているが、NRCの予算要求についても詳細資料は公表されておらず、予算要求の内訳等は不明である。

なお、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州では、知事及び同州選出の連邦議会議員から、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年3月20日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は2019年3月18日に、2020会計年度2 の予算要求に係る詳細資料(以下「NRC予算要求資料」という。)を公表した。NRC予算要求資料では、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を再開するため、NRCが高レベル放射性廃棄物の予算として要求している38,500千ドル(約43億5,000万円)について、項目別の内訳が示されるとともに、裁判形式の裁決手続の再開準備など、主要な活動内容が示されている。

NRC予算要求資料によれば、ユッカマウンテン処分場に係る2020会計年度の高レベル放射性廃棄物の予算の内訳は、以下のとおりとされている。

・許認可審査: 30,600千ドル (約34億6,000万円)
・監督: 200千ドル (約2,000万円)
・規則策定活動: 1,300千ドル (約1億5,000万円)
・任務支援・監督: 5,400千ドル (約6億1,000万円)
・訓練: 400千ドル (約5,000万円)
・旅費交通費: 700千ドル (約8,000万円)
合計: 38,500千ドル (約43億5,000万円)
※予算の桁数の関係から、額の合計は合計の値と合っていない。

また、NRC予算要求資料では、2020会計年度における高レベル放射性廃棄物の予算要求に係る主要な活動として、以下が示されている。

  • ヒアリング施設及び情報技術(IT)/視聴覚支援のためのインフラ整備活動の実施
    (許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)、電子情報交換、電子ヒアリング記録(Electronic Hearing Docket)などのITシステムの試験、検証、訓練を含む)
  • 裁判形式の裁決手続の再開
    (証言録取、事件管理協議、略式決定動議などのプレヒアリング活動を含む)
  • 継続中の連邦訴訟の準備及び参加
  • 申立てや取調べ活動、地層処分場操業区域(GROA)に関連する規則策定の継続などの活動の支援

なお、エネルギー省(DOE)の2020会計年度の予算要求については、予算の概要資料が2019年3月18日に公表されており、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度と比較して5,133千ドル減の398,334千ドル(約450億1,200万円)の予算要求額が示されている。

【出典】

 

【2019年4月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2019年4月2日に、DOEのウェブサイトにおいて、2020会計年度3 の原子力関連等の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2020会計年度の予算要求については、2019年3月11日に大統領の予算教書が公表されたが、使用済燃料管理等に係るDOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。なお、DOEの予算要求に対して連邦議会では、上下両院でエネルギー長官を証人とした公聴会が開かれており、実質的に2020年度歳出法案の策定プロセスが開始されている。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラム(YMISP)について、2020会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(106,084千ドル(約120億円、1ドル=113円で換算)、2019会計年度要求額は110,000千ドル)4

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略構築の継続

中間貯蔵(9,916千ドル(約11億2,000万円)、2019会計年度要求額は10,000千ドル)5

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動、マイルストーン、資源を含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2019会計年度予算要求 と同様に、高燃焼度燃料の性能の研究、多様な使用済燃料等を対象とした潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究に焦点を当てた活動を行うとした上で、前年度要求額の2分の1の5,000千ドル(約5億6,500万円)の予算が要求されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、従来はIWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

連邦議会では、DOEの2020会計年度の予算要求に関する公聴会が開催されている。公聴会は、以下に示すとおりの日程で上下両院の関連委員会が開催したものであり、エネルギー長官が証人として出席して2020会計年度の予算要求について説明するとともに、各委員会の委員による質疑が行われた。エネルギー長官の証言書では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵プログラムの開始に係るトランプ政権の意思が改めて表明されている。6

  • 2019年3月26日:下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年3月27日:上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年4月 2日:上院エネルギー・天然資源委員会

なお、上院エネルギー・天然資源委員会の公聴会では、ネバダ州選出のマスト上院議員が耐震評価問題などを採り上げてユッカマウンテン計画への強い反対を示した他、ネバダ州選出の下院議員3名は、下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長等に宛てた書簡で、ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分を阻止するための条項等を歳出法案に盛り込むよう要請している。ネバダ州知事も、2019年4月2日のプレスリリースにおいて、ユッカマウンテン計画に対する反対の戦いを続けることを表明している。

【出典】

 

【2019年5月22日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2019年5月21日に開催した法案策定会合において、2020会計年度7 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。ユッカマウンテン処分場の許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された歳出法案には含まれていない。

歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書の草案では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として62,500千ドル(69億3,750万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として47,500千ドル(52億7,250万円)が計上されている。IWMS予算のうち25,000千ドル(27億7,500万円)は、使用済燃料が残された廃止措置済みの原子力発電所サイト等における準備活動を含め、地域的な輸送協定や輸送の調整を再開する「集中中間貯蔵プログラム(consolidated interim storage program)」の開始など、使用済燃料の中間貯蔵の活動のための予算とされている。

また、下院歳出委員会報告書の草案では、種々の核燃料サイクルや技術的なオプションのメリットと実現可能性についての評価を、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)に指示している。本評価は、廃棄物の輸送・貯蔵・処分など燃料サイクルのすべての要素間の関係や、より広範な安全性・セキュリティ・核不拡散上の懸念について、説明するものとなるとしている。

一方、今回の歳出法案に計上されなかった「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの予算、及びユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算に関して、下院歳出委員会の法案策定会合では、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の少数党最上席議員(共和党)から、これらの予算を計上する修正案が提出されたが、25対27で否決された。

ネバダ州選出のタイタス下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための修正案が否決されたことを伝え、今後も連邦議会下院議長やネバダ州知事らとともに反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

なお、2019年5月21日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案等が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2019年5月22日時点で公表されていない.。

【出典】

 

【2019年6月24日追記】

米国の連邦議会下院は、2019年6月19日の本会議において、2020会計年度8 「労働省、保健福祉省、教育省、その他関連機関の歳出法案」(H.R.2740、以下「本歳出法案」という。)を、226対203で可決した。本歳出法案は、労働省等の2020会計年度の歳出法案(H.R.2740)に「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.2960)など、4つの歳出法案をまとめた「ミニバス法案」である。本歳出法案において高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認された内容からの修正はなく、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、本歳出法案に付随する委員会報告書は、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認されたものとなっている。

本歳出法案の下院本会議における審議に向けては、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための予算を含めるような修正案も提出されたが、本会議で審議された本歳出法案には当該予算は含まれなかった。本歳出法案の下院本会議における審議については、下院議事運営委員会で承認された修正案のみが本会議で審議されることとなっていたが、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開に係る修正案は、事前に行われた議事運営委員会における投票において4対7で否決されていた。

ネバダ州選出の下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開のための予算が本歳出法案に計上されなかったことを評価し、今後もネバダ州における処分場建設には反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2019年9月17日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2019年9月12日に、2020会計年度9 の「エネルギー・水資源開発歳出法案」(S.2470、以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2020会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案(S.2975)と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された2020会計年度の歳出法案には計上されていない。

2020会計年度の歳出法案に付随する「上院歳出委員会報告書」(S.Rept.116-102、以下「委員会報告書」という。)では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として27,500千ドル(30億5,250万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として22,500千ドル(24億9,750万円)が計上されている。IWMS予算のうち10,000千ドル(11億1,000万円)は、エネルギー長官が現行の権限内で、使用済燃料の中間貯蔵に係る民間事業者との契約などを締結するための予算とされている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求を上回る396,907千ドル(約440億5,670万円)が2020会計年度の歳出法案に計上されている。

2020会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、2019会計年度の上院版の歳出法案(S.2975)と同様に、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案(S.2470)第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

また、委員会報告書では、エネルギー長官に対して、以下の報告を連邦議会に行うように指示している。

  • 費用対効果が高く、短期間で実施可能な技術オプションなど、高レベル放射性廃棄物の処分及び使用済燃料管理に係る革新的なオプションについて、90日以内に報告
  • 全米科学アカデミー(NAS)と契約して、先進炉の廃棄物に係る包括的、独立的な研究を実施し、20カ月以内に報告
  • 放射性廃棄物処理に係る電磁技術の科学的基盤の評価や考え得る効果等について、180日以内に報告

【出典】

 

【2019年10月2日追記】

米国の連邦議会は2019年9月26日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年10月1日から2019年11月21日を対象とした継続歳出法案(H.R.4378)を可決し、継続歳出法案は2019年9月27日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-59)として成立した。継続歳出法案(H.R.4378)は、連邦議会下院本会議では2019年9月19日に301対123で、連邦議会上院本会議では2019年9月26日に81対16で、それぞれ賛成多数で可決された。

今回成立した2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)は、規定された期間について、前年度である2019会計年度の歳出法での予算と同じレベルでの歳出を認めるものである。エネルギー・水資源分野については、2019会計年度の歳出法として、ミニ包括歳出法(Public Law No.115-244)が制定されていた。継続歳出法による予算は、原則として前年度予算と同率で比例配分され、特段の規定が無い限り、前年度で未計上の事業・プログラム等の実施は認められない。

なお、2020会計年度の継続歳出法(Public Law No.116-59)では、ユッカマウンテン処分場、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)、中間貯蔵施設等の関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年11月26日追記】

米国の連邦議会は2019年11月21日に、2020会計年度(2019年10月1日~2020年9月30日)のうち、2019年12月20日までを対象とした「追加的継続歳出法案」(H.R.3055)を可決し、本法案は2019年11月21日に、大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-69)として成立した。2020会計年度の歳出予算については、2019年11月21日までを対象とした継続歳出法(H.R.4378)が2019年9月26日に成立していたが、今回、上下両院で可決された「追加的継続歳出法案」は、前回の継続歳出法で設定された継続予算の期限を2019年12月20日まで延長するものとなっている。

なお、今回成立した2020会計年度の「追加的継続歳出法」(Public Law No.116-69)では、ユッカマウンテン処分場関連、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)関連、中間貯蔵施設関連を含め、放射性廃棄物の貯蔵・処分に関する特別な規定は無い。

【出典】

 

【2019年12月24日追記】

米国の連邦議会は、2019年12月19日に、2020会計年度10 のエネルギー・水資源開発分野を含む追加的包括歳出法案(H.R.1865、以下「歳出法案(H.R.1865)」という。)を可決し、2019年12月20日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.116-94)として成立した。2020会計年度のエネルギー・水資源開発歳出法案については単独の法案として、連邦議会下院では2019年6月19日の本会議において可決されていたが、連邦議会上院では2019年9月12日に上院歳出委員会で承認されたのみで可決に至らず、年度が新しくなった2020会計年度の2019年10月からは継続予算が執行されていた。今回成立した歳出法案(H.R.1865)は、両院で超党派のミニ歳出法案11 として検討されていたものであり、2019年12月17日に下院本会議で、2019年12月19日には上院本会議で、それぞれ可決された。なお、詳細な予算額や指示事項などについては、法案付随の説明文書(Explanatory Statement、以下「付随説明文書」という。)で示されている。付随説明文書は、歳出法案と同じ効力を持つものとされている。

2020会計年度の歳出予算については、ユッカマウンテン処分場計画の再開のための予算がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)の予算要求に盛り込まれていたが、最終的に成立した歳出法案(H.R.1865)ではユッカマウンテン関連の予算は計上されていない。高レベル放射性廃棄物関連の予算としては、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして、2019会計年度歳出予算 から微減の62,500千ドル(約67億5,000万円、1ドル=108円で換算)、「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)として25,000千ドル(約27億円)を割り当てる歳出予算が計上されている。

現在、ニューメキシコ州で操業中の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度の歳出予算と同額の396,907千ドル(約428億6,600万円)が計上されている12

なお、歳出法案(H.R.1865)にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、反対を表明しているネバダ州選出の連邦議会議員の多くからは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。

その他、付随説明文書では、放射性廃棄物管理に関連するものとして、以下の報告を行うことをエネルギー長官及び全米アカデミーに指示している。

  • エネルギー長官は、高レベル放射性廃棄物処分及び使用済燃料管理の革新的オプションについて、90日以内に報告を行うこと
    • 費用対効果が高く、短期で実施可能であり、サイト選定のステークホルダー関与を考慮した技術オプションを優先
  • エネルギー長官は、放射性廃棄物の電磁的技術による処理について、180日以内に報告を行うこと
    • 技術の科学的基盤の評価、放射性廃棄物及びその貯蔵に対して考え得る効果、原子力産業へのメリット、核セキュリティへの意義を含む
  • 全米アカデミーは、DOEと契約を締結し、さまざまな核燃料サイクル・技術オプションのメリットと可能性について、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)による評価を実施し、20カ月以内に報告すること
    • 廃棄物輸送・貯蔵・処分などの燃料サイクルの全要素間の関連を考慮に入れて評価を行い、先進炉からの廃棄物の研究も実施

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  3. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  4. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  5. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  6. 上院環境・公共事業委員会では、2019年4月2日に、原子力規制委員会(NRC)の予算要求に係る公聴会が開催されている。 []
  7. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  8. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  9. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  10. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  11. H.R.1865は、8分野の2020会計年度歳出法案を統合したミニ包括歳出法案として連邦議会両院で審議された。8分野の歳出法案のみの統合であることから、通常の包括(Omnibus)歳出法案に対し、ミニ包括(Minibus)歳出法案と呼ばれている。 []
  12. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOE予算要求書では保障措置・セキュリティ予算の一部として別途6,692千ドル(約7億2,270万円)が要求されていたが、付随説明文書では保障措置・セキュリティ予算の内訳が明示されていないため、保障措置・セキュリティ予算を除くWIPP関連の歳出予算額を示している。 []

米国の原子力規制委員会(NRC)は、ウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社による使用済燃料等の中間貯蔵施設の許認可申請に関して、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社が要請した許認可審査の再開を認めることについて、2018年8月21日付のISP社宛の書簡(以下「NRC書簡」という。)で通知した。WCS社によるテキサス州アンドリュース郡における中間貯蔵施設プロジェクトについては、WCS社に対する買収の動きを受け、2017年4月18日に許認可審査の一時停止がWCS社から要請され、NRCもこれを承認していた。WCS社は、2018年1月に投資会社のJFリーマン社に売却されたが、WCS社とOrano USA社1 との合弁会社として設立されたISP社が、2018年6月8日に、中間貯蔵施設の許認可審査の再開を公式に要請していた

今回公表されたNRC書簡の中でNRCは、ISP社が2018年6月8日付の許認可審査の再開要請に続いて提出した許認可申請書の改定2版(Revision 2)において、詳細な審査の再開に必要な情報が提供されていることを確認したとしている。また、NRC書簡では、ISP社の許認可申請に係る審査のスケジュールが以下のように示されている。

  • 安全審査関連の追加情報要求(RAI)
    • 1回目:2018年11月~2019年1月
    • 2回目:2019年5月~2019年7月(必要な場合のみ)
  • 環境審査関連の追加情報要求(RAI)
    • 1回目:2019年1月
    • 2回目:2019年5月(必要な場合のみ)
  • NRCによる安全審査、環境審査関連の完了:2020年8月

また、NRC書簡では、裁判形式の裁決手続による「ヒアリングの開催要求の機会」(opportunity to request a hearing)(以下「ヒアリング開催要求の機会」という。)に係る新たな通知、及び環境影響評価(EIS)のスコーピング手続を再開する旨の通知を、連邦官報で告示する予定としている。NRCは、2017年7月20日付の連邦官報において、ヒアリング開催要求の機会に係る2017年1月30日付の連邦官報告示を取消すとともに、WCS社が許認可審査の再開を要求した場合には、改めてヒアリング開催要求の機会に係る通知を連邦官報で告示することを決定していた

なお、NRCウェブサイトにおけるWCS社の集中中間貯蔵プロジェクトのページは、2018年8月15日に、ISP社を申請者とする形で更新されており、ISP社が提出した許認可申請書の改定2版(Revision 2)も掲載されている。

【出典】

 

【2019年7月5日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2019年7月1日付けの中間貯蔵パートナーズ(ISP)社宛の書簡において、IPS社によるテキサス州アンドリュース郡での使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請について、審査スケジュールを改定したことを通知した。NRCの書簡では、これまで2020年8月と見込まれていた安全性・セキュリティ・環境の審査の完了が、2021年5月に先送りになるとのスケジュールが示されている。

NRCは、今回の審査スケジュールの改定は、NRCからの追加情報要求(RAI)への対応について、ISP社が2019年5月31日に提示した対応スケジュールを考慮したためとしている。また、改定前のスケジュールと同様に、改定したスケジュールでも、ISP社が今後のRAIに対する回答を高い品質で60日以内に提出することなどを前提としており、ISP社の回答の品質や提出の遅れがNRCでの審査の遅延につながる可能性もあるとしている。

なお、ISP社の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書の審査については、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催要求が12件提出されている。NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、ヒアリングの開催を要求している者の当事者適格、及び提出された争点の有効性に係る口頭弁論を2019年7月10~11日に開催する予定である。

【出典】

 

【2019年8月26日追記】

原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、2019年8月23日に、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請について、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催を求めるシエラクラブ2 の申立てを認め、ヒアリングを開催することを決定した。ヒアリングの開催要求及び参加申立てについては、12の組織等から開催要求及び参加申立てが提出され、2019年7月10~11日に口頭弁論が行われた。ASLBは、シエラクラブを含めて4組織の当事者の適格性を認めたが、シエラクラブ以外の申立てについては、争点が有効と認められないとして否認された。なお、ASLBは、NRCから独立した行政判事団であり、参加申立てを行った者は、NRCの委員会に対してASLBの決定に関する不服申立てを行うことができる。

原子力安全・許認可委員会(ASLB)が有効と認めたシエラクラブの争点は、絶滅が危惧される2種類のトカゲの生息地に対する影響の可能性について、ISP社が提出した環境報告書(ER)では技術的な適切性が十分に説明されていないなどとするものである。ISP社の環境報告書(ER)においては、2種のトカゲの生息地に対する重大な影響はないとのISP社の見解をサポートする5つの研究が引用されているが、そのいずれもが公開されておらず、公衆による精査が不可能なことなどの理由から、有効な争点として認められた。なお、シエラクラブは全部で17件の争点を提出していたが、他の争点はすべて否認されている。

【出典】


  1. Orano USA社は、フランスの原子力総合企業であるOrano社(旧Areva社)の米国法人である。実際にWCS社との合弁会社であるISP社を設立したのは、Orano USA社の子会社であるOrano CIS LLCとなっている。 []
  2. 米国の市民参加型の環境団体 []

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2018年6月18日に、「地層処分場:性能確認モニタリング及び定置後の高レベル放射性廃棄物・使用済燃料の回収可能性」と題する報告書(以下「性能確認・回収可能性報告書」という。)を公表した。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性を評価することを職務として設置された独立の評価組織であり、性能確認・回収可能性報告書も連邦議会及びエネルギー長官に宛てられたものである。

性能確認・回収可能性報告書では、性能確認モニタリングと回収可能性に内在する課題等について、2018年3月27日に開催された放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)ミーティング(以下「NWTRB春期会合」という。)において、フランス、スイス、ベルギー、ドイツ、国際機関などの専門家からの見解をまとめるとともに、NWTRB春期会合での議論を踏まえたNWTRBとしての所見が示されている。NWTRBは、NWTRB春期会合の報告者に対して、以下の3つの質問に対応するよう求めていた。

  1. 操業時や性能確認のモニタリング及び回収可能性のために必要な要件は何か。
  2. これらの活動の実施において、技術的・制度的な課題となり得るものは何か。
  3. 国際的プログラムの教訓から、米国の地層処分場プログラムに適用可能なものは何か。

性能確認・回収可能性報告書では、NWTRB春期会合での見解や議論に基づくものとして、以下の所見が示されている。

  • 回収可能性は、処分場の初期設計における重要な検討事項であり、処分場開発費用への増加度合いは小さいにもかかわらず、仮に回収を考慮していなかった状態で回収が必要と決定された場合には、コスト及びスケジュールに対してより大きな影響を与えるものと考えられる。
  • 処分場の操業について評価し、操業や廃棄物回収に関する意思決定を支援するためのモニタリングも、処分場開発に不可分のものである。
  • モニタリングの目的と制約が理解され、方針変更や回収の必要性を示唆する指標が透明性を持ち、収集されたデータが実施主体と他のステークホルダーによる性能確認モデルでの使用や公衆の信任強化のために広く利用可能であることが重要である。
  • 地下研究所や処分場パイロット施設は、モニタリング技術や将来の回収可能性に対する信認及び技術的基盤を改善するものであり、社会的受容性の構築の実証サイトとして貢献し得る。
  • 現在の技術的な制約に対応するためには、モニタリング及びセンサー技術の長期的研究・開発・実証が必要である。
  • 処分場プログラムの実施及び意思決定に係る段階的アプローチは、意思決定を再評価して将来計画を修正する機会を提供するものとして重要である。
  • モニタリングデータの入手と解釈のための専門的な技術が利用可能となるように、将来世代への知識継承を図る方策が必要である。

性能確認・回収可能性報告書の結論では、他国における処分プログラムが処分場のモニタリングや廃棄物の回収可能性に係る教訓となることは明白であるとして、エネルギー省(DOE)が米国の地層処分場プログラムを推進する際に有益な情報を提供する目的で性能確認・回収可能性報告書を取りまとめたとしている。

【出典】

米国で2018年2月12日に、2019会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求概要資料が2018年2月15日に公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、前年度の予算要求と同様に「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムが設けられており、120,000千ドル(約136億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでも予算要求資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続の継続のための予算として、47,700千ドル(約53億9,000万円)が要求されている。

DOEの予算要求での「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムは、2018会計年度の予算要求と同様に、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続を復活させるというトランプ政権の決定を実施に移すものであり、処分場が開発されるまでの近い将来について、中間貯蔵の体制を確立するものとしている。なお、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動では、燃料サイクル研究開発プログラムの一部の「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)において、「同意に基づくサイト選定プロセスの構築」や「超深孔処分フィールド試験」などがオバマ政権の下で実施されていたが、IWMSプログラム自体の廃止が提案されている。ただし、IWMSプログラムに含められていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動の継続を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、47,700千ドル(約53億9,000万円)が計上されている。2019会計年度の主要な活動としては、裁判形式の裁決手続の再開準備、関連訴訟への参加と準備、許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)の再設置と維持、処分場地下操業エリア関連の規則策定活動の再開などが挙げられている。なお、これまでのNRCにおけるユッカマウンテン処分場に係る審査活動は、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内で限定的に行われていた

また、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2017会計年度と比較して78,767千ドル(約89億70万円)増の403,487千ドル(約455億9,400万円)の予算が要求されている。予算要求額には、地下施設の掘削活動と定置活動を同時に行うための換気システムや排気立坑の費用として約85百万ドル(約96億円)が含まれている。

ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州選出の連邦議会議員からは、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。一方、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡では、ユッカマウンテン関連予算の要求を歓迎する声明が出されている。

なお、2018会計年度の歳出予算については、2018年3月23日までの継続予算が執行されているが、DOEやNRCから要求されていたユッカマウンテン関連の予算は認められていない。なお、2018会計年度のエネルギー・水資源分野の歳出法案については、連邦議会下院ではユッカマウンテン計画の再開のための予算が計上された法案(H.R.3266)が可決されていたが、上院歳出委員会で採択された歳出法案(S.1609)では、ユッカマウンテン計画のための予算は計上されていなかった

【出典】

 

【2018年3月16日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2018年3月15日にDOEのウェブサイトにおいて、2019会計年度2 の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2019会計年度の予算要求については、2018年2月12日に大統領の予算教書が公表されたが、DOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムについて、2019会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(110,000千ドル(約124億円、1ドル=113円で換算))3

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略の構築

中間貯蔵(10,000千ドル(約11億3,000万円))4

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動・マイルストーン・リソースを含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2018会計年度予算要求ではプログラムの廃止が提案されていたが、2019会計年度のDOE予算要求資料では、高燃焼度燃料の性能の研究、及び使用済燃料等の大量輸送の準備を支援する研究開発を中心とした活動を行うとして、10,000千ドル(約11億3,000万円)の予算が計上されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、IWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

【出典】

 

【2018年5月17日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2018年5月16日に開催した法案策定会合において、2019会計年度5 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。

本歳出法案の草案では、エネルギー省(DOE)のユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として、DOEの予算要求額を100,000千ドル(113億円、1ドル=113円で換算)上回る220,000千ドル(248億6,000万円)が割り当てられている。また、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算としては、NRCの予算要求額と同じ47,700千ドル(約53億9,000万円)が割り当てられている。

また、歳出法案の草案では、2018会計年度の下院版の歳出法案と同様に、DOEに計上されたユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算の一部について、ネバダ州及び影響を受ける自治体等に対し、許認可活動への参加に係る費用などとして補助金等を支給することが規定されている。ただし、これらの支給された資金は、訴訟費用や中間貯蔵活動等には使用できないものとなっている。さらに、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じることも規定されている。

歳出法案の草案に付随する下院歳出委員会報告書では、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として、DOEの予算要求額を上回る62,500千ドル(70億6,250万円)が計上されている。また、電磁技術が放射性廃棄物問題の改善に適用可能かについて、上下両院の歳出委員会に報告書を提出することをエネルギー長官に指示している。歳出委員会への報告書では、電磁技術の科学的基盤、放射性廃棄物及びその米国内での貯蔵に対する効果、原子力産業へのメリット、国家安全保障に対して持つ意味について評価するものとされている。さらに、DOEが実施している使用済燃料の安全な輸送に係る研究開発の取組は重要であるとして、可能な限り早急に使用済燃料の移動が行えるよう取組の継続を求めている。

なお、2018年5月16日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2018年5月17日時点では公表されていない.。

【出典】

 

【2018年5月28日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2018年5月24日に、2019会計年度6 の「エネルギー・水資源開発歳出法案(S.2975)」(以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2019会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2018会計年度の歳出法案と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。また、2019会計年度の歳出法案では、エネルギー省(DOE)の予算要求段階では大幅削減及び廃止とされていたが、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発及び統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)プログラムの予算が、2018会計年度に近い水準で計上されている。なお、2019会計年度の歳出法案には、ユッカマウンテン関連の予算及び記述は盛り込まれていない。

下表は、上下両院の歳出委員会でそれぞれ承認され、上下両院の本会議に提出された2019会計年度の歳出法案について、高レベル放射性廃棄物関連の予算計上金額及び予算のポイントを示したものである。

項目 連邦議会上院の歳出法案 連邦議会下院の歳出法案

研究開発

62,500千ドル(70億6,250万円、1ドル=113円で換算)

62,500千ドル(70億6,250万円)

  • 使用済燃料処分等(UNFD)研究開発として、処分及び貯蔵・輸送に係る一般的な研究開発活動を継続するための予算を計上

地層処分

【予算計上なし】

220,000千ドル(248億6,000万円)

  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • ユッカマウンテン処分場計画の再開のため許認可活動予算等を計上

中間貯蔵

35,300千ドル(約39億8,900万円)

【予算計上なし】

  • 統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)として集中中間貯蔵計画の実施のための予算を計上
  • 予算金額のうち10,000千ドル(11億3,000万円)については、中間貯蔵に係る民間事業者との契約締結をエネルギー長官に許可
  • 中間貯蔵のパイロットプログラムの実施をエネルギー長官に命じる規定(第304条)
  • 中間貯蔵プログラムの実施に関する記述はなし

高レベル放射性廃棄物の規制

【予算計上なし】

47,700千ドル(約53億9,000万円)

  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • 原子力規制委員会(NRC)における許認可手続予算

今回、上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(上院版歳出法案(S.2975)第304条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

一方、2018年5月16日に下院歳出委員会で採択された下院版の2019会計年度の歳出法案(H.R.5895)では、高レベル放射性廃棄物に関連する条項が修正案として盛り込まれ、以下のような内容が規定されている。

再処理施設等の立地可能性の報告(下院版歳出法案(H.R.5895)第310条)

  • エネルギー長官は、ユッカマウンテンサイトの近傍において使用済燃料の再処理/リサイクル施設を立地する可能性に関する報告書を連邦議会に提出
  • 報告書では、使用済燃料の再処理/リサイクルに係る技術的便益、施設立地による地域への経済的便益、核燃料需給への国家安全保障上の意義、軍事用濃縮施設などその他施設の立地可能性について記載
  • 報告書策定に際しては、ネバダ州高等教育システム(NHES)研究所等と協議

今回、上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案に、ユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、ネバダ州選出のヘラー上院議員からは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。なお、ネバダ州選出のヘラー上院議員とマスト上院議員は、2018年5月17日に、上院歳出委員会に対し、ユッカマウンテンプロジェクトの予算を計上しないように求める連名の書簡を提出していた。

また、ネバダ州選出のローセン下院議員は、2018年5月24日のプレスリリースにおいて、下院本会議で2018年5月24日に可決された2019会計年度国防権限法案(NDAA、H.R.5515)において、ユッカマウンテンプロジェクトが空軍訓練活動等に与える影響に関する調査をエネルギー長官に指示する同議員の修正案が盛り込まれたことを伝えている。

【出典】

 

【2018年9月27日追記】

米国の連邦議会は、2018年9月13日に、2019会計年度7 のエネルギー・水資源開発分野を含むミニ包括歳出法案(H.R.5895、以下「歳出法案」という。)8 を可決し、2018年9月21日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.115-244)として成立した。今回成立した歳出法案(H.R.5895)は、2018年6月8日に連邦議会下院本会議で可決された後、2018年6月25日に、上院版歳出法案(S.2975)の内容に置き換えられた上で9 、連邦議会上院本会議で可決されていた。その後、両院協議会による修正案及び合同説明文書を含む両院協議会報告書(H.Rept.115-929、以下「両院協議会報告書」という。)が、2018年9月12日に連邦議会上院本会議で、2018年9月13日には連邦議会下院本会議で、それぞれ承認された。

2019会計年度の歳出法案においては、ユッカマウンテン処分場計画の再開のための予算がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)の予算要求に盛り込まれ、連邦議会下院で可決された段階でも要求を上回る予算が計上されていたが、最終的に成立した歳出法案ではユッカマウンテン関連の予算は計上されていない。高レベル放射性廃棄物関連の予算としては、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムとして、2018会計年度歳出予算 から約25%減の63,915千ドル(約72億2,240万円、1ドル=113円で換算)が計上されており、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求と同額の396,907千ドル(約448億5,050万円)が計上されている10

なお、2019会計年度の歳出法案にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、ネバダ州選出の連邦議会上院議員からは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。

その他、両院協議会報告書では、放射性廃棄物管理に関連するものとして、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)等の監視などを行っている国防核施設安全委員会(DNFSB)の機能の維持に関する規定、予定を含む廃止措置する原子力発電所の地元自治体が利用可能な官民の支援策に関してエネルギー長官に報告を命じる規定も盛り込まれている。

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  3. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  4. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  5. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  6. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  7. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  8. H.R.5895は、2019会計年度エネルギー・水資源開発歳出法案として下院歳出委員会で策定された後、立法府及び軍事建設・退役軍人に係る歳出法案を統合したミニ包括歳出法案として連邦議会両院で審議された。3分野の歳出法案のみの統合であることから、通常の包括(Omnibus)歳出法案に対し、ミニ包括(Minibus)歳出法案と呼ばれている。 []
  9. エネルギー・水資源開発以外の分野についても、それぞれ上院法案に置き換えられた。 []
  10. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOE予算要求書では保障措置・セキュリティ予算の一部として別途6,580千ドル(約7億4,350万円)が要求されていたが、両院協議会報告書では保障措置・セキュリティ予算の内訳が明示されていないため、保障措置・セキュリティ予算を除くWIPP関連の歳出予算額を示している。 []