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米国

カナダでの低・中レベル放射性廃棄物処分場の計画

カナダの低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場プロジェクトについては、許認可申請の前段階として、環境影響を審査する段階に入っている。カナダ環境評価局(CEAA)は、2月3日に、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が提出した環境影響評価書(EIS)及び予備的安全評価書等について、合同評価パネル(JRP)がパブリックコメントの募集を開始することを公表した。コメントの募集期間は最大で6カ月とされ、必要に応じ延長するとしている。

合同評価パネル(JRP)は、審査の開始に当たり、EIS等の概要についてOPG社などから説明を受けるためのオリエンテーション会議を2月21日に開催することとしている。オリエンテーション会議では、OPG社の他、カナダ原子力安全委員会(CNSC)によるプレゼンテーションも予定されている。

OPG社は、オンタリオ州キンカーディン自治体のブルース原子力発電所サイトで低・中レベル放射性廃棄物処分の実施を計画しており、地下約680mの石灰岩層に建設される地層処分場において、OPG社の原子力発電所から発生する約20万m3の低・中レベル放射性廃棄物を処分することとしている。また、OPG社が2011年4月に提出したEIS、予備的安全評価書等については、CNSCとCEAAが合同評価パネル(JRP)を設置して審査することとされ、2012年1月にはJRPの委員3名が任命されていた(2012年1月26日追記参照)。

米国での新たな低レベル放射性廃棄物処分場の操業開始

米国では、2011年11月10日に、テキサス州アンドリュースで低レベル放射性廃棄物のWCSテキサス処分場が操業を開始した。WCSテキサス処分場の操業者は、ウェイスト・コントロール・ スペシャリスト(WCS)社であり、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法で州または州が共同で処分を実施するとされた以降、初めて建設された低レベル放射性廃棄物処分場となる。

WCSテキサス処分場は、テキサス州とバーモント州で構成されるテキサス・コンパクト1 のクラスA・B・Cの低レベル放射性廃棄物2 と、エネルギー省(DOE)などの連邦政府の低レベル放射性廃棄物の処分を行うこととなっている。なお、WCSテキサス処分場では、テキサス・コンパクトを構成する州の他、現状でクラスB・Cの低レベル放射性廃棄物の処分ができない州でも、テキサス低レベル放射性廃棄物処分コンパクト委員会(TLLRWDCC)の特別な承認を受けることを前提として、クラスA・B・Cの低レベル放射性廃棄物を処分することが可能となっている。

なお、米国ではこの他に、以下の3カ所の民間低レベル放射性廃棄物処分場が操業されているが、処分可能廃棄物や受け入れ可能な州に制限がある。

処分可能廃棄物 受け入れ可能な州
バーンウェル処分場
(サウスカロライナ州)
クラスA・B・Cの低レベル放射性廃棄物 アトランティック・コンパクト(サウスカロライナ州、コネティカット州、ニュージャージー州)
リッチランド処分場
(ワシントン州)
クラスA・B・Cの低レベル放射性廃棄物 ノースウェスト・コンパクト(アラスカ州、ハワイ州、アイダホ州、モンタナ州、オレゴン州、ユタ州、ワシントン州、ワイオミング州)及びロッキーマウンテン・コンパクト(コロラド州、ネバダ州、ニューメキシコ州)
クライブ処分場
(ユタ州)
クラスAの低レベル放射性廃棄物 全ての州

【出典】


  1. 1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法では、低レベル放射性廃棄物は州が単独またはコンパクトと呼ばれる共同協定グループを形成し、コンパクトに加盟する州からの廃棄物の処分に責任を持つこととされている。 []
  2. 米国では、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法及び原子力規制委員会(NRC)の連邦規則(10 CFR Part 61)において、浅地中処分が可能な低レベル放射性廃棄物としてクラスA・B・Cの分類が定められている。また、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(GTCC廃棄物)は、連邦政府が処分を行うこととなっている。 []

「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)は、2012年1月26日に、米国の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の管理・処分に係る安全かつ長期的な解決策のための包括的な提案を示した最終報告書をエネルギー長官に提出した。ブルーリボン委員会は2011年7月にドラフト報告書を公表しており、最終報告書は、その後の意見募集を経て、委員会設置から2年以内という期限に合わせ、最終報告・提言が取りまとめられたものである。

最終報告書では、概ねドラフト報告書の内容が踏襲されているが、勧告された戦略の重要な要素として、「集中貯蔵施設や処分場が利用可能となった際に開始される使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の大規模な輸送のための迅速な取組」が追加され、8つのポイントが示されている(他の7点については既報参照)。ブルーリボン委員会のプレスリリースでは、最終報告で示した戦略における極めて重要な要素として、以下の3点の勧告が挙げられている。

  1. 州などの地元の意に反して強要する試みは成功しておらず、将来の放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分場の立地選定は同意に基づくアプローチとすること。
  2. 米国での高レベル放射性廃棄物管理プログラムの責任は、DOEから独立で、安全な貯蔵及び処分の確保に専念する新しい組織へ移すこと。
  3. 毎年約7.5億ドルの放射性廃棄物基金への拠出金の連邦予算上の取扱いを変更し、連邦議会の当初の意図通りに使用できるよう確保すること。

ブルーリボン委員会は、エネルギー長官に宛てた書簡において、勧告の多くは政府及び連邦議会による行動が必要とした上で、勧告の実施においてエネルギー省(DOE)に関連する全ての要素を調整するため、十分な権限を有する上級担当官を速やかに指名するよう要請している。また、最終報告書では、放射性廃棄物の安全かつ恒久的な解決策の決定は現世代の義務であるとして、新たな戦略の必要性は緊急課題としている。

なお、ブルーリボン委員会は最終報告書においても、ユッカマウンテンの適性について見解を示すこと、放射性廃棄物管理に係る特定サイトを提案すること、米国の将来のエネルギー供給上の原子力発電の役割について見解を示すことは、委員会の検討対象とされていなかったとしている。ブルーリボン委員会のプレスリリースでは、これらは何れも重要な課題ではあるが、放射性廃棄物管理のための戦略の変更・改善の緊急性を変えるものではなく、ブルーリボン委員会が成し遂げようと努力したのは、サイトに関わらず適用可能であり、現状の行き詰まりの解決につながる確実な放射性廃棄物管理アプローチの勧告であるとしている。

【出典】

【2012年2月9日追記】

米国連邦議会では、2012年1月26日のブルーリボン委員会の最終報告書の公表後、同報告書に関する公聴会が以下の委員会において開催された。これらの公聴会では、ブルーリボン委員会の2名の共同委員長などが出席して証言を行った。

  • 下院エネルギー・商務委員会、環境・経済小委員会(2012年2月1日開催)
  • 上院エネルギー・天然資源委員会(2012年2月2日開催)
  • 下院科学・宇宙・技術委員会(2012年2月8日開催)

このうち、2012年2月8日に行われた下院科学・宇宙・技術委員会の公聴会では、ブルーリボン委員会の共同委員長の他、エネルギー省(DOE)の原子力担当次官補が証言を行っており、2012会計年度のDOEの研究開発計画である「使用済燃料処分等プログラム」(UFD)における以下の処分関連の活動を紹介した。

  • 放射性廃棄物の発熱に対する岩塩の挙動を理解する最適なアプローチを決定するためのワークショップの開催
  • 産業界とともに、超深孔処分概念のための研究開発・実証計画やロードマップの策定の開始
  • 花崗岩及び粘土層での処分についての国際的なパートナーとの協力を拡大

さらに、原子力担当次官補は、2012会計年度の歳出法案に関する両院協議会報告書において、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後の6カ月以内に、使用済燃料などの管理戦略を策定するよう指示されていることを挙げ(2011年12月20日追記参照)、上記のDOEの研究開発活動は、DOEが進めている作業での重要な部分となるとした。

【出典】

【2012年3月9日追記】

ブルーリボン委員会が設置していた処分小委員会、原子炉・核燃料サイクル技術小委員会、輸送・貯蔵小委員会の3つの小委員会は、各々の最新版報告書を公表した。これらの小委員会は、2011年5月から6月にかけて、それぞれの勧告案を含むドラフト報告書を公表し、2011年7月15日までを最終締切として意見募集を行っていた(2011年6月21日追記参照)。また、2011年7月29日にブルーリボン委員会の委員会自体のドラフト報告書が公表され、2011年10月31日まで意見募集が行われていた

今回公表された3つの小委員会の最新版報告書は、小委員会及びブルーリボン委員会のドラフト報告書に対して寄せられた情報や意見を反映して改訂したものとされている。また、輸送・貯蔵小委員会の最新版報告書によると、2012年1月時点での小委員会の成果及び結論を中心に示しており、将来の使用済燃料等の輸送及び貯蔵に関する勧告の詳細を示しているとしている。このため、小委員会の最新版報告書は、ブルーリボン委員会の最終報告書を補完するものとしている。

【出典】

【2012年4月17日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2012年4月10日、ブルーリボン委員会の最終報告書に関するブリーフィングを開催した。本ブリーフィングでは、ブルーリボン委員会の共同委員長が最終報告書で示された8つの勧告について説明するとともに、NRCからこれらの勧告のNRCの活動への影響などについて説明が行われた。

本ブリーフィングにおいてNRCのヤツコ委員長は、ブルーリボン委員会の最終報告書での提案に関連し、一般的な地層処分場に適用する連邦規則である10 CFR Part 60「地層処分場における高レベル放射性廃棄物の処分」の改定作業を検討することを示した。なお、10 CFR Part 60は、1982年放射性廃棄物政策法においてNRCが策定することを求められているものであり、これに先立って1981年に最終版が策定された後、数度にわたって改定が行われている。

【出典】

【2012年9月14日追記】

連邦議会上院エネルギー天然資源委員会は、2012年9月12日、「2012年放射性廃棄物管理法案」に関する公聴会を開催した。この公聴会においてエネルギー省(DOE)の原子力担当次官補は、使用済燃料などの管理戦略が策定期限を過ぎた現在も提出されていないことについて、策定作業は終盤を迎えているが、現在も継続しており、終了する日を明確に示すことはできないなどと証言した。この使用済燃料などの管理戦略については、ブルーリボン委員会の最終報告書の公表後6カ月以内に策定するよう連邦議会が指示していたものである(2011年12月20日追記参照)

なお、今回の公聴会の主題である「2012年放射性廃棄物管理法案」は、ブルーリボン委員会の勧告を実施に移すための法案であり、新たな放射性廃棄物管理実施主体の設置や資金確保制度を変更する規定などを含んでいる。同法案は、現在の会期中での成立は見込まれておらず、今後の検討に資するためにエネルギー天然資源委員会委員長が提出していたものである。

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)の委員は、2011年9月9日付けの覚書及び命令において、エネルギー省(DOE)によるユッカマウンテン処分場の許認可申請の取下げ申請を認めないとしたNRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)の決定について、NRC委員の判断が分かれていることを示した上で、ASLBによる許認可申請書の審査活動は予算制約のため2011年9月末までに終結させることを指示した。

今回のNRCの覚書及び命令では、先ず、DOEによる許認可申請の取下げは認めないとした2010年6月29日のASLB決定を覆すか支持するかについて、委員の投票結果が賛否同数であることが示された。

その上でNRCの委員は、許認可支援ネットワーク(LSN)の閉鎖など、ASLBが予算上の制約から、許認可申請書の審査手続に係る情報保存のための措置を行ったことを示し、これをさらに強化するものとして、ASLBが本会計年度末(2011年9月末)までに全ての許認可申請書の審査活動を終結し、審査手続に係る全ての経緯を記録することを委員会の監督権限に基づき指示した。

このNRCの覚書及び命令について、連邦議会上院の実質トップであるリード上院議員(民主党、ネバダ州選出)は、2011年9月9日のプレスリリースにおいて、ユッカマウンテン計画はさらに終末に近づいたとの声明を出している。一方、連邦議会下院エネルギー・商務委員会のプレスリリースでは、ユッカマウンテンの許認可申請は引き続き有効であることが確認されたとして、下院本会議ではDOEとNRCの許認可活動手続に予算を増額する法案が超党派で可決されたことを含め、ユッカマウンテン計画への支持を表明している。

なお、米国における処分場開発について規定する1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)では、NRCはDOEによる許認可申請を原則として3年間で審査することが規定されている(最大で4年間に延長することが可能)。NRCは、2008年9月8日に、DOEによる許認可申請書を受理していた

【出典】

 

【2011年9月15日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2011年9月13日付プレスリリースにおいて、2011年9月末のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続きの停止に向けた作業が計画通りに進んでいることを公表した。また、NRCは、停止に向け行われてきた具体的な作業として、以下を示している。

  • NRCの核物質安全・保障措置局(NMSS)、及び支援機関である放射性廃棄物規制解析センター(CNWRA)が46本のレポートを作成(25年間の許認可前フェーズ、許認可フェーズで得られた情報(溶岩流の冷却プロセス、アロイ22及びチタン製ドリップシールドの腐食、マグマと廃棄物コンテナとの相互影響など))
  • ネバダ州ラスベガスのヒアリングルームを廃止。機器の移管、寄贈。
  • 許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)の閉鎖。保存文書等の光学メディアによるNRCへの提出。
  • 原子炉安全・許認可委員会(ASLB)での審議内容の経過についての編纂

【出典】

【2011年10月5日追記】

原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、2011年9月30日付けの覚書及び命令において、高レベル放射性廃棄物のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続きについて、一時停止することを指示した。

2010年6月29日にASLBがDOEによる許認可申請の取下げ申請を認めないとしたASLB決定については、これに対するNRC委員の投票結果が賛否同数であったため、現在もASLB決定が有効であるとしている。その上で、ASLBは、今後の許認可手続きのための予算措置や人員確保が定かではないため、NRCの委員による2011年9月9日付けの覚書及び命令に従って、許認可申請書の審査手続きを一時停止するとしている。

【出典】

【2012年5月22日追記】

原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長は、2012年5月21日付のプレスリリースにおいて、委員長を辞する意向を表明した。ヤツコ委員長は、後任が決定次第、委員長を辞任するとしており、また、委員を辞任することも示唆している。したがって、後任の決定まではその職に留まることとなる。なお、ヤツコ委員長の5年間の委員としての任期は2013年6月30日まで残っている。

NRCの委員は、大統領の指名の後、連邦議会上院の承認により任命される。また、大統領は委員の1名を委員長として指名することとなっている。

【出典】

【2012年7月2日追記】

米国の連邦議会上院は、2012年6月29日に、2012年5月に辞意を表明していた原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長の後任となるマクファーレン氏を承認した。今後、大統領の指名を受けてNRCの委員長にも就任する予定である。マクファーレン氏は、ジョージメイソン大学環境科学政策准教授であり、エネルギー長官が設置した「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」の委員も務めていた。

【出典】

米国の核燃料サイクルのバックエンド政策の包括的な評価を行う「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)は、2011年7月29日に、設立趣意書において18ヶ月以内に提出が求められていたドラフト報告書を公表した。ブルーリボン委員会では、2011年5月13日の全体会合において、3つの小委員会の勧告案を公表し、その後、各小委員会のドラフト報告書をパブリックコメントに付しており、今回のドラフト報告書は、ここで得られた意見を反映するなどにより作成されたものである。

ブルーリボン委員会のドラフト報告書では、核燃料サイクルのバックエンドの管理に関して、新たに包括的な戦略が必要であり、特に放射性廃棄物の貯蔵施設及び処分施設の立地のための新たなアプローチが必要としている。勧告された戦略には、以下の7つの重要な要素が含まれているとしている。

  1. 適応性があり、段階的で、同意に基づき、透明性があり、基準及び科学に基づいて、放射性廃棄物管理及び処分施設を立地し、開発するためのアプローチ
  2. 米国での放射性廃棄物の輸送、貯蔵及び処分のため、集中的で、統合されたプログラムを開発し、実施するための新しい、単一目的の組織
  3. 放射性廃棄物管理プログラムによる、放射性廃棄物基金の残高と毎年の放射性廃棄物拠出金の利用の保証
  4. 使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の安全な処分のための1つまたは複数の恒久的な地層処分施設の開発のための、可能な限り迅速な取組
  5. 核燃料サイクルのバックエンドの管理のための統合された包括的な計画の一部として、1つまたは複数の集中中間貯蔵施設の開発のための、可能な限り迅速な取組
  6. 現在の利用可能な技術に比較してかなりの利点を提供し、関連した人的ニーズ及びスキル開発の可能性がある、先進的な原子炉及び核燃料サイクル技術に関する研究開発・実証のための安定した長期的なサポート
  7. 地球規模の核不拡散に対応し、全世界の原子力施設及び核物質の安全性及びセキュリティを向上させるための国際的なリーダーシップ

また、ブルーリボン委員会の報告書では、これらの勧告の実現のため、1982年放射性廃棄物政策法及び他の関連法令の改正などの立法措置が必要であるとしている。

  • 新たな処分施設のサイト選定プロセスを確立する
  • 複数の集中中間貯蔵施設のサイト選定、許認可及び建設を認める
  • 新たな廃棄物管理組織を設立する
  • 専用の資金の利用を可能とする
  • 安全な放射性廃棄物管理をサポートするための国際的な取組の推進

一方、放射性廃棄物管理プログラムを再び軌道に乗せるため、放射性廃棄物管理施設のサイト選定に関して、以下に示す事項については、立法措置を待たずに迅速な行動が可能であるとしている。

  • 基本的な初期サイト選定基準を開発すること
  • サイト選定の初期において、一般的な基準を開発し、規制要件のサポートとすること
  • 潜在的な適性を有するサイトを持つような様々な地域からの関心表明を奨励すること
  • サイト選定プログラムの初期のマイルストーンを設定すること

なお、ブルーリボン委員会は、以下の点については検討対象でなかったため、取り扱わなかったとしている。

  • ユッカマウンテンサイトの適性、またはユッカマウンテン処分場の許認可申請の取り下げ申請に対する意見
  • 放射性廃棄物管理システムの構成施設のための特定サイトの提案
  • 米国の将来のエネルギーミックスにおける原子力発電の適切な役割についての判断

ブルーリボン委員会は、今回公表したドラフト報告書に対する意見募集を2011年10月31日まで行うこととしている。なお、ブルーリボン委員会は、設置から24ヶ月以内(2012年1月29日まで)に最終報告書を作成することとされている

【出典】

米国の連邦控訴裁判所1 は、2011年7月1日に、エネルギー省(DOE)によるユッカマウンテン処分場の許認可申請の取下げ申請の可否について、サウスカロライナ州エイケン郡、民間人3名、サウスカロライナ州、ワシントン州が起こした訴訟を併合して手続きを進めきたが、今般、これらの訴えを却下する判決を行った

今回の却下の判決において連邦控訴裁判所は、2010年6月29日に、原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)が、DOEによる許認可申請の取下げ申請を認めないと決定したことについて、NRCの委員会がASLBの決定の再審理を行わない場合、またはNRCの委員会が再審理を行い、ASLBの決定を支持した場合に争訟性は失われるとしている。また、NRCの委員会がASLBの決定を再審理し、決定を覆す判断を行った場合にのみ争訟性があるとしている。このため、許認可申請の取下げ申請の可否に関する訴えについて、予測されたように起こらない可能性のある、または全く起こらない可能性のある将来の不確定な事象に基づいているとして、司法判断に適していないとしている。

【出典】

DC巡回区控訴裁判所、判決(2011年7月1日)


  1. 連邦控訴裁判所のうち、コロンビア特別区(DC)巡回区控訴裁判所が担当(米国の首都ワシントンDC地区における訴訟事件を取り扱う)。 []

「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)は、2011年5月13日に、全体会合を開催し、処分小委員会、原子炉・核燃料サイクル技術小委員会、輸送・貯蔵小委員会からの各々の勧告案の検討を行った。

処分小委員会は、「技術的、社会的、経済的及び政治的に受け入れられる方法及び時間枠の中で、高レベル放射性廃棄物の恒久的な処分のための1つまたは複数の施設を設置することについて、如何に取り組むことができるか」との設問に対して、以下のような7項目からなる勧告案を提示した。

勧告1
  • 米国は、速やかに、高レベル放射性廃棄物の安全な処分のための1つまたは複数の恒久的な地層処分施設の開発を進めるべきである。
    • 恒久的な処分は、すべての合理的に予見できるシナリオの下で必要とされる。
  • 掘削された処分場での地層処分が、高レベル放射性廃棄物を長期間安全に隔離するために利用可能であり、最も有望で技術的に受入可能なオプションである。
勧告2
  • 放射性廃棄物の輸送、貯蔵及び処分のための焦点が絞られ、統合された計画の開発及び実施のため、新しい、単一の目的の組織が必要である。
  • この新しい組織は以下を有するべきである。
    • 焦点を絞り、適切に定義された使命
    • 任務を果たすための財政及び制度化された手段
    • 長期間にわたり制度的及び計画的な安定性を提供するため、十分に独立した権限(財政上、技術上、規制上の適切な監督を受ける)
  • 連邦議会は、新しい廃棄物管理組織の説明責任の確保に対して中心的な役割を担う。
勧告3
  • 放射性廃棄物基金の積立金及び料金支払者や電気事業者からの毎年の基金への拠出金による収入へのアクセスを保証することは、新しい放射性廃棄物管理組織にとって不可欠であり、提供されなければならない。
勧告4
  • 将来において放射性廃棄物管理及び処分施設を立地し、開発するためには、新しいアプローチが必要である。すべての当該施設のためのサイト選定プロセスは、以下のような場合、成功する可能性が高いと確信する。
    • 同意に基づく
    • 透明性が高い
    • 段階的な
    • 適応性のある
    • 基準及び科学に基づく
勧告5
  • 原子力規制委員会(NRC)と環境保護庁(EPA)との規制責任に係る現在の分担は、適切であり維持すべきである。
  • 加えて、これら2つの組織により、サイトに依存しない新しい安全基準が、すべての関連する団体を関与させてインプットを求め、公式に調整された共同プロセスの中で開発されることを要請する。
勧告6
  • 放射性廃棄物処分施設の立地及びその他の側面において、地方、州及び先住民族政府の役割、責任、権限は、連邦政府と処分施設の設置により影響を受ける自治体との間の交渉での一つの要素となる。
  • 地方、州、先住民族等の影響を受けるすべての階層の政府は、最低限、重要な意思決定において意味のある協議上の役割を持つべきである;加えて、州及び先住民族は、連邦より下の階層での監督が効果的に、かつ影響を受ける自治体及び市民の利益を守り、信頼を獲得する上で助けとなるように実施できる場合は、規制、許認可、操業の面にわたる直接的な権限を保持(または適切な場合、委任)すべきである。
勧告7
  • 放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、独立した技術的な助言及びレビューの貴重な組織として維持されるべきである。
  • 構成員は、慎重に考慮された、関連のある様々な専門性を有す科学者及びエンジニアを代表すべきである。

また、原子炉・核燃料サイクル技術小委員会は、以下のような勧告案を提示した。

  • 米国政府は、先進炉や核燃料サイクル技術に対する長期的に安定した研究、開発及び実証のための支援を行うべきである。
  • 連邦レベルでのエネルギー政策やプログラムをよりよく調整する必要がある。
  • 連邦の原子力研究、開発及び実証のための資源の一部は、NRCによる先進原子力システムの新しい要素に対する規制枠組みの開発の促進及び予測される研究の支援に向けられるべきである。
  • 米国は、世界的な核不拡散の懸念に対応するための国際的な取り組みにおいて、リーダーとしての役割を継続すべきである。

さらに、輸送・貯蔵小委員会は、以下のような勧告案を提示した。

  • 米国は、速やかに、一つまたは複数の集中中間貯蔵施設を設置すべきである。
  • 既存サイトでの貯蔵方法に関連し、管理不能となるような、安全、またはセキュリティ面でのリスクは存在しない。
  • 現在、廃止措置された原子力発電サイトで貯蔵されている使用済燃料は、利用可能となり次第、最優先で集中貯蔵施設に移すべきである。
  • 米国の放射性廃棄物プログラムを活性化するため、新たな統合された国家レベルのアプローチが必要である。
  • 処分施設のサイト選定及び開発の原則は、中間貯蔵施設、及び輸送の必要性に関する計画策定に対しても適用すべきである。

なお、ブルーリボン委員会は、設置から1年半以内(2011年7月末まで)にエネルギー長官に対してドラフト報告書の提出を行い、2年以内(2012年1月末まで)に最終報告書を提出することとされている

【出典】

【2011年6月21日追記】

ブルーリボン委員会では、2011年5月13日の全体会合において、3つの小委員会からの勧告案が示されていたが、今般、これらの勧告案を含めた各々の小委員会のドラフト報告書が公表された。今後、2011年7月29日には、ブルーリボン委員会全体としてのドラフト報告書を出す予定となっている。
ブルーリボン委員会全体のドラフト報告書の取りまとめに当たって、各小委員会のドラフト報告書をパブリックコメントに付すこととしており、パブリックコメントの期限は、処分小委員会及び輸送・貯蔵小委員会のドラフト報告書については2011年7月1日まで、原子炉・核燃料サイクル技術小委員会のドラフト報告書については2011年7月15日までとされている。

【出典】

米国の連邦議会下院のエネルギー・商務委員会は、2011年3月31日付プレスリリースにおいて、オバマ政権がユッカマウンテン計画を中止すると決定したプロセスに関する調査の開始を通知したことを公表するとともに、エネルギー長官及び原子力規制委員会(NRC)の委員長に宛てた書簡を掲載した。

プレスリリースによると、日本における地震と津波の影響及び損傷を受けた原子炉の状況に鑑み、連邦議会は、使用済燃料の唯一の処分サイトの開発を中止するとしたオバマ政権の決定についての説明を求めるとしている。

また、エネルギー・商務委員会がエネルギー長官に宛てた書簡では、オバマ政権による以下の決定に関する情報を提供するように求めている。

  • ユッカマウンテン処分場の建設認可に関して、NRCが審査中の許認可申請を取り下げたこと
  • 許認可申請の取り下げ申請に関する訴訟が未解決であるにも関わらず、エネルギー省(DOE)がユッカマウンテン計画のサポートを中止したこと

さらに、エネルギー長官に宛てた書簡では、1982年放射性廃棄物政策法に基づくDOEの義務及び責任の実施状況の評価のため、また、DOEが、DOEや納税者の債務の増加につながる活動を行っていないかを判断するため、必要なすべての情報を要求している。

一方、エネルギー・商務委員会がNRCの委員長に宛てた書簡では、以下に関連してNRCの委員長及びNRCが行った特定の行為に疑問があるとしている。

  • NRCが審査中のユッカマウンテン処分場の建設認可に関して、許認可申請の取り下げの提案
  • NRCの全委員が予算の打ち切りを決定していない段階で、NRCのスタッフによる技術的及び安全レビューを含む、ユッカマウンテン処分場の許認可申請の許認可手続きに対する予算打ち切り及び手続きの中止

また、NRCの委員長に宛てた書簡では、1982年放射性廃棄物政策法に基づく法律上の義務及び責任に係るNRCの遂行状況の評価のため、NRCによる決定が、NRCの手続きに従ったものであるのか、また、政策上、法律上及び予算上の影響についての情報及び検討を含んだものであるのかを評価するため、必要な情報を求めるとしている。

さらに、NRCの委員長に宛てた書簡では、NRCの委員長及びNRC、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)が行った行為及び決定を含め、ユッカマウンテンの許認可申請書に関するすべての行為・決定を時系列で示すことなど、7項目に要求を2週間以内に文書で回答することを求めている。

ユッカマウンテン処分場の開発に関して、DOEは、2010年3月3日、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)に対して許認可申請を取り下げる申請書を提出していた。この取り下げ申請に対して、ASLBは、2010年6月29日に、申請を認めない決定を下したが、現在までのところNRCの最終判断は示されていない。また、NRCの委員長は、独自の判断に基づいて、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の技術的な審査を停止するよう、NRCスタッフに指示していた。さらに、2012会計年度の予算要求に関しては、歳出法案が成立していないものの、ユッカマウンテン処分場開発関連及びNRCの処分場の許認可申請書の審査に係る予算はゼロとされている

【出典】

米国の核燃料サイクルのバックエンド政策の包括的な評価を行う「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」(以下「ブルーリボン委員会」という)は、2011年3月25日、ブルーリボン委員会がこれまでに受けた証言やコメントの主要な論点を取りまとめた報告書(以下「証言等報告書」という)を公表した。証言等報告書は、ブルーリボン委員会が事務局に対して作成を指示したものであり、ブルーリボン委員会の設置から1年半以内にエネルギー長官に対してドラフト報告書の提出を行うこととされているが、ドラフト報告書を検討する上で、ステークホルダや公衆の主要な懸案事項を認識していることを確認するためのものとしている。

ブルーリボン委員会は、証言等報告書の公表により、以下のことを期待しているとしている。

  • これまでにブルーリボン委員会に対して意見を表明した個人や組織に対して、主要な主張が理解されているかを確認する。また、反映されていない点を主張する機会を与える。
  • ブルーリボン委員会の活動に関心を有しているが、これまでに意見などを表明していない個人や組織に対して、見落とされている課題として、ブルーリボン委員会がエネルギー長官への報告を準備する際に考慮すべきと考えられる点を提起する機会を与える。

証言等報告書では、以下の7つのテーマごとに、ブルーリボン委員会がこれまでに聴取した主な論点が示されている。

  1. 計画のガバナンス・実施
  2. 放射性廃棄物の拠出金及び基金
  3. サイト選定のアプローチ
  4. 原子炉及び核燃料サイクルの技術
  5. 高レベル放射性廃棄物の輸送
  6. 使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵
  7. 高レベル放射性廃棄物の処分システム

主な論点のうち、サイト選定のアプローチに関しては、サイト選定プロセスにおいて信頼の構築、詳しい説明による合意形成、地域社会の関与が強調されるべきであり、これらはサイト選定だけでなく、貯蔵及び処分施設の建設、操業においても強調されるべきものであるなどの証言があったとされている。また、高レベル放射性廃棄物の処分システムに関しては、使用されている原子炉や核燃料サイクル技術によらず、特定の放射性廃棄物は長期的な隔離が必要であることが、米国だけでなく、国際的にコンセンサスが得られている考え方であるといった意見があったとされている。

今後、証言等報告書及び報告書に対して寄せられた意見は、ブルーリボン委員会がエネルギー長官への勧告案を策定するに当たってオプションの精査を行うために活用するとしている。

【出典】

米国のエネルギー省(DOE)は、2011年2月25日付連邦官報において、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(以下「GTCC廃棄物」1 の処分オプションに関するドラフト環境影響評価書(DEIS)を公表し、DEISに対する公聴会の開催及び意見募集の開始を告示した。今回のDEISでは、GTCC廃棄物に適用される複数の処分方策を提示しているが、最終的な特定には至っていない。処分方策を含む望ましい管理方策は最終環境影響評価書(FEIS)において提示する予定としている。

同DEISでは、GTCC廃棄物の将来の管理方策について、以下のように、現行の管理の継続という選択肢に加えて、4つの処分方策に関する評価が行われたことが示されている。

  1. 現行の管理の継続(現在実施されているGTCC廃棄物発生施設等での貯蔵の継続)
  2. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)での処分
  3. ハンフォード・サイト、アイダホ国立研究所、ロスアラモス国立研究所、ネバダテストサイト、WIPP近傍やその他商業サイトにおける、新たな中深度ボーリング孔での処分
  4. 上記3.で示したサイトにサバンナリバー・サイトを加えたサイトにおける、新たな強化型浅地中処分施設で処分
  5. 上記4. で示したサイトにおける、新たなボールト処分施設で処分(地表面下約5mのボールトに処分)

GTCC廃棄物の処分のオプションに関する環境影響評価については、DOEが、2007年7月20日に実施することを公表しており、評価対象の一つとしてユッカマウンテン処分場での地層処分を示していた。しかし、オバマ政権が、ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物の処分場開発が実行可能なオプションではなく、同計画は中止すべきであるとする方針を示していた。そのため、ユッカマウンテンにおいてGTCC廃棄物専用の処分場を建設するのは合理的なオプションではないとして、ユッカマウンテン処分場はGTCC廃棄物の処分オプションの評価対象とされていない。

また、DOEは、DEISに対する意見募集を2011年7月23日まで行い、さらに、2011年4月19日から5月25日の間に、9か所で公聴会を開催するとしている。

DEISでは、DOEがFEISにおいて示す望ましい管理方策は、複数の方策を組み合わせたものとなる可能性も示されている。また、望ましい管理方策は、DOEの役割及び責任を満たすものとして、以下を考慮に入れて特定するとしている。

  1. DEISに対する意見募集期間中に寄せられた意見
  2. DOE及び原子力規制委員会(NRC)の低レベル放射性廃棄物処分の要件(10 CFR Part 61及びDOE指令435.1)
  3. DEISに示された環境、技術、経済面及びその他の知見

DEISで検討された「GTCC廃棄物の将来の管理方策」の概念
図:GTCC廃棄物等に対するドラフト環境影響評価書 概要(DOE、2011年2月)より引用
処分方策1 処分方策2 処分方策3 処分方策4

DEISにおいて評価対象とされたWIPP処分場の鳥瞰図

DEISにおいて評価対象とされたWIPPの鳥瞰図

中深度ボーリング孔での処分

中深度ボーリング孔での処分

強化型浅地中処分施設で処分

強化型浅地中処分施設で処分

ボールト処分施設

ボールト処分施設

 

【出典】

 

【2013年7月23日追記】

米国のエネルギー省(DOE)の国家環境政策法(NEPA)の担当部署であるNEPA政策・コンプライアンス局は、クラスCを超える低レベル放射性廃棄物(以下「GTCC廃棄物」という。)の処分に関する最終環境影響評価書(FEIS)を2013年9月に公表するとした、2013年7月15日付けの主要スケジュールを公表した。

GTCC廃棄物処分については、2011年3月にドラフト環境影響評価書(DEIS)において複数の処分方策を提示した上で、2011年4月から5月に全米各地で公聴会を開催していたが、FEISの作成・公表は当初予定より遅延し、未定となっていたものである。

GTCC廃棄物処分の担当部署であるDOEの環境管理局(EA)は、GTCC廃棄物に関する特設サイトを開設して種々の情報を提供しているが、DEISの公聴会の発言録も本サイトで公表している。なお、DEISでは、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)での処分がGTCC廃棄物に関する管理の選択肢の一つとなっているが、WIPPの地元であるニューメキシコ州カールスバッドにおいて2011年4月26日に行われた公聴会の発言録には、GTCC廃棄物の処分場を誘致する主旨の発言が見られる。

【出典】

 


  1. 米国では、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法及び同法に基づく原子力規制委員会の連邦規則(10 CFR Part 61)において、地下30m以浅に処分が可能な低レベル放射性廃棄物としてクラスA、B、Cの分類が定められている。GTCC廃棄物は、放射能濃度などがクラスCの制限値を超える放射性廃棄物で、同法・規則に基づいて操業されている低レベル放射性廃棄物処分場での処分は行えないものである。「GTCC」はGreater Than Class C(クラスCを超える)の略。 []

2010年2月14日、米国で2012会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。

DOEの予算要求資料では、2010会計年度末までに、ユッカマウンテンプロジェクトは中止され、DOEの民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)は閉鎖されたとして、ユッカマウンテン処分場開発の予算要求額はゼロとなっている。また、オバマ政権がユッカマウンテン処分場開発は実行可能なオプションではないと決定し、2010会計年度中に処分場の許認可申請の取り下げ申請書を原子力規制委員会(NRC)に提出するとともに、放射性廃棄物管理及び処分の新たな戦略を策定しながら政権に報告するブルーリボン委員会を設置したとしている。

また、ユッカマウンテン処分場の許認可申請書の審査を行っているNRCは、許認可申請書の審査の中止作業が2012会計年度開始までに終了するとの理由から、2012会計年度の予算要求をゼロとしている。

一方、DOEのユッカマウンテン処分場開発関連の予算については、2011会計年度の予算要求においてもゼロとされていた。その後、連邦議会では、2011会計年度の歳出法案は可決されておらず、4度の継続予算決議が行われ、現在は2011年3月4日までの継続予算が成立している。

連邦議会下院歳出委員会は、2011年2月11日、2011会計年度の残りの期間を対象とした継続予算法案を提出した。同法案において、ユッカマウンテン処分場開発関連予算は、2010会計年度の歳出予算額から280万ドル削減された金額となっている。また、同法案では、NRCの委員が、NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)による処分場の許認可申請の取り下げを認めないとする決定を破棄するまで、処分場の許認可申請の審査に関連した活動を中止する目的で、予算が使用されることを禁止するとしている。

【出典】

【2011年4月19日追記】

2011年4月14日、米国の連邦議会は、2011会計年度の2011年9月30日までを対象とした継続歳出法案を可決した。同法案では、エネルギー省(DOE)に対するユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分場開発関連予算はゼロとされている。その他の高レベル放射性廃棄物関連では、原子力規制委員会(NRC)に対して放射性廃棄物基金から1,000万ドルが割り当てられている。なお、2011年2月11日に下院歳出委員会が提出した継続予算法案においては、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請の取り下げ申請を認めないとするNRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)の決定をNRCの委員が破棄するまで、許認可申請の審査に関連する活動の中止のために予算を使用することを禁止するとされていた。しかし、今回可決した継続歳出法案では、使途などについては記されていない。

【出典】

【2011年12月20日追記】

2011年12月17日、米国連邦議会は、エネルギー省(DOE)の歳出予算などを含む2012会計年度の一括歳出法案を可決した。同法案では、ユッカマウンテンでの高レベル放射性廃棄物処分場に係る開発関連予算はゼロとされている。また、DOEに対しては、ブルーリボン委員会の2012年1月29日に予定されている最終報告書の公表後6カ月以内に、使用済燃料などの管理戦略を策定するよう指示している。なお、同法案では、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場に係る許認可審査関連費用についても、予算が割り当てられていないものとなっている。

【出典】


  1. 米国における会計年度は前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2012会計年度の予算は2011年10月からの1年間に対するものである。
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