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《米国》2019会計年度の予算要求-ユッカマウンテン許認可手続の再開等に係る予算を要求

米国で2018年2月12日に、2019会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求概要資料が2018年2月15日に公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、前年度の予算要求と同様に「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムが設けられており、120,000千ドル(約136億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでも予算要求資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続の継続のための予算として、47,700千ドル(約53億9,000万円)が要求されている。

DOEの予算要求での「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムは、2018会計年度の予算要求と同様に、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続を復活させるというトランプ政権の決定を実施に移すものであり、処分場が開発されるまでの近い将来について、中間貯蔵の体制を確立するものとしている。なお、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動では、燃料サイクル研究開発プログラムの一部の「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)において、「同意に基づくサイト選定プロセスの構築」や「超深孔処分フィールド試験」などがオバマ政権の下で実施されていたが、IWMSプログラム自体の廃止が提案されている。ただし、IWMSプログラムに含められていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動の継続を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、47,700千ドル(約53億9,000万円)が計上されている。2019会計年度の主要な活動としては、裁判形式の裁決手続の再開準備、関連訴訟への参加と準備、許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)の再設置と維持、処分場地下操業エリア関連の規則策定活動の再開などが挙げられている。なお、これまでのNRCにおけるユッカマウンテン処分場に係る審査活動は、過年度の歳出予算の未使用残高の範囲内で限定的に行われていた

また、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2017会計年度と比較して78,767千ドル(約89億70万円)増の403,487千ドル(約455億9,400万円)の予算が要求されている。予算要求額には、地下施設の掘削活動と定置活動を同時に行うための換気システムや排気立坑の費用として約85百万ドル(約96億円)が含まれている。

ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州選出の連邦議会議員からは、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。一方、ユッカマウンテンが立地するネバダ州ナイ郡では、ユッカマウンテン関連予算の要求を歓迎する声明が出されている。

なお、2018会計年度の歳出予算については、2018年3月23日までの継続予算が執行されているが、DOEやNRCから要求されていたユッカマウンテン関連の予算は認められていない。なお、2018会計年度のエネルギー・水資源分野の歳出法案については、連邦議会下院ではユッカマウンテン計画の再開のための予算が計上された法案(H.R.3266)が可決されていたが、上院歳出委員会で採択された歳出法案(S.1609)では、ユッカマウンテン計画のための予算は計上されていなかった

【出典】

 

【2018年3月16日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2018年3月15日にDOEのウェブサイトにおいて、2019会計年度1 の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2019会計年度の予算要求については、2018年2月12日に大統領の予算教書が公表されたが、DOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムについて、2019会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(110,000千ドル(約124億円、1ドル=113円で換算))2

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略の構築

中間貯蔵(10,000千ドル(約11億3,000万円))3

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動・マイルストーン・リソースを含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2018会計年度予算要求ではプログラムの廃止が提案されていたが、2019会計年度のDOE予算要求資料では、高燃焼度燃料の性能の研究、及び使用済燃料等の大量輸送の準備を支援する研究開発を中心とした活動を行うとして、10,000千ドル(約11億3,000万円)の予算が計上されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、IWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

【出典】

 

【2018年5月17日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2018年5月16日に開催した法案策定会合において、2019会計年度1 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。

本歳出法案の草案では、エネルギー省(DOE)のユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算として、DOEの予算要求額を100,000千ドル(113億円、1ドル=113円で換算)上回る220,000千ドル(248億6,000万円)が割り当てられている。また、原子力規制委員会(NRC)のユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可手続の予算としては、NRCの予算要求額と同じ47,700千ドル(約53億9,000万円)が割り当てられている。

また、歳出法案の草案では、2018会計年度の下院版の歳出法案と同様に、DOEに計上されたユッカマウンテン関連の高レベル放射性廃棄物処分予算の一部について、ネバダ州及び影響を受ける自治体等に対し、許認可活動への参加に係る費用などとして補助金等を支給することが規定されている。ただし、これらの支給された資金は、訴訟費用や中間貯蔵活動等には使用できないものとなっている。さらに、ユッカマウンテン計画の中止に繋がる活動への歳出を禁じることも規定されている。

歳出法案の草案に付随する下院歳出委員会報告書では、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として、DOEの予算要求額を上回る62,500千ドル(70億6,250万円)が計上されている。また、電磁技術が放射性廃棄物問題の改善に適用可能かについて、上下両院の歳出委員会に報告書を提出することをエネルギー長官に指示している。歳出委員会への報告書では、電磁技術の科学的基盤、放射性廃棄物及びその米国内での貯蔵に対する効果、原子力産業へのメリット、国家安全保障に対して持つ意味について評価するものとされている。さらに、DOEが実施している使用済燃料の安全な輸送に係る研究開発の取組は重要であるとして、可能な限り早急に使用済燃料の移動が行えるよう取組の継続を求めている。

なお、2018年5月16日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2018年5月17日時点では公表されていない.。

【出典】

 

【2018年5月28日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2018年5月24日に、2019会計年度1 の「エネルギー・水資源開発歳出法案(S.2975)」(以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2019会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2018会計年度の歳出法案と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。また、2019会計年度の歳出法案では、エネルギー省(DOE)の予算要求段階では大幅削減及び廃止とされていたが、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発及び統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)プログラムの予算が、2018会計年度に近い水準で計上されている。なお、2019会計年度の歳出法案には、ユッカマウンテン関連の予算及び記述は盛り込まれていない。

下表は、上下両院の歳出委員会でそれぞれ承認され、上下両院の本会議に提出された2019会計年度の歳出法案について、高レベル放射性廃棄物関連の予算計上金額及び予算のポイントを示したものである。

項目 連邦議会上院の歳出法案 連邦議会下院の歳出法案

研究開発

62,500千ドル(70億6,250万円、1ドル=113円で換算)

62,500千ドル(70億6,250万円)

  • 使用済燃料処分等(UNFD)研究開発として、処分及び貯蔵・輸送に係る一般的な研究開発活動を継続するための予算を計上

地層処分

【予算計上なし】

220,000千ドル(248億6,000万円)

  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • ユッカマウンテン処分場計画の再開のため許認可活動予算等を計上

中間貯蔵

35,300千ドル(約39億8,900万円)

【予算計上なし】

  • 統合放射性廃棄物管理システム(IWMS)として集中中間貯蔵計画の実施のための予算を計上
  • 予算金額のうち10,000千ドル(11億3,000万円)については、中間貯蔵に係る民間事業者との契約締結をエネルギー長官に許可
  • 中間貯蔵のパイロットプログラムの実施をエネルギー長官に命じる規定(第304条)
  • 中間貯蔵プログラムの実施に関する記述はなし

高レベル放射性廃棄物の規制

【予算計上なし】

47,700千ドル(約53億9,000万円)

  • ユッカマウンテンに関する記述はなし
  • 原子力規制委員会(NRC)における許認可手続予算

今回、上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(上院版歳出法案(S.2975)第304条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

一方、2018年5月16日に下院歳出委員会で採択された下院版の2019会計年度の歳出法案(H.R.5895)では、高レベル放射性廃棄物に関連する条項が修正案として盛り込まれ、以下のような内容が規定されている。

再処理施設等の立地可能性の報告(下院版歳出法案(H.R.5895)第310条)

  • エネルギー長官は、ユッカマウンテンサイトの近傍において使用済燃料の再処理/リサイクル施設を立地する可能性に関する報告書を連邦議会に提出
  • 報告書では、使用済燃料の再処理/リサイクルに係る技術的便益、施設立地による地域への経済的便益、核燃料需給への国家安全保障上の意義、軍事用濃縮施設などその他施設の立地可能性について記載
  • 報告書策定に際しては、ネバダ州高等教育システム(NHES)研究所等と協議

今回、上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案に、ユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、ネバダ州選出のヘラー上院議員からは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。なお、ネバダ州選出のヘラー上院議員とマスト上院議員は、2018年5月17日に、上院歳出委員会に対し、ユッカマウンテンプロジェクトの予算を計上しないように求める連名の書簡を提出していた。

また、ネバダ州選出のローセン下院議員は、2018年5月24日のプレスリリースにおいて、下院本会議で2018年5月24日に可決された2019会計年度国防権限法案(NDAA、H.R.5515)において、ユッカマウンテンプロジェクトが空軍訓練活動等に与える影響に関する調査をエネルギー長官に指示する同議員の修正案が盛り込まれたことを伝えている。

【出典】

 

【2018年9月27日追記】

米国の連邦議会は、2018年9月13日に、2019会計年度1 のエネルギー・水資源開発分野を含むミニ包括歳出法案(H.R.5895、以下「歳出法案」という。)4 を可決し、2018年9月21日に大統領の署名を得て法律(Public Law No.115-244)として成立した。今回成立した歳出法案(H.R.5895)は、2018年6月8日に連邦議会下院本会議で可決された後、2018年6月25日に、上院版歳出法案(S.2975)の内容に置き換えられた上で5 、連邦議会上院本会議で可決されていた。その後、両院協議会による修正案及び合同説明文書を含む両院協議会報告書(H.Rept.115-929、以下「両院協議会報告書」という。)が、2018年9月12日に連邦議会上院本会議で、2018年9月13日には連邦議会下院本会議で、それぞれ承認された。

2019会計年度の歳出法案においては、ユッカマウンテン処分場計画の再開のための予算がエネルギー省(DOE)及び原子力規制委員会(NRC)の予算要求に盛り込まれ、連邦議会下院で可決された段階でも要求を上回る予算が計上されていたが、最終的に成立した歳出法案ではユッカマウンテン関連の予算は計上されていない。高レベル放射性廃棄物関連の予算としては、使用済燃料処分等(UNFD)プログラムとして、2018会計年度歳出予算 から約25%減の63,915千ドル(約72億2,240万円、1ドル=113円で換算)が計上されており、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求と同額の396,907千ドル(約448億5,050万円)が計上されている6

なお、2019会計年度の歳出法案にユッカマウンテン計画再開のための予算が含まれなかったことについて、ネバダ州選出の連邦議会上院議員からは、予算計上を阻止したことなどを伝えるプレスリリースが発出されている。

その他、両院協議会報告書では、放射性廃棄物管理に関連するものとして、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)等の監視などを行っている国防核施設安全委員会(DNFSB)の機能の維持に関する規定、予定を含む廃止措置する原子力発電所の地元自治体が利用可能な官民の支援策に関してエネルギー長官に報告を命じる規定も盛り込まれている。

【出典】

  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2019会計年度の予算は2018年10月1日からの1年間に対するものである。 [] [] [] [] []
  2. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  3. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  4. H.R.5895は、2019会計年度エネルギー・水資源開発歳出法案として下院歳出委員会で策定された後、立法府及び軍事建設・退役軍人に係る歳出法案を統合したミニ包括歳出法案として連邦議会両院で審議された。3分野の歳出法案のみの統合であることから、通常の包括(Omnibus)歳出法案に対し、ミニ包括(Minibus)歳出法案と呼ばれている。 []
  5. エネルギー・水資源開発以外の分野についても、それぞれ上院法案に置き換えられた。 []
  6. 廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOE予算要求書では保障措置・セキュリティ予算の一部として別途6,580千ドル(約7億4,350万円)が要求されていたが、両院協議会報告書では保障措置・セキュリティ予算の内訳が明示されていないため、保障措置・セキュリティ予算を除くWIPP関連の歳出予算額を示している。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )