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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で地下施設の掘削活動が再開

米国のエネルギー省(DOE)は、2018年1月17日付けのWIPPのフェイスブック・ページにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下の処分施設の掘削活動を4年振りに再開したことを公表した。WIPPでは、1999年3月から軍事起源のTRU廃棄物の地層処分が行われているが、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止していた。4年間の復旧作業の後、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置を再開し、2017年4月にはDOE各サイトからのTRU廃棄物の受入れを再開していたが、地下施設の掘削活動は中断したままであった。

今回再開した掘削活動は、2018年1月15日から開始されており、WIPP地下処分施設の第8パネルでの掘削が行われている。WIPPでは現在、第7パネルでTRU廃棄物の定置活動が行われているが、第7パネルでの定置が完了すると、第8パネルでの定置が開始される。第8パネルの掘削は、2013年遅くに開始されていたが、2014年2月の火災事故及び放射線事象で中断していた。第8パネルの完成は、2020年の予定とされている。

掘削活動には連続掘削機が使用されており、WIPPのフェイスブック・ページでは、連続掘削機の写真やビデオも掲載されている。WIPPは岩塩層に建設された地層処分施設であり、時間の経過に従って岩塩のクリープ現象によって地下の開口部分が閉鎖される動きがあるため、処分パネルの掘削は、処分に必要となる時期に合わせて行われている。

なお、WIPPのフェイスブック・ページでは、2018年1月11日付けの情報として、2018年1月15日~28日の予定で、定期のメンテナンスのためにWIPPでの操業を停止することも公表されている。

【出典】

  • エネルギー省(DOE)の廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)フェイスブック・ページ「WIPP掘削作業を再開(WIPP Resumes Mining Operations)」(2018年1月17日))[アクセス日:2018年1月19日]
    https://www.facebook.com/WIPPNews/

 

【2019年2月12日追記】

米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)は、2019年2月5日付けのニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、TRU廃棄物の定置が行われていた第7パネル第5処分室が満杯となり、定置作業上のマイルストーンに達したことを公表した。WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置が再開し、2018年1月には地下施設の掘削活動も再開されていた

第7パネル第5処分室でのTRU廃棄物の定置作業が終了したことにより、今後は第7パネル内の処分室を繋ぐ坑道での定置が第3処分室に到達するまで行われ、その後は第3処分室での定置が開始される1 。また、第7パネルでの定置作業と並行して、第8パネルの掘削も行われている。第7パネルでの定置及び第8パネルの掘削は、ともに2013年に開始されており、第7パネルは2021年春には容量の上限に達する見込みとされている。

WIPP地下処分施設の第7パネルの状況

WIPPでは、2018年には、2017年の133回を上回る310回以上のTRU廃棄物の受入れが行われた。WIPPが1999年に操業を開始してからのTRU廃棄物受入れ回数は、12,300回以上に達する。また、WIPPの地下処分施設では、175,000以上のTRU廃棄物容器が定置された。なお、WIPPウェブサイトによれば、2019年2月2日現在のTRU廃棄物の処分量は約95,000m3となっている。

【出典】

 

【2020年2月5日追記】

米国のエネルギー省(DOE)環境管理局(EM)は、2020年2月4日付けのEMニュースにおいて、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下処分施設の第8パネルの粗掘削(rough cut)が完了したことを公表した。WIPPでは、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象により操業が停止されたが、2017年1月4日にはTRU廃棄物の定置が再開し、2018年1月15日には地下施設の掘削活動も再開されていた

粗掘削の完了により姿を見せた第8パネルは、WIPPを構成する8つの処分パネルの一つである。WIPPの1つの処分パネルは7つの処分室で構成されており、各処分室は、幅が33フィート(約10m)、高さが13フィート(約4m)、長さが300フィート(約91m)となっている。岩塩の掘削は、上下可動式の回転ドラムにより岩塩を掘削する高効率の連続掘削機によって行われている。連続掘削機は、毎秒10トンの岩塩を掘削することが可能であり、岩塩の掘削ずり(岩石片)はベルトコンベアでトラックに積み込まれる。岩塩の掘削ずりの一部は地下施設で使用されるほか、残りは地上に搬出される。

第8パネルの作業は今後も継続し、リブ(rib)及び壁面が広げられ、廃棄物パッケージの定置が可能な高さを確保するために床面も掘削される。掘削活動は、2020年後半に完了することが見込まれており、完了時までに15万トン以上の岩塩が掘削されることになる。掘削活動の進展とともに、岩塩の壁面の安定化のためのロックボルト打設が行われるほか、掘削完了後は、照明設備、鋼製バルクヘッド(steel bulkhead)や金網が設置される。なお、WIPPの岩塩には時間の経過に従って、クリープ現象によって地下の開口部分が閉塞する動きがあるため、パネルの掘削は必要サイズよりやや大きめに行われる。

WIPPでは、第1~第6パネルにおける処分は既に終了し、現在は第7パネルでTRU廃棄物の定置が行われている。第7パネルは、2021年後半には容量の上限に達する見込みとされており、その後は第8パネルで処分が行われることとなる。

粗掘削が完了した第8パネル

連続掘削機

 

【出典】

  1. WIPPにおけるTRU廃棄物の定置活動は、各処分パネルの一番奥に位置する第7処分室から第1処分室に向かって行われる。現在TRU廃棄物の定置が行われている第7パネルでは、第7処分室が2014年2月の放射線事象による汚染で閉鎖されたほか、岩盤管理作業の問題から第6処分室及び第4処分室が立入禁止とされている。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-10 )