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米国で2019年3月11日に、2020会計年度1 の大統領の予算教書が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表された。また、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでは、DOEの予算要求のファクトシートが公表され、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物(以下「高レベル放射性廃棄物」という。)の管理については、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムとして116百万ドル(約131億円、1ドル=113円で換算)が要求されている。また、原子力規制委員会(NRC)のウェブサイトでは予算要求に係る概要資料が公表され、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が要求されている。

大統領の予算教書では、今回の予算要求は、中間貯蔵プログラムの実施を支援し、ユッカマウンテン地層処分場の許認可審査手続を再開することにより、トランプ政権の決意を示すものであるとしている。また、予算教書では、現在は停止されている原子力発電事業者からの放射性廃棄物基金への拠出金 について、2022会計年度から徴収を再開することも示されている。

DOEの予算要求に関して、2019会計年度の歳出法では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、使用済燃料処分等(UNFD)研究開発プログラムとして63,915千ドル(約72億2,240万円)、このうち22,500千ドル(約25億4,250万円)を「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS)に割り当てる歳出予算が計上されているが、2019年3月11日時点では2020会計年度のDOEの予算要求に係る詳細資料は公表されておらず、「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの詳細は不明である。

一方、NRCの予算要求資料では、処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を支援する高レベル放射性廃棄物の予算として、38,500千ドル(約43億5,000万円)が計上されているが、NRCの予算要求についても詳細資料は公表されておらず、予算要求の内訳等は不明である。

なお、ユッカマウンテン計画に反対するネバダ州では、知事及び同州選出の連邦議会議員から、ユッカマウンテン関連の予算が要求されたことを非難するプレスリリースが出されている。

【出典】

 

【2019年3月20日追記】

米国の原子力規制委員会(NRC)は2019年3月18日に、2020会計年度2 の予算要求に係る詳細資料(以下「NRC予算要求資料」という。)を公表した。NRC予算要求資料では、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査活動を再開するため、NRCが高レベル放射性廃棄物の予算として要求している38,500千ドル(約43億5,000万円)について、項目別の内訳が示されるとともに、裁判形式の裁決手続の再開準備など、主要な活動内容が示されている。

NRC予算要求資料によれば、ユッカマウンテン処分場に係る2020会計年度の高レベル放射性廃棄物の予算の内訳は、以下のとおりとされている。

・許認可審査: 30,600千ドル (約34億6,000万円)
・監督: 200千ドル (約2,000万円)
・規則策定活動: 1,300千ドル (約1億5,000万円)
・任務支援・監督: 5,400千ドル (約6億1,000万円)
・訓練: 400千ドル (約5,000万円)
・旅費交通費: 700千ドル (約8,000万円)
合計: 38,500千ドル (約43億5,000万円)
※予算の桁数の関係から、額の合計は合計の値と合っていない。

また、NRC予算要求資料では、2020会計年度における高レベル放射性廃棄物の予算要求に係る主要な活動として、以下が示されている。

  • ヒアリング施設及び情報技術(IT)/視聴覚支援のためのインフラ整備活動の実施
    (許認可支援ネットワーク(LSN)(詳細はこちら)、電子情報交換、電子ヒアリング記録(Electronic Hearing Docket)などのITシステムの試験、検証、訓練を含む)
  • 裁判形式の裁決手続の再開
    (証言録取、事件管理協議、略式決定動議などのプレヒアリング活動を含む)
  • 継続中の連邦訴訟の準備及び参加
  • 申立てや取調べ活動、地層処分場操業区域(GROA)に関連する規則策定の継続などの活動の支援

なお、エネルギー省(DOE)の2020会計年度の予算要求については、予算の概要資料が2019年3月18日に公表されており、2017年1月に操業を再開した廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、2019会計年度と比較して5,133千ドル減の398,334千ドル(約450億1,200万円)の予算要求額が示されている。

【出典】

 

【2019年4月3日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は2019年4月2日に、DOEのウェブサイトにおいて、2020会計年度3 の原子力関連等の予算要求に係る詳細資料(以下「DOE予算要求資料」という。)を公表した。2020会計年度の予算要求については、2019年3月11日に大統領の予算教書が公表されたが、使用済燃料管理等に係るDOEの予算要求資料については、概要資料のみが公表されていた。なお、DOEの予算要求に対して連邦議会では、上下両院でエネルギー長官を証人とした公聴会が開かれており、実質的に2020年度歳出法案の策定プロセスが開始されている。

DOE予算要求資料では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵の体制を確立するために新設する「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラム(YMISP)について、2020会計年度に行う事項として、以下が示されている。

ユッカマウンテン(106,084千ドル(約120億円、1ドル=113円で換算)、2019会計年度要求額は110,000千ドル)4

  • ユッカマウンテン許認可手続への参加の支援
  • 高度に技術的・詳細な質問への対応のため、処分場の閉鎖前・閉鎖後の解析活動を実施
  • 訴訟対応として技術的・科学的・法的支援を提供
  • 争点の解決に係る成果を反映して許認可申請書及び関連文書を更新・維持
  • 許認可申請書の支援文書との一貫性等を確保
  • 証言書の準備・レビュー
  • 原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)の裁決手続によるヒアリングにおけるDOE側の証人・証言の準備
  • 裁決手続での証拠開示手続の準備
  • 裁決手続での質問書への対応・準備
  • 裁決手続での動議その他法的手続の支援
  • 許認可手続の支援に必要な地質学的試料・施設の維持
  • 他の政府機関、地方政府、公衆等に対する効果的なコミュニケーション提供の義務を支援する包括的なコミュニケーション戦略構築の継続

中間貯蔵(9,916千ドル(約11億2,000万円)、2019会計年度要求額は10,000千ドル)5

  • 集中中間貯蔵の能力及び関連する輸送を開発・評価・取得するために必要な活動、マイルストーン、資源を含む計画の策定
  • 使用済燃料貯蔵及び輸送の能力の取得に向けた基盤開発の継続
  • 将来の使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の輸送に備えるため、地域・州等の輸送当局との関係の維持
  • 物流上の要件や解析能力に対する最低限の支援の維持

また、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動のうち、DOE原子力局(NE)の燃料サイクル研究開発プログラムの下の「使用済燃料処分等研究開発プログラム」(UNFD研究開発プログラム)については、2019会計年度予算要求 と同様に、高燃焼度燃料の性能の研究、多様な使用済燃料等を対象とした潜在的な代替処分オプションに関する国際共同研究に焦点を当てた活動を行うとした上で、前年度要求額の2分の1の5,000千ドル(約5億6,500万円)の予算が要求されている。なお、オバマ前政権がUNFD研究開発プログラムの中で行ってきたその他の活動、及び「統合放射性廃棄物管理システム」(IWMS) については、廃止が提案されている。ただし、従来はIWNSに含まれていた中間貯蔵及び輸送計画に関する活動については、新設された「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムに移管されている。

連邦議会では、DOEの2020会計年度の予算要求に関する公聴会が開催されている。公聴会は、以下に示すとおりの日程で上下両院の関連委員会が開催したものであり、エネルギー長官が証人として出席して2020会計年度の予算要求について説明するとともに、各委員会の委員による質疑が行われた。エネルギー長官の証言書では、ユッカマウンテン許認可申請書の審査手続の再開及び中間貯蔵プログラムの開始に係るトランプ政権の意思が改めて表明されている。6

  • 2019年3月26日:下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年3月27日:上院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会
  • 2019年4月 2日:上院エネルギー・天然資源委員会

なお、上院エネルギー・天然資源委員会の公聴会では、ネバダ州選出のマスト上院議員が耐震評価問題などを採り上げてユッカマウンテン計画への強い反対を示した他、ネバダ州選出の下院議員3名は、下院歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の委員長等に宛てた書簡で、ユッカマウンテンにおける高レベル放射性廃棄物処分を阻止するための条項等を歳出法案に盛り込むよう要請している。ネバダ州知事も、2019年4月2日のプレスリリースにおいて、ユッカマウンテン計画に対する反対の戦いを続けることを表明している。

【出典】

 

【2019年5月22日追記】

米国の連邦議会下院の歳出委員会は、2019年5月21日に開催した法案策定会合において、2020会計年度7 のエネルギー・水資源開発歳出法案(以下「歳出法案」という。)の草案を承認した。ユッカマウンテン処分場の許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された歳出法案には含まれていない。

歳出法案に付随する下院歳出委員会報告書の草案では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として62,500千ドル(69億3,750万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として47,500千ドル(52億7,250万円)が計上されている。IWMS予算のうち25,000千ドル(27億7,500万円)は、使用済燃料が残された廃止措置済みの原子力発電所サイト等における準備活動を含め、地域的な輸送協定や輸送の調整を再開する「集中中間貯蔵プログラム(consolidated interim storage program)」の開始など、使用済燃料の中間貯蔵の活動のための予算とされている。

また、下院歳出委員会報告書の草案では、種々の核燃料サイクルや技術的なオプションのメリットと実現可能性についての評価を、全米科学・工学・医学アカデミー(NASEM)に指示している。本評価は、廃棄物の輸送・貯蔵・処分など燃料サイクルのすべての要素間の関係や、より広範な安全性・セキュリティ・核不拡散上の懸念について、説明するものとなるとしている。

一方、今回の歳出法案に計上されなかった「ユッカマウンテン及び中間貯蔵」プログラムの予算、及びユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可申請書の審査手続のための予算に関して、下院歳出委員会の法案策定会合では、歳出委員会エネルギー・水資源小委員会の少数党最上席議員(共和党)から、これらの予算を計上する修正案が提出されたが、25対27で否決された。

ネバダ州選出のタイタス下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための修正案が否決されたことを伝え、今後も連邦議会下院議長やネバダ州知事らとともに反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

なお、2019年5月21日に開催された下院歳出委員会の法案策定会合においては、技術的な事項に係る修正案等が承認されているが、これらの修正事項を反映し、法令番号を付した歳出法案は2019年5月22日時点で公表されていない.。

【出典】

 

【2019年6月24日追記】

米国の連邦議会下院は、2019年6月19日の本会議において、2020会計年度8 「労働省、保健福祉省、教育省、その他関連機関の歳出法案」(H.R.2740、以下「本歳出法案」という。)を、226対203で可決した。本歳出法案は、労働省等の2020会計年度の歳出法案(H.R.2740)に「エネルギー・水資源歳出法案」(H.R.2960)など、4つの歳出法案をまとめた「ミニバス法案」である。本歳出法案において高レベル放射性廃棄物管理に係る予算については、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認された内容からの修正はなく、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算は計上されていない。なお、本歳出法案に付随する委員会報告書は、2019年5月21日に下院歳出委員会で承認されたものとなっている。

本歳出法案の下院本会議における審議に向けては、ユッカマウンテン許認可審査手続きを再開するための予算を含めるような修正案も提出されたが、本会議で審議された本歳出法案には当該予算は含まれなかった。本歳出法案の下院本会議における審議については、下院議事運営委員会で承認された修正案のみが本会議で審議されることとなっていたが、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開に係る修正案は、事前に行われた議事運営委員会における投票において4対7で否決されていた。

ネバダ州選出の下院議員からは、ユッカマウンテン許認可審査手続きの再開のための予算が本歳出法案に計上されなかったことを評価し、今後もネバダ州における処分場建設には反対を続けていくことを表明するプレスリリースが発出されている。

【出典】

 

【2019年9月17日追記】

米国の連邦議会上院の歳出委員会は、2019年9月12日に、2020会計年度9 の「エネルギー・水資源開発歳出法案」(S.2470、以下「歳出法案」という。)を承認し、上院本会議に提出した。2020会計年度の歳出法案では、使用済燃料の中間貯蔵について、前年度に上院本会議に提出された2019会計年度の歳出法案(S.2975)と同様に、中間貯蔵施設のパイロットプログラムの実施等をエネルギー長官に命じる規定が置かれている。

なお、ユッカマウンテン処分場の建設認可に係る許認可審査手続きの再開等のための予算については、エネルギー省(DOE)や原子力規制委員会(NRC)から要求されていたが、今回承認された2020会計年度の歳出法案には計上されていない。

2020会計年度の歳出法案に付随する「上院歳出委員会報告書」(S.Rept.116-102、以下「委員会報告書」という。)では、DOEの高レベル放射性廃棄物処分関連の活動について、「使用済燃料処分等(UNFD)プログラム」の一般的な研究開発活動を継続するための予算として27,500千ドル(30億5,250万円、1ドル=111円で換算)が計上されているほか、「統合廃棄物管理貯蔵(IWMS、Integrated Waste Management Storage)」の予算として22,500千ドル(24億9,750万円)が計上されている。IWMS予算のうち10,000千ドル(11億1,000万円)は、エネルギー長官が現行の権限内で、使用済燃料の中間貯蔵に係る民間事業者との契約などを締結するための予算とされている。

軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)については、DOEの予算要求を上回る396,907千ドル(約440億5,670万円)が2020会計年度の歳出法案に計上されている。

2020会計年度の歳出法案に盛り込まれた中間貯蔵関連の条項では、2019会計年度の上院版の歳出法案(S.2975)と同様に、以下のような内容が規定されている。

集中中間貯蔵のパイロットプログラム(歳出法案(S.2470)第306条)

  • 使用済燃料等を中間貯蔵するため、1つまたは複数の連邦政府の集中貯蔵施設の許認可取得、建設、操業のためのパイロットプログラムを実施することをエネルギー長官に許可
  • エネルギー長官は、歳出法案の施行後120日以内に、集中貯蔵施設の建設許可取得や輸送等の協力協定についてのプロポーザルを公募
  • 集中貯蔵施設の立地決定前に、立地サイト周辺等での公聴会の開催、地元州知事、地方政府等との書面による同意協定の締結をエネルギー長官に義務付け
  • エネルギー長官は、上記プロポーザルの公募から120日以内に、推定費用、スケジュール等を含むパイロットプログラム計画を連邦議会に提出
  • 集中中間貯蔵のパイロットプログラム活動に係る資金の放射性廃棄物基金からの支出を許可

また、委員会報告書では、エネルギー長官に対して、以下の報告を連邦議会に行うように指示している。

  • 費用対効果が高く、短期間で実施可能な技術オプションなど、高レベル放射性廃棄物の処分及び使用済燃料管理に係る革新的なオプションについて、90日以内に報告
  • 全米科学アカデミー(NAS)と契約して、先進炉の廃棄物に係る包括的、独立的な研究を実施し、20カ月以内に報告
  • 放射性廃棄物処理に係る電磁技術の科学的基盤の評価や考え得る効果等について、180日以内に報告

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  3. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  4. プログラム管理費用(19,600千ドル(約22億1,000万円))を含む []
  5. プログラム管理費用(3,400千ドル(約3億8,000万円))を含む []
  6. 上院環境・公共事業委員会では、2019年4月2日に、原子力規制委員会(NRC)の予算要求に係る公聴会が開催されている。 []
  7. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  8. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  9. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2020会計年度の予算は2019年10月1日からの1年間に対するものである。 []

英国政府は2018年12月19日、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に代わるイングランドの政策文書である『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)を公表するとともに、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)による地層処分施設(GDF)の新たなサイト選定プロセスが開始されたことを公表した。一方、2018年政策文書の公表に併せてRWM社は、2014年白書に基づいて取り組んでいた英国全土(スコットランドを除く)を対象とした「地質学的スクリーニング」(National geological screening exercise)の結果を公表するとともに、今後のサイト選定プロセスを通じて地域社会と協働して進めていく「サイト評価方法案」に関する協議文書を公表した。サイト評価方法案に対する意見募集は、2019年3月31日まで行われる。

■サイト評価方法案に関する協議文書で提案されたサイト選定で考慮する立地要因と評価項目

図:サイト選定プロセスの全体像

英国政府は、2018年政策文書で新たなサイト選定プロセスとして、今後約5年間を「サイト評価期間」(site evaluation)とし、複数の「調査エリア」(Search Area)を探すことを計画に盛り込んだ。RWM社は、ボランタリーなワーキンググループ(下記参照)との初期対話において、今回提示した既存の地質情報に基づく地質学的スクリーニングの結果を活用しつつ、自治体組織が参加する「コミュニティパートナーシップ」(下記参照)の設立を目指すとしている。今回RWM社が提示した協議文書では、地層処分施設の立地要因(Siting Factors)として、①安全、②コミュニティ、③環境、④工学的成立性、⑤輸送、⑥コストの6つを挙げている。このうち、2番目の「コミュニティ」では、「コミュニティの福祉」と「立地コミュニティの将来ビジョン」を評価項目(Evaluation consideration)として位置づけている。6つの立地要因間での序列や重み付けはなく、定性的な評価方式を採用するとしている。

■新たなサイト選定プロセス:初期対話とワーキンググループの設置

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設(GDF)の設置に関心を示す者、または設置候補エリアを提案したい者であれば、RWM社との初期対話(initial discussion)を開始できる。初期対話の関心表明は、必ずしも自治体当局である必要はなく、土地所有者や企業、団体、個人であっても可能であるとしている。初期対話において、GDF設置に向けた更なる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織(市議会、州議会など)に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させることになる。これを目的として、RWM社、関心表明者の他、独立したグループ長とファシリテータを加えた準備組織「ワーキンググループ」を設立することを2018年政策文書において取り決めている。英国政府は、ワーキンググループに自治体組織が入ることが望ましいとする見解を示しているが、必須条件とはしていない。

ワーキンググループは、その設置を当該地域の自治体組織に報告した後、RWM社がGDF設置の潜在的な適合性を確認する「調査エリア」の特定作業を進める。調査エリアは、自治体組織の選挙区を最小単位にするように設定するとしており、これにより、コミュニティや自治体組織等の協議への参加可能者が特定されるとしている。

■コミュニティパートナーシップの設立

英国政府は、「調査エリア」の地理的範囲はRWM社の協議文書「サイト評価方法案」で定めた立地要因に基づく検討が進むに従って変化するものであるとしており、ワーキンググループの活動によって調査エリアの範囲が定まっていくにつれて「コミュニティパートナーシップ」の範囲に収斂していくと見込んでいる。2018年政策文書では、「コミュニティパートナーシップ」を当該コミュニティにおける情報共有、地層処分・サイト選定プロセス・地域の便益に関する対話と理解を促進するために設置されると位置づけている。コミュニティパートナーシップの設立には、調査エリアにある自治体組織の合意が必須であり、同パートナーシップの構成メンバーには、少なくとも一つの自治体組織が参画する必要がある。英国政府は、同パートナーシップを形成するコミュニティに対し、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、年間最大100万ポンド(1億4,900万円)、地下深部ボーリング調査の実施に至った際には年間最大250万ポンド(約3億7,300万円)の資金提供を行うとしている。

■サイト選定プロセスにおける住民支持の調査・確認の義務と撤退権に関する取り決め

英国政府は、今回の2018年政策文書の公表に先立って、2018年1月25日から4月19日まで、地域社会との協働プロセスに関する公衆協議を実施した 。この公衆協議を通じて寄せられた意見に基づき、英国政府は、サイト選定プロセスにおいて、自治体組織(市議会、州議会など)が果たす重要な役割である「住民支持の調査・確認(test)」と「撤退権」に関する条件を明確にしている。

英国では、地層処分施設及びその候補サイトを評価するために必要な地上からのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)と位置づけており、地上からのボーリング調査の実施前、及び地層処分施設(GDF)の建設前において、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要となっている。コミュニティパートナーシップに参画する自治体組織は、遅くともRWM社が地層処分場の建設許可申請を行う前までに、地層処分施設(GDF)の設置受け入れに関して、住民支持の調査・確認(test)を実施する必要がある。また、サイト選定プロセスにおいては、住民支持の調査・確認が実施される前であれば、自治体組織はサイト選定プロセスから撤退する権利を有することが認識されている。

英国政府は2018年政策文書において、住民支持の調査・確認を行う時期を決定する権限は、コミュニティパートナーシップに参画する自治体組織が有するとしつつ、コミュニティパートナーシップに複数の自治体組織が参画している場合には、全ての自治体組織がその実施時期に合意しなければならないことを明確にした。また、自治体組織がサイト選定プロセスから撤退する権利を行使する際には、当該コミュニティパートナーシップに参画している全ての自治体組織が撤退に合意する必要があることを明確にしている。

【出典】

 

【2019年6月7日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2019年6月4日に、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)による「サイト評価方法案」への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、RWM社が示した地層処分施設(GDF)の立地要因の一つである「コスト」については、建設コストがGDFの安全性やサイト選定プロセスを阻害することにならないことを条件とすべきである点を指摘している。また、サイト評価方法の説明文書が、コミュニティとの初期対話において役立つものとなるよう、次のような意見を示した。

  • 現時点ではおそらく、複数の調査エリア内から、サイトを絞り込む方法を詳しく説明するのは時期尚早であるが、サイトを見出す目的で、調査エリア内を地質条件の違いで色分け(differentiate)する方法を説明しておくことは有益と考えられる。その作業でどのような種類の情報が重み付けされるかを人々が考えることができれば、各エリアがどのように比較判断を受ける可能性があるかを理解する上で役立つ情報となる。同様に、サイト選定プロセスの各段階において検討されるサイト数の目安、並びに次段階に進むサイト数を絞る観点から、いつ比較が行われるのかを解説しておくことも有益と考えられる。
  • 潜在的コミュニティがサイト選定プロセスに参加する時期は、コミュニティによって異なるうえ、参加後の進み方を左右する個別の事情を抱えている。もし、後から参加した潜在的コミュニティが先行するコミュニティに対して引け目を感じたり、十分な情報を得ることなく除外される可能性があると考えるようなことがあれば、立地に適したサイトが初めから除外されるおそれがある。したがって、プロセスの全体的な進行がどのように管理されるのかに関する情報が重要である。
  • 地層処分施設(GDF)の立地要因には「地質」(geology)が含まれていないが、サイト評価方法案において、GDFにとっての地質の重要性を概略的に説明しておくことは有益と考えられる。同様に、現行の英国政府の政策である「地域社会との協働」に関する情報やサイト選定プロセスの全体的な背景情報を盛り込むことも有益と考えられる。
  • RWM社のサイト評価方法案では、非常に技術的な表現が散見される。文書の理解を助け、親しみやすくするだけでなく、人々の関与を後押しするものとするため、人間味のあるものとする(humanising)ことを考えるべきである。また、地層処分施設(GDF)のサイト評価の方法について、他の原子力施設やインフラプロジェクトの場合との比較分析(ベンチマーク)の情報が役立つと考えられる。

【出典】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2018年12月14日、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関する規制の枠組みを示した規制文書「REGDOC-2.11 廃棄物管理 カナダにおける放射性廃棄物管理及び廃止措置の枠組み」(以下「REGDOC-2.11」という。)を公表した。REGDOC-2.11は、放射性廃棄物管理及び廃止措置の規制に対するCNSCの取り組みの基本的考え方と原則を示す文書であり、放射性廃棄物管理の国の枠組み、放射性廃棄物管理及び廃止措置に関するCNSCの規制の枠組みと監督、国際的義務などが記されている。

CNSCは、原子力産業に対する規制に関する情報を、事業者及びカナダ国民に明瞭かつ論理的な形で提供することを目的として、規制文書の再編成を進めている。従来は、規制文書の位置づけや拘束力に応じて、規制方針(P)、規制基準(S)、規制指針(G)、規制通知(N)の4シリーズに区分していたが、これを規制対象分野で区分した階層番号形式に変更し、規制文書へのアクセス性を改善している。

廃棄物管理に関する規制文書REGDOC-2.11シリーズは、今回公表された最上位の文書のほか、下位の3巻の文書で構成されている。

文書名

策定状況

備考

REGDOC-2.11 廃棄物管理 カナダにおける放射性廃棄物管理及び廃止措置の枠組み

2018年12月発行

 

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理

未策定

 

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第2巻:ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理

2018年11月発行

従来の「ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理 RD/GD-370」及び「放射性廃棄物の管理 規制方針P-290」を置き換え

REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物管理の長期安全性の評価

2018年5月発行

従来の「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価 規制指針G-320」及び「放射性廃棄物の管理 規制方針P-290」を置き換え

CNSCの規制文書のREGDOC-2.11シリーズへの再編では、従来の「規制方針P-290 放射性廃棄物の管理」(2004年)及び「規制指針G-320 放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」(2006年)は、形式的な変更はされているものの、内容的な変更はされずに取り込まれている。

なお、CNSCは別途の規制文書として、「REGDOC-1.2.1地層処分場のサイト特性調査に関するガイダンス」の策定に向けた取り組みを進めており、2018年10月19日にREGDOC-1.2.1の案を公表し、2018年12月17日を期限として公衆からの意見募集を行っている

【出典】

 

【2019年5月28日追記】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2019年5月24日、規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の長期管理のためのセーフティケース」の案を公表し、2019年8月30日を期限として公衆からの意見募集を開始した。本規制文書案は、処分場の閉鎖後長期における処分場性能(performance)や影響の評価に関して、許認可申請者・取得者が作成するセーフティケース及びその主体となる安全評価に係る要件やガイダンスを示すものである。本規制文書案でセーフティケースとは、処分場が安全であり、すべての適用される規制要件を満足することを立証する論拠と証拠を統合的に集めたもの(integrated collection)と定義している。なお、現行のREGDOC-2.11.1第3巻の文書名は「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」であるが、今回公表された規制文書案は、内容を全面的に刷新したものとなっている。

【出典】

スイスの連邦評議会1 は、2018年11月21日の閣議において特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続について、サイト選定第2段階の成果報告書を承認したことにより、サイト選定第2段階は終了し、サイト選定第3段階が開始されることとなった。2011年12月から開始されたサイト選定第2段階においては、6つの地質学的候補エリアが検討され、このうち、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」の3つをサイト選定第3段階に進む候補とした。

「サイト選定第2段階で確定した地質学的候補エリア」(NAGRAウェブサイト」、2018年11月22日を元に原環センターが作成)

■サイト選定第3段階開始に向けた連邦評議会の決定事項

連邦評議会は、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の提案、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び原子力安全委員会(KNS)の見解、意見聴取の結果を踏まえて、サイト選定第3段階に向けて、以下の事項を決定した。

  • サイト選定第3段階では、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の地層処分場について、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」を対象として詳細調査を実施する。
  • 地質学的候補エリア「ジュラ・ジュートフス」「ジュートランデン」「ヴェレンベルク」は予備候補として留保する。
  • NAGRAは、高レベル放射性廃棄物の処分場と低中レベル放射性廃棄物の処分場を同じ地質学的候補エリアに建設する場合の長所と短所を検討する。
  • 各地質学的候補エリアにおいて検討する地上施設の設置区域は、JO-3+(ジュラ東部)、NL-2またはNL-6(北部レゲレン)、ZNO-6b(チューリッヒ北東部)とする。
  • NAGRAは、上記の地上施設の設置区域から離れた場所に設置する換気用立坑と掘削土砂輸送用の建設立坑について提案し、処分場の建設段階と操業段階における活動範囲、地上インフラの外観デザインなどについて、サイト地域の要望を考慮しつつ、特別計画の目標と環境保護が最良な形で達成されるように最適化すべきである。このため、NAGRAは、サイト地域2 を含む州や自治体当局、市民で構成される地域会議との協働のもと、ガラス固化体のオーバーパック等を処分場の地上施設ではなく、サイト地域外で行う可能性について検討することを認める。

なお、サイト選定第2段階では、地上施設の設置区域として、廃棄体の製作施設を設置可能な場所を検討してきているが、チューリッヒ北東部の地域会議から、廃棄体の製作をサイト地域外で実施することの長所及び短所を説明して欲しいとの要望が出されており、今回の連邦評議会の決定は、このような地域会議の意見を反映したものとなっている。

■サイト選定第2段階での取組

サイト選定第2段階では、サイト選定第1段階(2008年~2011年)で選定された6つの地質学的候補エリア(ただし、高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアは3カ所)から、高レベル放射性廃棄物用処分場、低中レベル放射性廃棄物用処分場について、それぞれ最低2カ所の候補を選定する取組が行われた。

2015年1月にNAGRAは、地層処分場のサイト選定第2段階での絞り込み結果として、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを優先候補として第3段階での詳細調査対象とすることを提案した。しかし、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が2016年12月に、NAGRAが予備候補として留保した「北部レゲレン」について、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示した想定が現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、同エリアも引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示し、諮問機関である原子力安全委員会(KNS)もこれを支持した

サイト選定第2段階では、6つの地質学的候補エリアそれぞれに、関係する州や自治体当局や個人が参加する地域会議が設置され、NAGRAがこの地域会議との協働により、各エリアにおける処分場地上施設の設置区域を特定する取組も行われた。また、NAGRAによる安全上の比較評価に加え、連邦エネルギー庁(BFE)により、地層処分場が与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査も行われた

このような取組を受けて、サイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(BFE)が2017年11月に公表した第2段階の成果報告書草案では、「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」「北部レゲレン」を優先候補とし、同草案は2017年11月22日から2018年3月9日までの約3か月にわたって意見聴取にかけられた。意見聴取では、個人・組織から約1,550件の意見が提出され、うち431件がスイス、1,120件がドイツ、3件がオーストリアから寄せられたものであった。NAGRAも、これら3つのエリアがサイト選定第3段階で引き続き検討対象となることを想定して三次元弾性波探査を先行実施するととともに、サイト選定第3段階で実施されるボーリング調査に向けて、ボーリング地点の特定と許可申請などの準備作業を進めてきた

■今後の予定

サイト選定第3段階が開始されたことを受け、今後NAGRAは、2019年初頭から順次、必要な許可が発給された地点について、3つの地質学的候補エリアにおけるボーリング調査を実施する。NAGRAはこれら詳細調査を踏まえてサイトの比較を行い、最終的なサイト候補を提案し、2024年末までに連邦エネルギー庁(BFE)に対して概要承認を申請する。サイト選定プロセスを監督するBFEは、連邦評議会による概要承認の決定を2030年頃としている。

なお、サイト選定第3段階では、NAGRAと関係地域との間で、地上施設、交付金・補償金など地域開発関連、安全性の問題等に関する具体的な交渉が行われる。また、連邦エネルギー庁(BFE)が社会経済影響に関する詳細調査を実施する。地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」では2018年内に、サイト選定第2段階で設置された地域会議を、第3段階における公衆参加の機能と役割に合わせて再編成し、規約変更や代表者の選定等を実施する予定である。

 

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []

英国の原子力安全規制機関である原子力規制局(ONR)とイングランドを所管する環境規制機関(EA)(以下、両機関を合わせて「規制機関」という。)は、2018年11月15日に、放射性廃棄物管理会社(RWM社)が作成した地層処分施設の一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)の2016年版(以下「2016年版gDSSC」という。)に対する評価報告書を公表した。2016年版gDSSCは、地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階に分けて、放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する目的で作成されている(下記コラムを参照)。gDSSCは許可申請文書の一部となるものではないが、規制機関とRWM社の協定のもと、RWM社の要請に基づいてレビューが実施されている。なお、同様なレビューは、RWM社が取りまとめた2010年版gDSSCに対しても実施されている

今回の評価報告書において規制機関は、2016年版gDSSCが前回の2010年版と比べて大幅に改善していると評価する一方、サイト固有の処分施設が設計されなければ十分な評価はできないとしており、今後の包括的なサイト固有のセーフティケースの作成に向けて、多くの作業が必要であると指摘している。また、規制機関は、以下に示す環境セーフティケースに関する指摘を含め、2016年版gDSSC全体を対象として38項目の改善点を指摘している。

  • 地層処分施設の操業期間(建設、操業、閉鎖及び廃止措置を含む)を対象とした環境安全評価において、全ての潜在的な環境影響を網羅していない。また、現段階では、地層処分施設の操業期間と閉鎖後を個別に評価しても構わないが、2つの評価間の整合性を保つように改善すべきである。
  • 処分施設閉鎖後のニアフィールドにおけるガスの発生量や移行経路、人間侵入の評価方法を更に開発する必要がある。
  • 将来的に作成するサイト固有の環境セーフティケースでは、地層処分施設の安全性をバランスの取れた、偏りのない観点で示すことが期待される。一般的な条件における環境セーフティケースでは、地層処分施設の操業時及び閉鎖後の長期にわたって環境安全を確保できる証拠を示しているが、今後、環境安全の確保のため、必要な作業に関する重要な前提条件の存在や不確実性について、十分に説明されていない。
  • 回収可能性のアプローチを明確にし、廃棄物パッケージの回収を実現するために必要な研究を特定すべきである。
  • 回収可能性を維持したままでも、地層処分施設のセキュリティ、保障措置、操業安全及び閉鎖後安全が確保されることを立証するために、回収可能性を維持するために必要となる条件を操業セーフティケース(OSC)に含めるようにすべきである。

なお、英国の規制機関は、現時点では廃棄物パッケージの回収可能性に関する規制要件を定めていないものの、英国政府は2014年に公表したサイト選定プロセス等を示した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、廃棄物パッケージを回収する確固たる理由がある場合には、廃棄物パッケージの回収を行う余地があるとしている。そのため、RWM社は、廃棄物パッケージの回収が必要となる万一の事態に備えて、回収可能性の技術的なオプションを排除しないような地層処分施設の設計を行うという意向である。

(2017年8月9日の速報より再掲)

2016年版gDSSC の目的と構成

一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)は、①gDSSCを構成する文書全体の構成、目的、主要成果を示した概要報告書(Overview)、②地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階におけるセーフティケース報告書(Safety Cases)、③3つのセーフティケースの根拠となる評価報告書(Assessments)、④評価のために利用された基礎情報文書(System Information)で構成されている(下図参照)。

2016年gDSSCの文書校正

図:2016年gDSSCの文書構成

<2016年版gDSSCの目的>

  • 放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する
  • 規制機関及び廃棄物発生者や原子力廃止措置機関(NDA)のようなステークホルダーとの協議に利用できる
  • 放射性廃棄物管理会社(RWM社)が廃棄物発生者に対して、廃棄物パッケージに関するアドバイスの根拠となること、及び廃棄物パッケージの処分可能性評価のための基礎情報となること
  • 地層処分施設の受け入れに関心のある自治体(コミュニティ)に情報提供を行うことで、サイト選定プロセスを支援する
  • 研究開発が必要な分野を特定し、RWM社の科学技術プラン3  の策定に資する
  • 地層処分施設の開発における明確な処分概念と設計に関する情報を提供し、サイト選定プロセスの早期段階において、潜在的な候補サイトの適合性を評価するための基礎情報となること
  • サイト固有の設計及びセーフティケースの開発を支援する情報となること

【出典】
• 英国政府ウェブサイト、Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://www.gov.uk/government/publications/joint-regulators-assessment-of-the-2016-generic-disposal-system-safety-case
• 原子力規制局(ONR)及びイングランドの環境規制機関(EA)、Pre-application advice and scrutiny of Radioactive Waste Management Limited: Joint regulators’ assessment of the 2016 generic Disposal System Safety Case、2018年11月15日、https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/756205/Joint_regulators__assessment_of_the_2016_generic_Disposal_System_Safety_Case.pdf

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2018年10月19日に、「地層処分場のサイト特性調査に関するガイダンス」(REGDOC-1.2.1)の案1 を公表し、2018年12月17日を期限として公衆からの意見募集を開始した。カナダでは、2010年から、カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の地層処分場のサイト選定プロセスを進めており、2018年10月現在、オンタリオ州内の5つの自治体がサイト選定プロセスに残っている。いずれの自治体も、サイト選定プロセスの第3段階にあり、空中物理探査や地表踏査などの現地調査が行われており、一部の自治体では限定的なボーリング調査が実施されている。NWMOは、2023年には1カ所の好ましいサイトを選定する準備が整うと見込んでおり、選定される1カ所において、サイト選定プロセス第4段階としてサイト特性調査を行う計画である。CNSCは、サイト選定プロセスにおいて、サイト特性調査のために収集された情報が、今後の許認可申請に使用されるため、サイト特性調査段階に関するガイダンスを策定するとしている。

今回のガイダンス案においてCNSCは、サイト選定プロセスの一部として、許認可申請者は、サイトの現在及び将来の変遷に関する一般的な理解を裏付ける十分な情報や、セーフティケースに関する長期間にわたる進展への期待を提供できるような「サイト特性調査プログラム」を策定すべきであるとしている。特に、地質環境に関してサイト特性調査で得られたデータは、地層処分場の長期安全評価及びセーフティケースの重要な構成要素になると説明しており、サイト特性調査において収集するデータの具体的な項目を提示している。

また、CNSCはガイダンス案で、現行の原子力安全管理法に基づく許認可プロセスにおいては、「地層処分場のサイトの選定に適用される規制プロセスがない」という認識を示している。しかし、現実には、原子力安全管理法に基づく段階的な許認可の最初のものとなる「サイト準備許可」の発給前に、候補サイトにおいて何らかの調査活動が実施されることになると認識している。CNSCは、許認可前に実施される調査活動に対して、本来必要な規制手続を開始できるようにするため、規制当局と議論すべきであると述べている。

さらに、CNSCは、規制の独立性を確保しつつ許認可申請者に対して適切なガイダンスを与えるため、CNSCと許認可申請者との間で業務委託契約(service agreement)を締結すべきであり、この枠内において、CNSCが非公式な検査や評価を行う機会を持てるよう勧告している。また、CNSCは、サイト特性調査の作業に関して、許認可申請者がCNSCに予め通知した主要マイルストーンの維持に努めるよう勧告するとともに、サイト特性調査プログラムなどに対するCNSCによる事前レビューの要請を早期に行うことを勧告している。

【出典】


  1. カナダ原子力安全委員会(CNSC)の前身である原子力管理委員会(AECB、2000年に廃止)が策定していた規制文書「R-72 高レベル放射性廃棄物の地層処分のための処分場立地における地質学的配慮」(1987年)は、今後REGDOC-1.2.1の策定によって廃止されることになる。 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2018年9月26日付プレスリリースにおいて、2018年9月6日に、政府と原子力安全機関(ASN)主導で、地層処分の対象であり、発熱反応のリスクが指摘されているビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューが開始されたことを公表した。

ビチューメン固化体は、Orano社(旧AREVA社)や原子力・代替エネルギー庁(CEA)の再処理工場の廃液処理で発生したスラッジ等をビチューメン(アスファルト)にて固化し、金属製容器に封入したものであり、長寿命中レベル放射性廃棄物に分類されている。ビチューメン固化体は、ANDRAによる高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場において処分が予定されている長寿命中レベル放射性廃棄物の廃棄物量72,000m3の18%(約13,000m3)を占めており、この廃棄物量は高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の廃棄物量12,000m3を上回るものとなっている。

今回設置されたビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューチームは、国内外の専門家や有識者等で構成されており、以下の内容についてレビューを実施する。

  • ビチューメン固化体の特性と挙動に関する科学的知見
  • ビチューメン固化体で生じる化学反応の抑制に関して、現在実施中の研究の妥当性
  • 急激な発熱反応のリスクを排除するためにANDRAが実施している地層処分場の設計変更に関する検討の妥当性

政府やASNは、ビチューメン固化体の安全対策を重要視し、これまでに、以下のような検討を行っており、今回の国際レビューチームの設置はこれらに基づくものである。

  • 2016~2018年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)において、原子力・代替エネルギー庁(CEA)がANDRAと協力して実施するビチューメン固化体に関する研究成果に基づく報告書を2017年6月末までに政府に提出し、さらにANDRAは同報告書を踏まえ、地層処分場にビチューメン固化体を受け入れた際の影響分析結果を2018年6月末までに政府に提出する方針が示された
  • ANDRAが提出した地層処分場の安全オプション意見請求書(DOS)について、ASNが2018年1月に公表した見解書では、ビチューメン固化体の処分坑道における火災対策として、発熱反応を抑えるための研究を優先的に実施するとともに、発熱反応の過剰な進行を防げるように処分場の設計を変更する場合の検討を実施することが勧告された
  • 2018年3月に開催された地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)において、地層処分プロジェクトに関する透明性強化の方針の中で、政府及びASNの指示の下、ビチューメン固化体に関する国際専門委員会を2018年中に設置することが決定された
  • 2018年6月に公開された国家評価委員会(CNE)1 の第12回評価報告書では、国際的な検証が行われるべきであるとの立場が示され、地層処分プロジェクトに関する高レベル委員会(CHN)で設置が決定されたビチューメン固化体に関する国際専門委員会における検討状況を注視する方針が示された

また、原子力安全機関(ASN)は、現状の設計と、ビチューメン固化体に関する知見のレベルからは、同廃棄物を地層処分場に処分することはできないと考えており、以下のいずれかを明らかにすべきであるとの立場をとっている。

  • 設計変更により地層処分場にビチューメン固化体を安全に処分できること。
  • 化学反応を抑制するための処理をビチューメン固化体に対して行う場合の技術的な実現可能性。

なお、今回の国際レビュー会合には、国防原子力安全機関(ASND)2 と国家評価委員会(CNE)の代表も参加している。

今後、ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューチームは、2018年10月、11月及び12月に会合を開催し、2019年半ばまでに、検討結果に関する報告書を取りまとめる予定である。

【出典】

 

【2019年9月18日追記】

フランスの原子力安全機関(ASN)は、2019年9月12日付のプレスリリースにおいて、地層処分の対象であり、発熱反応のリスクが指摘されているビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関して、専門家・有識者等で構成される国際レビューチームが取りまとめた報告書を公表した。国際レビューチームは、主に3つの内容についてのレビューを実施し、それぞれについて、以下のような結論を示した。

  • ビチューメン固化体の特性と挙動に関する科学的知見:
    発熱反応が生じる温度に関しては、これまで原子力・代替エネルギー庁(CEA)が研究を行っている。その結論の妥当性を強固なものとするには、補完的な試験を実施する必要がある。
  • ビチューメン固化体で生じる化学反応の抑制に関して、現在実施中の研究の妥当性:
    化学反応を抑制するための処理方法に関しては、工業規模での実現性についての検証が必要である。このような処理施設を2040年以前に設置することは実現困難な見通しであるが、化学反応を抑制するための研究を継続すべきである。また、工業化が必要となった場合には、具体的な処理プロセスを決定する前に、ビチューメンを化学的に溶解するメリットの有無を再検討すべきである。
  • 急激な発熱反応のリスクを排除するために放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が実施している地層処分場の設計変更に関する検討の妥当性:
    ANDRAが今後も研究を進めることによって、安全性を立証できるように地層処分場の設計変更を行うことは、短期で実現可能であると考えられる。処分場の設計変更によって、急激な発熱反応のリスクを排除し、ビチューメン固化体をそのまま処分できれば、事前に化学反応を抑制する処理を行うより、明らかにコストが小さくなると考えられる。

ASNと原子力政策を所管する環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、今回の国際レビューの結果、並びにこれを受けて行われるANDRA及び廃棄物発生者の研究結果について、現在策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に反映する方針である。

【出典】


  1. フランスにおいて放射性廃棄物等の管理計画に関する研究・調査の進捗状況を評価する組織 []
  2. 原子力・代替エネルギー庁(CEA)は軍事由来のビチューメン固化体をマルクールサイトに保有しており、これを規制・監督するのはASNDである。 []

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2018年9月26日付けのプレスリリースにおいて、2019年以降と見込まれるサイト選定第3段階においてボーリング調査が実施される地質学的候補エリア毎に、関係自治体などが参加する情報共有のためのグループを設置することを明らかにした。本グループは「ボーリング調査情報共有グループ」(〈ドイツ語〉Begleitgruppen)と呼ばれ、ボーリング調査に関する関係自治体の情報ニーズを取りまとめて、連邦政府や処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)から、迅速かつ分かりやすい情報提供を受けることを目的としており、関係自治体のほか、州、隣接するドイツの自治体(該当する場合のみ)も参加している。該当する3つの地質学的候補エリアのうち、「北部レゲレン」と「チューリッヒ北東部」では、それぞれ2018年9月24日と25日に初回会合が開催された。残る「ジュラ東部」でも、エリア内でのボーリング調査の許可発給を待って、初回会合が開催される予定である。

ボーリング調査の許可手続きと進捗状況

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」によると、サイト選定第3段階では、概要承認の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能にするため、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集するとしている。

三次元弾性波探査については、NAGRAがサイト選定第2段階において先行的に実施済みである。ボーリング調査については、サイト選定第3段階の開始後すぐに実施できるよう、NAGRAが2016年9月と2017年8月に3つの地質学的候補エリア「北部レゲレン」、「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」内の合計22の調査候補地点についてボーリング調査の許可申請書を提出している。このうち、北部レゲレンの1地点及びチューリッヒ北東部の2地点の合計3地点については、2018年8月に許可を取得済みである

 

【出典】

米国の原子力規制委員会(NRC)は、ウェースト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社による使用済燃料等の中間貯蔵施設の許認可申請に関して、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社が要請した許認可審査の再開を認めることについて、2018年8月21日付のISP社宛の書簡(以下「NRC書簡」という。)で通知した。WCS社によるテキサス州アンドリュース郡における中間貯蔵施設プロジェクトについては、WCS社に対する買収の動きを受け、2017年4月18日に許認可審査の一時停止がWCS社から要請され、NRCもこれを承認していた。WCS社は、2018年1月に投資会社のJFリーマン社に売却されたが、WCS社とOrano USA社1 との合弁会社として設立されたISP社が、2018年6月8日に、中間貯蔵施設の許認可審査の再開を公式に要請していた

今回公表されたNRC書簡の中でNRCは、ISP社が2018年6月8日付の許認可審査の再開要請に続いて提出した許認可申請書の改定2版(Revision 2)において、詳細な審査の再開に必要な情報が提供されていることを確認したとしている。また、NRC書簡では、ISP社の許認可申請に係る審査のスケジュールが以下のように示されている。

  • 安全審査関連の追加情報要求(RAI)
    • 1回目:2018年11月~2019年1月
    • 2回目:2019年5月~2019年7月(必要な場合のみ)
  • 環境審査関連の追加情報要求(RAI)
    • 1回目:2019年1月
    • 2回目:2019年5月(必要な場合のみ)
  • NRCによる安全審査、環境審査関連の完了:2020年8月

また、NRC書簡では、裁判形式の裁決手続による「ヒアリングの開催要求の機会」(opportunity to request a hearing)(以下「ヒアリング開催要求の機会」という。)に係る新たな通知、及び環境影響評価(EIS)のスコーピング手続を再開する旨の通知を、連邦官報で告示する予定としている。NRCは、2017年7月20日付の連邦官報において、ヒアリング開催要求の機会に係る2017年1月30日付の連邦官報告示を取消すとともに、WCS社が許認可審査の再開を要求した場合には、改めてヒアリング開催要求の機会に係る通知を連邦官報で告示することを決定していた

なお、NRCウェブサイトにおけるWCS社の集中中間貯蔵プロジェクトのページは、2018年8月15日に、ISP社を申請者とする形で更新されており、ISP社が提出した許認可申請書の改定2版(Revision 2)も掲載されている。

【出典】

 

【2019年7月5日追記】

原子力規制委員会(NRC)は、2019年7月1日付けの中間貯蔵パートナーズ(ISP)社宛の書簡において、IPS社によるテキサス州アンドリュース郡での使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請について、審査スケジュールを改定したことを通知した。NRCの書簡では、これまで2020年8月と見込まれていた安全性・セキュリティ・環境の審査の完了が、2021年5月に先送りになるとのスケジュールが示されている。

NRCは、今回の審査スケジュールの改定は、NRCからの追加情報要求(RAI)への対応について、ISP社が2019年5月31日に提示した対応スケジュールを考慮したためとしている。また、改定前のスケジュールと同様に、改定したスケジュールでも、ISP社が今後のRAIに対する回答を高い品質で60日以内に提出することなどを前提としており、ISP社の回答の品質や提出の遅れがNRCでの審査の遅延につながる可能性もあるとしている。

なお、ISP社の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請書の審査については、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催要求が12件提出されている。NRCの原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、ヒアリングの開催を要求している者の当事者適格、及び提出された争点の有効性に係る口頭弁論を2019年7月10~11日に開催する予定である。

【出典】

 

【2019年8月26日追記】

原子力規制委員会(NRC)の原子力安全・許認可委員会(ASLB)は、2019年8月23日に、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で計画している使用済燃料の中間貯蔵施設の建設・操業に係る許認可申請について、裁判形式の裁決手続によるヒアリングの開催を求めるシエラクラブ2 の申立てを認め、ヒアリングを開催することを決定した。ヒアリングの開催要求及び参加申立てについては、12の組織等から開催要求及び参加申立てが提出され、2019年7月10~11日に口頭弁論が行われた。ASLBは、シエラクラブを含めて4組織の当事者の適格性を認めたが、シエラクラブ以外の申立てについては、争点が有効と認められないとして否認された。なお、ASLBは、NRCから独立した行政判事団であり、参加申立てを行った者は、NRCの委員会に対してASLBの決定に関する不服申立てを行うことができる。

原子力安全・許認可委員会(ASLB)が有効と認めたシエラクラブの争点は、絶滅が危惧される2種類のトカゲの生息地に対する影響の可能性について、ISP社が提出した環境報告書(ER)では技術的な適切性が十分に説明されていないなどとするものである。ISP社の環境報告書(ER)においては、2種のトカゲの生息地に対する重大な影響はないとのISP社の見解をサポートする5つの研究が引用されているが、そのいずれもが公開されておらず、公衆による精査が不可能なことなどの理由から、有効な争点として認められた。なお、シエラクラブは全部で17件の争点を提出していたが、他の争点はすべて否認されている。

【出典】


  1. Orano USA社は、フランスの原子力総合企業であるOrano社(旧Areva社)の米国法人である。実際にWCS社との合弁会社であるISP社を設立したのは、Orano USA社の子会社であるOrano CIS LLCとなっている。 []
  2. 米国の市民参加型の環境団体 []

スペインの原子力安全審議会(CSN)は2018年7月25日のプレスリリースにおいて、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)に関して、放射性廃棄物管理等の実施主体である放射性廃棄物管理公社(ENRESA)が2014年1月に提出していた立地・建設許可申請1 のうち、建設許可申請の審査を中断することを公表した。CSNは立地・建設許可のうち立地許可申請については、2015年7月に、条件付きながら肯定的な評価結果を示しており、その後、建設許可申請の審査を実施していた。

今回の原子力安全審議会(CNS)による建設許可申請の審査中断の決定は、スペイン政府の環境移行省(Ministry of Ecological Transition)2 からの要請を受けて行われたものである。スペインでは、集中中間貯蔵施設(ATC)を含む原子力関連施設の立地・建設・操業に係る許可は、CSNによる原子力安全及び放射線防護の観点からの申請書の評価に基づき、環境移行省が発給することとなっている。2018年6月に発足した社会労働党政権は、原子炉の運転期間を40年とし、最後の原子炉が40年を迎える2028年で原子炉を閉鎖する等の方針を打ち出している。また、ATCの立地予定地のあるカスティーリャ・ラマンチャ州の州政府も社会労働党が主導しており、ATCの建設に反対していた。なお、同州には原子力発電所は立地していない。

今回のCSNの決定を受けて、カスティーリャ・ラマンチャ州政府は、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等は各々の原子力発電所サイトで貯蔵すべきとの考え方を示している。

スペインでは、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物等については、最終管理方策の決定を先送りしており、当面は、集中中間貯蔵施設(ATC)において貯蔵することとしている。ATCの建設地の選定は、公募方式によって2009年から開始され、2011年12月にカスティーリャ・ラマンチャ州クエンカ県のビジャル・デ・カニャス自治体が建設地に決定していた。放射性廃棄物管理公社(ENRESA)のATCに関する資料によれば、同施設では、原子力発電所からの7,000トンの使用済燃料、一部の使用済燃料の再処理に伴う高レベル放射性廃棄物等のほか、約1,900m3の原子力発電所の解体廃棄物が管理される予定である

集中中間貯蔵施設(ATC)の完成予想図

集中中間貯蔵施設(ATC)の完成予想図(ENRESAウェブサイトより引用)

 

【出典】

【2018年9月10日追記】

スペインの環境移行省は2018年9月6日付けプレスリリースにおいて、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物等の集中中間貯蔵施設(ATC)プロジェクトの今後に関して、2019年に判断するとの方針を示した。環境移行省は、2006年に策定された第6次総合放射性廃棄物計画を更新し、2019年に策定する第7次総合放射性廃棄物計画においてATCプロジェクトの今後の計画を織り込むとしている。

環境移行省は、ATCプロジェクトの今後を判断する際に、放射性廃棄物管理公社(ENRESA)がこれまで行ってきたATC建設への投資と、建設コストについて調査するとともに、国会議員、ATCの立地予定地のあるカスティーリャ・ラマンチャ州の州政府や州議会、プロジェクトに関わる技術者等、あらゆる関係者の意見を聴取する方針である。また、議会下院の環境移行委員会に対し、ATC建設について検討し、政府に報告するよう要請している。

【出典】


  1. スペインでは、原子力関連施設の立地と建設の許可を一括して申請できることになっている。 []
  2. 2018年6月の省庁再編により、エネルギー政策の管轄が、産業・エネルギー・観光省(MINETUR)から環境移行省に変更された。 []